ポケモン不思議のダンジョン 正義と悪の狭間で





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-第一章 日常という名のスパイラル!-
第二話 ようこそ!プクリンのギルドへ!@

「ねぇ、ファイン大丈夫…?」
「……。」

浜辺に跪き、今自分に起こっている不可解かつ奇妙奇天烈な現象を頭の中で幾度も反芻するが、結果は謎のまま。今の心情を例えるなら、イコールキーが壊れた電卓で計算をしている時に似ている。

「お前らにイコールの効かない電卓使う気持ちがわかるか!?」

「いきなりどうしたの!?」

こいつらに当たっても仕方ない。ファインは自分を落ち着ける為に短い腕を組んで思惟する。しかし、やはり答えはアンノーン。まるで、悪夢を見ているよう……んっ、悪夢?

「ハハハ!!」
「今度はいきなり笑い出した…アーユーオーケー?」
「よし、アクタート、俺を殴れ。」
「え、まさか、そういう趣味をお持ちの方ですか?」
「違う違う!ほらよく言うだろ、夢から醒めるには衝撃を与えろって。」
「ユメ…?」

そうそう、コレはきっと特に何でもない夢だよ、きっとじゃなくて絶対。だって、ポケモンが喋ったりなんか絶対しないし、ましては自分自身がポケモンになってるとかない、ない。いや、今はポケモンだから喋り声が聞こえるのか?まぁ、どっちでもいい、夢なんだから。

「さぁ、来い!」
「アクアどいて!そぉい!」
「っっ!!!!??!」

サンが迅雷のようにアクタートの横をすり抜けファイン思いっきり殴る。てっきり、アクタートがやると思っていた為、不意打ちを顔にもろに受ける。

「グハッ…!痛え…!」
「そりゃあ、現実ですから!」
「いや!これが現実な訳がない!そうか、いまきっとどっかのバーチャルに…」

ファインは未だに混乱していた。流石のサンも落ち着き、ファインに再び尋ねる。

「ねぇ、あなたホントに人間なの?」
「そう言ってるだろ!」
「じゃあ、人間である証拠を見して!」
「わかったよ!俺はなあ…」
「俺は?、何よ?」
「俺は…俺は…俺は…?」

ファインは一人称だけを繰り返す。あれ、俺ってなんだ?いや、人間だろ、それは確かだ。でも、俺は今まで何をしてきたんだ?何処から来たんだ?ヤバイ、思い出せない!
サンとアクタートはただファインの目を凝視する。ファインは鋭い視線をグサグサと受け動揺していた。冷や汗が首筋を滴る。

「俺は…」

「はやくしなさいよ、」

「俺は…」

「サン、そろそろ朝礼始まるぜ。」

「えー!仕方ないわね…行きましょう。じゃあね、不思議なヒトカゲさん。」

おい、待てって!お前らが行っちまったら、俺は一体どうすればいいんだ!
ファインは気狂いと思われるのを覚悟して叫ぶ。

「俺は…俺は…










何も…










思い出せないんだああああぁぁ!!」

海岸を飛んでいたキャモメたちが一斉に飛び去る。
アクタートとサンは帰り道から大声に反応して振り返り、半ば呆れ気味に見つめ合い溜め息を吐く。そしてサンが仕方なさそうにファインの元に戻ってきた。

「思い出せないってどういうこと?」

「記憶が無いんだ…、人間だったことと名前以外ほとんど憶えてないんだ。自分、いつどうやって何の理由で此処に来たのかもすらわからねぇ…」

「記憶喪失ってやつ?本当に?」

「マジだよ…、まぁ、信じられないだろうな。俺だっていまこういう風にポケモンになっちまってお前たちと話してることが信じられない。しかも、現実とはな…」

サンはアクタートに振り返り、目線で何か確認を取る。そして、二人が頷いた後、サンはファインの肩を掴み、顔を覗き込む。ファインは思わずギョッとする。

「ねえ、いくとこないんでしょ?」
「あ、あぁ…記憶が無いんだから、どうしようもない…」
「じゃあ、私たちのギルドに来ない?」
「はっ!?」

すると、後ろで見ていたアクタートも近付いてサンの言葉に補足を加える。

「親方?」
「そ、親方ならファインの事情にも心当たりあるだろうぜ。」

親方…話から察するにギルドのボスのようだ。一体、どんなヤツか気になったが、頭に浮かぶのは何処かの任侠っぽい姿しか思いつかなかった。じゃあ、こいつらってその部下?

「今は少しでも情報が欲しい…、案内してくれ。」
「ラジャー♪じゃあ、行きましょう!」








俺は緊急事態だ。
何故ならーーーーーーー

「一体、誰かしら?」
「サンたちの知り合い?」
「セールスか?」
「それはねぇだろ。」

俺は今、十匹弱の見知らぬポケモンに見知らぬ場所で囲まれている。俺が珍しいのか、ヒトカゲが珍しいのかは分からないが、興味津々にこちらに向けて陰口を発しっているようだ。
すると、目の前のドアから大きな瞳でピンクで大きな耳を生やしたポケモンと顔がまるで音符を象ったような形をしたカラフルな羽の鳥が出て来た。

「君が海岸に打ち上げられていたファインだね?」
「あぁ」
「僕はプクリンのリヴって言うんだ。一応、ここではギルドマスターをやらせてもらってるよ。で、僕の隣にいるペラップは・・・・・、」
「わたしはリヴ親方の一番弟子のアルトだ!よろしくな♪」

ファインは『親方』と言うには程遠い容貌のリヴを訝しげに見る。想像とのギャップもあったが、何よりも頼り甲斐があるとは思えなかった。もう一匹は妙な馴れ馴れしさがあり、何故か偉そうにしているのが感に障る。

「アクタートたちから話は聞いたよ。記憶が無いんだって?それに『元』人間って言うじゃないか!」
「あぁ…何かわかるか?」
「う〜ん……あっ!」
「わかったか!?」
「わかんないや☆」
「くっ!こいつ…!」

ベタな展開に皆苦笑する。ファインは不思議な憤りが体の中から湧いてくるのを感じた。リヴはアルトにも聞くが、アルトも同様に首を横に振る。

「そうか、道は絶ったな…」

ファインは落胆する。こうなってしまってはもうどうしようもない。心に不安と絶望感が過ぎった。

「リヴー、私、提案あるんだけどー」

すると、サンがジャンプしながら手を挙げる。皆の視線が彼女の方にへと一斉に向けられた。何か良い案でも思いついたのか?

「このギルドに弟子入りさせるのはどう?」
「あぁ、それも良いかもしれないね!」

ギルドに弟子入り?何のことかさっぱりだ。
すると、周りの皆が一斉に騒めく。先程の陰口とさほど音量は変わらないが雰囲気が焦燥に満ち溢れているがわかった。

「じゃあ、早速サンとアクタートのチームにファインも入隊登録しよっか♪」

「「異義あり!」」

当然ながら勝手に事を進められたある二匹は怒る。サンは不服そうに腰に手をやり眉を顰める。アクタートはそれに対抗し拳を上に挙げる。

「なんでよ?!特にアクア!!」
「だってさ…ひぃっ!」

数秒前まで怒気に満ちていたアクタートの顔が急に冷める。彼の怯える先を見ると、サンが頬袋に静電気をバチバチ迸らせながら、彼を凄い形相で睨みつけているではないか。ギルドの皆は慌てふためいており、彼女の後ろからジェスチャーで『×』という記号を造っているのがわかった。状況から判断すると、『逆らうな!』という意味が適切だろう。

「いいえ、特に何でもありません!!」
「もぅ、それならウダウダ言わないで頂戴…。で、ファイン、あなたはどうしたの?」

そうだ、アクタートを気にしている暇はない。ファインは顔を真剣にして答える。

「何故、俺がそんなものに入らなきゃいけない?」
「そんなものですって!?じゃあ、もし入らなかったとして、あなたは一体どうしていくつもりなの!?」
「そ、それは…」
「ほらね!男ってやつはいつも無意味に意固地になっちゃって、結局、後先の事考えてないのよ!」
「……。」

サンの言う通りだ。

…一人で何ができるというんだ。もしこのまま外に行ったら、行方など知らずに彷徨い続けて無駄死にに終わるに決まっている。ファインは右手の拳を握り締めながら、悔しそうに俯いていた。すると、リヴがファインの気持ちを察したのか、側まで近づいてくる。そして、一回微笑してファインの肩を叩いた。

「サンの言う通りだよ。それにここってどういうとこか知ってる?」
「…。」

そして、リヴは大きく息を吸って言った。

「困っているポケモンを助ける場所なんだよ!」
「困っている…?」
「うん。いま何故か、悪いことをするポケモンが増えちゃってね。僕たち探検家は探検の他に困ってる人の救助もしてるんだ!そして、君も勿論例外じゃないよ♪それにここにはいくつもの探検家が集まるからね、もしかしたら君の求めてる情報を誰かが知っているかもしれない。」

この言葉にファインの目が変わる。

「それは本当か!?」
「うん♪」

光が見えた。そう思い、ファインは胸に手をやり、リヴの言葉を心の中で何度も呟く。もしかしたらここで自分がどんな存在なのか知ることが出来るかもしれない。ファインは覚悟を決める。

「じゃあ、もう一度聞くよ。ギルドに入るかい?」

もう後戻りはできない。先に進むだけだ。

「あぁ…!!」

「じゃあ、いくよ!んーーーーーーー










たぁーーーーーーーーーーーーー!!!!」

プクリンの叫び声とともに俺は探検家の一匹となった。俺は一体何なのか、それを知ることが今の俺かすべきことだ。そう信じて…。

......to be continued


■筆者メッセージ
修正版です。
ヒート ( 2012/08/03(金) 08:22 )