ポケットモンスター デスティニー 〜憎しみを砕く絆〜 - 第4章:新たなイレギュラー
4‐2:ムロタウン ―一つの予感―


 波も低く、比較的穏やかな海の上。そこを一艘の船が真っ直ぐに進んでいた。
 中型サイズの船だ。船体は風を切るような形状をしており、かなりの速度で移動するのにも適しているような印象を受ける。モーター音と共に海上を突き進む船だったが、船上では揺れは殆んど感じない。海が穏やかだという事もあるが、何よりこの船の設計が大きく影響を与えているのだろう。これならば乗り物に弱い人でも船酔いしにくそうである。

 その船が進むのは、105番水道と呼ばれる海域。カナズミシティ南部に位置する104番道路の海岸に隣接している水道である。ホウエン地方の水道の中でも比較的弱いポケモンが生息している海域であり、水ポケモンを専攻とする駆け出しトレーナーが練習場所として利用する事も多いと聞く。流石にこの時期に海に入っている人は殆どいないが、時期によってはかなりの人が集まってくる水道なのだ。

 105番水道を進む船。その甲板で、ユウキとミツルは潮風を浴びていた。

 ミツルとユウキが再会を果たした翌日。無事に退院したミツルはサーナとボーマンダを迎えに行く為に、ポケモンセンターに向かった。
 ミロカロスの“れいとうビーム”で痛手を負っていたボーマンダだったが、ポケモンセンターの治療によってなんとか回復する事ができていた。飛行とドラゴンの複合タイプであるボーマンダにとって、氷タイプ技はかなりの脅威と成り得るのだが、そこは流石強力なポケモン。戦闘不能にまで追い込まれていたものの、こうして元々の元気を取り戻せる程までに回復していた。
 寧ろ怪我の具合はサーナの方が酷かったくらいだ。ミロカロスの“アクアテール”を無防備の状態のまま何度も受けてしまったのが悪かったらしく、身体中が酷く腫れ上がってしまっていたとの事。ユウキが発見した当初はかなり痛々しい姿だったらしいが、しかしその怪我もミツルが退院する頃には良くなっていた。取り敢えずホッと一安心だ。

 回復したサーナとボーマンダの様子を見て、安堵したミツル達。ポケモンセンターを後にした彼らは、もう一度流星の滝を訪れた。ボーマンダを返す為である。
 ミツルが青ローブとバトルしてから二、三日程経過していたが、流星の滝はいつも通り平穏だった。あのバトルでの損壊部分はやや目立っていたものの、それ以外はいたって変わった所はなし。聞こえてくるのは滝が投げれ落ちる音のみだ。

 やはりと言うべきか、あのローブ達に繋がるような手がかりは流星の滝には残っていなかった。最初から期待はしていなかったが、改めて突きつけられると少し肩の力が抜けてしまう。情報が少ないこの状況では、たとえ些細な事でも感情が左右されてしまうのだ。欲を言えば、何かしらの手がかりを掴みたかった。

 だが、何も希望が全くなった訳ではない。あの時、ユウキがミツル達に告げた“考え”。それがまだ残っている。
 そしてボーマンダを流星の滝まで送り届けた翌日。その“考え”を実行する為に、ミツル達はとある場所に向かっていたのだ。

「いやー、潮風が気持ちいいな。やっぱホウエン地方の海は最高だぜ」

 甲板の柵に寄りかかりながらも、ユウキが伸びをする。これから先に危険が待っているかも知れないというのに、呑気なものである。

 いや、呑気と言うよりも、あんな調子でいられるくらいに心に余裕を持っているのだろう、とミツルは思っていた。
 ユウキの事だ。如何なる場合でも冷静な状態を保てるように、常日頃から余裕を持てるようにしているのだろう。彼がトレーナーとしてあそこまで登りつめられたのは、この性格も由縁しているのかも知れない。

「……そうですね。本当に、心地いいです……」

 しかし、ミツルの方は気が気でなかった。
 自分もユウキみたいに、あんな風に余裕を持てたらいいのに、とミツルは何度も思う。しかし、無い物ねだりをしても仕方がない事だ。今すぐにこの性格を変えようと思っても、それは流石に無理がある。

「おいおい、ミツル。あんまり気負いするなよ。もっと肩の力を抜こうぜ」
「へっ……!? い、いや、その……すいません……」

 ユウキに肩を叩かれて、ミツルはびくりと飛び上がる。そんな様子のミツルを見て、ユウキは苦笑していた。

 肩の力を抜く。それができるのなら、そうしたい。しかし、これから起こる可能性を考えると、とてもそんな事は出来そうになかった。

 この船の行き先。それはムロタウンと呼ばれる町のある小さな島だった。
 島と言ってもホウエン地方本島からそう離れている訳ではなく、船やポケモンの技である“なみのり”を使えば気軽に辿りつけるくらいの距離に存在している。また、ムロタウンにはポケモンジムもある為、リーグ出場を目指すトレーナーが挙って訪れる島でもあった。

 無論、ジム戦を行う為にムロタウンに向かっている訳ではない。ユウキの“考え”とは、別のものだ。

「でも……まだムロタウンにまだいるんでしょうか……?」

 そんな時、ふと疑問に思ったミツルがそう口にする。しかしユウキは、やけに自信に満ちた口調でそれに答えた。

「大丈夫だって。何とかなるさ」
 
 ユウキの“考え”。端的に言ってしまえば、それはいわゆる張り込みだ。
 一昨日。ユウキが病院でミツル達に持ちかけたのは、とある噂話だった。しかも、信憑性はかなり高いらしい。ユウキ曰く、彼は直接それを目撃した人から話を聞いたようだ。

 その噂話の内容とは――、大きな傷を負ったラティオスがムロタウンの浜辺で発見された、というものだった。

「でも……やっぱり少し不安ですよ。上手くいくかどうか……」
「気が弱いなぁ。前にも説明しただろ? カナズミジムでの事を考えると、多分あいつらは強力なポケモンや珍しいポケモンを手に入れようとしているはずだ。だからあいつらを直接追いかけるより、狙いそうなポケモンの方へ先回りした方が、遭遇するのも簡単だろ?」

 このタイミングでの負傷したラティオスの発見。ユウキはそれが怪しいと睨んでいた。
 ラティオスと言えば、かなり希少なポケモンだ。加えて戦闘能力も高い。あのローブ達が狙いそうな条件は一通り揃っているだろう。その為、ムロタウンで発見されたラティオスは捕獲しようとしたローブ達による攻撃で負傷したのではないのだろうか、と考えたのだ。

 もしそうだとすれば、ラティオスの身が危険だ。負傷した状態でもう一度ローブ達に狙わたら、今度こそ捕まってしまう。それを防ぐ為にも、今はムロタウンに向かう事を先決すべきだと判断した。

「お前は少し真面目過ぎるって言うか、考え過ぎなんだよな。やってみなきゃ分からない事なのに、やる前から失敗する事ばかり考えてる。それじゃ駄目だ。上手くいかないかも知れないなんて考える暇があるなら、絶対に成功させるって意気込むべきなんじゃないのか?」

 弱気なミツルに向けて、ユウキがそう言葉を投げかける。ハッとなってミツルが顔を上げると、そこにあるのはユウキの笑顔。見ているだけでも頼もしい、彼の表情。

「……そうですよね。いつまでも怖気づいてはいられませんよね」

 ミツルは心動かされていた。
 そうだ。ユウキの言う通りだった。これから起こる事なんて、まだ何も分かっていないじゃないか。それなのに、一度負けてしまったくらいで後ろ向きな気持ちになんかなっていられない。
 失敗するかもなんて思わない。少しでも結果を良くする為に、精一杯努力する。今は、そうするべきなのだ。

「おう、その調子だ。もっと強気で行こうぜ?」

 ユウキはグッと親指を立てる。そんな姿を見ていると、ミツルも彼から勇気を貰っているように感じた。気持ちを変える為にも、そしてそれを現す為にも、ミツルは笑顔を浮かべる。

 ミツルは改めて決意した。ホウエン地方の異変の原因を解明する、と。そして、あのローブ達の所業を必ず止める、と。もうこれ以上、誰も苦しめたくなかった。何も失いたくなかった。だからこそ、ミツルは立ち上がったのだ。その決意は、今度こそ揺らぎはしなかった。

「……お? 見てみろよ、ミツル。もうすぐ着くみたいだ」

 そう言いながらも、ユウキが船の進行方向を指差す。その示す先に目を向けると、そこ見えたのは小さな島。沿岸部には町の姿も見え、その町には桟橋も確認できる。ムロタウンに、間違いなかった。

「もうすぐ、ですね」
「あぁ。ま、気楽にいこうぜ。焦って空回りしちゃ、元も子もないからな」
「は、はいっ!」

 声を上げて、意気込んだつもりのミツル。傍から見れば強がっているようにしか見えないが、これが彼なりの気持ちの変え方なのだろう。久しぶりに会ったとは言え、ミツルとは長い付き合いであるユウキにはそれが何となく分かった。

 105番水道を進む船。ミツル達を乗せたその一艘の船は、真っ直ぐにムロタウンへと向かっていた。



―――――



 この船は中型の連絡船だ。105番道路とムロタウン、そしてムロタウンとカイナシティを繋ぐ役割を担っており、そこを行き来する人にとって重要な交通手段である。
 その船の操縦士は、ハギという名の老人。数年前まで大型の連絡船であるタイドリップ号の名誉艦長を務めていた老人であり、引退した現在はこちらの連絡船の操縦士を務めている。以前は凄腕の船乗りとして知られていたらしい。

 そんなハギ老人が操縦する連絡船。その船に乗船していたミツルとユウキは、停泊したムロタウンに降り立とうとしていた。

「ありがとうございました、ハギさん」
「ほっほっほ。なに、これくらい朝飯前じゃ」
「ピひょ……ピひょピひょ!」

 ミツルがハギ老人にお礼を言うと、それに呼応するかのように一匹のキャモメが鳴き声を上げる。ハギ老人がピーコちゃんと呼んでいるキャモメであり、彼にとって大切な存在らしい。何でも、もう何年も前から一緒にいるのだとか。

 ハギ老人とピーコちゃんに見送られ、ミツルとユウキは船から降りる。
 時刻は夕方。太陽は西の海にだいぶ近づき、その光色も茜色に染まる。ムロタウン全体もその光を浴びており、どことなく物寂しいような雰囲気に包まれていた。
 ムロタウンと言えば、海水浴やサーフィン等で人気のスポットだ。しかし今はシーズン外。当然訪れる人も少なくなる。その影響もあって、こんな雰囲気もより一層強くなっているのだろう。

「えーと……。ラティオスはポケモンセンターに居るんでしょうか?」
「そうだな。ちょっと行ってみるか」

 ムロタウンに到着して、ミツル達はまずポケモンセンターに向かう事にした。
 町の雰囲気から考えて、おそらくまだあのローブ達は現れていない。つまりラティオスはまだ奴らに捕まっていない可能性が高いのだ。それならば、少しでも様子を見ておきたい。

 ムロタウンのポケモンセンターは、桟橋から少し離れた所にある。民家や海辺の町ならではの店が建ち並ぶ通りを抜けると、そこには一際目立つ建物が。
 どの町でも変わらぬ外観のポケモンセンター。町のやや奥地にあっても随分目立つ。その外観のお陰で、誰でも見つけるのは容易だった。

 ミツル達はポケモンセンターに入る。しかしその途端、彼らは言葉を失いかける事となった。

「う、うわっ……。凄い人…… !」

 ポケモンセンターに入ると、そこには想像以上に多くの人の姿が確認できたのだ。トレーナーのような人は勿論、ポケモンを連れてすらいない人や小さな子供の姿も確認できる。最早半分お祭り騒ぎである。

「野次馬か? ラティオスを一目でも見たいって事か」

 ラティオスはかなり珍しいポケモンだ。滅多に見られるものじゃない。この絶好の機会に、少しでも見てみたいと思ってしまうのも無理ないだろう。
 確かに、野次馬がいるくらいの事は予想していた。だが、まさかこれほどまでの量とは――。シーズンを過ぎたムロタウンとは思えない程の活気だ。

「……どうしましょう? これじゃラティオスの所まで行けませんよ……」
「んー……。ま、大丈夫だろ。これで今もまだここにラティオスがいるって事が分かった訳だし。あとは奴らが現れれば……」

 ユウキとミツルは辺りを見渡してみる。野次馬と思しき人は沢山いるが、ローブ達に関わってそうな人は一人も見当たらなかった。
 おそらく、ラティオスはまだここにいる。ユウキの読みが正しければ、奴らラティオスを追ってここに現れるはずだ。奴らがラティオスに接触する前に引き止める。それさえできれば、こちらのものだった。

 しかし正直に言ってしまえば、ユウキの読みが外れている事の方が望ましかった。外れているのだとすれば、ラティオスがあの正体不明のテロ組織に襲われる心配はなくなる。ラティオスの為を考えると、そうなる事こそ最善な状態だろう。
 そう。最優先すべきは、あのローブ達からラティオスを守る事だ。最悪、情報収集は二の次でいい。これ以上被害を増やさない為にも、奴らの好き勝手にさせる訳にはいかなかった。

「それにしても、本当に凄い人ですよね……。まさかポケモンセンターにこんなにも沢山の人が集まるなんて……」
「驚いただろ? 普段はもっと人が少ないからね」
「……えっ?」

 ミツルに投げかけられた声。不意に流れ込んできたそれは、ユウキの声ではなかった。ミツル達以外の、第三者。
 振り向くと、そこに居たのは一人の青年だった。鮮やかな水色の髪を持っており、肌は日に焼けた小麦色だ。体つきは筋肉質でがっちりしており、スポーツマンを彷彿させるような格好をしている男性だった。

「あっ」

 その青年を視界に入れると、ユウキが思わず声を上げる。
 彼の事は、ミツルでも良く知っている。それはリーグ出場経験のあるユウキなら尚更だ。そう、この人物こそ、ここムロタウンに存在するポケモンジムのジムリーダーなのだ。また、サーファーとしての一面もあるらしく、体つきがここまでがっちりしているのはその為だ。
 彼の名は、トウキ。格闘タイプのポケモンを専門とする、ポケモントレーナーだった。

「やあ、久しぶり! 元気にしてたか?」
「トウキさんこそ。ご無沙汰です」

 眩しい笑顔を向けるトウキに対し、ユウキは軽く手を挙げつつもそう答える。その横でミツルも会釈していた。
 ジムリーダーであるツツジの元で勉強させて貰っているミツルにとって、他のジムリーダーと関わる事も多少ある。特に比較的カナズミシティから割と近い場所にあるムロタウンにジムを持つトウキとは、ミツルも以前に何度か会った事があった。

「いやー、まさかとは思ったけど本当に君だったとは! いつホウエン地方に帰ってきてたんだ?」
「つい数日前ですよ。ずっと留守にしっぱなしっていうのも悪いので」

 久々の再会の余韻に浸るかのように語り描けるトウキ。ユウキも笑顔を浮かべながらも受け答えていた。
 流石はユウキ。ジムリーダーの人望も厚い。

「トウキさんはどうしてここに? やっぱりラティオスの様子を見に来たんですか?」
「まぁ、ね。でもそうしたらちょうど君達の姿が目に入ってさ。思わず声をかけたんだよ」
「成程……」

 ユウキが納得したような表情を浮かべた。
 つまり、たまたま訪れたポケモンセンターでたまたまユウキ達と居合わせたと言う事か。やはりジムリーダーである彼にとっても、ラティオスというポケモンは興味を惹かれる存在なのだろうか。

「実は第一発見者は僕なんだ。だから少し気になってさ……」
「へっ……そうなんですか!?」

 驚いたミツルが声を上げる。どうやらユウキもこれには予想外らしく、意表をつかれたかのような表情を浮かべていた。
 第一発見者。当時の様子を良く知る人物。そんな人が今、目の前にいる。しかも、彼は知り合い――。これは好都合だ。できれば話を聞いておきたい。

「あの……トウキさん。少し話を聞かせて貰ってもいいでしょうか……?」
「うん? 別にいいけど」

 トウキは快く引き受けてくれた。ミツルはお礼を言いながらも、幾つかの質問を投げかける。

「ラティオスは……どんな状態で発見されたんですか?」
「……浜辺で倒れている所を見つけたんだけど……かなり酷い状態だった。身体中傷だらけで……特に右翼から腹部にかけての大きな傷が致命的だった。出血も酷かったから、すぐポケモンセンターに運んだんだ」

 浜辺で倒れていたという事は、ラティオスはムロタウン周辺のどこかの浜辺、または海上で攻撃されたのだろうか。そして大きな傷を負い、海に落下してしまったラティオスは、幸いにもムロタウンに流れ着いた、と。ムロタウンに流れ着いたのだから、104番道路や108番水道辺りで攻撃された、と考えるのが現実的だろう。

「それじゃあ……ラティオスを発見してから、何か変わった事はありませんでしたか? 例えば、不審な人物を見た、とか……」
「……いや、特に変わった事はなかったな。強いて言うなら、ラティオス目当てに人が増えたって事くらいかな」
「そうですか……」

 ミツルは腕を組んで考える。
 トウキはこれまで不審な人物は見ていないと言った。つまり、やはりまだローブ達は現れていないと言う事だ。
 少し変じゃないだろうか。もしあのローブ達が本当にラティオスを必要としているのなら、ミツル達より先にムロタウンへと訪れてもおかしくないはずだ。ここまで噂が広がっているのだから、ローブ達の耳にもその話は入っているはず。しかし、奴らはまだ動いていなかった。
 ひょっとして、本当にユウキの読みが外れてて、実はあのラティオスはローブ達の標的ではないのでは――。いや、違う。どうも引っかかる。何か見落としている事があるような、そんな気がする。

 もし。ローブ達は、あえてまだラティオスを回収していないだけなのだとしたら? ローブ達に、まだラティオスを回収できないような都合があるのだとすれば?

「(まさか……!)」

 一つ可能性を推測したミツルが顔を上げる。その頬には一筋の汗が流れ落ちていた。
 ローブ達がラティオスを回収しない理由。ミツルが直感したそれが正しいとすれば、もう時間はあまり残されていない可能性もある。確認しなければ。

「ミツル……?」

 表情に焦りの色を浮かべたミツルを見て、ユウキがボソリと呟く。
 まだユウキにはミツルが何を思ったのか分からない。しかし、頭の回るミツルの事だ。既に答えを見つけていてもおかしくない。今はミツルに任せる事にした。

「トウキさん。発見当時、ラティオスは酷い怪我をしていた、と言いましたよね? 具体的には、怪我の具合はどの程度だったんですか?」
「怪我の具合、か……。正直、あれは普通のバトルでつけられるような怪我じゃなかったよ。並のポケモンだったなら、命を落としていたかも知れない。ラティオスは一命を取り留めたけど、完治には数日かかるくらいで……」
「完治に……数日……」

 ミツルは息を呑んだ。推測が事実に変わる瞬間。
 ミツルが目を覚ましたのは一昨日の夕暮れ。青ローブとバトルしたのはその一日前。ローブ達が本格的に動き出したのがさらにその前日。そして、現在は既に夕方。
 時間が、経ちすぎている。

「でももう大丈夫だ。ラティオスの怪我の具合もだいぶ良くなったらしいし、多分もう体力もかなり取り戻している頃で……」
「ッ! それって……!」

 ミツルの顔から血の気が引く。背筋がゾクッと寒くなる。

 その時。ポケモンセンターの治療室から、爆発音にも似た音が轟いた。

absolute ( 2014/09/27(土) 17:51 )