第2話 港町に来ました
午前9時50分、キッサキシティ。
「つ、着いた…」
トゲキッス最速スピードでかっ飛ばしてきたホノカは少し酔っている。対称にナオキは全くと言っていい程酔っていない。元気にキッサキシティに降り立っている。
「早くキッサキロイヤル号に乗ろうよー!」
選ばれた人の招待状なしには乗れないキッサキロイヤル号。今は局長の権限を行使して乗らせてもらっている。つまり、一般人は乗れないということ。そんな豪華客船に乗るのだから、ナオキのテンションが上がるのも当然の理であろう。もちろんTVでも放送されることは滅多にない。
「わ、わかったわよ…ああ、船なら大丈夫よね…」
ホノカは歩くこともままならない状態で船に乗り込んだ。
午後3時、アサギシティ。
『遠く離れた異国に最も近い港町』がキャッチコピーのアサギシティは、船の出入りと比例するように、人の出入りも多い。町の北方にはモーモー牧場があり、アサギシティの有名スポットとなっている。ここ最近は近くのバトルフロンティアがオープンしたことも手伝い、トレーナーやブリーダー、勿論観光客など様々な人々で満ち溢れるようになった。
「うぷっ…。船も無理…。自家用車かスピードが遅いポケモンじゃなきゃ乗れないわたしって…」
船酔いを起こしたホノカはアサギシティの船乗り場待合室にてナオキがモーモーミルクを買ってくるのを待っている。どのポケモンでも基本的には乗れるが、彼女が乗れないのは自身のトゲキッスの最速スピードver.か、ガブリアスくらいのものだろう。しかし、水上となると話は別。波乗りで移動することは地獄といっても過言ではないほどに具合が悪くなるらしい。
「うーん、今日ここに泊まるんじゃ、エンジュは観光できないかな…。っていうか、帰りも船だろうな…どうしよ、気合いで乗り過ごしてみるかな」
気合いで乗り物酔いが克服できた人を見たことがないけどとりあえず口にしてみたホノカ。
「局長からメールだ。何だろ?」
『船酔いは起こしていないかい?さて、肝心な収録日を教えよう。それは…明後日だ。とりあえず明日の7時にはコガネシティのジム前にいておくれよ。一応帰りはコガネ駅発カントーのヤマブキシティ駅着のリニアに乗って、クチバ港でアクア号に乗ってミオシティまで来て、そこからはホノカくんのトゲキッスの遅いスピードで帰ってきたまえ。アクア号では酔わないと思うよ。それと、リニアとアクア号のチケットはポケギアに送ったからね。収録頑張りたまえよ。 テレビコトブキ局長』
「「明後日ぇ!?」」
帰ってきたナオキも一緒に叫ぶ。
「あ、お帰り…」
「正確には明日の7時がタイムリミット…。今日エンジュに行かないと間に合わないよ。早く出発しないと!」
急いで準備をするナオキにホノカが続く。今からエンジュシティに出発したら、着くのは恐らく午後6時。午後6時からまた出発するのは危険を伴うので、今日はエンジュシティのポケモンセンターに泊まるのが賢明な判断だ。
「船酔いが収まってないと思うけど、行くよ」
そういった瞬間、ナオキのポケギアが鳴り出した。
「あ、電話だ。ちょっと待ってて」
【ホノカさん視点】
「あ、電話だ。ちょっと待ってて」
ナオキはそう言った後、待合室の隅っこに移動した。
「あーもしもし、…………さんですか。今日は、……なくなったんです。……が………なんで。………………………に……ないのは残念ですが、また……」
あんまり聞き取れないな、なんて思ってたらナオキが話し終わったみたいでこっちに向かって歩いてきた。
「じゃ、行こうか」
ナオキって意外と謎が多い気がする。