第一話「森の中で」
「ふっざけんなぁ!!」
広大なグランドフォレストという森に、あるポケモンの叫びが木霊して響き渡る。
声の主は、ライオンの子どものような風貌をしたコリンクというポケモンだった。
耳には小型の通信機のような物を付けていて、誰かと会話をしているようだった。
彼は、耳の通信機のマイクに向かって怒鳴り散らしていた。
『少し木の実を取ってきて欲しいってだけなんだからいいじゃん!ね?ラッシュ…。』
「よかねーよ!!今日の任務はパトロールだけなんだから!!」
ラッシュと呼ばれたコリンクはまた一段と声を張り上げ、叫んだ。
通信機からは、少し高めの雌のポケモンらしき声が聞こえてくる。
どうやら、通信機から聞こえてくる声の主は食べ物の調達を頼んでいるようだった。
「とにかく!オレはやらねぇからな!以上!!」
『ちょっー』
そこまで言うとラッシュは通信機の電源を切り、やれやれとため息をついた。
「この前調達してきたばっかりなのに…あいつらどんだけ大飯食らいなんだよ…。」
ブチブチと文句を言いながら、彼は足下を見渡した。
しかし、足下には落ち葉が落ちているだけで、何の木の実も落ちていなかった。
「ちっ!何も落ちてねぇじゃねえか!!」
ラッシュは舌打ちをすると、道端の草むらに目を向けた。
するとー
「なんだあれ…」
草むらの影に、何やら薄いピンク色の物体が見えていた。
ラッシュは恐る恐る近寄り、草むらの向こうをそっと覗いた。
「なっ!?」
ラッシュは覗いた瞬間、血相を変えて叫んだ。
薄ピンク色の物体の正体はー
すり傷だらけで横たわるエーフィの手だった。
よく見ると、エーフィの右足には紅色に変色した布が巻いてあり、痛々しさがにじみ出ていた。
「おい!大丈夫か!?」
ラッシュはエーフィに近寄り、頬をペチペチと叩いた。
顔はほんのり赤く、熱を出しているようだった。
しばらく叩いていると、エーフィから「う…」という声が聞こえてきた。
生きてはいるようだが、高熱でうなされていた。
「傷口から菌が入って熱が出ちまったのか…」
ラッシュはエーフィの額に手を当てながら言った。
しばらく、苦しそうなエーフィの顔を見つめていたラッシュは、軽々とエーフィを背負い、歩き始めた。
「このまま放ってはおけねぇし、一旦基地に連れて行こうか…。」
ラッシュはエーフィを背負ったままそう呟くと、森の奥へと歩いていった。
To Be Continued…