第5話 新しい仲間
午後7時、コガネシティ。
ホノカとナオキは無事定刻通りにコガネシティジム前までたどり着き、打ち合わせをする人を待っていた。
「…でも何でジム前なの?ここにはもっと目立つ場所があると思うわ。ラジオ塔とか、デパートとか、グローバルトレードステーションとか。なんでそういうところで待ち合わせをしないのかな。ジム前は…確かにトレーナーにとっては有名かもしれないけど、あたしたちにとってはやっぱりラジオ塔のほうがわかりやすいよね。あ、最近できたリニアモーターシステムの駅とかもいいと思う」
「そんなこと僕に聞かれてもわからないよ…。コガネの人の考えてることはさ」
ホノカとナオキ、二人でぐちぐち言い合いながらジムの前に立つ。はあ、とナオキがため息をついた瞬間、ジムの中から人が走って出てきた。
「ま、また負けた…ミルタンクに勝てる気がしないよ…」
ジムの中から出てきた少年は、髪を風にたなびかせ、涙を見せながらリニアの駅の方向に向かって走っていく。
「負けたんだね…」
ホノカのさっきのイラつきはどこへやら、今は少年の敗北を可哀そう、と思っている。
「ジムリーダーをそう簡単に倒せるとは思わないことや!ウチのミルタンクをなめたらあかんで!…ん?アンタたちはどなたはんやろか?」
またまた、ジム内から人が出てくる。この言い方、言葉から察するにジムリーダーのアカネであろう。
「あたしはホノカです。テレビコトブキのタレントです」
「僕はテレビコトブキカメラマンのナオキ、と申します」
「ホノカ…ナオキ…ああ、アンタたちがコガネラジオのゲストやね!ウチはジムリーダーのアカネ。一応、タレントやっとる。よろしくな〜」
すっ、と手を差し出してくるアカネにホノカも手を差し出して互いに握手しあった。
「こんなトコまでありがとな。じゃ、本題に入るで。打ち合わせ、ちゅーても適当なんやけどな。ただ明日はウチとカイリっちゅー男と話すだけや。カイリも話す才能は天才的で、ホノカがなんかやらかしてもうまくフォローするはずやさかい、だから安心してな?」
「う、うん」
ホノカはなにもやらかすつもりはない、と思っていたが顔には出さないよう心掛けた。
翌日、午前10時、コガネラジオ。
『今日もやってまいりました、ジョウトネット・バラエティチャンネル!今日もカイリと!』
『アカネで!』
『お送りします!さて、今日のゲストはシンオウのお茶の間おなじみ!タレントのホノカさんにきていただいています!』
『よろしくお願いしまーす!』
『ホノカちゃんはどんな番組に出とんの?』
『代表的なのはシンオウ・NOWですね。あとは、ミュージックチャンネルとかドラマチャンネルに出させていただいてます』
『そうなんですか、では…』
こうしてラジオの収録は続いていった。
「ふー、終わったぁ…」
「お疲れ様。デパートでチーゴミルク買ってきたよ」
ナオキはホノカにチーゴミルクを差し出す。
「ありがと、ナオキ」
ホノカがチーゴミルクを手に取ろうとしたその時。
「あのさ、ホノカさんとナオキさん、オレを旅に連れて行ってくれません?」
カイリは2人を呼びとめて頭を下げる。
「え…。いいけど、旅はしてないよ?しかも、ラジオはどうするつもり?」
「アカネに任せます。シンオウについていけるだけでいいですよ。オレはシンオウとジョウトの仕事の両立を頑張りますし」
「…いいよ。カイリ、行こう。あと、敬語は使わなくていいよ」
「ありがとう、ナオキ、ホノカ」
こうしてホノカとナオキのコンビは解散、カイリが入ってトリオとなったのであった。