ポケモン不思議のダンジョン 正義と悪の狭間で - -第一章 日常という名のスパイラル!-
第二十五話 とある事件のB

「おい、」
「あんたら」
「何してんだ?」


「誰だっ−−−−!?」

突如、聞き慣れない声が響いた。キョロキョロと辺りを見渡す。すると、サンが大声で指を後ろに差した。そこを見ると…

「あんたらサンライズだろ?」

視界に映るのはゲンガー、カゲボウズ、サマヨールの三匹。風貌からして探検隊っぽいが…。それよりもまずは、何故俺らのチーム名を知っていたのかってことが問題だ。

「何でそれを…」

「おいらはカゲボウズのカゲ!」
「サマヨールのファントム!」
「そして…俺様はリーダーのゲンガーのドッペル!三匹合わせて…」

「「「俺らは最凶最悪スウィンドルズ!!!」」」


……。


「胡散臭ぇ…」

ファインはぼそりと呟く。

「な、何だとッ!!」
「親分…こいつら生意気です!」
「まぁ、落ち着け。俺様たちの滲み出るオーラに戦いているだけだ…」

ドッペルはそう言いながら、被っている茶色の帽子のつばを掴みカッコつけるかのように深く被る。するとサンが、

「名前、かわいいわね〜!」

と言った。ドッペルに衝撃が走る。

「か、かわかわわ…かわいい??俺様は…」
「お、親分!落ち着いて下さい!汗が、汗があぁ!」

ドッペルは恥辱を受けた気になったのか顔を真っ赤にして冷や汗を洪水のように流していた。更にファインが、

「何か用か?ドッペルWちゃんW?」

と追い討ちを掛ける。

「お、親分になんて事言うんだ!?」
「で、でも、カゲ…ちょっとかわいい気も…」

ファントムがそう言い掛けた時、ドッペルが二匹の前に出る。墓場の冷たい雰囲気が一気に増した気がした。

「クックック、俺様をからかうとは度胸があるじゃねぇか…。サッサと用事を済ませねぇとな…。」

「だから、用って…」

ファインが言い終わる前に、突如、辺りが急に黒い煙の様なものに包まれる!ファインらは、急な展開に狼狽える。

「何だ、何だ!?」

「これってW黒い霧W!?」

「うわわわわ…。」

「フロウ、後ろに下がってろ!?」

「は、はい…(よ、呼び捨て!?)」

ファインたちはフロウを背にやって敵となった目の前の三匹と対峙する。親分と呼ばれているドッペルがぬぅっと前に出、口を引きつらせて、

「何用かって?俺様たちは、お前らサンライズを始末しに来ただけだ…」

と言った。それに、ファインはキョトンとしてしまう。

「俺ら?何で…」
「ファイン!前にムラー…だっけ、サワムラーがそんなこと言ってなかったっけ?!」

シードの言葉にはっとする。確かにムラーもそんなことを言っていた…。じゃあ…!

「おい、お前も『王様』とかと関係ある奴なのか!?」

「あれ、お前さんたちは知ってるのか…あぁ、なるほどな、前に戦った奴が言ったのか…」

ドッペルは、誰も知らなかったであろう事実を彼らが知っていることに特に驚きもしなかった。むしろ、余裕な態度がより明らかになっただけだった。ドッペルは続ける。

「そうだ。俺様たちはその『王様』の命を受けて此処に来た。俺たちゴーストタイプのポケモンには似つかわしい場所だな。」

ドッペルは辺りをキョロキョロと眺める。周りにはまだ一般市民がうろついている。雰囲気が戦闘を助長しているのは明らかだ。とりあえず、フロウだけでも逃がさなくては…。

「フロウ、此処から離れてくれないか?」

「え……」

「早く!今すぐにも戦闘が始まりそうだ、依頼主のアンタを怪我させる訳にはいかねぇ!」

そうは言ったものの、フロウは依然として不安な表情だ。それに見かねたサンが、

「私たちが貴方を守るわ!それも依頼の内容に入ってるからね!」

「…そう、ありがとう。じゃあ!」

フロウが後ろに走り出した。しかし、その時!

「へっへっへっ!」
「逃がさないよ!?」

「−−−っ!!!!」

彼女に立ちはだかったのはカゲとファントム。フロウが悲鳴をあげそうになった時、カゲがフロウの顔を舐め上げる!

「あ……!」
「W舌で舐めるW!…ふん、結構美味いぜ、アンタ。」

フロウは身体が麻痺してバタンと背中から倒れてしまった。

「フロウ!!」

ファインが向きを変えて、フロウの救出に掛かろうとする!しかし、

「おっと、動くなよ…」

油断した。ファインの背後にはドッペルがいて、銀の針を首に当ててくる。一瞬のスキが命取りとはまさにこの状態だ。一閃を放つ針の鋭利さに緊張する。

「ファインっ!」
「(よし、ここはこのアクタートが…)」

「お前らも動くなよ…動いたらどうなるか分かるよな?」

「うぅ…クソっ!」

「アクタート!俺に構わず、こいつをさっさとやっちまえ!」

ファインは大声で叫び散らす。ドッペルは舌打ちをして、銀の針の先端を首に付ける。

「…っ!」

「黙れ。それ以上、喋るとお前だけなく依頼主もやられるぞ…」

アクタートとサンの背後にはフロウがカゲとファントムに押さえられている。

「(一体、どうしたら…)」

「(ファイン…待ってて。今助けるよ!)」

その時、シードがある打開策を実行していた。ばれたら終わりの賭博(ギャンブル)だ。仲間さえも気が付かせないで…

「(墓を壁にして何とかしてこの蔦をアイツに…)」

なんとシードは左右にある墓の後ろに蔦を這わせてドッペルに何かを仕掛けようとした。
そんなことは知らず、ドッペルは不気味に笑いながら脅迫し始めた。

「さて、とりあえず…まずはそこのゼニガメ、お前からだ!前に出ろ!」

「畜生!」

「や…めて…」

アクタートが前に出ようとした時、フロウが麻痺に耐えながら声を出す。

「ここは…大虐殺事件で死んだポケモンたちの墓なの…ここで暴れないで……」

「ほぉ、大虐殺事件ってのがあったのか。知らなかったなぁ…」

ドッペルの興味をそそったようだ。ファインには別の思考も芽生えていた。

「(あんま知られていないのか…サンも知らなかったし、アクアとシードは知っていたが…)」

しかし、そんなことはどうでもいい。今、やるべきことは目の前のヤツを何とかして追っ払うことである。ファインは首に感じる鋭さに焦りを感じつつも思考を巡らせる。だが、敵はそんな猶予すらくれなかった。

「じゃあ、お前らもその墓場に供養してやるよ…。さぁ、さっさとそこのゼニガメ、出てこい。」

「俺はアクタートだ!覚えとけ!」

アクタートは渋々ドッペルの前に出る。正確には、背後から針で脅迫されているファインの前だ。二匹は互いに目が合う。

「(どうしたらファインを助け出せるか…)」

「よし…アクタート、ファインを殺せ。」

その言葉に辺りが騒めく。アクタートは思考が止まり、突然の不可思議な命令に困惑した。

「殺す…?」

「そうだ。どうせ殺すなら面白くしたいからな。」

「ファインを…?」

「ん、何だ、出来ないのか?じゃあ…」

すると、背後から悲鳴が聞こえ!。フロウにシャドーパンチが繰り出されたのだ!

「あ、ちょっとヤりすぎちゃったかも…」
「問題ね〜よ、ファントム!これぐらいが丁度良いって!」

「やめてよ!フロウは関係ないわ!」

黙っていたサンが焦った表情で叫ぶ。

「関係ない?どこが関係ないんだ?Wお前らWの依頼主ってだけ関係大アリじゃないか。」

こいつら血も涙もない、そう思いながらサンは悔しそうに膝を落とした。

「サン!」

「ほら、アクタート、どうする?」

アクタートは考えていた。いまどうすれば、もう誰も傷付かず、こいつらを追い払って、安全にかつ迅速に逃げられるかと。しかし…

「(わかんねぇよ…)」

アクタートは悔しそうに拳を握る。すると、目の前で人質になっているヒトカゲからこう放たれた。

「アクタート、俺を殺れ。」

「っ!!!?ファイン、何言ってんだよ!?」

ファインが彼に告げたのはとんでもなく残酷な行為の促しであった。

「こいつらに何言ってもダメらしい。それなら、いっそのこと…」

「ふざけんな!!」

アクタートは眉間に皺を寄せて怒り、ファインの目を見る。ファイン自身も覚悟を決めた目で彼を見る。

「さて、感動の友情劇は終わったか?」

「アクタート、やってくれ…」

ファインは目を瞑った。

「本当に、本当にこれだけしかないんだな…?本当だな?」

ファインはコクリと首を縦に振った。アクタートも覚悟した。せめて、苦痛を感じぬように…。

「いくぞ、Wバブル…」

「ド、ドッペル!後ろを見て!!!」

アクタートが攻撃を仕掛けようとしたその時だった。シードの声が墓場中に響く。

「なんだ?」

ドッペルは声に反応して後ろに振り返った。その瞬間、シードは蔦に力を入れる!

「いけぇっ!」

「なっ!?いつの間に背後に蔦が!!!しまっ−−−−−」

ドッペルの口の中に二本の蔦が入り込む!シードは身の毛のよだつ感触を我慢しながら、一度挿れた蔦をすぐに抜いた。ドッペルはゲホゲホと咳き込みながらシードに睨み返す。

「てめえ、何しやが…あ…」

ばたり。急にドッペルが倒れてしまった。ファインの首から銀の針が離れる。一同は突然の出来事に唖然とする。

「お…」
「親分〜!!!」

「いてっ!」

部下の二匹がフロウを手放し、ファインを払い除け、ドッペルの周りに集まる。

「お、親分…大丈夫ですか!?」
「動かなくなっちゃった…」

「zzzzz.....」

「え…」
「寝てる!?」

なんと、ドッペルは寝てしまった。(いびき)をかいてなんとも気持ち良さそうに。
ファインは彼を一瞥した後、膝を落としているサンの所へとアクタートを横切り向かう。

「サン、大丈夫か!?」
「ファイン!」

ファインは労いながら、サンの手を取り、立ち上がらせる。
一方、みすぼらしい親分を見たカゲがその原因と思われるシードに目を怒らせる。

「おい、お前!一体、何しやがった!!?」

「ひっ!い、いや…ただのW眠り粉Wだよ…」

「W眠り粉Wだって!?」

「気付かれるといけないかと思って、左右の墓の背後からちょっとずつ近づいてたんだ。W眠り粉Wを付けた蔦をね…。」

「くそ!小細工しやがって!!」

「ひいぃっ!!」

カゲは力強くシードを睨む。シードはそれにビビって、ファインたちの近くに行く。やはり、根本を相変わらずであるが…彼のしたことは大いに称賛されるべきだろう。
一方、さて、こいつらをどうしようかとファインは考えていた。

「さーて、どうしようか…なぁ、アクタート?」
「おぅ!こいつらどうしようかねぇ…」
「二匹とも始末よろしくね。私はフロウをみてくる!」

理不尽な扱いを受けた二匹は引きつった笑いを浮かべて、部下の二匹に近づく。ゆっくりとジワジワと近づく。

「げっ…ファントム、どうする?」
「親分いないんじゃ無理やりだよお〜〜!」
「じゃあ…」

そして、二匹は決心する。

「「逃げろおぉぉぉおおおおおおおっ!!!!!!!」」
「zzzzzz......」

「畜生、逃がすか……って…」
「あいつら逃げ足はえええ!!」

部下の二匹はファインらが反応する前に、光のように逃げてしまった。もちろん、親分のドッペルを抱えて。
アクタートは不満そうに顔を膨らす。

「クソー!一発殴ってやりたかった!」

「それは俺も同感だ。まぁ、とりあえず、無事に終わったし…」

「どこが、無事よ!?」

大声で叫んだのはサンだ。フロウをシードと協力して立たせていた。ファインらも、そうだった、と言わんばかりの顔で彼女らの元に行く。

「(おっと、うっかりしてた!)大丈夫か?」

「はい、私は大丈夫です…でも、ちょっと歩くの辛いかも…」

フロウは脚に攻撃を喰らったようで、それを引きずるかたちで歩いていた。ファインは俯く。

「すまねぇな、ホント…」

「いえ…それにしても貴方たちは結構大変なんですね。」

フロウが言っているのは、おそらくスウィンドルズのことだ。『サンライズを始末する』…突拍子もない八つ当たりを食らった気分だ。

「そうなんだよ!よくわからんが、これで二回目だぜ!」

「前もこんなことあったんですか?」

「あぁ、三週間程前な。」

「ねぇ…」

すると、サンがボソリと呟く。不安げな表情だ。

「何だ?」

「W王様Wってどういうこと…ファイン?」

ファインは少し驚いた様子だった。てっきりサンたちもムラーが言ったように知っているのかと思った。そして、仕方なさそうにサンに説明をした。

「そう…そんなことが…もう一回、聞くけど本当にそんなことが…?」

「あぁ、そうだよ。俺も本当のことはさっぱりだぜ!」

「そ、そぅ…」

しかし、もう過ぎた事なのだ。気にしても仕方ない。

「とりあえず、フロウの手当てしようぜ。」
「うん、賛成〜!私、こういう事もあってクラボの実持ってきたの!」
「まぁ、探検家としては当たり前だな。」
「なによ〜!そういうアクタートはちゃんと準備してきたの〜?」

いつもの愉快な雰囲気が戻って来た。墓場だけど。
ひとまず、難は去ったようだ。しかし、W王様Wやらスウィンドルズやら謎も色々残したままだ。今は何とも答えづらい問題ばかり。ファインはとりあえず、深呼吸して任務を終えたことに一息つき、皆に帰りの号令をかけるのだった。






「今回はありがとうございます。」

「いえいえ〜!」
「サン、ニヤニヤすんな…」
「だって〜、フロウが一杯お土産買ってくれたし、ボンズ大陸土産が持ち帰れるだけで満足、満足♪」

村に帰った後、サンライズの皆はフロウに連れられて、土産専門店で買い物を楽しんでいた。せっかく来た別大陸だ。これぐらいはやってもいいだろう。

「すみませんね、田舎ですから品揃え悪くて…。都会の所いったらもっとあるんですけど。」

「私はここで満足♪あー、でもそこも気になるなー!」
「サン、もう帰るんだから…」

シードの正論に対して、サンは呆れたようにして、土産を入れた紙袋からフシギダネの顔を模したキャップを取り出し、シードに被せる。

「あら、結構似合ってるわよ♪」
「サン…それ皮肉?」

一方で、ファインが自分の土産をまじまじと見てると、アクタートが肩に手を回して来た。

「で、ファイン。お前は何買ったんだ?」
「おい、勝手に取るな!」

自分の土産の入ってる紙袋を迂闊にもアクタートに取られてしまった。取り返そうとしたが既に手遅れで、アクタートは袋の中をガサゴソと探っている。

「なになに〜?・・・・『ボンズ大陸大全』、『デザイアの文化』、『目玉探検スポット全集』、って本ばっかじゃねーか!!」

「別にいいだろ!俺なりに自分の境遇について調べるんだから…」

「あー、お前、元人間云々言ってたよなぁ…」

アクタートは本を袋に戻しながら、物語を聞いてるかのような反応をする。ファインはその様子を見て、少しの不快を募らせた。

「まぁ、それはいいとして、後は何が…」

「いいから返せって!」

ファインは無理矢理アクタートから紙袋を取り返す。その感情の勢いでジュゴンの二匹の元に行こうとした時、あることを思いだす。

「…そうだ、フロウ!頼みについては任せとけ、何か分かったら連絡すっから!」

先程、突如の出来事にその受理の返事を忘れていた。

「は、はい!無理しなくていいですからね〜!」

そして、フロウの返事を確認して、彼女の召使い(?)たちの元に一匹でさっさと行ってしまった。

「ちぇっ、つれないヤツ…」

「アクアー!行くわよー!」

サンの大きな声が聞こえる。アクタートは溜め息を吐き、フロウに挨拶をして港に向かうのだった。

「姉さん…」

彼らの後ろ姿を見守りつつ、彼女はそう小さくつぶやいた。








「ねぇねぇ、シードは何買ったの?」
「ペナント。」
「……。(今どきそんなの…)」





「親方様、そろそろサンライズの奴ら帰ってくるんじゃないですか?」

「そうだね、明日の朝には着くだろうね〜。」

親方部屋でリヴとアルトがサンライズの帰還について話していた。
ボンズ大陸と違って、ここトレジャータウン付近は雨がパラパラと降っている。しかし、明日の朝には止む、とロスナスが言っていた。

「で、もう少しで遠征なのですが…」

「あ、そうだったね♪忘れるところだった!」

アルトは相変わらずのマイペースさに呆れと同時に、不思議と感心もする。このようなお方でも、強い意志を貫き生きているのだ、とアルトは内心で微笑んだ。

「よーし、アルト、ペン貸して!」
「どうぞ親方様。」

アルトは全長の倍は広がるであろう翼で器用にペンを取り、リヴに渡す。リヴはお礼言って、洋紙にサラサラと何かを書き始める。アルトはじっとその様子を見ていた。

「誰かに手紙ですか?」

「うん、僕の友達にね♪
多分、皆驚くんじゃないかな?楽しみにしててね!」

遠征まで残るは後一週間である。


to be continued......

ヒート ( 2012/09/27(木) 13:52 )