ポケモン不思議のダンジョン 正義と悪の狭間で





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-第一章 日常という名のスパイラル!-
第八話 Mother's Day@

「ほら、これでいいだろ?」

「あ、ありがとう!」

「じゃあ、次は俺からの願い…聞いてくれるな?」

「…やだ!」

「はっ?」

「僕はここから離れたくない!!」

「おい!落ち着け!」

「いやああああああああ!」



@ファインとアクタートの部屋

「おい、アクア。何してんだ?」

「よお、ファイン。」

いつもは安穏としたギルド。しかし、今日は皆が忙しなく彷徨(うろつ)いている。何か特別な日なのだろうか。そう思う証拠に目の前のアクタートが何やら手紙を書いている。少なくとも自分はアクタートがこんなことをする様子を見るのは初めてだ。ファインは興味津々でそれを覗き込む。

「お、おい!勝手に見んなよ!」
「別にいいじゃねえか。どうして手紙なんて書いてんだ?大雑把なお前がそんな慎重な事やってるとか珍しいぜ。」
「一言多い!…明日はマザーズデイだ。だから、手紙書いてんだ。」

アクタートは照れ臭そうにファインに教える。しかし、ファインにはなんのことだか分かる筈もなく。

「マザーズデイ?」
「母ちゃんに感謝する日だよ。ほら、皆も忙しそうにしてんだろ。」

確かに朝起きた時から気になっていたが、それはマザーズデイという行事のせいらしい。母に感謝する日か、俺も…。ファインは不思議と切なくなった。

「それにしてもアクアの母親か、気になるな。今度会わせてくれよな。」
「あ、あぁ。また、今度な…。」

一瞬、アクタートの顔が陰った気がした。ファインはそれに気付いていたが敢えて掘り返すことはしなかった。何かあったのか…。そんな事を思っていると、後ろからワイワイと騒ぎ声が聞こえてきた。


「ファイン、アクタート!」
「お、リヴか。俺たちに何か用か?」

後ろにいたのはギルドマスターのリヴ。大きな耳と額の渦巻き、そして愛らしい桃色の体が特徴的だ。プクリン系列では珍しいオスであり、そのことも彼の威厳を保っている要因の一つだろう。
よく見ると、此処に来たのはリヴだけではないらしい。後ろに何やら影が見える。

「後ろにいるのは誰だ?」
「あぁ、この子は君らの今回の依頼主だよ!」

リヴの後ろから一匹の青くて大きな耳のポケモンが出て来た。

「マリルのポードです!よろしくお願いします!」
「あぁ、よろしく。」
「じゃあ、二匹ともポードを頼んだよ、ともだち、ともだち〜♪」

リヴは決め台詞とポードを残して自室に戻って行った。それにしても、リヴから依頼主を連れて来るのは自分は初めてだ。まあ、とりあえず…

「じゃあ、とりあえず外に出ようか。」
「そうだな、サンにも知らせないとな。」
「は、はい!」





「はぁ〜、相変わらず海は綺麗ね…」

サンは前にアクタートと一緒に朝日を見ていた場所に座って海を眺めていた。此処にくると荒んだ心が洗われる、いつもなら。
彼女はふと岩場から下を覗くとコイキングが打ち上げられてその場で幾度も跳ねていた。コイキングはやはり無力の象徴とでも言えるだろうか。中には、コイキングを仲間にして伝説のゼロの島を攻略したという話も聞いた事がある。しかし、コイキングを使い熟すのは並大抵の実力じゃ無理だろう。
しかし、彼女にはこの無力な存在を羨望の眼差しで見ていた。それは決して彼女の力が優れていることを自覚している訳ではない。

「あなたはただ跳ねてるだけでズルい…」

再び大きめの波がコイキングに襲い掛かったかと思うと、コイキングはその波にしがみつきそのまま沖へと消えて行った。あんな生き方ができたらどんなに楽だろうか。サンはそう思ったが、そんな気持ちなど誰も判ってくれるはずがない。だって自分で言ってないんだから。

「はぁ、自業自得なのに私何やってるのかしら…」

「サン〜!」

アクタートの声が耳を掠める。サンが後ろを振り向くと、海岸へ続く坂道からアクタートとファインと見知らぬポケモンが駆けてくるのが見えた。サンは両頬を自らの手でパンパンと叩いて気持ちを転換する。

「あら、二匹ともどうしたの?」

「依頼主だ!俺たちにだってさ!」

サンは岩場から飛び降り、三匹のところに行く。ファインはポードにサンを紹介する。

「よろしくね、ポード。」
「はい!では、さっそく依頼内容を…」







「トゲトゲ山とーちゃく♪」
「はしゃぐな、サン。一応、依頼内容を確認するぞ。」

目的地であるトゲトゲ山に着いたファインたちは地図と依頼の手紙を広げて今一度確認を始める。

「依頼内容はポードの弟であるルリリのルリ、そして同行していった探検家であるスリープのリープの救助だ。ポードの話によると、今日の早朝にルリが母親のために伝説の花をリープと一緒に採りに行ったが、暫く経っても帰って来ないらしい。」

ファインが一通り読み終えるとアクタートが手を挙げる。

「なあ、伝説の花って何だ?」
「何故、俺に訊く?サンに訊け、サンに!」
「アクタート、知らないの?トゲトゲ山の一部でしか採れないって言われているカーネーションのことよ。」

ファインは『カーネーション』という言葉を聞いて何故か初めて聞いた言葉ではない気がした。そういえば、知識は無くなっていなかったんだっけ。

「カーネーション、もしかしたら人間界にも在るのかもな…」
「どうしたの、ファイン?」
「カーネーションって聞いた瞬間、カーネーションの情報が頭の中に浮かび上がった。此処に来てカーネーションって初めて聞いたのに、それを既に知っていたとすると、そうなんじゃないかと思ってな。」
「ふーん…。そういえば、知識だけは消えてなかったって言ってたわね。」

「おーい!お前ら、さっさと行くぞ!」

アクタートが呼んでいる。そうだ、もしかしたらルリたちは危険な目に遭ってるのかもしれない。こんなところで油売っている暇は無かったんだ。

「待ってよ、今行くから!行きましょ、ファイン。」

サンがファインの手を握ってアクタートの元へ行く。山の砂利道を走る。サンの手の温もりがじかに伝わってくるのがわかった。まだ、出会って一ヶ月と少ししか経たないが、彼女の溌剌さには既に理解出来ているつもりだ。悪いことは本当に嫌いで困ってる人を見つけたら助けて…。だから、探検家になったんだろうな。ファインは笑いながら走る彼女の横顔を見てそう思った。
すると、横目に映ったアクタートが口をへの字に曲げて膨れている。

「お前らはどっかのカップルかよ!楽しそうに走ってきやがって!」
「何いってんのよ、ドラマや漫画の見過ぎ!」
「ファイン!お前にも言ってんだぞ!」
「サンが手引っ張ってきただけだ。ほら、行くぞ。」
「おい、はぐらかすな!」

ファインは山道をなりふり構わず進む。歩いて行くと段々と岩や土の色合いが変わってきているのがわかった。黒から焦茶色、焦茶色から茶色と次々と淡くなっていく。きっと、山頂に近づいているのだろう。しかし、そのせいか出会す敵も強さを増していく。

「WメガトンパンチW!」
「W水鉄砲W!」
「W火の粉W!」

「グアッ!」

断末魔をあげてゴーリキーが倒れる。強敵が続いたせいで流石のサンも疲れてぐったりしている。

「疲れた〜!ちょっと休まない?」
「お前、本当に山苦手だな!もう少しだから頑張ろうぜ!」

アクタートのその言葉と同時に山頂らしきところが見えてきた。サンライズの三匹は走ってラストスパートをかける。すると山頂を知らせる看板が見えてきた。サンは飛び出して山頂に足を付く。

「はーーー!やっと着いた〜!それにしても山頂というより岩壁に囲まれた広場って感じね。」
「やっと頂上だな。しかし、今まで見かけなかったとなるとルリたちは…」


「いやあああああああああああああああああぁぁぁぁ!!」

「「「!!!」」」

突然、山頂一帯に悲鳴が響く。サンライズの間に嫌な予感が走る。

「ファイン、アクア、あそこ!」

サンが指を差した場所を見ると、そこにはスリープとルリリがいた。

「誰かっ!誰か、助けてえ!」
「ルリくん!お願いだ、静かにしてくれ!」

なんと、そこにいたのは紛れもないリープに襲われるルリだった。

to be continued......


ヒート ( 2012/08/28(火) 13:01 )