ポケットモンスター デスティニー 〜憎しみを砕く絆〜
第3章:壊されたつながり
3‐6:偽りの自分


「……お話を聞かせていただき、ありがとうございました。わたくし達の方でも、引き続き調査は続行します。またエンペルトが見つかったら、すぐに連絡しますわ」

 ミシェルがそう声をかけるが、ハイクは視線を逸らしたまま動く気配はない。一応、耳は傾けてくれてはいるようだが、如何せんここまで反応がないと心配になってくる。
 沈みきった様子で、雰囲気は重い。どんなに頑張っても明るい気持ちになどなる事はできず、その場にいるだけで息苦しくなってくる。国際警察と言えど、ミシェルはまだ十七歳。目の前にいる少年と、二つしか違わないのだ。国際警察の中では若く、その上 歳の割に体つきが小柄と言う事もあって彼女を一目見て国際警察だと気づく人は少ない。ほとんどゼロに等しいと言っても過言ではない。
 十七歳で国際警察の仕事を熟すのは当然難しい事であり、正直こんな雰囲気はあまり好きではない。自分がきっかけでこうなってしまったのは事実なのだが、ミシェルの立場上、真実を隠す訳にはいかなかったのだ。例えそれが、誰かの笑顔を奪う事になってしまうと分かっていたとしても。

「あの……一ついいですか?」
「……なんですの?」

 相変わらずハイクは何も言わなかったが、彼の隣に座っていたタクヤがミシェルに声をかけた。

「国際警察の中には、ハイクさんを疑っている人がいるって、そう言ってましたよね? それじゃあ、あなたはどうなんです? やっぱり、疑ってるんですか……?」
「……わたくしの立場上、その質問を完全に否定する事はできません。ですが……」

 そこでミシェルは、ひと呼吸おく。
 何も言わずにこうしていると、彼女の思想はうるさいくらいに循環していった。自分が同じ立場に立たされたらどう思うのかとか、何か気の利く言葉はかけられないのかとか。思いつくのはそんな事ばかりだ。
 ミシェルの目から見れば、ハイクがテロ組織と繋がっているなど到底思えない。けれどもいくら彼女がそう思っても、国際警察が彼をマークしている事に変わりはない。ミシェルがハイクを信じても、他の誰かが彼を疑っている事実は、何も変化しないのだ。

 だけど、こんなにはあんまりではないだろうか。彼はこれまで何度も何度も苦痛を与えられ、こんなにも疲弊して――。果てには友達に当たってしまうほどに、彼は疲れきってしまっていた。
 このまま彼を放っておいていいのか。国際警察の誰かが疑っているからと言って、見捨ててもいいのか。――違う。自分はそんな事をする為に、国際警察になったのではない。皆を守りたいから、苦しんでいる人を助けたいから、国際警察になったのではないか。

 それならば、迷う必要なんてなかったのだ。

「ハイクさん、わたくしは……絶対にあなたを助けます! あなただけじゃない……。あなたのエンペルトも、消えてしまった他のポケモン達も、必ず見つけて助け出しますわ! ですから、あなたは……」

 今更何を言ったとしても、ミシェルはハイク達の笑顔を取り戻す事はできない。そう言う事は簡単だけれど、本当に全員を助けられる保証はない。どんな言葉をかけたとしても、所詮それは綺麗事。

 でも、結局ミシェルは黙っている事などできなかった。
 綺麗事だと思われたっていい。現実的じゃない約束になったって構わない。誰かの笑顔を守りたいのに、誰かが笑顔をなくしているのが見えて――。それでも何もしないなんて事、できるはずがない。

 他の国際警察がなんと言おうとも、自分はハイクを信じる。ミシェルはそう、心に誓っていた。



―――――



 太陽は西に傾き始めていた。
 赤オレンジ色の日光がちょうど視野に入り、思わず腕で陰を作ってしまう。空には雲が少ない為、日光は直接降り注ぐ。暮れ始めた太陽とは言え、眩しい事には変わりなかった。

 117番道路。シダケタウンとキンセツシティを繋ぐ道路がそう呼ばれている。広がる花畑や心地よい風、そしておいしい空気と言った自然豊かでのどかな道路として知られている。116番道路などと比べるとかなり整備されており、歩いてキンセツシティに向かうのにも特に不自由のない作りになっていた。

「ハイクさん! ジバコイル、そっちに行きました! 応戦を!」

 ミシェルと別れてから、ハイク達はキンセツシティに向けて出発した。
 やはりシダケタウンに留まっているよりも、早めにキンセツシティに向かった方がいい。ローブ達は待ってくれない。また奴らの攻撃が始まる前に、何とか対策を練らなければならない。まずはローブ達が現れそうなポケモンジムに向かう事が先決だ。

「……ヴォル、“ひのこ”だ」

 あれからレインとは一言も話していない。
 シダケタウンを出る時も、途中でお昼を食べる時も。ただ無言の時間だけが過ぎてゆき、二人は目を合わせようともしない。

『う、うわっ……! あんまり、効いてない……!?』

 お互いがお互いを避けているようで、気まずい雰囲気がどんどん強くなって――。話しかけようと思っても、その雰囲気のせいで尻込みしてしまう。

「……ッ! スライス! “こうそくいどう”で割り込むんだ!」

 分かっている。レインに悪気はなかった。レインはハイクを助けようとしてくれていた。それなのに――自分はレインを傷つけてしまったんだと。感情を抑える事ができず、強く当たってしまった自分が悪いんだと。

『……お前、“えんまく”は使えるか?』
『へっ……あ、スライスさん……!? どうして、前に……』
『早く答えろ。使えるのか、使えないのか』
『え……は、はい、多分……使えるかと……』

 自分はあまりにも甘すぎた。生半可な覚悟で、こうして旅に出ていたのかも知れない。最悪の状況を考えるのを逃げて、自分に嘘をつき続けて――。カナズミシティでジムのポケモンがおかしくなったのを目の当たりにした時、消えた自分のポケモン達も同じような事になってるかも知れないと想定できたはずなのに。考えらる最も大きな可能性だったはずなのに。それでも逃げ続けていた。

 あぁ、そうか。紅ローブが言っていた事って、そう言う――。

『使うんだ、今すぐ。そうしたらあとは私とタクヤに任せろ』
『は、はいっ! それじゃ“えんまく”、いきます!』

 ぼふっ――。

 そんな音を立てて、ヴォルの背中から黒い煙が放たれた。その煙は風に乗ってどんどん広がってゆき、やがて何も見えなくなる程に周囲を覆い尽くす。
 ハイクが指示した訳ではない。タクヤのハッサム、スライスがヴォルに提案した技だった。

 円盤状の身体に、アンテナのような突起物。さらにU次型の磁石ようなものが身体に三つ付いており、その身体全体はふわふわと浮遊している。
 スライスを倒すのは後回しにすべきだと、このポケモン、ジバコイルは本能的に察知したのだろうか。標的をヴォルに変えて突っ込んできたものの、“こうそくいどう”でスライスに周りこまれ、あまり意味がなかった。そして“えんまく”を使われて視界を奪われた今、慌てたジバコイルは攻撃できずにオロオロとしている。

 スライスはかなりの実力者だ。しかし電気と鋼タイプであるジバコイル相手では、決定打となる技がない。それならば、短時間で何度も攻撃を加えるか、あるいはもっと大きな威力が期待できる攻撃で一気に押し切ればいい。

「うわぁ、ナイスタイミングですよ! 流石ハイクさん! ……スライス!」

 ポケモンの声が聞こえないだろうタクヤは、てっきりこの“えんまく”はハイクが指示した技だと思い込んでいるようだ。
 それはスライスに言うべきなんだよな、とハイクは思ったが、今はジバコイルを止める事が先決だ。ここは余計な事は言わない事にする。

「“つるぎのまい”! 限界まで攻撃力を高めるんだ!」

 “えんまく”でよく見えないが、タクヤがそう指示したのは聞こえた。
 “つるぎのまい”と呼ばれる技は戦いの舞いを激しく踊って気合いを高め、攻撃力を大きく上昇させる技である。なるほど、“えんまく”で視界を奪って時間を稼ぎ、その隙に“つるぎのまい”で攻撃力を高めようと言う事か。これならば、不足していたスライスの攻撃力を補う事ができる。次の一撃で勝負を決めるつもりだ。

「そこっ! “シザークロス”!」

 “えんまく”が晴れた瞬間、スライスは動いた。先ほど使った“こうそくいどう”の効果がまだ残っていた為、素早く動いてジバコイルに急接近できる。
 スライスは両腕のハサミを振り上げ、×字を描くようにジバコイルを斬りつけた。金属と金属がぶつかり、片一方が砕けるような音が響く。スライスの“シザークロス”は鋼のにも大きな傷をつける程の威力を発揮し、その結果ジバコイルを戦闘不能にまで追い込む事に成功した。



―――――



 117番道路も、結局何も変わらなかった。
 シダケタウンを出発してから、ハイク達は殆んどポケモンに襲われる事なく進めていた。数ヶ月前に、リーグ出場を目指して旅をしていたあの頃のように、117番道路はのどかで爽やかな道のままだ。カナズミシティから離れれば離れる程に、凶暴化したポケモンが少なくなってきている。そんな幻想を抱いていた。

 だけれど、結局こうなった。本来この道路で見かける事のないはずのポケモン、ジバコイル。そのポケモンが襲いかかってきたのだ。
 何とか撃退する事に成功はしたものの、気分はさらに沈んでしまう。もう既に、どこの道路も水道も、ローブ達の手に落ちてしまっていると言う事なのか。ひょっとしたら、もう手遅れなのではないのだろうか。研究所から消えたポケモン達はみんな、もう――。

「俺は……どうすれば……」

 116番道路の一角。とある建物の横に設けられた木製の柵に手をついていたハイクが、そう呟いた。
 ハイクの視線の先にあるのは、建物に庭のような空間だった。かなり広い敷地に木々や岩がいくつも置かれており、いかにも何かしらのポケモンが生息してそうな作りだ。その雰囲気通りにそこには何匹かのポケモンの姿が確認でき、まるで小さなポケモンの村のようだった。

 『育て屋』、と言ものを聞いたことがあるだろうか。
 トレーナーだけに留まらないが、ポケモンを連れている人々の中には様々な事情や都合などで、ポケモンを連れていけなくなる人もいるだろう。しかし、ポケモンだけを置いて行くのも心配――。そんな人達の為に一時的にポケモンを預かってくれる施設、及びそれを運営する人々。それらが、『育て屋』と呼ばれているのだ。

 116番道路には育て屋が存在する。どちらかと言うとキンセツシティ寄りの場所にその建物が建てられており、毎日多くの人がここを利用していると言う。しかし今日ばかりは人も少なく、少し寂しいくらいの静けさが辺りを支配していた。ハイクの眺める大きな庭にいるポケモン達は、おそらく日をまたいで預けられているポケモン達だろう。ホウエン地方のあちこちで異変が起きているせいで、迎えに来る事ができないのだろうか。

「おや、ここにおったのか」

 ハイクがボンヤリとしていると、一人の老人が声をかけてきた。
 穏やかそうなお爺さんであり、その口調もどこか温かい。高齢のようだが若々しく、身なりもキッチリとした老紳士だった。
 ハイクはチラリとその人に顔を向けると、申し訳なさそうに視線を逸らしてしまう。柵を握る手にも力が入り、表情も苦いものへと変わる。

 この老人こそ、育て屋を営業している人物の一人だった。一流のポケモンブリーダーであり、彼を頼ってこの育て屋にわざわざ訪れる人も多いらしい。ホウエン地方を代表するポケモンブリーダーだと言っても過言ではないほど、凄腕で有名な老人だった。

 キンセツシティに到着する前、ハイク達は少しの間だけ育て屋で休憩させてもらう事になった。先ほどのジバコイルとのバトルでヴォル達はかなり消耗してしまい、その為に休息が必要だとタクヤが提案したのだ。親切にも育て屋さんは快く受け入れてくれ、こうして少しの間だけお世話になる事になった。
 しかし、タクヤとレインが室内にいる中、ハイクだけがこうして外に出てきてしまっていた。
 何となく、気まずい。レインにあんな事を言ってしまった為か、彼女に声をかけずらかった。悪いのは自分だ。謝るべきだろう。そう何度も自分に言い聞かせるのだけれども、どうも一歩踏み出せない。

 ついには一度も声をかける事なく、ハイクは出てきてしまったのだ。踏み出すのが怖くて、逃げ出した。
 だけれど、こんな卑怯な自分は許せない。許せる訳がない。すべき事は分かっているのに、どうしてそれを実行できないんだ。

 何度も自分を責めながらも、ハイクはただ一人思い悩んでいた。

「どうかしたのかの? 元気がないようじゃが……」

 顔を背けたハイクを見て、育て屋さんは心配そうに声をかけてくれた。
 休ませてもらっている以上、おそらく育て屋さんはハイクとレインの間の重苦しい雰囲気に気づいていたのだろう。一人で外に出たハイクを追って、こうして話を聞いてくれようとしていた。

 しかし――。

「何でも……ないです」

 ハイクからしても、育て屋さんに余計な心配はかけたくなかった。
 これはハイクの問題であり、誰かにすがるようなものではないのだ。しかしいつまでもレインとのこんな距離感か続いていたら、いずれは誰かに迷惑をかけてしまっていただろう。

「あんまり一人で背負い込むのも良くないぞい。ワシで良ければ相談に乗るが……」
「……いえ、本当に大丈夫です。すいません、心配かけて……」
「それならいいんじゃが……」

 気をつかってくれている育て屋さんを見て、ハイクは無理矢理 笑顔を作ってみせた。
 そんなハイクの笑顔を見て、育て屋さんはこれ以上追求しなかった。何となく、ハイクの気持ちを察したのだろうか。

 その代わり、育て屋さんはまた別の話題を持ちかけた。

「……ところで、以前君に渡したタマゴの子、元気にしてるかの?」
「……っ!」

 育て屋さんからしてみれば、ハイクに少しでも気分を変えてもらいたかったのだろう。話題をそらして、少しでも気を楽にしてほしかったのだろう。
 しかし、育て屋さんのそれは、ハイクが最も恐れていた質問。ハイクは言葉が詰まってしまった。
 どう答えればいいか、これまで必死に考え続けていた。だが、いくら考えても思いつくのは一つの答えばかり。それが本当に最善の答えなのか、よく分からない。けれどもハイクは、そうするしかなかった。

「あいつは……元気ですよ」

 嘘をついた。また自分は、嘘をついた。自分が偽りにどんどん飲み込まれていくような気がして、怖かった。だけれど、真実なんて言えるはずがなかった。考えたくもなかった。

 ハイクは以前、育て屋さんから身寄りのないポケモンのタマゴを譲り受けた事がある。あれは、リーグ出場を目指して旅をしていた頃だった。
 初めてポケモンのタマゴを育てる事になったので、どんなポケモンが生まれてくるのかワクワクしていたのを今でも鮮明に覚えている。旅を続け、その途中でついにタマゴが孵った時のあの感動は、忘れられる訳がなかった。
 タマゴから生まれてきたポケモンは、すぐにハイクに懐いてくれた。そのまま一緒に旅をして、バトルをして――。あのポケモンとの出会いがなければ、ハイクはチャンピオンになれてなかったかも知れない。そのポケモンはハイクにとって、掛け替えのない大切な存在だった。

 しかし、あの時。研究所に預けたはずのそのポケモンは、姿を消した。他の五匹のポケモンと共に。
 元気なのか、なんて分からない。いや、エンペルトと同じように、ローブ達の手に堕ちているのだとすれば――。

「ほう、そうじゃったか。それは良かった」

 育て屋さんに、その嘘は見抜かれていなかったのだろうか。それを確認する勇気は、ハイクにはない。
 無意識の内にさりげなく顔を背け、表情を読み取られないようにしてしまう。ちょっとでもあのポケモンの事を考えると、すぐに表情に出てしまいそうだった。

 ハイクは何とか注意を逸らそうとする。育て屋のポケモン達を眺めて、気を晴らそうとしてみた。
 チラリと視線を下に向けると、そこには一匹のポケモンがいた。四足歩行であり、クリーム色と焦げ茶色の縞模様が特徴的な小さなポケモンだ。ミシロタウン周辺にも生息しているポケモンなので、ハイクにとっても馴染み深い。

 そのポケモンは、ジグザグマと言う――

「えっ……?」

 何かが、ハイクの目に入った。ジグザグマが視界に入ったその瞬間、何か妙なものが見えてしまった。
 ボンヤリと、青白い何かがジグザグマに纏わりついているように見える。炎のように揺らめいているようにも見えるが、炎とはまた違った雰囲気に思える。見た事のないもののはずなのに、前にもどこかで感じた事があるような、そんな気がした。

「(なんだ……!?)」

 見えないはずのものが見えてしまったような気がして、ハイクは慌てて顔を上げる。しかしその次の瞬間、ハイクは言葉を失う事となる。

 ジグザグマだけじゃない。育て屋にいるポケモン全てに、同じような光が見えるのだ。ボンヤリと、まるでライトアップされた町並のように、無数の光が視覚できる。
 一体、何が起きているのだろうか。なぜ急にこんな、青白い光が――。

 そこでハイクは、一つだけ直感した。初めての事のはずなのに、以前にも経験した事があるような、デジャヴのような感覚。その正体。
 あの青白い光は、ローブ達といたポケモンに纏わりついていた、ドス黒い何かに似てて――。

「うっ……!?」

 グラリと目眩を感じて、ハイクは目頭を抑えながらも数歩後ずさりする。反射的に踏ん張ったお陰で倒れるような事はなかったが、頭を揺さぶられた時のような気持ち悪さが残ってしまう。嫌な感じだった。

「ハイク君……!? 大丈夫かいの……?」

 フラフラとしたハイクを見て、育て屋さんも焦ったように声を上げた。幸いにも目眩はすぐ治り、ハイクは恐る恐る目を開ける。チラリと横に目を向けると、心配そうな表情の育て屋さんの顔が見えた。

「い、いえ……。ちょっと、目にゴミが入って……」

 反射的に誤魔化して、ハイクはジグザグマをもう一度見てみる。つぶらな瞳をこちらに向け、不思議そうに首を傾げているジグザグマだったが、さっきのような青白い光はもう見当たらなかった。
 ゴシゴシと目を擦ってもう一度見ようとしてみたりしたが、結果は同じ。他のポケモン達を見てみても、さっきの現象が嘘のように平穏を保っていた。

「(なんだったんだ……? 今の……)」

 様子を見る限り、育て屋さんにはあの光は見えなかったようだ。おそらく、ハイクだけが感じ取れる妙な現象――。
 ひょっとして、ハイクの力と何か関係があるのだろうか。思えばポケモンの声が聞こえるようになってから、ポケモン達からそれとは違った何かが感じられていたような――。しかし、あんなものが見えるなんて事、なかったはずだ。

 あれは、一体何だったんだ?
 ポケモンの魂? いや、それは違う気がする。それならば、心のようなもの?
 分からない。まるで見当つかない。そもそも、急にあんなものが見えるようになってしまった原因は――。

 考えれば考える程に、不安が強くなってくる。自分が自分でなくなってきているような気がして、あまり良い気分にはなれなかった。

absolute ( 2014/06/28(土) 11:05 )