ポケモン不思議のダンジョン 正義と悪の狭間で





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-第一章 日常という名のスパイラル!-
第二十七話 究極華麗!遠征の前に

有名探検家に興味がない訳じゃない。ただ、そんなことに耽る余裕があるのか?
そう考えると愚行にしか思えなくなってきた。ただそれだけ。



チャームズが来て二日後。まだ白い空の下、サンライズがギルドから出てきた。

「はぁ〜…」
「サン、どうしたんだニヤニヤして気持ちわりぃ!」
「ふあぁ…眠いよぉ…」

にやけたサン、それを訝るアクタート、目蓋が重いシード。そして…

『早く遠征にならないかなぁ〜。』
「あぁ…ねみぃなぁ…」

ファインとミュウが後に続いて出てきた。二匹は今回の遠征にしか目がいってないようだった。

「チャームズと先日約束した一緒の探検!やっと今日が来たって感じね!早速準備にかかるわよ!」
「あー、だからニヤついていたのか。まぁ、俺も楽しみだけどな!」

チャームズがギルドに来た当日に彼らは親睦を深めるという目的でこの合同の探検を約束していた。リヴも『あはは!いいんじゃない?トモダチ、トモダチ〜!』、と言ってどうでもよさそうにしていたのは記憶に新しい。
サンたちはわくわくしながら、トレジャータウンへと入っていった。ガルーラの倉庫、ヨマワル銀行、そしてカクレオン兄弟のアドベンチャーショップの順で寄って行った。

「流石、何でも屋!全部そろってるわ!」
「サンさん、だから私たちの店はアドベン…」
「癒しの種くださーい!」

いつか見たようなやり取りである。サンはスケルから癒しの種をポケと交換する。

「まぁ、準備はこの辺でいいんじゃないか?リボンも付けて完璧だ!」
「そうね!じゃあ、正門に行きましょう!」
「ん…あれ、ファインはどこ?」

ふと、辺りを見るとファインとミュウが見当たらなかった。一体、どこに…。すると、カクレオン兄弟が店越しに荷物の整理をしながら呟く。

「ファインさんならぁ〜」
「さっき正門に向かって行きましたよ。」

それを聞いたサンの顔が強張る。

「ええぇ!!?どうして置いてくのよ!一人だけチャームズに会おうだなんて抜け駆けは許さないんだから!!」
「おいっ!サン!」
「うぅ〜、振り回さないで〜!」

そしてバタバタとサンを先頭に正門に走って行った。

「若い子は元気だね〜…」
「兄者もまだ若いでしょ?」
「若くないからこんなところで商いをやってるんだ。ダンジョン内で露店をしていた頃が懐かしい…」
「やっぱり、何も知らなかった頃の方が…」
「素敵だったなぁ〜。」

「スケルさーん、トールさん、リンゴ一つください〜」

「「へい、毎度!!」」





「じゃあ、改めて挨拶するわね♪わたしは、ミミロップのラビィ!」
「サーナイトのサーナよ!」
「チャーレムのチャーリーだ!」

「よろしくお願いします!」
「有名探検隊チャームズと一緒に探検なんて夢みたいだぜ!」
「足引っ張るかもしれませんけど…よろしくお願いしま…す…。」
「よろしくな。」

チャームズとサンライズは正門の前で互いに紹介し合った。容姿端麗、才色兼備の彼女らは意外にも親しみやすそうな態度だった。天才というものは大抵はナルシスティックなやつが多い。しかし、彼女らにそういう側面は微かも読み取れなかった。暫く後、ラビィは本題に入った。

「今日はあなたたちのために探検隊場所をピックアップしてきたわ!」

と言うと、地図を広げて、ある点を指した。地図上だと森が広がってるように見える。

「ここは…?」

「此処はW隠された遺跡Wってところでね…実はある伝説があるの!」

「えっ!それって一体…!?」

そして、ラビィは説明を始めた。

「W隠された遺跡W、此処には伝説のポケモンがいるらしいの。」

「うわ、超隠されてそう、お宝が!」
「で、伝説のポケモン!?話は聞いたことがあるけど…」

伝説のポケモンとはこの世界にたった一匹、二匹しか存在しないポケモンのことである。種族−−−この『族』という表現にも語弊があるかもしれないが−−−に関しては結構な数がいるらしい。しかし、それでも険しい場所に生息しているから出会うには相当の実力、根気、そして運が必要と言われている。

「まぁ、どんな伝説のポケモンがいるのかはまだ噂の段階だから確かなこと言えないけどねー。
昔、遺跡に落ちた巨大な雷を一匹で受け止めて、遺跡が崩れるのを守ったという話を聞いたことあるわ。まぁ、とりあえず頑張ってみましょ!」

「私たちに出来るかなぁ…」

サンが不安そうに俯く。先ほどの意気込みは何処へやら…。サーナがそっとサンの頭に触れた。

「大丈夫だって!誰でも初めての場所は不安になるに決まってるから。」

「サーナさん達もですか?」

「当然よ。今は色々なダンジョンにいけるけど、私たちも最初はこんなにタフじゃなかったわ!ねぇ、ラビィ、チャーリー?」

ラビィとチャーリーが細い目でサーナを見て、

「まぁ、サーナとかほんと探検するたび泣いてたわね〜。」
「キャタピーが飛び出してきただけですぐアタイの後ろに隠れるし…」

「ちょっと〜!恥ずかしいからやめて〜!!」

サーナは顔を真っ赤にしながら、そう言った。

「あはは!サーナさん達も同じだったんだぁ…」

サンはそれを聞いて、少し安心した。自分達も彼女たちのようになれるのかもしれない。そんな自信が心から湧き上がってきた。

「おい、早く行こうぜ。」

ファインが全員を喚起する。早くしないと日が暮れてしまう、そうとも言いたそうな目をしながら。

「よし!じゃあ、皆で…」
「「「レッツゴー!!!」」」

「おーっ…(って、またミュウいないし…)」

ファインはこのテンションにイマイチついていけず。
こうして、サンライズ、チャームズ一行はW隠された遺跡Wへと足を進めた。





「ヴィーはいるか?」
「いまお呼びします…」

王は、カツカツと玉座の肘掛けに指を当てて少し退屈そうにしていた。それもそのはず、此方の行動はサンライズの動きに合わせているものだから、暫く動きの無かった…というより彼らのせいで此処も動けなかったのだ。

「(リンプ、ムラー…あの二人のおかげで殺しかけた。殺さなかったとは言え、次回からはやっぱり注意しなくてはな…)」
「W王様W、ヴィーを呼びました。今すぐに来るでしょう…」

しかし、彼らももう動けるようになった。もう少し、サンライズがどのように行動するかが気になる。何故なら、あそこには、『元』人間がいるのだから。

「失礼します、W王様W…くひひ…」

「サンライズにこれから動きがある。二日後にミステリージャングルへ向かえ…」

「ほぅ、ミステリージャングルですか。で、サンライズとやらはどういう風に仕上げれば宜しいでしょうか?」

「ボロボロにはしなくていい。奴等の気を此方に向かせるように意識付ければ好い。もう退屈は嫌なのでな。」

「……。」

「他は構わん、お前の好きなようにやれ。」

「そうですか!では、お好きにさせて頂きます。」

ヴィーは紅い瞳を爛々と輝かせて嬉しそうに命令を受けた。

「よし、もう下がれ。」

「はい…くひひ…」

そう言うと、ヴィーは静かに王の間を去った。
すると、再び王は長い指で肘掛けを楽器のようにカツカツと鳴らして遊ぶ。

「(あのスピアーは面白くなりそうだ…期待するか…)」

王は想像して思わず笑ってしまいそうになるのを堪えていた。





「此処がW隠された遺跡W…」
「お宝も一杯あるって聞いてるし、楽しみだわ!きゃっ?」

数十分後、サンライズ、チャームズらは目的地に到着する。鬱蒼とした森に囲まれて空が狭く見える場所だ。本来、険しい道で行くのにも苦労する場所だが、チャームズというベテラン勢のおかげで難なくこれた。

「てか、七匹って多くね?」

アクタートが今更そんなことを言う。皆、そうはずっと思っていただろう。すると、ラビィがテンション高めでアクタートの両手を取る。アクタートは思わず顔を紅潮させた。

「ちょっ…(うわー、手がフワフワ!)」

「大丈夫っ!今回は私たちの活躍をあなた達に見せたいのよ!ほら、私たちに興味ない子がいるでしょ?」

そう言うと、ラビィはファインを見る。というか、全員がファインに視線を送った。

「…っ!(興味無いというより…はぁ…)」

「ね?…という訳で早速中に入りましょう?」

「は、はい!」

話し合いの結果、チャームズを先頭にサンライズが付いて行く形になった。中を進んで行くが、遺跡の中は光も無いのに結構明るかった。

「ここには宝石の成分が含まれてる岩石が一杯あるのよ。」
「ふーん、だから、キラキラして明るいんですね!でも、在るだけじゃ光らない気がするけど…」

「(つまり、ケイ酸、ホウ酸とかアルミニウムが含まれているのか。普通に見かける物質だ。そして、この記憶があるってことは人間の頃にも…)」

更に奥地に進む。難なく半分まで来れたようだ。しかし、彼等は一つの違和感を感じていた。

「…おかしいわね。」
「あ、ラビィもそう思う?」
「ちょっとアタイも変な感じするね…」

「…?」
「うっ、何か起こるの?」

チャームズの動きにシードが過敏になる。

「野生のポケモンが全然出て来ないなんてね…」

そのまま、しばらく進むと拓けた場所に出た。そこは何処の場所よりも一際明るい場所だ。

「サンライズの皆、体力は大丈夫?」

「ちょっと休みたいです…」

サンが膝を地面に落とす。毎度のことだが、彼女は恐ろしいほど体力が無い。そこはやはり女の子らしいと思うけど。

「ん、何よ、ファイン?ジロジロ見て…」
「なんでもねー。」

「じゃあ、ちょっと休憩しましょうか。まだ時間…」


ジャリッ…


「「待って!!」」
「ラビィ、サンどうした!?」


ジャリッ…ジャリッ…


「誰か…」
「いるわね…」


辺りから地面を足で擦ってるような音が彼女たち以外にも聞こえてきた。多分、敵だ。
そう確信すると、辺りの岩陰からゾロゾロとポケモンが出てきた。


「おい、可愛いネーちゃん達がいるぜ。」
「ホントだ…一緒に遊んでやるか…」


サンライズ、チャームズは中心へと集まる。背中合わせ。囲まれてしまった。

「ひっ…こんなにいるよぉ〜!!」
「シード、落ち着け!これってまさか…」

「あなた達も運が悪いわね…。」
「私たち、モンスターハウスに入っちゃったみたいね!」



周りには、バクオング、グラエナ、ピジョットと大型のポケモンばかりがいた。相手にするにはと明らかに此方の分が悪い。十匹、いやそれ以上か。

「ラビィさん、どうすれば…!?」

サンが動揺して指示を待つ。サンライズがモンスターハウスに遭遇するのはこれが初めてだ。どうすれば良いのかが全く分からない、そんな状態である。
しかし、ラビィはちょっと笑っていた。まるで何か好機に巡り合った時のように。

「よし、サンライズの皆、特に、そこのヒトカゲ君!」

「はっ?」

「私たちの実力見せてあげるわ!いくわよ、サーナ、チャーリー!」
「全く、ラビィはいつもそうやって調子乗るんだから!」
「でも、アタイはそんなラビィが好きだよ!」

チャームズはサンライズを円状に背中で囲む。

「私たち…」
「チャームズの活躍…」
「しっかり見ておけよ!!」

彼女らは優雅に戦闘を開始した!




「舐めやがって…!お前らかかれ!!」

一匹のグラエナが合図をすると、周りのポケモンが一斉に襲いかかってきた!チャームズは目を真剣にする。

「WサイコキネシスW!!」

まず、サーナが技を繰り出す!WサイコキネシスWは周りのポケモンの動きを封じる。サーナは目を蒼く光らせながら周りのポケモンを一気に空中にあげた!

「ぬぅっ!」

「そぉーっれ!!」

サーナはそのままポケモンらを地面に叩きつける!ポケモンたちの悲鳴が響いた。ピジョットらは空中にいて、油断していたせいか地面に叩きつけられてほぼ動けなくなってしまっていた。
チャーリーがそれを見てサーナに向けて右親指を出す。

「ナイス!サーナ!」
「うん!」

「クソッ!油断してんじゃねぇっ!!!」

その瞬間、サーナの背後からグラエナが飛び掛ってくる!!−−−−悪タイプにエスパータイプは相性が!

「しまっ−−−!!」
「侵入者め!此処で滅びろおおぉ!!」

グラエナの爪牙がサーナの目前に迫った−−−−時だった。

「喰らっ…!」

光速を超えるかのような途轍もない速さでチャーリーがグラエナに技を繰り出す!

「W飛び膝蹴りW!!」

「きゃうんっ!!」

グラエナはなんとも情けない声を出して、吹っ飛ばされてしまった。周りのグラエナたちは飛ばされたグラエナを見て、たじろいでしまう。

「アンタらも来るかい?」
「グルルル…」

「チャームズ、強え…」
「ちょーかっこいいわ!!シード、見た、見た?」
「う、うん。僕たちのなんて比なんかじゃないんだろうなぁ…」

サンライズもチャームズの強さに感動していた。身のこなし、雲泥ほどの力差…探検隊において完璧なモノを、全てを彼女達は持っていた。

「…まだだ、まだまだまだまだだああ!!!!」

瀕死状態のピジョットが、チャーリーに向かって来た。まるで矢のように身体を細くして飛び込んでくる!WブレイブバードWだ!

「うおおおおぉぉっ!」

「おし、かかって−−−」
「ちょっと、チャーリーどいて!」

チャーリーが迎え討つ態勢をとった時だった。いきなりラビィがチャーリーを押し退けて弾丸のようなピジョットの前に現れたのだ。

「っ!?」
「私もイイとこ魅せたいのよ?喰らいなさい、W冷凍パンチW!!!」

ラビィは右拳を力強く握りしめ、後ろに引いて一気に冷気を纏ったそれをピジョットへと振りかぶった!

「なに…!?」

ピジョットの口先とラビィの拳がきしめき合う。白熱した戦いが今ここで繰り広げられていた。
すると、ラビィはニヤリと笑った。

「一気に氷漬けにしてあげる!」

そう言うと、今度は左手で冷凍パンチを発動させた!それに気付いたが、接近しているピジョットにそれを躱す術は無かった。

「そぉい!!」
「ぐあ…あ…あ…!」

ピジョットはみるみる凍っていく。ついには琥珀のように氷漬けになって地面にボトリと身体ごと落ちてしまった。
そして、ラビィは長い耳を手で靡かせて満足そうにしていた。

「さて次は誰がお相手?」

「くっ…あいつら強い!」
「このままじゃ…」

「弱気になってる!チャームズ、やっちゃえ!」
「そのままイケ〜!!」
「頑張れ〜!」

此方の優勢に皆、昂ぶる。ただ一人を除いて。

「……。」

「じゃあ、サンライズのお言葉に甘えてトドメでも刺そうかな!?」

ラビィたちはが倒れているグラエナたちにそれぞれの技を繰り出そうとした。

「冷凍パ−−−」







「待て!!」


「…っ誰!?」

突如、聞いたことない低い声が洞窟内に響き渡った。

to be continued......


ヒート ( 2012/10/09(火) 08:33 )