第1話 メールから始まる旅
シンオウ地方。
『さて、今日も始まりましたシンオウ・ナウ!さまざまな情報をお知らせしちゃうシンオウ・ナウの時間です。司会は私、ホノカでお送りいたしまーす!』
シンオウ地方全域で放映される『シンオウ・ナウ!』。朝7時の放映はいつも視聴率が高い。番組の内容がおもしろいことも原因の一つだが、やはりホノカの人気が高いことに一番の原因はある。ホノカはシンオウ・ナウの看板、それ程までにホノカの人気は高いのだ。
『最初の最先端シンオウ情報はこちら!まずは、ポケモン研究のコーナーです。レポーターのユウカさん、お願いしまーす』
ポケモン研究のコーナーとは、レポーターやスタッフが体当たりで野生ポケモンに接近し、持っている道具を調査する、というトレーナーに嬉しいお役立ちコーナーである。
『ポケモン研究のコーナーです!今日は野生のポケモンを調べてみましょう!…あら、あれはハガネールみたいですね。ん?何か持っています。何を持っているんでしょう…。近づいて調べてみますね!ちょっと見せてね…』
ユウカはそそくさとハガネールに近寄り持ち物を調べる。するとハガネールは、ユウカに警戒心を抱いてか、かみつくを繰り出してきた。
『いっ、痛ぁっ!何すんのよこのハガネールがッ!…指をかまれちゃいました。でも、ハガネールがメタルコートを持っていることがわかりましたよ!ありがとう、メタルコートはハガネールに返すわ…。って、いったぁッ!またかまれた!ホント最悪ねッ!…またポケモンを怒らせちゃいました…。それじゃあまたお会いしましょ…』
う、と言葉を紡ぎかけたとき、ユウカの頭に撮影用マイクがぶつかった。
『ッ!だからぁー、あたしにマイクをぶつけるなって言ってるでしょ!まだわかんないの!?もー、今度か』
『えー、次はお天気情報です!ヒマワリさんとポワルンちゃん、よろしくお願いしまーす!』
ユウカの怒声をこれ以上放送させまいと、ホノカが無理やりお天気コーナーに移す。でもたぶん視聴者は毎度の事なので慣れていてあまり気にしていないと思う。
「っあー、終わったーっ!」
シンオウ・ナウの収録が終わった後、私はいつもこうして伸びている。けっこう疲れるんだよね、これが。ずっと笑ってるし、いい姿勢でいなきゃダメだし。大変だけどやりがいのある仕事だから続けてられる。私もシンオウ・ナウの看板にまで上り詰めることができたし。
「あっ、ナオキー、ジュース持ってきて」
私が今使い走りにしたのはナオキ、私の幼馴染でカメラマン。ぶっちゃけ弟みたいな存在である。ちょっと気が弱めだしね。
「はい、コレでいいの?」
最初の頃はぶつぶつ言いながら持ってきてたけど、いつものことだから慣れたみたいで今は有無も言わずパシられている。ちょっと可哀想に思うけど、その辺はあまり気にしないでおきたいと思う。
「うん、ありがとー。…あれ、局長からメールだ。何かな?」
局長からメール、しかもタイトルが『緊急!』だなんて何かな?
「えーと、コガネラジオに出演決定、10時出発のキッサキシティから出る船に乗れ…?今8時よ!?」
2時間でキッサキシティに行くには飛行機かポケモンのそらをとぶを使用しないと辿り着かない。使わずに行くのは至難の業だ。
「…行くわよナオキ、持ち物は大丈夫でしょうね!?」
「え、僕も!?」
「当たり前でしょ!トゲキッス、そらをとぶ!」
私たちはキッサキシティに向かって旅立ちました。