プロローグ「逃避行」
ここはルイス王国。
一人の王が治めている王国である。
しかし…
突如前王が暗殺され、平和だったはずの王国は崩れ去り、新たな王、『
ダークナイト』による独裁政治が始まった。
国民は飢えに苦しみ、国軍に怯えていた。
このままではいけない…
そう思った国民達は、ある組織を作った。
それは『反王国組織』…『レジスタンス』による革命が始まろうとしていた…
この物語は、そんなルイス王国を救った一人の少年の物語である…
*
「いたぞ!あそこだ!!」
「奴を捕まえろ!!」
全力で廊下を走るオレの後ろから、大勢の追っ手の怒声が聞こえてくる。
疲れのせいか霞む目で後ろを振り向くと、追っ手の数の多さが見て取れた。
追っ手達の種族はポチエナや、コイルなどまちまちで、規則性があまり分からない。
オレの体は疲れ果てて悲鳴を挙げているが、捕まる訳にはいかない。
なんとしてでも逃げ切らないと…!
オレは後ろをくるっと振り向き、左手に黒いエネルギーの球を作り出した。
ヴヴヴ…と唸る球体は次第に大きさを増していく。
「『シャドーボール』!!」
オレは追っ手に向けて左手を振り抜き、手ひらに作り出された黒の球体を追っ手へと飛ばした。
「うわっ!!」
狙い通り、追っ手達の足元にエネルギーの塊が命中し、砂埃が巻き起こる。
敵が目を眩ましている隙にオレは廊下を走り抜けた。
疲労が溜まっているオレにとって、相手の目を眩ませる事で精一杯だ。
しばらく走っていくとそこは行き止まりになっていた。
ここだ、ここに脱出するための道がある…はずだ。
オレは壁を触り、スイッチのような物を探した。
不自然な出っ張りがあるのを目ざとく見つけ、押してみた。
カチッという音が響き、床が開く。
ここから外に抜け出せる…安堵の表情を浮かべた次の瞬間ー、
「『ソニックブーム』!!」
「ッ…!」
無数の斬撃がオレに襲いかかってきた。
斬撃は足に命中した。
傷から流れる鮮血が辺りに飛び散り、赤い水溜まりを作る。
あまりの痛さにオレはその場にうずくまった。
「ニガシハシナイゾ…。」
技の飛んできた方から何やら機械的な声が聞こえ、丸くて白い鋼の体がふわふわと浮きながらこちらに近づいてくる。
『じしゃくポケモン』コイル…さっきの追っ手の一人か…。
足に激痛を感じつつもオレはコイルをキッと睨んだ。
「コレデニンムカンリョウダナ。」
目を嬉しそうに細めたコイルは等速で近寄ってくる。
…まだだ!
オレは一瞬の隙を見つけ、隠し穴に飛び込むと蓋を閉めた。
絶対に開けられないよう、その辺に落ちていた棒で蓋の部分を押さえた。
上から、さっきのコイルの悔しそうな声が聞こえてきた。
全く油断の隙もありゃしない。
穴の中はトンネルのようになっていて、人一人が這って歩けるくらいの広さだ。
オレはいざという時に…と思って持ってきておいた布を傷口にあてがい、止血した。
すぐに布は血を吸い、白色から紅色に変化するが、構わずに布をきつめに縛った。
オボンやオレンの実でもあればいいのだが、生憎持ち合わせていない。
とりあえずここから脱出しなくては…。
布を縛った足を引きずり、壁伝いに歩きながら出口を目指した。
しばらくトンネルを歩くと上に繋がる梯子があり、外の世界に繋がっていた。
梯子を登り、出口から顔を出すと暖かな太陽の光がオレの顔を撫でた。
穴から抜けると背後には城のある首都へと続く門がそびえ立っていて、前にはうっそうとした森が広がっていた。
どこかで休憩したかったが、そんな時間はない事は分かっている。
オレは傷ついた足を引きずり、森の中へと足を踏み出した。
オレが取った選択が間違っていなかった事を祈りながら…
To Be Continued…