第8話 レンジャーとして
イッシュ地方 セッカシティ レンジャーユニオン
「お、オレがですか!?」
少年は目を丸くして言う。
「ああ、お前は今日から…トップレンジャーだ。スタイラーを改造してくるから、ちょっと待ってろよ」
10分後。
「なぜです?まだ、ミッションを成功させてないのに…」
困惑の表情を浮かべ、訊く少年。自分の突然な昇格に戸惑っているようである。
「レンジャー協会から連絡を受けてな。なんでも、ポケモンリーグカントー本部副部長が『セッカシティレンジャーユニオン所属のミナトをトップレンジャーに昇格させたのち、あるミッションに参加させてほしい』って言ったそうだ」
男は、さらに言葉を紡ぐ。ミッションはある組織を壊滅することである、と。
「ある組織、ですか」
「ああ。ミナト、ロケット団って知ってるよな?」
ミナトと呼ばれた少年はこくりと頷く。知らないわけがない、とミナトは思う。ロケット団は数年前にカントー地方で大暴れした集団だったはずだ。確か、首領の名前はサカキ。レッドっていうチャンピオンが壊滅させたと聞いている。この組織の壊滅でアクア団やマグマ団、ギンガ団の動きが活発になり始めたような気がする。最近では衰えてきてるけど。
「そのロケット団が…復活したらしい。首領にサカキをおいてな」
「ま、マジかよ…」
「ああ。マジだ。ここからが重要なんだが、ロケット団が復活し始めたのをきっかけに、大胆に動く組織があるらしい」
その組織を潰せ、ということなのだろうか。ミナトは男の言葉を待つ。
「それが、プラズマ団。今回のミッションにある…組織だ」
「プラズマ団?」
「プラズマ団の活動理念はポケモンの解放。ポケモンの未知の力を人間がこき使っていいのか、なんて問いかけているようだ。表では、そういう講演をどこでもして、トレーナーたちを悩ませているらしい。裏では、とんでもない悪事をしているようだがな…」
そういえば、とミナトは言葉を続ける。
「オレも聞いたことあります。レンジャーだし、関係ないと思っていましたけど…そういえば、こいつらもオレに従ってついてきてくれてるんですよね…。キャプチャの時に手伝ってもらってるのもこき使うってことなのかな…」
ミナトは2匹のポケモンたちに目を落とす。プラスルとマイナンは不思議そうにミナトを見つめ、にこにこしている。そんな2匹を見ていると、胸が痛かった。
「違う。本当に愛があるならポケモンたちにも伝わって、お前に対しての愛もあるはずだ。確かに道具として見ている奴だったらこき使っているし、解放すべきだろうな。プラズマ団はトレーナーの良心に付け込んで悪事をしている。精神を強靭にして取り組めよ、ミナト。オレもサポートするから」
「はい!」
それは、とても力強かったという。