ポケモン不思議のダンジョン 正義と悪の狭間で





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-第一章 日常という名のスパイラル!-
第五話 初任務A

時々現れる敵を倒しつつ、前進し森の奥地へと進んでいく。流石に先程のドライな空気は無くなり、湿気が感じられるようになって来ている。

「ジメジメしてきたな!テンション上がるぜ!」
「流石、水ポケモン…、俺は元気出ないな。」
「ほら、ファイン!ぐちぐち言う前に歩きなさい。多分もうすぐ・・・・ほら!」

サンの指差す方向を見ると開けた場所に出た。サンライズの三匹はそこに出て辺りを見渡す。すると、アクタートがあるものを見つける。

「おい、あれ見ろよ。」

二匹はアクタートの方向へと顔を向けると空を突き破るかのように聳えた大きな木があった。思わずファインは感嘆の声を漏らす。

「すげえ・・・・ん?木に成ってる実ってセカイイチか?大きいぞ。」
「そうね。よし、早速採りましょう!アクア、水鉄砲で落として!」
「おぅよ!水鉄砲!」

アクタートは口に水を溜めて勢いよく発射する。しかし、水鉄砲はセカイイチまで惜しくも届かなかった。

「チクショー…届かねぇ…。」
「サンの電気ショックは無理なのか?」
「多分、無理。私、本来は遠距離攻撃は苦手なのよ。どちらかと言うと、物理攻撃の方が得意よ。」

     ファインは妙にその言葉に納得が言った。先日、殴られたことの衝撃が強かったのだろう。ファインは痛くもないのに頬を摩る。

「物理攻撃か・・・・、ん、閃いた!」
「なんだよ、ファイン?俺の水鉄砲でも届かなかったんだぜ?」
「いや、これなら多分…。サン、木を思いっきり殴れ。」
「どうして……ああ!衝撃で落とすってことね!」

サンはパチンと手を叩いて理解の意を示す。そして、サンは二匹に後ろに下がれと警告をした。サンは手足を回して態勢を整える。

「じゃあ、いくわよ…」
「…」

     ファインとアクタートは固唾を飲んで行く末を見守る。無事に終わるといいが…

「よし、メガトンパンチ!!!」

サンのメガトンパンチがセカイイチの木の中心に射抜く。轟音が木と辺りに響いて、体が痺れる。サンは暫く拳を木に付けたまま項垂れる。

「……。」
「落ちてこねえな。」
「いや、下見てみろ!」

下を覗くと円い影が辺りに散らばっているのが分かった。そして影は大きさを増してきて…

「おー、いっぱい落ちて…くるううう!!!」
「あぶねっ!」

巨大なセカイイチは隕石の如くファインたち目掛けて落下してくる!二匹は慌てふためきながらセカイイチを回避していった。ファインはコレを落とした張本人を探す。

「おっ!おい、サン!お前強くやり…って何やってんだよ!」
「ファイン、アクア、これ甘くて美味しいわよ。はむっ、」

サンは項垂れていたかと思うと、落下範囲から外れた場所でセカイイチを頬張っていた。しかし、そんな甘美なセカイイチは理不尽な程にファインたちへ残酷に降り注がれる。
そして、数十秒後、怒濤のセカイイチのバトルフェイズは終了した。

「はぁっ…はぁっ…」
「ぜー…ぜー…」
「モグ…ふきゃりともだいひょうふ?」

セカイイチを口に含んだまま労いの言葉をかけるサン。全然そのような気持ちを読み取れないのは自分の洞察力がないだけか?

「あぁ、なんとかな…」
「それにしても、こんなにセカイイチが…」
「はやくリヴにもってかえりまひょう!モグモグ…」



グオオオオオオオォォォ…



「ん、いま何か唸り声が聞こえなかったか?」
「ん〜、しょう?モグモグ…ん…っはー!美味しかった?!」
「サン、後ろ…」
「何よ?」

セカイイチを食べ終わったサンが振り返ると−−−−−−

「グオオオオオオ!!お前ら何者だ!侵入者め!我が縄張りに許可なく入ったことを後悔するがいい!」

「カイロス!?」

サンの背後から襲い掛かってきたのはカイロス。どうやら自分の縄張りを侵されたことに大変御立腹のようである。また面倒なことに…

「ちょちょちょっと待て!落ち着いて話し合いをしようではないか!ハッハッハ!」
「黙れ!W挟むW!」

アクタートの提案など耳に入らないようだ。カイロスはサンの横をすり抜けてアクタートに攻撃を仕掛けてきた。

「いきなり攻撃かよ!仕方ねぇな、力付くで黙らせるしかねぇか!ファイン、サンを頼む!」
「あぁ、わかった!」
「私が守られる立場に見えるの?しょうがないわね、アクア頼んだわよ!」

ファインとサンは応援に回った。
アクタートはカイロスの挟むをバックステップで躱し、片足で着地して、そのまま地面を踏み切り反撃する!

「W頭突きW!」
「グッ…」

カイロスは腕を十字にしてガードを決める。反動で二匹共弾き飛ばされるが、見事に着地する。

「なかなかやるな!次は水鉄砲だ!」

しかし、カイロスは水鉄砲を避け、そのままアクアに迅雷の如く向かって突撃してくる。

「早っ…!」
「喰らえ!シザークロス!」
「グアッ!」

アクタートは攻撃を喰らい、木へ飛ばされ叩きつけられる。そこにカイロスがすかさず鍬で木に縛り付ける!

「ぐあああぁぁ…!」
「ふっ…、此処に来たのが運の尽きだな。すぐ楽にしてやる。」

カイロスの鍬は木を削りながら内側にへとアクタートを縛る強さを増してくる。アクタートから苦悶の声が漏れる。

「ぐあぁぁああぁ…!!痛ぇじゃねぇ…か…!」

「アクア!」
「おい、やばいんじゃないか!?アクア!それでも男かよ!この任務任せとけって言ったのは誰だ!?」

ファインがアクタートを激励する。アクタートは口でニヤリと笑う。

「そうだったな…ファイン…。くっ、絶対に絶対に−−−−」

アクタートは腕ごと束縛されていたが、無理矢理腕だけを抜く。そして、手でカイロスの鍬を外側へと押し出す。

「くっ、まだ抵抗するか!」

「俺らは…サンライズは…





















こんなところでくたばらねえええええええええええええええぇぇぇ!!!!!」

「グアッ!」

アクタートは鍬を押し切って束縛から抜け出す。カイロスは余りの力に狼狽し、後退りする。

「凄いわ、アクア!」
「よしっ!」

「ぜってえ、負けねえ!ぜってえ、セカイイチをギルドに持って帰るんだ!」
「ん?セカイイチ…?」

カイロスがセカイイチという単語を聞いた途端静かになる。アクタートはそんなカイロスの様子に気付く。

「おい、早くかかって来い!」
「お前今セカイイチが欲しいと言ったか?」
「あ、あぁ、そうだが…」
「じゃあ、勝手に採ってけ。」

サンライズ一同は唖然とする。無料(タダ)でくれるだと!?何故いきなりそんなこと言うんだ。

「お、おい、ビビったのか?」
「違う。お主ら、プクリンのギルドの者だろう?」
「あぁ…、でもどうして?」

カイロスは落ちているセカイイチを拾い上げ、一口囓る。そして、十分に咀嚼してそれを飲み込む。

「セカイイチをわざわざこんなところに採りに来る連中はお前らのギルドしかいないからな。しかし、縄張り争いを仕掛けて来る輩は大勢いるんだ。お前らもその一部と思ってしまってな。勘違いして済まなかった。では、それを採ったら、すぐ帰れ。」

「おい、待てよ!勝負はまだ終わって…っ!!?」
「これでもまだやるか?」

クタートが言い終わる前に高速移動で鍬を彼の首元に挟み込もうとする。鍬は僅差で首に触れていない。アクタートの首筋に冷や汗が滴る。

「…。」
「ふっ、さっさと帰ってセカイイチを親方様にでも渡すんだな。」

 カイロスは皮肉めいた言葉を発して鍬をアクタートの首から放す。そして、セカイイチの木へと上って帰っていった。見上げてみると、他の虫ポケモンが此方を見ている。どうやら、カイロスの言う通りここは彼等の縄張りのようだ。何も知らずに此処に踏み込んで荒らしてしまったことに関しては此方に非があるだろう。

「ちょっと待って!」
「…何だ?」

サンがカイロスを呼び止める。サンはカイロスが此方に気付いたことを確認して続ける。

「あなたの名前って何?」
「・・・・フリクト」

     カイロスは名前を言って、逃げるように住処へと戻って行った。

「俺はアクタートだ!覚えてろ!」
「もういないぞ。」
「アクア、残念でした?。さあ、セカイイチたくさん持って帰りましょう!」

サンとファインはセカイイチを拾い始める。アクタートは地面を見つめて呆然としている。






−−さっさと帰ってセカイイチを親方様にでも渡すんだな






アクタートの脳裏にフリクトの言葉が甦る。あの強さは確かに本物だった。あの素早さ、あの攻撃力、そして技の使い方も全てにおいてアイツの方が勝っていた。だから、俺が負けたんだ。

−−縄張り争いを仕掛けて来る輩は大勢いるんだ

でも、何だろうか。この違和感…

「アクア!」
「!!」
「どうしたの、ぼーっとしちゃって。さっさとセカイイチを回収して帰るわよ。」

サンの声で現実に引き戻される。そうだよ、今はそんなこと気にしてても仕方ない。所詮、アイツは赤の他人で今日で会うのは最後だろうしな。アクタートはそう自分に言い聞かせてフリクトのことを水に流した。

「おぅ、すまねぇ。そうだな、さっさと帰ってセカイイチ渡さなきゃな。」

サンライズはセカイイチをなんとか手に入れることができた。そして、セカイイチをつまみ食いしつつ夕闇の中を帰って行った。









「たっだいまー!」

「おぉ!やっと帰って来たか!さぁ、お前たち、親方様が部屋でお待ちだ。」

サンライズ一同はアルトに連れてかれ親方部屋へと向かった。

「あっ、サンライズの三匹!おかえり〜、ともだち、ともだち〜♪」
「さぁ、セカイイチを渡すんだ。」
「あ〜、そのことなんだけど…















セカイイチ一個も残ってなかったの。だから、持って帰れなかったわ、ゴメン☆」
「(はぁ!?何言って…)」

ファインとアクタートがサンの後ろ首を掴んで此方に引き寄せる。そして、小声で耳打つ。

「サン、どういうことだ!?」
「俺の初任務を失敗という二文字にしたいのか!?」
「違うわよ。ただね、リヴのたぁーーーーーーーーが気になっただけよ♪いつも偉そうにしてるアルトが怯えるものって気になるじゃない!」

正直、気にならなかったと言ったら嘘になる。しかし、初任務を意図的に失敗とすることには少し抵抗があった。アクタートもそのことを嫌がっているから、多分大丈夫…

「まぁ、いいんじゃね?面白そうだしよ!」
「さっすが、アクアね!ノリがいいわ!」

…じゃなかった。ファインはあっさりとマイノリティーになってしまった。こうなると、もう選択の余地が無い。

「わかったよ、やればいいんだろう…」
「よし、満場一致と言うことで…」

サンは満面の笑みでアルトに振り返る。

「だから、アルト、ゴメンねー☆」
「ん、アルト、どうした?おーい?」

すると、アルトはサンの言葉と共に一切の身動きをしなくなった。アクタートが手を顔の前に振っても反応が無い。

「サンライズの皆、セカイイチはどこ?」
「お…やか……た様…」

アルトは体を強張らせて、リヴと向き合う。勿論、体をガチガチと震えさせて。

「ん?どうしたの?」
「サ、サンライズが、に、任務、を失敗し、しししたようです、」
「失敗は誰でもあるよね♪ファインは初めてだったんだから仕方無いよね。…で、セカイイチは?」

リヴには話の内容が掴めていないようで、執拗にアルトにセカイイチの行方を尋ねる。アルトは口を引きつらせる。

「あのですね、親方様、セカイイチは…」
「セカイイチは無いの!」

捏造された事実(アルト自身は気付いていないが)を伝えることを躊躇するアルトに苛立ったサンはきっぱりとリヴに言った。

「え、今なんて?」
「セカイイチは無いの!全く!一個も!」
「え…」

リヴは驚愕の虚実な真実に愕然とする。目にはショックからか涙で潤んでいて…

「そ、そんな…」
「リヴ、コレが運命なの。だから、我慢し…」
「そんなセカイイチセカイイチ僕の僕の僕のセカイイチセカイイチううううううううあ……ああぁああぁっ…!」

リヴに異変が生じる。てか、リンゴ一個でここまで…。リヴは今にも泣き出しそうだ。アルトはその様子に気付き、すごい形相でサンライズに忠告する。

「お前ら耳を塞げえぇっ!!!」
「!!」

サンライズの三人は咄嗟に耳を塞ぐ。一体、何が−−−−

「うわああぁぁ…あ、あぁ、うわあああああああああああーーーーーーーーん!!!!!!」

リヴが突如、超音波のように泣き叫ぶ。部屋中が軋み、周りの陶器に皹(ひび)が入り、炎が消える。まるで頭の中で爆発を起こしているようだ!

「うっ!耳が!」
「何これ、頭が!!」
「ぐああ、鼓膜が!」

くそっ、こんな状態、一分一秒も耐えられない!ファインはトレジャーバックからセカイイチを取り出してセカイイチをリヴに投げつける。

「いけぇ!!」
「うわあああああああああああーーーむぐっ!!…あっ、セカイイチだ?」

リヴは泣き止み、セカイイチを頭の上に乗せて喜びのステップを踏む。一方、サンライズとアルトは煉獄から解放され安堵の溜息をつく。

「ファイン、ありがと…」
「良い判断だった…」
「へへ…」

これで落ち着いたかと思いきや、アルトが凄い形相で此方を見下す。

「お前ら、何故セカイイチを持っているんだ?さっき、『セカイイチ残ってなかったの、ゴメンねー☆』って言ったのは何処のどいつだ…?」
「ははは…、アルト、ゴメンね。ちょっとリヴのたぁーーーーーーーーがどういうものか怖いもの見たさでやっちゃたのよ、ゴメンね☆」
「だから、やめろって言ったじゃねえか…」

アルトは跪いているサンライズを一瞥する。そして、上を向いて何かを思案している。きっと、初めてのことだからそのことを考慮してくれているのだろう、多分、この失敗擬を許してくれるだろうし、だって、俺らはちゃんとセカイイチを−−−

「お前ら、一週間、飯抜きだああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

「え」
「え」
「え…?」


































「ええええええぇぇぇぇ〜〜〜〜〜!!!??!??」

こうして俺の初任務は不思議な結果に終わった。

to be continued......


ヒート ( 2012/08/25(土) 13:37 )