ポケモン不思議のダンジョン 正義と悪の狭間で - 間章 -Green hour-
第三十七話 ミーンワイル!ドタバタジャングル!@


「ふぅ…」

「王様、ご食事の用意が…王様?」

「ワンダー、今な、映画というものを観ていたのだ。あれは実に興味深い。」

「…一体どこが?」

「まずはジャンルの種類。アクション、恋愛、ミステリー、アニメーション、ファンタジー…と多岐に渡る作品の豊富さ。次に、中には元は紙面での作品もあったそうだが、それを見事に視覚化し作品を活き活きと動かす技術があることだ。
人間の作った物はまだまだ私の知的好奇心を煽ってくる。実に良い。それに上映中にポップコーンというものを頬張る習慣も非常に独特だな。」

「王様が満足されたのなら、私も嬉しい限りです。」

「しかし、疲れたな。長時間の視聴は身体に悪影響を及ぼすと事前に警告があったが真のようだ。…とりあえず、少し休憩をしよう。









…お前も休め、ワンダー。世界を見てくるがいい。」

「…?」





ところ変わって、ここは熱帯樹林ことミステリージャングル。鬱蒼と草木が繁茂して森が森を順番に隠しているようで、奥が見えない。しかし、そんな環境にもちゃんとポケモンは暮らしている。

例えば−−−−森の奥にあるログハウス。

「食べるか!そんなものは断じて食べん!」

「特効薬って言ってるじゃないですかぁ!はい、あーん!」

家の中で緑のポケモン、ピンクのポケモンが何やら騒がしい。

「だから、嫌っつって…うあっ!」

緑のポケモンは背中からド派手にすっ転ぶ!ピンクのポケモンはそれを逃す間も無く…

「喰らいなさい!昨日とってきたバタフリーのW痺れ粉W!」

ピンクのポケモンが粉を緑のポケモンに振りかける!

「ちょ…おま…え…!」
「はい捕まえた」

痺れた隙にピンクのポケモンは緑のポケモンの腹の上とのり動けなくした。まぁ、動けなくなる程重い訳ではないが、痺れている彼にとってはもう十分、十分。

「これでゆっくり食べられるね。アトレさん。」

「や…め……!」

「はい、あ〜ん」







「全く病み上がりにこの仕打ちは酷すぎるぜ!」

さっきの痺れ粉がやっと引いてきた。というか罹病者に痺れ粉という発想がおかし過ぎる。さらに、次にはもう薬の不味さがくるではないか。なにこれ、苦辛いというか、甘酸っぱいというか…見事な不調律。

「アトレさん、具合どうですか〜?」
「お陰でよくなりましたよ、ミントさん!」

部屋に入って来た桃色の身体、透明な羽、長い触角。まるで妖精だが、実はとんだ天然悪魔である。こいつ、ミントは時渡りで有名らしいセレビィ。俺が人間界から此処に来て、実質初めて会ったポケモンだ。

「全くいつまでもお薬嫌がっていちゃ良くなりませんよ」
「お前のあのヘドロ状のものが薬だと…!?一回、薬の意味調べて来い!」

とりあえず、こいつを落ち着けることが今の最重要事項。時間が長くなりそうだから、時間を遡って俺らの出会いを復習しよう。

あれは今から一、二ヶ月前のことだ。



『…ん』

目を開ける。目に映ったのは何処だか分からない天井。

『(……!?何処だ 、ここは!)』

勢いよく起き上がる。俺はシーツを掛けられてベッドで寝かされていたようだ。部屋を見渡す。木で出来た家でそれ以外はどれも普通。

『(とりあえず、ここから逃げなくては…)』

今の俺に立ち止まってる時間は無い。早くあいつを…ファインを見つけなくては!
そう思って手をついて立ち上がろうとした時だった。

『グァッ…!?』

突然、身体中が激痛に見舞われる!あまりに不意で強い刺激だったものだから、俺は手からバランスを崩してベッドから落ちてしまった。大きな音を立てて。

『ぐっ…痛っ!』

一体、何なんだ!俺の身に何が起こってる…





『この森にこんなブービートラップに引っかかる奴なんかいたんだ』
『エモノだ、エモノだ〜!』
『ただのW毒びしWなんだけどね〜』



『…あ』

なるほど、あの時の毒が原因か…!
しかしながら、早くここから移動しなくては何も始まらない。こんな訳の分からない場所で滅びるのは勘弁だ。既にあの時死んでいたもしれないこの身だ。こんな運を無駄にする訳にはいかない。

『ぐ…!』

しかし、力を入れようとすると身体が痛む。踏ん張れ、俺!

『〜♫』

『…!?』

今、誰かの鼻歌が聞こえた。何処だ!

『ふ〜ふふ〜ん?』

『(この部屋のドアの向こうか!)』

やばい、ヤバすぎる。この部屋は出入り口らしきものが一箇所しかない。後は窓が一つ…窓が…

『(…立ち向かうか?窓から出るか?)』

しかし、そう考えてる間にも脅威が向かってくる。ひとまず隠れなくては…!

『さてさて、おしぼり変えなきゃ……あれ?』

『(ここに入れば…)』

ひとまずベッドの下へと潜り込む。ドアが開くと、誰かの声がした。しかし、足らしきものは見えない。

『どこかのジュプトルさんがいない…!』

どこかのジュプトルとは正(まさ)しく自分自身に他ならないとは思うが…。そう言った何かのポケモンはボトリと何かを落とす。おしぼりだ。

『そんな…そんな!』

声が震えてる。やはり何かあるようだ、隠れて正解である。見つかったとしたらとんでもない拷問をされるに違いない。そして、俺が少し息をほっと吐いた瞬間だった。

『ちょっと!そこにいるんでしょ!』

『…っ!!?』

突如、そう叫ぶ!

…み、見つかった!?いや、見られてはいない。しかし、部屋の中に俺がいると考えるのは妥当だが、こうなると見つかるのも時間の問題。

『出、出て来なさい!私、分かってるんだから!』

『(女か…。正直、出て行っても何とかなりそうだな)』

『あなたが今、透明になってることぐらい分かってるんだから!』










……。










『(今、なんつった?)』

『分かったわ!ベッドの上にいるんでしょ!?…とおりゃ!』

こう言った後、上の方でバタンバタンと音が騒がしく鳴る。つまり、ポケモンは今シーツと絶賛お遊び中なのである。しばらく経つと、音が止んだ。

『や、やるのね…少し見くびってたわ』

『(まだやってんのか…?)』

シーツと格闘してる姿を思うと、何故か今不思議と隠れていることが申し訳なく思えた。その時だ。

『ハッ!?まさか…












…逃げちゃったの!?』

『(遅い!遅いよ!)』

気付くの遅っ、普通そう考えるだろ!まず、インビジブルになりましたなんて思い付かないって!
…それに、残念ながらまだ俺は逃げてません!

『どうしよう…ここにジュプトルさんの持っていた腕輪があるのに…置いて行っちゃったのかな』

『ちょっ!ガッ!』

ゴンッ!

思わず、腕輪という単語に反応して声を上げると共にベッドに頭をぶつけてしまった!聞こえたか…?

『あれ、不審音が…ベッドから…』

ですよねー、そりゃ見つかっちゃうよ。結構な音だったもの。アトレ最大のピンチが今ここに!

『(不覚過ぎて何も言えねぇ。いや、喋らないけど)』

『この下に透明ポケモンが…!』

やばい、見つかる!








バリンッ!

『キャッ!いきなり何!』

床にリンゴが一つ転がり、透明な破片が飛び散った。多分窓が割れたのだろう。一体誰が…

『ちょっと、危ないじゃないの!せめて、投げ入れるならヒメリの実にしなさい!不足気味なの!』

そういう問題かよ…。とりあえず窓の外に気がいってる今がチャンス。俺はそっとベッドの下から這い出る。

『(体は痛むが辛抱だ)』

音を立てないように、立ち上がる。右に向くと、窓でなにやら言っているポケモンがいた。多分、シーツと接戦を繰り広げた挑戦者だ。まぁいい、とりあえず…

『(逃げろっ!!)』

俺は踏み出した。しかし、俺は外へ出ることへの注意しか行っていなかったため、その瞬間に足にかかっていた垂直抗力が無くなり床が抜けたという超展開についていけるはずもない。もう一度言う、これはない。

『ぐあああっ!!!』

落ちる!いや、落ちている!

『今度は何!?今日はお祭りなの!?』

ポケモンは床の吹き抜け(出来たて)を覗き込んできた。すると、アトレは床から落下して無様な格好を晒していた。

『つつつ…』

『ねぇ…貴方…』

目の前にピンクで小柄なポケモンが大きな瞳で見つめてくる。何だっけ、このポケモン。一応人間界でポケモンの種類は覚えてきたが…とりあえず今の状況は吐きそうなぐらいマズイ。おえ。

『(まずい…!)』

『やっぱり、貴方が…













インビジブルポケモンだったのね!!』

『ちげーよ!!』





とまぁ、だいたいこんな感じだ。そんなこんなで約一ヶ月は過ぎた。俺もやっとこいつの調子に慣れてきた所だった。

「アトレさん、散歩に行きます?」

「え、外に出ていいのか!?」

「そろそろリハビリがてらに数十分は歩いた方がいいと思いますよ。」

ミントが笑顔でそう言った。よし、やっと外に繰り出せる!正直逃げ出してもいいが、一応ミントには世話になったしやりにくいな…。
しかし、早くファインも探さなくてはいけない。でも、まぁ、折角の好意を迷わず仇にするのも気が引ける。今日はいいか…。外界に出れることにひとまず感謝。

「…よし、じゃあ早速行こうぜ!」
「じゃあ、綺麗な湖があるからそこに行きましょうよ♪
えーと、待ってくださいね。準備しなきゃ!えーと、リンゴとリンゴとリンゴと…」
「リンゴだけかよっ!他のモノも必要だろ…?」
「あら、そうですね!じゃあ、今日はアトレさんの半快復祝いとして…じゃじゃーん、セカイイチでーす!」

「リンゴだよ!紛れもなくリンゴの王様だよ!」

こうして俺は久しく全身に外界の空気を浴びに行くことになった。





「(ふむ、ここがデザイア有数の樹海ミステリージャングルか)」

王であるダークライ様に初めての休暇を貰い受けた。『世界を見て来い』と言われて繰り出した私、ワンダーは、久しく自分で物事を決めることなどしていなかったからこういう時何をしたらいいか分からない。とりあえず、ワープされた場所から近い所に来たが…。ふむ。
補足として、スウィンドルズ、ヴィーらも休暇をついでにもらっていたな。リンプとムラーは作戦を進めている最中か、気の毒なものだ。

「(とりあえず進もう…)」

樹海は熱帯雨林らしく高湿度でこんな霊(ゴースト)の体でもじめじめとした潤沢な空気が肌にへばり付いてくるのがわかる。ここには何か有名な場所などはあるのだろうか。一応、道が整備されているものの途中から手入れの粗雑さが目立つようになってきた。草木と道の境界が曖昧になってくる。

「(なるほど、思ったより変わらないものだな)」

こんな場所にでもポケモンはきっといるのだろう。そういうことに疎い自分だが、タイプというものがある以上何処にでも何かしらは生活を営んでいると思われる。
しかしながら、今のところ誰も見かけない。昼間に外に出るのはヨノワール、つまりゴーストタイプである私にとって気乗りはしなかったが、此処は薄暗く過ごしやすい。やはり他タイプはもう少し明るい場所が好みなのだろうか。しかし、そう思ったのも束の間、ポケモンが目の前を横切った。

「(ただのニドランか…)」

何かもう少し面白いものは出てこないのだろうか。例えば、熱帯雨林らしくラフレシアとか…


ガサッ


「?」

なるほど、私はどうやら…

「見かけない顔がいるよ〜」
「外からかな?」
「どうする?」

フラグというものも立ててしまったらしい。証拠にいまラフレシアやウツボットなどのポケモンが目の前にいる。というよりも囲まれている。

「食べられる?」
「肉があればいいよ。」
「じゃあ…」

とりあえず、クラウチングスタートを決めよう。逃走準備!

「みんなかかれっ!!」

その合図と共にスタートを決める!足がないからクラウチングスタートできないと言う常識はここでは通用しない!とりあえず、私は先陣を切る!

「全力で逃げ切る!!」

「逃がすか〜!みんな一斉にWソーラービームW!」

しめたっ!これで相手側に隙が出来た!
…それにしても、私というキャラに慣れていない皆様がこの展開についていけているかの方が非常に不安だ。ちなみに私はついて行けていない。

「この距離ぐらいあれば…」

そう思ったのも束の間。全方向と言っていいほど、ソーラービームが針金で突き刺すように縦横無尽の網を一瞬で作る!

「のわっ!」

私は間一髪で避ける!あと、数ミリ太っていたら即死だった…。というか、重火器のような弾幕はああぁ!

「(そうだっ!念のために持ってきたあれを使おう!)」

ふふふ。こう言っておけば、何かしらのアイテムが出るだろう。ご都合主義だが、今の私に最も必要なファクター!あぁ、素晴らしきご都合主義!

「(よし、懐からなんとWドロンの種Wが!)」

私は口(腹)でその種を噛み締めた!

「うっ!」

これは……不味い!不味すぎる!
例えるなら、中身が穴ぼこだらけになった腐り掛けのキュウリの味がする!前言撤回だ、ご都合主義なんぞ糞食らえ!

ドロンッ!

「(…お、透明になったか?)」

「どこいった〜!?」
「きえちゃった〜?」

まぁいい、結果オーライだな。今のうちだ、逃げるぞ!ご都合主義よ、今回ばかりは見逃してやる。
私は誰に言ってるかもわからず、この戦場を脱出した。




しばらく歩いた。身体がなまってしまっている分、疲労が早い。とりあえず、久しぶりに外に出れて気分は最高なのは確かだからいいのだが…

「アトレさん、見て見て!」

ミントがまた道中で何かを見つけたらしい。ありふれた花だろう。

「笹があるわ、笹が!かわぁいい〜」

「あぁ、笹はいいよな。そのすらっとした葉形が愛くるしくて……ってどこが可愛いんだよっ!!」

思わず突っ込んでしまう。是非、笹のチャームポイントを三行で説明してほしい!

「えー、可愛いじゃないですか、笹。そうだ名前付けましょう!これが、笹太郎、ササミ、ユーカリっていうことで…」

「二つほど別物が混ざってるぞ…。一つは最早植物じゃない、タンパク質だ!…というかそういう問題じゃなくて、何で横にある花にそう反応しない!?」

「この花はコムギコって言うの」

「あぁ、既に知り合いでしたか!!何かすみません!…待て、何故、小麦粉!?」

「発音です、発音。人間界の言語で…なんだったかなぁ、アンノーン文字に似てた気がします。それによると、小麦粉と花って発音そっくりじゃないですか。」

「あぁ、なるほど…随分と分かりにくいボケをかますものだな












…待て、ミント。今、お前、人間界とか言ったか?」

ミントは笹を手で摘み取り、不思議そうに俺を見てきた。

「はい、いいましたけど…。人間界については趣味の範囲である程度の知識はありますから。…そんなことより、この笹、可愛過ぎませんか!?特に笹太郎が?」

「人間界か…。ミント、歩きながらでいいから俺の話を聞いてくれ!
あと、俺の鼻の周りで笹を振り回すな!ちょ、マジやめ…やめて笹太郎!」

「人間界についてですか?はい、いいですけど?」

「良かった、じゃあ、先に行こう……ぶぁっくしょん!!やめろっつったろ!」

「不潔です 」

「(ぐああぁ!前言撤回だああぁっ!こいつのテンションについていけねぇええっ!)」

そんなこんなで俺たちは歩き始めた。道中で笹太郎が更に二つ増えつつも、俺はミントに自分と人間界についての関係を事細かく話した。

「じゃあ、探している方って人間なんですか?」
「そうだ、ファインっていう正義感溢れるやつさ。あいつのお陰で今の俺がある 」

ファイン、一体何処にいるんだ?俺の信頼するパートナー、人間。俺を育ててくれたと言っても過言ではない。俺が珍しいという理由で研究ばかりをする人間とは違って、アイツは…。しかし、そんなこと思っても今はこんな状況なものだから、探すことなど到底出来ない。俺自身はもう出発していいのだが、ミントが離さないのだ。確かに完治したとは自分でも認めがたいが、そこまで心配されるような身であるということも同時に認めがたい。

「あ、着きましたよ!」

ミントの声を聞き、前をまっすぐ見ると、そこには光を美しく透過する湖が広がっていた。

「ここがお前の言っていた湖か…」
「W護神の湖Wと言います。調和の神様が祀られているのです。」

ミントと共に湖畔を歩き回る。凛とした水面は光の屈折で煌き、俺らの瞳を輝かす。湖の一面に見惚れていると、水ポケモンらが水中をゆらゆらと泳いでるのが目に付く。ちゃぽん。そう音を立てて、水ポケモン−−多分、アズマオウ−−が跳ねた。ここにもしっかりと何者かが住んでいるらしい。

「綺麗ですよね。近場だし、散歩場所には丁度良かったですね!」
「そうだな。」

ミントが振り返って笑うので、こっちも微笑み返す。
早く傷を治さなくてはならない、彼女の顔を見て俺はそう思った。ヒトの家に世話になり続けるのはプライドというか何と言うか…自分が情けなく思えてしまう。それに加え、ミントの迷惑もあるから尚更だ。とりあえず、話だけでも…

「ミント、あのさ…」

「あれ、あそこに誰かいませんか?」

ミントの驚きめいた声に俺の言葉は掻き消された。彼女の目線を追うと、そこには黒い誰かがいた。ていうか、倒れてないか?

「ちょっと、大変!倒れてるじゃない!最近はアトレさんみたいな方が多いのかしら?」

「おい、ミント…待て!」

ミントと俺はその黒いポケモンに立ち寄って行った。

to be continued......

ヒート ( 2013/10/04(金) 15:07 )