第四十七話 芋虫の確定
「ガシャポンというものを知ってるか?」
「はい、玩具が容器に入っている…」
「そうだ。それを今回、人間界から取り寄せたのだ。見ろ!」
「おぉ、結構本格的ですね。二台あるんですか。…しかし、W200円W必要とありますので、WポケWではどちらとも遊べないのでは?」
「ふふふ、その辺に抜かりは無い。ちゃんとWポケW仕様にしておる」
「流石です、王様。どうやら、WヒーローWやW悪の天才科学者W等、色々なフィギュアがあるそうですね。」
「早速やろうか…。まず、一台目だ」
カラカラッ。カラカラッ。カラカラッ。
「一気に三つも出してみたぞ。さて、一個目は…」
パカッ。
「ふむ、WヒーローWか。胸のSの文字が以下にもスーパーだな。見た感じは人間に似た造形だな」
「二つ目、三つ目もどうぞ。」
「ふむ、なかなか楽しいではないか。では、二つ目…」
カポンッ。
「またヒーローか…」
「ダブりましたね」
「大量生産の時代だ。仕方あるまい。気を取り直して、三つ目…」
パカッ。
「なっ…!またもやヒーロー…!?」
「やはり主人公は人気だからですかね?」
「…まだ残っている。やりまくるぞ」
「(最近の王様の趣味・趣向がわからない…)」
*
*
「これからどうする?」
「どうするの?」
ギルドへの襲撃事件から、数日が経った。俺等サンライズも今のところアクションは起こしてはいない。まぁ、怪我もしたし仕方が無かったんだけど…。そして一方で、ギルドも皆は今は至って普通に過ごしている。まるで、襲撃事件の事など忘れているかのように。
そして、朝っ腹から俺らは今後の行動についての会議をしていた。
「どうするかねぇ?」
「どうしようかな?」
そういえば、警察から調査の内容が書類で来たけど、ナッグとかハングのプロファイルぐらいで特に有効な情報は無かった。知りたいのは二匹の生い立ちでは無く…
「あっ!」
「どうした、ファイン!?何かわかったか?」
「俺たちはタベラレルの仲を何とかして修復したい。ならば、その原因を潰せばいい」
「というと?」
「…ティミッドがハングを排斥したかった理由、それを知ることができればいいってことになる」
「そうね〜。でもそうなるとティミッドに話を訊かなきゃいけなくなるけど…取り合ってくれるかしら?」
「駄目で元々だ。とりあえず行ってみよう。その後はまた考えればいい」
無計画なことは重々承知だ。でも、タベラレルの関係者として何もしないのは余りに無責任。依頼受けた時点で、俺たちは出来る限りの事を全うしなければならない。
ということで、俺らはタベラレルの基地前に来た。
「お〜い!ティミッド〜!いるか〜!」
「返事ナシね…」
「いないのか?」
俺は窓から基地内を覗き見ようとするが、カーテンで遮られており様子は分からない。どうやら明かりは点いていないようだが…
「(くそっ…ハングの方も気になるのに、ここで足止めか…)」
「ファイン、どうする?」
サンが心配そうに見てくる。多分、ティミッドは日が暮れる前には帰ってくると思うけど…。話し合うのはその時に後回しするとして、それまでに他にやるべきことはないものか。
「何かティミッドの心揺さぶるモノとか無いのか?それで釣ってみたり…」
「駄目だよ、アクア。やり方が意地汚いよ!」
「心揺さぶるモノ…あっ!」
−−−−−こんなもの、僕には要らない!!
ファインは先日の海岸でのハングとティミッドのやり取りを思い出した。ティミッドにどうせ会うのなら、有利に事を進めたい所だ。ティミッドが放ったハングのプレゼントはその重要なアイテムとなり得る可能性は十分にある。
「ファイン、どうした?」
「いや、お前のお陰で重要なことを思い出した!」
「え、俺のおかげ!?…全く、もっと褒めてくれて構わないんだぜ?」
「で、思い出したことって何なの?」
「ティミッドとの面会は後回しになるが…まぁ、とりあえず俺に付いて来い!そこで話すから!」
ファインは走り出す。サンとシードも疑問を感じながら付いていった。
「全く、俺のおかげだなんて、ふふふ………って、お前ら、先行くな!!!」
遅れつつ、アクタートも後続していった。
*
*
数時間後…タベラレルの基地前。
「ただいま…」
そう言っても誰からの返事もないのはわかりきっていた。孤独になった僕、ティミッドは黒幕二匹との話し合いを終えて基地へと帰って来た所だった。カーテンを閉じているので、日差しが部屋に侵入することはない。おかげで基地内は暗闇に閉ざされてしまっている。
部屋の中央に来ると、いつもより基地が広く感じた。僕一匹には余りにも広すぎた。
「疲れた…眠い…」
最近、疲れやすくなった気がする。原因は物理的なモノとは思えなかった。まぁ…どうでもいい、寝よう。僕はいつもの藁葺きの寝床に身を丸めた。
「……」
目蓋を閉じる。目の前は暗闇の世界となる。今の僕には似つかわしく嫌悪感はなかった。意識が途切れていく。朦朧としていく…
……。
…はずだった。僕は何か違和感を感じ、恐る恐る目を開けた。
「…え?」
目前に広がるのは、なんか白くて黒くて、チカチカしてどんよりとしている風景。
僕は混乱して辺りをキョロキョロ見渡す。しかし広がるのは、なんか白くて黒くて、チカチカしてどんよりとしている風景で変わりなかった。
「(僕、帰ってすぐに寝て…あれ?)…ここどこ?」
僕は段々と事態を把握してきたような気がするけど…いや、全然してないよ!僕は一体…
「こんにちは、君が始めてのお客さん?」
誰かの声が背後から聞こえる。僕はゆっくりと振り向いた。そこにはピンクのポケモンらしきものが空中にいた。
「あなた…誰ですか?」
「僕はミュウっていうんだ。君の水先案内人さ」
「水先案内人…?」
このポケモンの胡散臭さがスゴい。第一印象で完全に信用出来ない。でも…何だろう、そんなこともない気もする。何故こんな気持ちになるのだろうか。
「とりあえず、ガイダンスもあるから散歩しようか?」
ミュウというポケモンはそう言ってさっさと向こうへと飛んでいってしまう。
「あ、あの…待って!」
一匹でいてもどうしようも無い。そう思い、慌ててミュウの後についていった。
歩いて、数分。僕達二匹は沈黙も引き連れてつまらない散歩を続けていた。すると、その途中でミュウが振り向いて訊いてくる。
「君は何処に行きたい?」
「え?」
僕は歩きながら疑問する。今まで何処かに連れていってくれている訳ではなかったのか…。
「…だから、君の行きたい所は何処だい?過去、未来もしくは現在、そしてデザイア世界の何処でも構わないよ」
「それを訊いてどうするの?」
「君をそこに連れて行ってあげるよ♪」
ミュウは笑顔でそう言う。余計に胡散臭さが増した。でも、もし本当にそうしてくれるのなら…
「じゃあ…W海岸の洞窟Wに行きたい」
「時系列は?」
「僕とハングの最初の探検…」
「分かった。それじゃあ、僕が合図するまで目を瞑ってて…」
ミュウの指示通り、僕は目を瞑った。その瞬間…
「(…!!)」
突如、脳裏に見たこともない建物の光景が過る!黒く闇に包まれた……城?その映像はすぐに切り替わり、別のナニかに変わる…ポケモン?そいつは…
蒼い眼を向けていた。
…。
「いいよ、目開けて」
ミュウの声が聞こえる。何か起きたのか?
「うぅ……これは…!」
ゆっくりと目を開けると、そこはW海岸の洞窟Wだった。けど、何か違和感がある。不自然に岩が欠けているし、穴が空いていたり、部分的に色がなかったりするのだ。
「まだ大分最近の出来事みたいだね。二年前くらいかな」
ミュウの言ったとおりならば、ここは僕のチームである『タベラレル』が最初に探検した場所。それは、約二年前のことだったはず。 じゃあ…
≪……だよ、追い……ぞ!≫
誰か来る!
「ミュ、ミュウさん!隠れましょう!」
「うーん」
僕達二匹は岩陰に隠れる。カツカツと足音が聞こえる。奥の穴から見慣れたポケモンが出てきた。
「あ、あれは…」
「どうやら君とそのパートナーらしいね」
≪ちゃん…、付い…ザザッ…いよ!≫
≪待…ザザザッ…!≫
ノイズみたいなものが混じって聞こえてくる。
「何て言ってるのか、聞き取りづらいですね…」
「大丈夫、すぐ音質良くなるから」
「?」
良くわからなかったが、ミュウの言ったとおり、段々と声が聞き取りやすくなってきた。
同時に段々と思い出してくる。そして、いつの間にか、周りはいつものW海岸の洞窟Wになっていた。
記憶によると、いま僕が見ている光景は『タベラレルは何かの依頼で(何かは忘れたが)探し物をしていた』というシチュエーションだった…と思う。
≪…ザッ…ーと、もうちょい先かな?≫
≪シャアアアァァッ!!≫
そうそう、ここで野生のシェルダーが飛び出してくるんだ。
≪ひええええぇ!!?シェルダーだああぁ!!≫
そうそう、僕は驚いて恐怖に戦き…
≪ティミッド、後ろに下がってろ!…喰らえ、W燕返しW!!≫
一方ハングは怖気つくことなく、いやむしろ勇敢に敵に立ち向かったのだ。そして、シェルダーは情けない声を出して逃げていった。
≪シャアアァ…≫
≪ふぅ…奇襲とはやるじゃねぇか。おい、ティミッド!≫
≪ひええええぇ!!来ないでええ!!≫
そうそう、僕はいつまでも怯えていた。
≪俺だよ!…お前、相当のビビりなんだな≫
≪ハ、ハングさん…シェルダーは?≫
≪もうどっか行ったよ。大丈夫か?≫
≪はい…。すみません、無力で…≫
≪なにいってんだ、お前は俺を頼ればいい。それでいいんだ!≫
そうそう、僕は…
≪大丈夫だ。俺が護って…ザザザッ…ザザザザザ…≫
プツン。いきなりW海岸の洞窟Wの光景が消えた。辺りは真っ黒になる。
「君が今の記憶を拒絶したからだ」
ミュウはそう呟いた。すると、黒の世界はやがて赤みを帯びて、赤色の綿みたいなものが上から降ってきた。ふわふわと、ふわふわと…。
「ハングは勝手過ぎるよ。『守ってやる』なんて…」
「仕方がない。君は弱いんだから」
風景が変わり、出て来たのは昔の僕と始めてのパートナーと…誰か。劇は始まる。
≪俺、今度からコイツと探検隊組むから≫
≪え…どうして……≫
「やだ、見たくない…!」
劇は続く。
≪お前さ、W毒針WとW糸を吐くWしか使えないし。いつも失敗ばっかだし。正直言って、全く役に立ってないというか≫
「見たくない…!」
劇は続く。
≪…じゃあな!≫
≪…待って!何で…な…ザザッ≫
「やめろおおおおおぉおぉぉっ!!」
劇は終る…
景色が雲散霧消する。やがて、辺りは最初と同じ光景になった。僕は息を荒げていた。横でミュウが僕を見下ろして、こう言う。
「昔から君は弱かった」
≪弱いな≫
≪弱過ぎる≫
≪弱っちぃ…≫
「違うっ!皆がただそう決めつけていたんだ…僕がケムッソである事実だけを根拠にして!
最初皆は『護ってやる』だなんて偉そうにいって…結局、僕と対比して強がりたいだけなんだ!用が済んだらゴミのように捨てられるんだ!」
「じゃあ、君は強いの?違うよね…?」
≪君、強いね≫
≪強過ぎるよ≫
≪強っ!≫
「嫌味ですか…」
「この世には二種類のポケモンしかいない。『護る』ポケモンと、『護られる』ポケモン。
君はその『護られる』ポケモンに選ばれんたんだ」
「『護られる』側の気持ちも分からないクセに何を言ってるんですか…」
「……」
「辛いんです、ずっと『護られる』ことが…。こうして、僕は誰かを『護る』ことは出来ないんだ…」
「誰かを『護る』存在になりたい。それが君の本心か…」
「だから、僕、多分ハングに嫉妬してたんです。今なら分かります…。弱いと決めつけているのは他の誰よりも…」
「君自身、だね」
ウィーオン、ウィーオン!
いきなりサイレン音が響き、空間が赤く点滅する!
すると、ミュウは少し慌て出した。
「おっと、そろそろ時間だね!」
「えっ!?あ、あの…これは一体!?」
「というわけで、君にはこの『護られる』で賞(しょう)を贈呈しま〜す!パチパチパチ!」
すると、僕に透明な一つの球が渡された。僕の身体の四分の一ぐらいの大きさ。僕がそれに触れると、赤く光り始める。
「これは…」
「強いて言うなら、君の存在意味だ。僕のガイドはここまで…それじゃあ、君を元の世界に返してあげるよ」
「ちょ…待っ…まだ聞きたいことが…!」
僕が言いかけた途端、世界が眩い光に包まれる!目が痛くなるほどの光に思わず目を瞑ってしまう。
「…!」
段々と光が収まっていく。目蓋の裏は黒になった。恐る恐る目を開けてみた。
「あれ、ここは…基地?」
僕は自分の寝床に蹲っていた。辺りは相変わらず暗かった。
「ん?何かある…」
身体に触れる異物感を手繰っていく。僕は驚愕した。そこには、あの赤い球があったのだ。
「夢じゃない…!?あれは一体…」
コンコン。突然、ドアがノックされた。僕は赤い球を置いて、ドアに向かう。
「はい…いま出ます」
ドアをゆっくりと開ける。そこには、
「よっ!ティミッド!」
「あ〜、良かったぁ!ちゃんと帰ってたみたいね!」
「全く世話かかせるぜ!」
「ティミッドさん、だ、大丈夫?」
サンライズの四匹がいた。何故か皆ビショビショで砂だらけである。
「あ、あの…何か…」
「何か、じゃねーよ!どんだけお前らのこと心配してたことか!」
サンライズの皆は未だにタベラレルのことを気に掛けてくれてたみたいだ。何だ、僕は結局また施しを受けるだけなのか…。
「僕とハングのことなら気にしないで下さい。もう、何もかも遅いんです…」
ファインはそれを聞いてこう言う。
「その後ろ向きな発言はシードだけで十分だ!」
「えぇ!?ファイン、酷いよぉ!」
すると、彼が何かを出して来た。
「…それは!」
「大事なプレゼントだろ?」
彼が見せてきたのは、W護りのオーブWだった。
−−−−俺がお前を護ってやる!
僕はハングを…。それを見て、決した。
「…サンライズの皆さん、僕にそれを渡しに来ただけではないですよね?」
「あ、あぁ…」
「僕、決めました。もう逃げません。あなた達に話せることは全部話します…。中にどうぞ入って下さい」
サンライズは予想外だったのか、互いに顔を見合っていた。そしてファインは、
「ありがとう、ティミッド」
と言って、暗い基地内へと入っていく。このときの彼の感謝の言葉の意味が僕にはよく分からなかった。
「適当に座って下さい」
僕がそう言うと、サンライズの皆は位置を決めて座る。ただし、ファインを除いて。
「ファイン、どうしたの?」
サンの疑問符が投げかけられる。ファインは渋い顔をして、窓の側に近付いて、こう言う。
「カーテン開けていいか?」
「いいですけど、眩しくないですか?」
「今日は天気がいいぞ。部屋も暗いし、光を入れよう」
ファインはカーテンを開けて、サンの横に座った。西に少し傾いた白い光は窓を超えてスポットライトのように僕を照らした。
告白を始める僕には丁度良い舞台装置だ。目前に座る四匹を眺めて、僕は口を開いた。
「では、サンライズの皆さん。まず、僕のやってしまった事について話しましょうか…」
*
少し話し終えたとき、僕の頬には涙が伝っていた。
「そうか、悔しかったんだな…」
「僕もハングみたいになれるのかなって…ぐすっ…だから、今まで頑張ってたんです」
「…辛かったのね。分かるわ、その気持ち」
サンが共感を示す。すると、アクタートがちょっかいを出してきた。
「お前みたいな暴力女に分かるのかぁ?」
サンは少しアクタートを睨んで、しかし、すぐに視線を床に移して話し始める。
「皆、誰かに憧れるものなの。でも、所詮憧れだからずっと自分の頭の上の人。ずっと私達自身は憧れにはなれやしないの」
サンは悲しそうにそう呟いた。どうやら、シードもそれを聞いて悲しくなったのである。
「サンにしては随分悲観的なコト言うね…。
僕も勇気を持って誰かを助けたり出来るポケモンにはなれないのかなぁ?傷を治したり…庇ったり…」
サンはシードもこう言うから、慌てて言う。
「ち、違うの!シードみたいな現実味のある憧れというより……うーん、何だろう?例えば、『シードは私自身になれない』ていう感じ…かな?」
「うーん、よくわかんないや…」
「ま、まぁ、気にしないで!」
サンはとりあえず何かを保ったようである。すると、横で聞いていたアクタートがまたもや余計な事を言う。
「そんなことより、ティミッドの話に戻ろうぜ!」
これには流石のサンも頭にきてしまった。
「アクア、ちょっかい出してきたのあなたよね?
そうだ!後で、私のW暴力Wを披露したいから海岸に来てくれないかしら〜?メガトンパンチの訓練はあなたと一緒だととても上手く行く気がするの〜♪」
サンが青筋を立てながら、笑顔でアクアにそう言った。アクアはぞわっとしながら、小声でシードに救援を要請する。
「(シード!助けてちょ!)」
「(自業自得だよ…)」
駄目だったみたい。すると、ファインが呆れながら、無理矢理本題に戻そうとした。
「ティミッド、すまん。こいつらに構わず続けてくれ」
勿論、僕もファインの軌道修正に便乗する。
「はい、動機を話した所まででしたよね…。
この後、僕はハングを見返す為に色々と海岸で考えていました。すると、見知らぬポケモンが二匹現れたのです」
「一体誰なんだ?」
「サワムラーのムラー、エビワラーのリンプという男達でした」
その名前を口に出した途端、サンライズの皆は硬直する。僕は少し不気味に思い、
「あ、あの…大丈夫ですか?」
と言った。すると、ファインが声を震わせて言う。
「今、なんつった?」
「え…?」
「ティミッド、今、お前なんつったんだ!?」
ファインがいきなり立ち上がる。僕は驚くしかなかった。ファイン、怒ってる!?何かまずかった…?
慌てて僕は復唱した。
「えと…サワムラーのムラー、エビワラーのリンプという男達、この二匹が僕の所に来たんです!」
そう言うと、ファインはへなへなと座り込み頭を抱える。彼だけでなく、サンライズ全員が苦々しい顔をしていた。
「あの、何かあったんですか?」
「大丈夫、お前には関係ない。話を続けてくれ」
ファインは焦りを抑えているのが見てもわかる。彼の言う通り、僕は触れたらいけないのかもしれない。
「は…はい。じゃあ、続けます」
いつの間にか、僕が浴びていたスポットライトは橙色に変わっていた。
*
「サンキュ、ティミッド。色々話してくれて。納得出来なかった部分が解消された。後は俺らがハングを説得してやる」
「今更、ハングと顔を合わすことなんて出来るんでしょうか……」
「本音ぶつけたいんだろ?じゃあ、俺らが何としても会わせてやる!信じろって!」
「探検隊同士、困った時はお互い様よ!」
ファインとサンがそう言ってくれた。少し顔が綻ぶ。
「すみません、色々と迷惑を掛けてしまって…」
「……ああ、そうだ。話し込んですっかり忘れてた」
ファインは先程のW護りのオーブWを取り出して、ティミッドに渡した。ティミッドはそっとそれを受け取る。
「大事なものだろ?」
「はい…ハングが僕にくれたものです。サンライズの皆さんはこれを探していた。だから、そんなに砂だらけでビチョビチョで…」
「もう渇いたから気にすんな。」
「すみません…こんなにしてもらって…」
「おい、違うだろ。何で謝られなければいけないんだ!」
「え…?」
「ちゃんと見つけたんだぞ!もっと違う言葉で言って欲しい…と、俺は思うぜ!
ハングにはちゃんと言えるといいな。
…まぁいい、サン、アクア、シード!帰って、早速ハングを言いくるめる作戦を練ろう!」
「えぇ〜!?腹減ったから、後で…」
「アクア、ご飯の後は海岸での練習をしましょ♪」
「は、はいぃ…」
「アクアったら、自業自得だよ、ホント」
そして、サンライズは別れの挨拶を軽くして、出て行った。扉がしまり、僕はまた一匹になった。もう日はとうに暮れて、部屋もまた暗くなった。そういえば、ファインのさっきの言葉の意味はなんだろう。まぁ…
「とりあえず、灯りを点けようかな…」
僕は仲良しだった暗闇がいつの間にか嫌いになっていた。
*
*
「全部出したぞ」
「はい。計測の結果、ガシャポンにあったカプセルが50個中、50個にWヒーローWのフィギュアが入ってました。…全部同じですね」
「ふむ。ちょっと全部それを貸せ」
「王様、一体何を…?」
カツッ、カツッ。ヴィイイイイ。
「成る程、そういうことか」
「王様、ベルトコンベヤーの上にWヒーローWのフィギュアを並べて、何をするんですか?全員、仁王立ちですね」
「よく見ろ、こうやってWヒーローWは大量生産されてきたのだ。
ほら、このフィギュアには塗装ない。これには足がない。これには手がない。最早、頭がないものもあるし、Sの文字が消えてただの服のセンスの悪い一般人みたいなものある。」
「効率が大事ですから、結局、フィギュアなど起源(オリジナル)の疑似となってしまうのは仕方ないことです。」
「しかし、やがてこのフィギュアも誰かのWヒーローWとなるのだろう。この世界はそういうシステムなのだから。嗚々(ああ)…哀しいな、WヒーローWは。
……ん?W悪の天才科学者Wも同じか」
「そういえば、二台目には何があるんでしょうか?…あれ、全部W悪の天才科学者Wっぽいですね」
「そうか………じゃあ、二台目もやろう」
カラカラッ。カポンッ。
to be continued......