第1章 旅の始まり
第6話 いん・ざ・りにあ

「こいつを殺したくなかったらさっさとジムバッジを渡しな!」

只今、私ホノカは人質にされています。

犯人は、壊滅したはずのロケット団。

私の首元にはストライクの刃。

そして逃げ場のないリニアの中。

ピンチです。

え、どうしてこうなったかと?それはですね、時間をぐるぐる〜っと巻き戻して…。





午前12時30分。

リニアの中で、私たちは座っていました。私たちがいる車両の中には、私、ナオキ、カイリ、赤い髪の女の子、スーツを着た男の人と白衣を着た女の人、紙袋を持ったおばさんが3人、ハゲたおっさん、若々しいサラリーマンが3人、トレーナーズスクール3年生くらいの女の子と男の子3人ずつが座っていました。私たちがリニアの中で今後のスケジュールとかについて話していたら、いきなりロケット団が現れて、こう言いました。

「こいつを殺したくなかったらさっさとジムバッジを渡しな!」

それで、現在に至るわけです。ってか、お金じゃなくてジムバッジって…。なんか、微妙。

「今この車両内に元ロケット団がいるはずだ!そいつは確実にジムバッジを持っている!ヤマブキとタマムシ、ハナダのバッジだ!その3つを渡せば女は解放してやる!」

も、元ロケット団!?今、この車両内にいる19名全員が元ロケット団疑惑がかかってるってこと!?

「おっと、余計なことは考えないほうがいいぜ。じゃなきゃ、この女がどうなるかな…?」

ポケモンを出すな、ってことだよね。…うーん、その元ロケット団の人が素直にジムバッジを出してくれれば…!

「アリアドス、どくばり!」

そんな声が聞こえたと思ったら、ロケット団のストライクの首にどくばりが刺さっていて、すぐに気絶した。すごいよね、やるなって言われてすぐやるなんてさ。なんにしても、私を助けてくれてほんとありがとうって感じかな。

「誰だ!」

「ロケット団ごときに名乗る必要なんてあると思う?」

「キ、キサマァ!」

椅子の陰から出てきたのは赤い髪の女の子とアリアドス。…すごく強気だね。

「もう駅にも到着したわけだし、大人しく警察に捕まってね〜♪」

女の子が言い終わった瞬間、リニアの扉が開いて間もなくロケット団の2人は逮捕されていった。





「ありがとうございました!私はホノカって言います。あなたは?」

「あたしはラングレー。イッシュ出身の15歳よ。じゃあね」

「では!」

ラングレーさんは私と同い年だった。いいな、バトル強くて。どくばりだけで相手をひるませちゃうもんね。そういうのって、すごくかっこいい。

「ったく、心配かけてさ」

「ごめん、カイリ」

カイリってなんだかんだ言って心配性なんだよね。メガネかけてるしなんか委員長っぽい。何の委員長かはわかんないけど。

「あ、もうすぐ船の時間」

ふ、船…。最悪、酔っちゃうじゃん…。

船は私の憂鬱なんか知らず、定刻通りにクチバ港を出発していった。





「ホノカ、か…。なんか聞いたことのある名前のような?」

ラングレーは呟く。

「ロケット団も含めて、報告しなきゃね…」


白雪ゆいの ( 2012/07/15(日) 15:56 )