第6話 いん・ざ・りにあ
「こいつを殺したくなかったらさっさとジムバッジを渡しな!」
只今、私ホノカは人質にされています。
犯人は、壊滅したはずのロケット団。
私の首元にはストライクの刃。
そして逃げ場のないリニアの中。
ピンチです。
え、どうしてこうなったかと?それはですね、時間をぐるぐる〜っと巻き戻して…。
午前12時30分。
リニアの中で、私たちは座っていました。私たちがいる車両の中には、私、ナオキ、カイリ、赤い髪の女の子、スーツを着た男の人と白衣を着た女の人、紙袋を持ったおばさんが3人、ハゲたおっさん、若々しいサラリーマンが3人、トレーナーズスクール3年生くらいの女の子と男の子3人ずつが座っていました。私たちがリニアの中で今後のスケジュールとかについて話していたら、いきなりロケット団が現れて、こう言いました。
「こいつを殺したくなかったらさっさとジムバッジを渡しな!」
それで、現在に至るわけです。ってか、お金じゃなくてジムバッジって…。なんか、微妙。
「今この車両内に元ロケット団がいるはずだ!そいつは確実にジムバッジを持っている!ヤマブキとタマムシ、ハナダのバッジだ!その3つを渡せば女は解放してやる!」
も、元ロケット団!?今、この車両内にいる19名全員が元ロケット団疑惑がかかってるってこと!?
「おっと、余計なことは考えないほうがいいぜ。じゃなきゃ、この女がどうなるかな…?」
ポケモンを出すな、ってことだよね。…うーん、その元ロケット団の人が素直にジムバッジを出してくれれば…!
「アリアドス、どくばり!」
そんな声が聞こえたと思ったら、ロケット団のストライクの首にどくばりが刺さっていて、すぐに気絶した。すごいよね、やるなって言われてすぐやるなんてさ。なんにしても、私を助けてくれてほんとありがとうって感じかな。
「誰だ!」
「ロケット団ごときに名乗る必要なんてあると思う?」
「キ、キサマァ!」
椅子の陰から出てきたのは赤い髪の女の子とアリアドス。…すごく強気だね。
「もう駅にも到着したわけだし、大人しく警察に捕まってね〜♪」
女の子が言い終わった瞬間、リニアの扉が開いて間もなくロケット団の2人は逮捕されていった。
「ありがとうございました!私はホノカって言います。あなたは?」
「あたしはラングレー。イッシュ出身の15歳よ。じゃあね」
「では!」
ラングレーさんは私と同い年だった。いいな、バトル強くて。どくばりだけで相手をひるませちゃうもんね。そういうのって、すごくかっこいい。
「ったく、心配かけてさ」
「ごめん、カイリ」
カイリってなんだかんだ言って心配性なんだよね。メガネかけてるしなんか委員長っぽい。何の委員長かはわかんないけど。
「あ、もうすぐ船の時間」
ふ、船…。最悪、酔っちゃうじゃん…。
船は私の憂鬱なんか知らず、定刻通りにクチバ港を出発していった。
「ホノカ、か…。なんか聞いたことのある名前のような?」
ラングレーは呟く。
「ロケット団も含めて、報告しなきゃね…」