七光の軌跡 - 其の弐 人齧り編
#4 燃え上がる
 シャッ。
 埃にまみれたボロい紺のカーテンを開けると、黄色と白が混ざった様な色の陽光が部屋全体を照らす。まだ太陽が昇ったばかりで日が傾いているせいか、容赦なく瞼、そして瞳に直射日光が当たる。とても眩しくて目が覚めた。次に壊れかけの小さな窓を開け、換気を行う。開けた途端に窓は掃除機みたいにカーテンを吸う。カーテンはバサバサと羽ばたくように音を立てる。その代わりに外の冷たい新鮮な空気が飛び込んでくるのを感じた。
 その風のパンチを喰らったみたいに顔を横に回す。ランプの灯りとはわけが違う。部屋全体が発光している様に明るかった。枕となった一冊一冊の本の色や大きさがくっきり見える。本に囲まれ、赤くて暖かそうなマフラーに包まれて体を丸めているポケモン、イーブイ。まだお眠のようだ。穏やかな呼吸に、優しい寝顔。まるで天使(イーブイ)や妖精のよう。それは決して邪魔を許すことなど出来ない。見ると心和む寝姿だった。手元のポケッチ、デジタル時計は『6:34』と表記しているが、今は別にこれといって急ぐ必要はない。それに昨夜の事でどっと疲れたはず。今回ばかり、少しくらいの寝坊も目を瞑ってやろう。
 暫くして僕は窓から離れ、寝ているイーブイの奥に位置する、壊れかけの扉に向かって足を動かす。今に押せば倒れそうという不安がよぎる。だが、昨夜と同様に体当たりを幾度となくおみまいするが、倒れる気配も壊れる音もしない。不安を裏切ったのだ。もしかして実はトリックアートで、本当は壁なんじゃないか?
 いや、正真正銘の扉である。この扉以外に出入り出来る所は、さっき開けた窓しか存在していない。無論、人間の体に合わない小さな窓だ。だが現にこの部屋に入っている。いや、閉じ込められているとう方が正当か。昨夜もこの扉から入ってきたわけだ。今は押しても引いても変わりはないが。そんなに開けられないのなら、ポケモンの技で何とか破壊出来るんじゃないか?
 出来たらとっくにやってることぐらい察してくれ。別に破壊出来ないわけではないが、ただ出せないだけなのだ。ボールのスイッチを何度も押しても何も出てこない。この中に住居しているソウルが出てこない。だがこんな事は別に不思議でもない。外側からの指示だけでなく、中にいるポケが意志をもって出入りすることもあるのだ。それにしてもしぶとい奴だなぁ。いくら幽霊嫌いだからって、朝になっても出たくないはわがまま過ぎる。そう説教したい心境だ。
「ぅん。ふぁあ、ハクトさん。おはようございます」
 背中に向かって聞こえてくる張りがなく眠気を含む少女の声。
声がする方を向けば、天使(イーブイ)が起きていたのだ。前足で器用に両目を擦る。その姿は眠っていた時よりも、一層眠気を漂わせている。見ている僕もあくびが出そうであった。
「あら、おはよう! 結構グッスリ寝ていたからすぐ起きないかと思ったよ。昨日は夜遅く付き合わせてくれちゃってゴメンな。まだ眠たいでしょ? どうせならお昼ぐらいまでお休みになってもいいのに」
 そう、彼女にも扉の開放の手助けをしてもらったのだ。扉に何か細工が仕掛けているか、押すか引くかどちらだったかの調査。一人ずつタックル、二人一緒にタックル、イーブイの“てだすけ”による僕のタックルでの強行破壊の試み。どれを試してみても、さっき述べた結論に至ったというわけだ。だが、骨折り損で終わることなどなかった。昨夜の調査から新事実を発見したのだ。
 それは、『人間にポケモンの技の効果は、無い』だ。改めて思うと、非常に落ち込む。その徒労に彼女を巻き込ませたのだ。
「大丈夫ですよ。私、こう見えて夜には強い方ですし。必死になってドアとにらめっこ状態になってまで頑張って下さったハクトさんの方が尊敬してます。そう簡単に諦めない根性のある方には私、足下にも及ばないし。せめて、ここにある読める限りのもの読んで、少しは知識を入れようかなと。今後、足を引っ張られないよう、皆さんのお役に立ちたいと思って」
 そう言いながら、枕となった本の束を目にするイーブイ。イーブイの手元には既に、1000ページを超える厚さの辞書みたいな書物が開かれていた。
「へぇ、イーブイは字も読めるの? すごいね!」
 そう感心した僕はイーブイが読んでいる書物に集まる。はにかんだ彼女は書物に顔を俯く。
「えぇ、父が人間文学を学んでいた影響から読むようになったんです。けれど、まだまだですよ。未だに『れ』と『わ』と『ね』の区別がはっきりしないんです。自分では、どれも似てると思っているのですが」
 彼女の人生そのものに、僕は度肝を抜いた。この子の達者な喋り方はそこからだと感じた。いやいやいや。それだけ読めればもう十分ですよ。もしかして、漢字やアルファベットも読めたりして。
 『父が人間文学を学んでいた』? そんなものがあるんだ。イーブイのお父さんは相当な勉強家だと僕は確信する。彼女が読んでいるそれを覗けば、僕はめまいを覚えたのだった。一つのページにのる活字の量が、端から端まで最大限に活用されていたのだ。それをイーブイはまじまじと読んでいる。父譲りの文学少女だ。
「そうか。お父さんは偉いなぁ。自分の愛娘にまで影響するほど勤勉してたんだろうなぁ。それに並んで一緒に学ぼうとしている娘さんも、もっと偉いよなぁ。勉学することで、一つの世界を異なる視点から見る能力や相手の心理状態を理解出来たりするかもしれないし。もしかして、ゆくゆくは博士の称号とか貰うようになって、ソウルを見下すようになるんじゃないのかなぁ」
「ソウルさんの知識は計り知れません。たとえ私がソウルさんと同じ量の知識を得たとしても、それを取り出す時間は圧倒的に遅いと思います。あの方とは張り合えませんよ」
「そう、その、決して自分をおごらないという心掛けを持たせている。それこそまさに良教育の証! 父は偉大だ。どれだけの愛情を注いだのか、胸にしみてくるくらい分かるっ。顔立ちも良く、優しく、勉強や運動が出来る。それは完璧な女性像に近いもの。そう、まさにこの子は、『才色兼備』と呼ぶに相応しい! いや、この子のための言葉なのだぁ!」
 ああ、いつの間にか、こんなにも熱演してしまった。なんだか目頭も熱くなってきたぜっ。お父っつぁん。あんたは幸せ者だよぉ!
 朝だとはいえ、まだまだ猛暑の夏。朝からテンションがいきなり高く張り詰めてしまった。もうイジメはこのくらいにしよう。当の本人は、良く熟れたマトマの実みたいに顔が紅潮している。
「ごめん、調子に乗り過ぎた。忘れていいよ。それにしても、本当に偉いよね。あぁ、やっぱり漢字も読めるんだ。スゲェ! ていうかこの本、難しい言い回しがたくさんあって辛くない? 僕こういうの苦手なんだよねぇ。あれ、今更聞くのも変だと思うけど、お父さんはやっぱりポケモン?」
 イーブイは「えぇ」と縦に頭を揺らす。僕は更に感心した。
「もちろん、両親ともポケモンです。私の故郷はここから北の山脈近くにあります。そこは緑豊かで、争い知らずな平和があって、人とポケモンが交流して暮らしている私の大好きな故郷です。そこの町には古代遺跡と言われる古い建築物があって、父はそれを私が生まれる前から探検したそうです。私も何度か一緒に連れて行ってくれたこともありました。そして後に、ハクトさんみたいな、ポケモンと人間の歴史や関わりについて独学で調べるようになりました。人間の言語や生態に、思想などいろいろと学んでいました。それを父は私にいつも喜んで話してくれます。私も同じように学びたくなって、文字を練習しようとしたのですが。どうしても、問題の『れ』と『わ』と『ね』を間違ってしまうんです。読みも書きも両方ダメでした。そしたら父は、そんな私にこう言ってくれました」

 『れ』と『わ』と『ね』の書き順はみんなほぼ同じだけど、
最後の最後ではねたり、回したりすると全く別の文字になってしまう。
我々の人生も文字と同じ。全く同じの人生を歩む者は二人もいない。
それらは長い歳月をかけて出来た一つの作品に過ぎない。

 思い通りになれず、大きく道がそれてしまった。失敗の『れ』。
見事に綺麗な湾曲を描き、些細なずれもない。成功の『わ』。
成功でも失敗でもない。苦労が報われない、骨折り損の振り出し。輪廻の『ね』。

 人生や歴史にはこういった「選択」で決まる。
それは一回につき最低三つ。それが幾度も飛び出してくる。
最初で三分の一、次に九分の一、その次に二十七分の一、更に八十一分の一。
数々の「選択」を選び抜く末に、一つの物語が出来る。
そう、「選択」が全てを作っている。
今いるお前もきっと素晴らしい物語となるだろう。


「つまり、失敗を恐れず、何度も挑戦するという闘志を燃やせ。そうすれば必ず努力が報われ、『成功』を選択出来るようになると父は言いたかった訳です。ちなみに、この論を『れわねノ選択』と父は呼んでました」
 狐につままれたように、僕は呆然とイーブイの大きな瞳を見つめる。だが、僅かにある意識はこう叫んだのだ。彼女のお父さんはもはや、哲学者だと。
「だけど、父の勉強熱心には頭を抱えるんです。朝から遺跡の探索だとかいって、丸二日閉じこもったこともありましたよ」
 勉学にどんだけ熱いの? 君のお父さん。

 バラバラバラ。

 途端に、天井から何かの機械音と振動が部屋を伝う。地震にしては不自然。空から降ってきたかのようだ。再び、あの窓に顔を突っ込む。果てしなく高い、蒼い空を見上げる。表現のしにくい角ばった影が空を支配していた。それが何者かは、人間である以上、すぐに把握できる。ヘリコプターといわれる飛行物体だ。その物体の胴体の横には、大きく『G』という黄色い文字が表記されている。その文字を見た瞬間、昨日の記憶が巻き戻される。
 『ギンガ団』……『ヤツら』だ。懲りないなぁ、あの宇宙人。イーブイの次に何を企んでいるのか。今度こそ、暴いてみせる。
「ハクトさん。あれって」
 ようやくあの飛行物体の実態を知ったイーブイ。本当は彼女を思って、関わらせないようにしたかったが。
「イーブイ。あいつ等に恩返しに行くぞ。土産物をいっぱい用意して、そんでもって最後に、お前自身であいつ等に玉手箱を直々に渡してやれ!」
「ハイ……」
 そう、あの飛行機は、彼女の復讐劇を暗示させるものであるのだ。さあ、こうしちゃいられない。すぐに扉の破壊に向かう。僕は頭を引っ込め、そのままの助走で体当たりを仕掛ける。目の前まで来て、更にはジャンプ。渾身のタックルを浴びせる。
 打ち砕くはずだった。なのに、なんだ。この呆気なさ。まるで衝立(ついたて)に向かって身を投げたみたいだ。やはり腐った扉はバラバラにされる運命であった。これを僕は一晩中、格闘していたのだと? 信じ難い。扉にかかった魔法や呪いが解けたように、容易く突破した。それから、僕はボロイ木製の扉を打ち破り、そのままカビの生えた床に叩きつけられる。さほど痛くはなかった。痛みを感じる場合でもなかったから。
 二階奥へ向かう、五つのドアが現れた。僕はとっさに右奥から準々に扉を乱暴に開ける。真ん中の部屋だけ、他の部屋より、空間が広く、二つもベットがあり、テレビもついている。二人はあのような寝床で一夜を過ごしたのだろうか。ドアノブを握る手が止まったと同時に、心なしか、羨ましく思う。隅々に部屋を見渡し、急いで扉を閉める。続けて左隣のドアノブを握る。最後の部屋だ。
 今度こそ、『ヤツら』に一泡吹かせるのだ。ただ能天気に見えるアイツも、内には悔しい思いを抱いているはず。この千載一遇を無駄にする訳にはいかない。固唾を一つ飲み込み、ドアノブを捻る。ガチャリと開けると共に、ニオイが飛び出すかのように僕の体を包む。すると、ベットらしき布の塊の上に、二体の影が横たわっていることに気づく。小型と中型。どれも僕が探した、二人に違いない。二つの影に駆け寄ろう。と思い、一歩足を前に踏み出す。
 遂に二つの影の存在を確認した。二匹のポケモン。赤と緑。炎の尻尾と若葉の尻尾。ヒコザルとリーフィア。仲良く寄り添って眠っているこの二人こそ、紛れもない、僕が求めていたものだ。こいつらの寝顔もイーブイに勝るとも劣らない、居心地の良さそうな、愛くるしいものだった。もう少し寝かせようか。もちろん、そんな無駄を作る間もない。僕は躊躇を忘れ、頻りに二人が寝ているベットを叩いた。
「おい、起きな。特にセキマル! 腹出してると風邪ひくぞ。雷様が鳴ってると、いつでもヘソを取られるぞ。いや。お前にとって、ヘソよりも奪われたくないものがあったろう。命とか名誉だとか、そんな重いもの以外でな。昨日、お前泣いたろ。なんで泣いたか理由は聞かない。聞く必要もない。僕はお前のおやだからな。分かって当然。知って必然だ。とうとうお前も思春期に入ったのか? だけど、黙ったままなんて、バカバカしくてむしゃくしゃしないか? 悔しいだろ、『ヤツら』のマトマ頭に負けて。イーブイのこと心配だったろ。『ポチャケーン』を見る余裕がなかったくせに、変に見栄張って。そんなんじゃ、自身の感情や意志の歯車がかみ合わず、狂って、本当の気持ちが分からなくなっちまうぞ。もどかしいってのは僕も味わったこともある。だがはっきり言うべき時に、言い訳を盾にする自由など、僕は与えさせない。それが、僕達が仲間以上の関係である限り。さぁ、もう一度、一言でもいいから、答えろ。お前にとって、絶対に奪われたくないものは、何だ? 僕の予想だと、外へ出たところに模範解答があるのだが」
 いつの間にか、ベットを叩く手は疲れたように、静かに止まった。辺りは物一つ音は立てていなかった。
 ウヒヒヒッと不気味が入れ混じったセキマルの笑い声以外は。
 むくりと体を起こすセキマル。まだ睡たそうな半開きの目で僕を見つめる。表情もそうだが、その奥の瞳からも、鼻で笑っているようにも見える。
「はは、何だって? オイラにとっての? 奪われたくないもの、ねぇ。計算問題よりも簡単じゃね〜か。それとさっきから聞いてりゃぁ、笑える話ばっかしてんじゃね〜ぞ。分かって当然? 知って必然だぁ? くくく、わっけかんねぇし。それに、オイラ、ハクトのおかげで朝からスッゲー、ムカつくんだけど。思ってもいねぇ事をベラベラ喋りやがって。ハクトってさ、なんでそう色々とからんだり、首突っ込んだりするのさ。別に、あのイーブイを放って置いたって、自分で何とかなるんじゃない? その方がアイツも楽なんじゃねぇの? オイラには、半ば強引に連れていくようにしか見えなかったし。もう少しは、アイツの発言や意見を尊重して、耳を傾けるべきなんじゃぁねぇの?」
「そういうお前もなかなかの思いやりを持ってんじゃん。なんだかんだ言って、大人になったじゃない」
 こう褒めた途端に、セキマルはすぐ俯く。ほら、それが証拠ですよ。

「『努力』だ……」

 はい? 今何て、おっしゃいましたか。
「さっきハクトが言った質問の答えだ。旅に出る前、周りはスッゲーうるさかったな。チビがパーティーに入れるワケがない、とか。どれをとってもお父さんに似てるね、とか。み〜んな、偉そうなことばっか言いやがってよぉ。捕まってから一度もメンバーに入ったこともないくせに。一日中、オイラ達を監視してるわけでもないくせに。み〜んな口だけの脳なしで、スッゲー腹立つ。そんなやつらに驚かせるぐらい強くなって、見返そうと思った。だから、オイラは昼夜を問わず、ずっと特訓してきた。強くなるためにも、チビだからって馬鹿にされないためにも、そして何より、親父を超えるためにも特訓し続けた。そして旅に出るとなったら、みんなのあの驚きようはなかったぜ。とんだアホ面だったぜぇ。ウヒヒッ。だけど、そんなんでオイラの強さが完全に認められたってワケにはいかなかったんだよな。旅先でも同じようなやつらもいる。けど、いざ闘うとなれば、反応も同じ。なんたって、オイラは『努力』を惜しまずに特訓したからだ。こんなにも見返す力があるのは、ずっと『努力』したおかげだと思う。その『努力』があってこそ、オイラがあるんだ。だから、今までの『努力』を失えば、オイラじゃなくなる。親父と一緒にされちまう。そんなのは御免だ。そんだったら死ぬ、地獄を選ぶ。オイラの実力、全てとなる『努力』は絶対に、誰にも渡せない! 見せてやる、オイラの強さを。そして掴んでやるさ、親父を超す完全なる力を!」
 目覚める活気。蘇る闘志。目的をはっきりしたところで、僕はドアノブ捻る。
「じゃぁ見せておくれよ。『ヤツら』にさ。お前の『真』を」
 扉を手前に引き、廊下を走る。この館の入り口まで。
「よし! そうとなったら、ジム戦のシュミレーションといきますか〜。しっかり掴まれよ、リーフィア!」
「ぐぅ、スカァ……むにゃっ?」
 どうやらあの猿は、若葉を凧にして追ってきてるのだろう。階段を降り終えたら入口はすぐそこ。全開であった。外には既にイーブイが待機していた。イーブイは駆け足の音に気づき、こちらを振り向く。
「あ、ハクトさん。さっきまで森の中に隠れたのですが、遂に動き出しました」
 その茶色の腕は真っ青な空に浮かぶ、あの飛行物体を指す。だが、先ほど見かけた時と比べて大きく見える。それが、胴体にさっき見かけなかった鉄格子が接着したからであろう。その鉄格子の中身までは、まだはっきりしない。荒い息遣いの中、リーフィア。彼女は声を張り詰めて呟く。

「ニド君……!」

 その単語が出てきた途端に、フォーカスが定まった。
 アイツだったのだ。昨日セキマルに散々遊ばれた、あのニドキングだ。彼女の言動にも気になった。あの時は、見知らぬ変態と罵倒した。だが今度は、別人が来たかのような態度であった。まるで、友人であるあいつの愛称を呼んだかのよう。しかし別人ではない。間違いなくあいつだ。根拠なんて特徴はないけど、確かなんだ。
「おいおい、何捕まってんだよ。アイツは。思った以上にショボくねぇか?」
 セキマルも同一だと確信している。
「これでようやく分かりましたね。あの人たちは単なるポケモンの密猟グループですね」
 イーブイはそう分かりきったように言った。
 いや。僕からすれば、『ヤツら』は密猟だけを求めてるわけではない。宇宙エネルギー。それが目当て。あのニドキングにもあるのだろうか。『ヤツら』の計画のカギが。
「おたおたしてらんねぇ。皆、そろそろ真上に来るぞ。各自、攻撃態勢に入れ。カケラ技の使用制限も意識しなくてもよし」
「いやっふ〜! そんじゃ、お披露目といこうか。まず一番にオイラが……」

 ボォッ。

 大きな発火の音だ。
しかしセキマルが発火しているわけじゃない。ありえないところから発火している。
「え……リーフィア?」
 彼女はなぜか熱気に覆われている。

■筆者メッセージ
この後、実はリーフィアは「カケラ技」を使用します。まずは本編を読み終えてから、「世界観設定」の「カケラ技」をご覧下さい。
ジョヴァン2 ( 2013/09/04(水) 10:39 )