ポケモン不思議のダンジョン 正義と悪の狭間で





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-第一章 日常という名のスパイラル!-
第三十話 守護神の森B

「ひとーつ!仕事はゼッタイサボらない〜!」

「ふたーつ!脱走したらオシオキだ!」

「みっつー!皆、明るい楽しいギルド〜!!」

 朝の誓いをAチームの欠けた状態で進める。今日は流石にリヴは立ち寝はしてないようだ。眠そうだけど。

「さて、今日は遠征の続きだ!皆、ギルドの為に頑張っていこう!」

「うっせぇよ、アルト!」
「お前、リヴに守られっぱなしだったんだろうがー!」

「そこウルサイ!!…えー、コホンッ」

 アルトは咳払いを一つして話を続けた。

「今日はこの森の奥にある湖に行く!そこにはW草のラッパWというお宝があるらしいのだ、それを吹けばたちま…」

 アルトの話が淡々と続く。そのお宝にも興味が湧かなかった訳ではなかったが、何よりもW新しい発見Wが在るかもしれないということに期待を募らせていた。

≪ファイン、随分滾ってるようだね≫

「(うわっ…その能力久し振りだな!まぁ、やっとお前が離れてくれるからなー)」
≪ファインってば本当は寂しいくせに!そんな意地張っちゃって…≫

「(喧嘩売ってんのか!?)」

≪へへっ…そんなことより、何かが近づいてきてるんだ、悪いものが。≫

 突然のミュウの告白に驚くファイン。

「(悪いもの…?まさか、『王様』云々か?)」


≪まぁ心当たりはそれぐらいしかないよね。≫

 ファインは顎に手をやり考える。今度もサンライズを狙っているとしたら皆を危険な目に遭わせることになってしまう。だからと言って、独断で色々行動するのもいけない気がした。

「(うーん、少しリヴに相談するか…)」

「それじゃ、三十分後に出発するよ!それまでに準備しといてね〜!」

 リヴが一時解散の合図をした。皆がゾロゾロ、部屋に戻る中でファインはリヴに話し掛ける。

「リヴ。」

「ん?どうしたの、ファイン?」

「頼みがあるんだけど…」







三十分後…

 皆は荷物を持って出てきた。バックに色々な木の実を詰め込み、備えは大丈夫だ。

「それじゃ、皆頑張ってね!」

「あれ?リヴは行かないの?」

 ラビィが手ぶらの彼を見て言う。リヴは笑顔で返答する。

「僕は行くよ!行かないのはアルトとBチームの皆だね」

 当然だが、周りの皆はキョトンとする。

「どうして此処に残るの?」

 サンが素朴な疑問をする。リヴは少し考えて、

「ファインがね、もうすぐここに悪い奴らがくるだって」

 と、あっさり言った。サンライズの三匹は驚く。

「またあの悪いポケモンがくるの?」
「あの海老野郎か。『王様』ってやつの…」
「……。」

 不安感が募る三匹にファインが目前に立つ。

「大丈夫だ!そのために今回村に残って用心棒をしてくれるよう頼んだんだ、Bチームとアルトにな!」

「僕たちに任せて下さい!」
「ヒヒヒ…」
「あっしも頑張るでゲス!」

 Bチームもやる気満々のようだ。もしかしたら来ないかもしれないのだが、彼らに貴重な遠征の時間を割いてくれたことは感謝してもしきれない。

「あとAチームがもし来たらということもあるし、色々と都合がいいんだよね。」

 リヴはちょっと申し訳無さそうに言った。

「じゃあ、行きましょう!」
「ミステリージャングルの奥地へ!」

 こうして、サンライズ、チャームズ、そしてリヴは村を後にした。



***



「博士!転送の準備完了しました!」

「よし…」

ここはとある研究施設。そこにいるのは紛れもなく−−−−−人間。

「それでは、頼んだぞアトレ…」

「…。」

WアトレWと呼ばれた者は人間ではなかった。彼はただ静かに肯き、転送装置へと入っていった。

「脈良好、呼吸も安定。今ならいけます!」

「行くぞ!」

 博士と呼ばれた人間は赤いスイッチを押した。

「絶対に見つけてくれ…」

 そう言うと、WアトレWは光ったかと思うと忽然と消えてしまった。






 鬱蒼と草木が這っていた。道なのかそうか分からない道を進み、草木で身体を時たま切られ、湿った土を踏みしめてファインたちはやっと辿り着いた。

『ただいまあぁ!』

「ここがミュウの…」

「スゴイ…」

 熱帯の深奥には透明な湖が広がっていた。光は木で差し込まないはずなのに明るい。

『ここが僕の家みたいなところ−−−−第六の湖、護神(ごしん)の湖。』

「まんまお前だな」

 ファインはそう言うと、ミュウは微笑んだ。そして、彼はフワフワと湖の中心へと向かう。

「ミュウ…?」

「あ、あれを見て!ミュウの後ろ!」

 サンが指の先にはミュウについて行くたくさんの水タイプのポケモンがいた。トサキント、ミニリュウ、ハスボー、チョンチー、クラブ…。様々なポケモンがミュウに惹かれて後をついていっていた。

「ミュウを迎えているのかしら…?」

 神秘的な光景だ。そして、ミュウは湖の中央で止まり、後方に振り返る。赤と黒の斑(まだら)と大きく生えた一角が特徴のアズマオウが一匹だけ前に出ていた。ミュウに深々とお辞儀をする。

「ミュウ様、お待ち致してました」
『ご苦労様。湖の管理、アリガトね』
「有難き御言葉…」

 そして、ミュウは早速本題へと移った。

『僕の身体は?』
「ただいま持って来させます」

 そう言って、暫くすると湖底から泡沫と共に何かが上がってきた。

「ミュウ様の御身体です」

 別のポケモンが湖底からミュウの抜け殻と共に浮上してきた。瞳は閉じられていて、ミュウは自分を久し振りに見て嬉しくなる。

『じゃあ、始めるよ…』

 ミュウはサイコキネシスで自分の身体を目の前まで持ち上げる。

『調和<ハーモナイズ>、開始…』

 そう言い放った瞬間、湖が光り出す!湖の際から光がカーテンのよう湖を囲んだ。
 離れて見ていたファインたちも余りの眩さに手で目を覆う

「ミュウ、とうとう…」
「眩しいっ…!」
「どんどん強くなるぞ!」

 光が最高に強くなり、辺りは白で包まれた。





 暫くして、光は静かに落ち着いていき視界がはっきりしてくる。ファインは強い光を恐れつつゆっくりと目を開けた。

「ミュウ……」

「ファイン、ありがとう……此処まで連れてきてくれて…」

 ミュウの声は心ではなく耳に直接響いた。すると、ミュウが機嫌良さそうにファインの胸に飛び込んだ。

「へっ!?」

 思わず変な声を出してしまう。ミュウの顔が身体に感触となって伝わってくる。ミュウは顔を上目遣いにファインを見た。

「ファイン、初めまして!」
「……」

 ファインは戸惑ったが、すぐにその意味を理解した。

「おう、はじめまして!」

 ファインも和やかに返事をした。それを見たサーナが物申した。

「あれ、貴方たち知り合いじゃありませんでしたっけ?」

 そこでサンが助言した。

「そういう安直なものじゃないと思いますよ!でも、サーナさんって読心できるんじゃ……」
「進んでやってる訳じゃないの。結構体力使うのよねー」
「そうなんですか……とりあえず、ファイン達はきっと本当に出会ったということですよ」

 すると、アクタートがそこに口を挟んできた。

「珍しく良い事いうじゃねーか」
「どう見直した?」
「調子乗んなぁ〜」

 そんな会話をしてるとミュウとファインが向かってきた。

「あら、お二人さん、随分仲良しになったのね?」

 サンが二匹を茶化した。ファインはそれに不服だったのか反論する。

「こいつと?冗談はやめてくれ。」
「さっき、ファインがギュッとしてきて僕驚いちゃったよ!昨日までさっさと離れろとか言ってのに…ね?」

「してねーよ!!言ってねー…いや、昨日のは確かに言った!
だってよ、自分の心を無条件に読み取られるのは不愉快だろ!」

 ファインは口をへの字に曲げてミュウに不快の念を露わにする。それにも関わらず、ミュウは面白いもののようにファインをニコニコと見つめていた。

「ファインのいけずー!」

「あ"ぁん?おい、ミュウ、馬鹿にするのも大概に…」


ズドオオオオオオォォォオオンッッ!!!!


「っ!!!?」
「なんだ今の音!?」


 何処かで爆発したような音が轟く!ミュウがすぐさま上に上昇した。

「……」

「ミュウ!そっから何か見えるか!?」

「村の方向から煙が出てる……」

 ファインはそれを聞いて、舌打ちをする。そう、ミュウの予想通り来てしまったのだ、悪い奴らが。

「よしっ、早く村に行くぞ!」

 ファインがそう言って走り出そうとした。その時、

「待って!」
「リヴ!何で…!?」

 リヴが前に立ちはだかる。しかし、少しは躊躇いがあったもののファインは構わず前に進む。

「待ってよ!」

 リヴがファインの肩を掴んで止めようとする。が、それをファインは腕を回して振り払い、リヴに面向かう。

「何だよ!俺らの仲間が、村の皆が悪モンにやられてるんだぞ!早くしないと…」

「ファイン、落ち着いて。今急いで行っても身を滅ぼすだけになってしまう。」

「でもよ……」

「でもじゃないっ!!!」

 リヴらしからぬ大声が出た。ハイパーボイスでもないのに。ファインは思わず竦(すく)んでしまう。リヴは落ち着いて続けた。

「このまま行ったらそのまま戦闘だよ。ここで数分、作戦を立ててから行ってもいいんじゃないの?だって、あっちには僕らの仲間がいるじゃないか!」

「……!!」

 ファインはハッとしたが、俯瞰し続ける。

「最近、君たちサンライズは新人ながらも普通の探検隊よりも成果がよく出ている。でも、君らと同じように頑張って、もっと頑張っている仲間なんてたくさんいるんだよ。皆、君たちのように目立ってないだけだ。」

「……」

「僕たちはトモダチだよ。少しは彼らの実力も信じてもいいんじゃない……?」

 リヴはそう言うと、ファインの前から離れて指示を出し始めた。

「とりあえず、持ち物の確認をして!次に陣形として、チャームズが前衛だね。」

「オッケー、リヴ!」
「アタイらに…」
「任せてね!」

「その後ろにサンライズ。僕はさらにその後ろから行くよ。それでミュウは森の地理に詳しいよね?ここから、村への最短ルートで案内して!」

「うん、わかったー。」

 皆はリヴに言われたとおり動く。しかし、ファインだけは情けなく狼狽えていた。その時だった。

ぽんっ

「…うわっ!」

「全く、ファイン。さっさと行くわよ。」

 サンが後ろから肩を叩く。思わずファインはびっくりしてしまった。ファインは気まずそうにサンと向き合う。

「……」

「何、落ち込んでるのよ?別にファインは間違ったこと言ってないんだから……」

「そ、そうか…?」

「あぁ、そうだ!」

 次にアクタートが前に出た。

「確かにお前は無鉄砲で、無茶ばっかしてっけど…」

「……」

「なんやかんやで全部結果出してるしさ。別に落ち込む必要はないと思うぜ…」

 アクタートは頬を赤らめながら言う。臭い台詞に自分自身が照れてしまった様だ。

「くくく…」

 すると、ファインは急に笑い始める。

「な、何だよ…」

「いや、無鉄砲で無茶って……お前自身のことじゃないかって思ってさ。ははは!」
「〜〜っ!!し、心配してやってんのに、何なんだよ!」

 アクタートが暴走し始めそうだったのでシードが察してファインに言った。

「ぼ、僕もファインは落ち込まなくていいと思うんだ。ファインのおかげで…もちろん皆のおかげでもあるけどさ…」

 シードは照れる顔を俯かせながら続ける。

「……特にファインのおかげで、僕は変われたって思うんだ!あの時、僕のことW正義<ヒーロー>Wって言ってくれたことスゴく嬉しかった。」

 シードは顔を上げた。

「だから、僕はファインみたいに自分を顧みずに他人を守ろうとすることがスゴイって思ったし、同時に僕もそうなりたいなって思ったんだ。」

「……」

「ファイン、もっと自信持ってよ!少なくとも僕たちはファインのこと信じてるんだ!」

 三匹が輝いて見えた。いきなり『人間』とかいってこんな怪しい奴を匿ってくれた奴ら。ファインは、これが仲間なのかな、って少しばかり思う。
 そして、ファインは決心した。

「じゃあ、俺もお前ら信じなきゃな。」

 ファインは三匹の顔を見て、

「なんたって俺らは将来有望株探検隊WサンライズWだしな!」

「ファイン…!」
「おぅっ!」
「そうだね!」

 全員は結束を確認した。遠目で見ていたリヴは彼らの中にあった子供らしさに少し微笑む。

「…じゃあ、サンライズも結束したとこでそろそろ向かうよ!」

「「「「「おおおぉ!!」」」」」

 全員は村へと足を運び始めた。





 時は少しばかり遡る…。

 アルトが宿場の前でボーッと立っていた。

「ふあぁ…」

 朝からずっとこの状態だ。リヴに言われたから仕方ないとしても延々とこれを続けるのは流石に厳しい。

「(親方様は何故あのミュウの言うことを信じたんだ?普段は、ああ見えても慎重なのだけども…)」

 敵が来るかもしれない、そんな発言がきっかけでこうなってしまった。アルトは苛立ちを表すかの様に腰に羽を当てながら、足でカツカツと地面を叩く。

 その時だった。

「アルト。」

「どうした?ウィリー?」

「壺の件(くだん)だ。」

 来たのは、ドグロッグのウィリー。彼の趣味はなんといっても壺オンリー。つまり、彼が訊ねることと言えば、壺しかないのだ。

「そう言えば、お前そのために来たと言ってたな…。村長の家にあるんじゃないか?」

「何処だ?」

「あっちだよ。」

 アルトはひょいと適当に羽で指し示した。

「ヒヒヒ、あんがとよ…」

「敵が来るかもしれないんだから注意しなよ。」

 そして適当に注意もしといた。正直、スゴく暇だから何か起こらないか、とどこかで思っていた。一応、村民は宿へ全員避難させてる、多分。しかし、いくら余裕があっても部屋に詰め込まれるのは些か不愉快だとは思う。

「はぁ、もう暇すぎて…敵でも何でも来ないかね〜。私がいれば、どんな奴もちょちょいのちょ〜いだ!」















「全員、攻撃開始…」














「おや?急に暗くなったな」

 アルトは急に辺りが暗くなったと思った。空を見上げると、太陽を中心に黒いものが点々とそていた。

「何だ?ポッポの大群か?」

「おい、アルト。壺置くとこあるか?」

 その時、ウィリーが嬉しそうに帰って来た。

「おぅ、ウィリー。重そうな壺だな。…それより、あの空の点々って何だ?」

 再び見上げると、個々の点が大きくなってる気がした。此方に向かって…

「スピアー…?」

「スピアーの大群か?」

「いや、ドクケイル、ガーメイル、モルフォン…一杯いるぞ!」

「お前、目が良いなぁ」

 アルトは自虐するようにウィリーの視力を褒める。

「ん…スピアーが全員こっち向けて針を…」
「何だ、どういうことだ?」










「発射」











「……」

「おい、ウィリー、どうした?」

 黒い点が大きくなっていく。ウィリーは壺を落としてしまう。それに少しヒビが入った。

「来る…」

「何が?」

 だんだん黒い点は大きくなる。ウィリーは冷や汗を垂らした。

「…アルト」

「だから、何だって!?」

「敵が…」










「来た」

「…え?」

 アルトは再び空を見上げた。もう黒い点でない。

「あれは…Wミサイル針W!!!」

 ウィリーは叫ぶ。

「皆、逃げろおおおおおおおおおおおおお!!!!!襲来だああああ!!!」

 ミサイル針が無数にこっちに、いや、村全体に向けて飛んで来た!
 そのときにアルトはマッスグマの親子を見つけた。

「おかぁ、あれ何?」
「…!?危ない!!」

「っ!!」
「アルト!!…W守るW!」

 ウィリーはW守るWで防御!
 しかし、アルトの体はその範囲から外れる。彼の体は既に親子に向かっていた。素早く親子の前に立ち、構える!

「Wオウム返しW!!」

 アルトの飛ばした羽は鋭利な針となり、突撃してくる針を弾き返す。弾幕は思ったより薄く、アルトを囲んで針は地面に刺さる。

「はぁ…はぁ…」

「おかあぁああっ!!」
「ありがとうございます、ありがとうございます!!」

 アルトは安心した。自分でも意識より先に体が動いていたものだから驚く。

「早く宿へ…!」

「はいっ!」
「おじさん、ありがとう!」

 親子はそこらに刺さった針をよけて去っていく。アルトは心配しながらそれを見ていると、ウィリーが寄ってきた。

「無事だったみてぇだな」
「あぁ…親子も守れた」

 ウィリーは鼻で少し笑って続ける。

「ヒヒ…親方の巾着袋かと思ってたが予想外だ」
「お、おい!それが親方様の一番弟子にいう台詞かああ!」
「それより、こんな風に奇襲をかけてくるとは…。他の奴らは…」

 辺りをみると、針が無尽に刺さっている。家にも、泥道にも、木にも。幸い、家の中に針は入り込んでないようだ。アルトは安堵して羽を広げる準備をした。

「じゃあ、行くか…」
「(そう言えば…さっきから変な匂いが…)」

 ウィリーが違和感を感じた。鼻をつく刺激臭。ウィリーはその時、下に刺さっている針どもを見た。

「……。」

 シュウウウゥ…

「…!!?針から硝煙が!!アルト!」
「うわぉっ!」

 嫌な予感にウィリーは飛び立とうとするアルトを引き止め、W守るWを繰り出す!

「ウィリー、いきなり首を掴むな!危ないだろうが!!!」













「三、二、一、零…」



 一瞬、音が止む。そして…










 閃光が広がる。轟音が響く。そして、それが一気に爆風と化して村を容赦無く飲み込んだ!

「うわあああああっ!!!」
「うっ!!!」

 ウィリーはアルトを掴んだまま防御し続ける!爆風の熱が体に伝わり今にも悲鳴をあげそうだ。辺りは全て硝煙と土煙でなにも分からない。
 そして、熱さに耐えつつも、向かいくる煙が薄れていく。ウィリーはW守るWを解除して、その場に跪いた。アルトは予想外の出来事に呆然としていた。

「あ、あ…びっくりしたあ…。一体、何が…」
「はぁっ…はぁっ…」

 数秒の出来事だった。そこに立っていた家は屋根から大破していた。辺りは燃えて、田畠などは完全に抉られていた。

「あっ…!」
「どうした?」

 アルトは急に立ち上がって走り出した。それはさっきの親子が去って行った方向だった。
 暫く行くと子供の声が聞こえた。泣き声だ。

「おかああああぁっ!!!おかあぁああっ!!!」

「そんな……」

 背中に大火傷を負ったマッスグマがジグザグマの隣に倒れていた。横のジグザグマは倒れる母に涙を流していた。

「大丈夫か!?」

「おかぁがああ!!おかぁがああ!!!うわああぁっん!!」

 ジグザグマがアルトの胸に涙で濡らした頬を寄せてきた。アルトは呆然としつつも子供を羽で寄せる。その時だ。

「…くっ……」

 マッスグマから声が聞こえた。

「まだ、生きてる!!」
「えっ!?」

 アルトは子供一緒にマッスグマに駆け寄る。

「…おかぁっ!!」
「あ…良かっ…た…無事で……」

 背中の火傷が酷い。赤黒く毛を汚していた。そこにウィリーが駆け足で来た。

「アルト、置いてくな!」

「ウィリー、丁度良い!この方と子供を宿まで運んでくれ!あと、もう一つ、それで村民に治療が出来るやつがいるかどうか訊いてくれ!
あ、あと、残ってるメンバーどもに被害者が他に居ないか確認をするように!」

「あ、あぁ!小僧、お母さんを助けるぞ!」
「う…うん!」

 ウィリーは母親を背負う。子供もそれを手伝い、後ろから彼を押していた。きっと助かるだろう。

「はぁ…」

 アルトは後悔した。あの時、針が降り終わった後に、ちゃんと自分が連れて行けば良かった、と。

「(しかし、今はそんな暇じゃない…。これは敵の襲来だ。親方様が来るまでに状況を…)」


「あらあら、これは酷い」

 村の入り口から声が聞こえた。そこには一匹のスピアーと虫の大群。

「クヒヒ、あんたは『プクリンのギルド』の師匠の一番弟子だっけか?」

「まさか…」

 スピアーはニタリと不気味な笑みを浮かべる。


「こんにちは。俺はヴィー、『王』からの使者。さて、サンライズは何処かな…?ククク……」

to be continued......

ヒート ( 2012/12/05(水) 22:01 )