ポケモン不思議のダンジョン 正義と悪の狭間で





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-第一章 日常という名のスパイラル!-
第十五話 性格革命A

「まぁまぁ、くつろいで。」

ファインたちは道場の奥にある控え室のような所に案内された。サンライズはボーンに言われるがままに適当な所に座る。

「ほら、これ食え。『おしゃぶり骨』、『骨煎餅』とかいっぱいあるぞ。」
「あ、あぁ…」

ボーンは先程持っていた袋から適当な菓子を取り出してファインたちにご馳走した。ファインは骨煎餅を一欠片取って口に入れる。

「うまっ!」
「おしゃぶり骨も意外といけるわよ!」
「だろだろ!」

随分、道場の様子と違ってハイテンションなポケモンだ。ファインは意外に美味だった骨煎餅をパリポリと鳴らしながら食べてそう思う。すると、ボーンが目を輝かせて訊ねてきた。

「なぁ、お前さんたちはここで修行しに来たのか?」
「ま、まあな。でも、修行すんなのは俺らじゃなくてコイツだけ。」

ファインはシードを指差す。ボーンがシードの方に、振り返ると、シードは思わず目を背け俯いてしまった。ボールは暫くシードを見て、ファインに振り返る。

「お前か。いいぞ、じゃあ、準備すっからそこで待っとけ!」

そういうと、ボーンは張り切りながら道場へと消えていった。そして、彼がいなくなったことを確認すると、アクタートが口を開く。

「ファイン、あいつで大丈夫か?」
「確かに不安ね〜。ああいうタイプってきっと空回りしちゃう感じだろうし、シードの為にもならないかも。寂れてるし、汗臭くないし…」

二匹の言い分も分かる。さっき感じた違和感はきっと道場らしい雰囲気、匂いがしなかったからかもしれない。『汗臭くない』というのは、あまりポケモンがいないと言うことなので、必然的にこの道場の評判もある程度は察しが付いた。
しかし、もう、ここまで来た以上、あのテンションをぶち壊すのは余りに酷な話。やるしかない…。

「大丈夫だって…、多分。」

ファインはシードを一瞥し、拭いきれぬ不安と万が一のことを考えたら、これから起こってしまうかもしれない苦行に苦笑するしかなかった。





「お前ら!道場に来おおおおい!!!」
「うっせぇよ。」

サンライズは耳を塞ぎながら道場に舞い戻る。さて、一体どんな修行が始まるのやら…。
シードとボーンは道場の中心に、彼以外は壁際に寄って彼を見守ることにした。

「シード〜、頑張れ〜!!」
「シード、いっけぇ!」

サンとアクタートはワクワクしながら、シードを見ていた。かく言う俺自身のその気持ちである。

「シード、頑張れよ。」

「う、うん!ありがとう、皆!」

シードは笑顔で返事するが、目の奥では不安がグルグルと渦巻いている。無事に終わるといいが…

「よし、修行は今日から一週間。おいらがキッチリと鍛えてやる!では、まずお前の現在の実力を知る為に手合わせ願おうか。」
「て、手合わせ!?戦うの!?」

シードがW戦いWという言葉を聞いた途端に弱腰になってしまう。それを見たアクタートが思わず口に両手を当てて叫ぶ。

「あったりめぇだろ!これからそんなことばっかだぜ!」
「うぅ…」
「そんなこと言ってちゃ、あなたの両親を見つけるどころか、探せもしないわ!」

サンもつられてシードに喝をいれる。シードはただ不安を募らせるだけで…

「よし、どこから来てもいいぞ!!」
「え…。」

シードは汗をダラダラと流して混乱する。すると、ボーンは舌打ちを一回すると、足を踏み込んだ。

「そっちがいかないのなら、行かせてもらう!」

ボーンはそう言うと、タッと塵埃が少し舞わせて空中に身を呈する。

「ひっ!?」

シードが驚いたのも束の間、空中からボーンは自らの太く重量感のある骨を振り上げ、重力の流れと共にシードに振り下ろす!

「遅い!!!」

骨が振り下ろされ、爆音と共に砂埃が辺りに舞う。

「キャッ!!」
「ぐあっ、すっげぇ埃だな!」
「威力も半端ねぇぜ!!シード、大丈夫か!?」

ファインたちを巻き込んだ砂埃は少しずつ晴れて、視界がハッキリする。すると…

「おっと、外しちまったな…」
「あっ……ゆ、床が……あっ…。」

太い骨は間一髪、シードの目の前に振り落とされていた。シードは余りの威力に後ろに吹き飛ばされてしまった。そして、シードが居た場所は見事な凹の形をした床。ボーンの力を如実に示している。それを見せつけられたシードは震えるばかりであった。

「シード、立てぇ!!」
「ファインっ…!」

ファインが横から激励する。それを聞いたシードは何とか立ち上がって、ボーンとふたたび対峙する。しかし、ただ状況が振り出しに戻ったというだけで何も変わってはいないのが現実である。

「まだ、いけるか?」
「…。」

シードが沈黙を続けようとした瞬間、ボーンが骨を右手で持って後方に回す。そして、

「WホネブーメランW!」
「ひっ!!うわああああ!!」

シードの頬をブーメランがかすった後に、シードは屈みこむ。そのおかげで、何とかリターンするブーメランを交わすことが出来た。

「うぅ…」
「反射神経の鈍さに救われたか。しかし、まだだ…!」

ボーンはゆっくりと近付いて、怯えて顔をうずめるシードを見下ろす。

「折角、こういう関係になれたのだから言うが…」
「…ひっ……うぐっ……。」

シードはガクガクと震えて、怯えて、泣いていた。そして、次の瞬間、ボーンの口からとんでもない言葉が出る。

「お前さん、ホントに強くなりてぇのか?」
「うぐっ……う、うん…。」

その瞬間、ボーンが骨で地面を叩いて道場内に爆音を響かせる。シードは勿論、ファインたちの背筋もそば立った。

「アWアアァッ!!?『うん』じゃねぇだろ!!!?」
「は、はいっ!!?」

ボーンは最初に出会った時は、全く違う性格になっていた、てかもはや別人!?周りにいるファイン立ちも気圧される程、途轍もない迫力だ。

「シード、お前は何で強くなりたいんだ?」

さっきとは違って落ち着いた声で語りかける。今の声と先程の声とのギャップがむしろ余計に不気味さを混じらせているような気さえした。シードは震えた声で答えた。

「僕こんな性格だから、皆に迷惑掛けちゃってる…」
「そうか。」
「あと、僕はお父さんとお母さんを探してるんだ…」

シードは咽び泣きながら、ファインたちを一瞥する。しかし、ファインたちは誰もそれに答えなかった。

「そうか、両親を探してるのか…」
「う……は、はい……。」
「ハッキリ言うが、今のお前さんにそれは無理だ。」
「はい…」
「だから、死ね。」
「はい…え?」

シードがボーンの言った言葉を理解した時には既に堅固な骨が自分の頭蓋に向かっていた。

「え、いや…」
「シード、避けろ!!!」
「……!?ボーン…?」

彼の脳裏に過ぎったのは《死》ではなく、懐かし日の思い出−−−−−−−お父さんとお母さんの思い出。


『ねぇ、お父さん。』

『何だ?』

『僕、やっぱり弱虫なのかな。今日も皆にからかわれた…』

『そうだな、お前は弱虫だ。』

『やっぱり…』

『でも、お前はそうで在ることを自覚してる。』

『……どういうこと?』

『それは自分で考えろ。』



何だろう?わからない……

ただ、目の前に向かってくる骨だけが見える。そうだ、僕このままだと死んじゃうんだ、それだけは分かる。死んだら、きっと、ずっと、分からない。父さんの言ってたこと、ずっと!!

そんなの、ヤダ。それだけはヤダ…そんなの……絶対に…





「嫌だッ!!!!」
「!!!」

大きな叫び声と共にシードの背中に背負った種から蔓(つる)が飛び出してきた。そして、それは降りかかる骨をガッチリと締め付けて抵抗する。

「シードのW蔓の鞭Wだ!!」
「間一髪ね…」
「厭な汗出たぜ…」

ファインたちは胸を撫で下ろす。しかし、シードの闘いが終わった訳ではない。

「くうううぅ…!!」
「ふっ…(まぁ、合格かね…)」

シードが必死に抵抗する。そんなシードを見たボーンは微笑して、蔓が絡み付いたまま骨を振り上げる。

「そいっ!」
「うわああああっ!!?」

当然、シードは空に投げ出される。シードは蔓を離そうにも遠心力のせいでそう出来なかった。そして、ボーンはそのまま地面に骨を振り下ろしてシードを地面に叩きつける。

「ほいっ!」
「うあっ!!」

シードは体を思いっきり叩きつけられて、叫び声と共に沈黙してしまった。

「…まぁ、ひとまず合格かな。」

「おいっ!!」

手合いが終わったのと同時に、アクタートがボーンの近付いて、胸ぐらを掴む。

「おい、何が修行だ!!!殺しかけてんじゃねーかよ!!」
「あわわ!!落ち着いてくれ。おいらにとってもある意味で最後の手段で…」
「じゃあホントに殺っちまったらどうしたんだよ!」

アクタートは気絶したシードを見て、憤慨する。ボーンは戦闘の時のテンションとは打って変わって、腰が低くなってしまった。サンは今にもボーンに殴りかかりそうなアクタートを抑えにいく。

「ちょっと、アクア落ち着いて!」
「これが落ち着いてられっか!!!一発殴らなきゃ気がスマねぇ…!!」

アクタートは怒りで我を忘れて、サンの言葉など微塵も効果を発してない。そこで、一匹、何かを感じたファインはアクタートを呼ぶ。

「おい、アクア。」
「なんだ、ファイン…」
「落ち着けって。別に大したことじゃない。」
「大したことないだと…?」

アクタートは眉間に皺を寄せる。すると、ファインは仕方なさそうに言い始めた。

「あのなぁ、ボーンはシードをわざと窮地にしたんだ。」
「それがダメだっつってんだ!」
「…シードの場合、極度のビビりだ。言葉での激励なんて全く効果が無いんだよ。だから、皆の嫌いな《死》の恐怖を与えたんだ。」
「それを何でしなきゃいけねーんだよ…」

アクタートは急に激昂を落ち着かせて、ボーンを離す。ボーンはストンと尻から地面に落ちて少し咳払いした後、ホッと安堵した。

「どんな奴にも自己防衛の本能があんだよ。だから、ボーンはわざとシードを追い詰めていつまで経っても戦う気の無いあいつに技を出させたんだ。」
「そそそ、ファインくんの言う通り!」

ボーンはさり気なくファインの意見に便乗する。

「………そういうことか。すまねぇな、怒鳴っちまって…」

アクタートはボーンに手を伸ばして、立ち上がらせる。サンも安心したようで笑みが零れた。

「別に大丈夫だ。仲間を想っての行動だ。こいつは羨ましいなぁ、こんな良い仲間に出会えて…」
「あ、あぁ…。」

アクタートは間接的に誉められたことに少し照れる。彼は、当然だ、と言って強がった。全く調子がいいな。
すると、ボーンがシードに近付き担ぎ上げた。

「お、おい。シード、どうすんだ?」
「修行するんだろ?まぁ、今回の手合わせで一度も攻撃してこなかったら宣伝の話抜きで断ってたと思うな…。それじゃ、一週間こいつ借りまーす。」

「お、おぅ…」

ボーンは小柄な体でシードを担いで道場の奥へと消えて行った。

「俺も頑張らなきゃな〜…」
「ファイン、どうしたんだよ、ニヤついて…。気持ちわりーぞ。」
「何でもねーよ。」

ファインは不敵な笑みを浮かべて、道場の外へと駆け出して行った。






…一週間後、

この一週間の間は、リヴに特例をもらって三匹だけで依頼を捌いていた。シードには悪いが、難なく依頼は大量に熟していけた。
いま、三匹はギルドの掲示板の前で明細書とこの一週間の利益を比較して、次はどの依頼を受けようか迷っているところだった。

「これでやっと、残りマイナス三千ポケ…」
「まぁ、健闘した方じゃねーか?」

「ちょっとアクア、ファイン!これ見てよ!」

サンが一つのメモを持って来る。こんなにテンションを上げて何事だろうか。

「どうした?そんな大騒ぎして…」
「これよ、これ!!」

サンはメモをファイン達に見せる。

「えーと、『サンライズ、シルバーランク昇進』…。何だこれ?」
「私たちランクアップしたのよ!!キャー!!これで憧れのチャームズに一歩前進よ!!ほら、これシルバーランクのバッチ!!」

ファインはあまり興味がなさそうな顔をして、はいはい、と返事をして、バッチを受け取った。よく見ると中心に銀が埋め込まれている。なるほど、シルバーである。

「あぁ、それにいつもより多く依頼が受けられる様になるし、今の俺らにとっては良いことかもな!」
「え、まじか?」
「あったりめーだ。俺らが受けてる任務より難しいやつなんて一杯あるだろ。全く、ファインもまだこの生活に慣れてないって感じだな。」
「うぐっ…。」

ファインはアクタートの言葉にムッとなりながらも、そうであることを心の中で静かに認める。

「それに、二匹とも忘れてるんじゃない?シードのこと!」
「あー、そうだな。よし、見に行こうぜ!」
「そうだな。」

三匹はシルバーランクのバッチを胸にシードの元へと急いだ。







今日もトレジャータウンは賑やかである。探検家の皆さんは店の前で雑談したり、挨拶したりと平和な雰囲気が漂ってるのが分かる。しかし、恐らくあの道場の辺りは誰もいないのだろう。

「さーて、道場は…ん?」

そんなことを思いつつも、ファイン達はノリノリでシードのいる道場へ向かった。すると、道場の前に怪しい影が見える。

「何だ?あの人影…。」
「ヒトカゲだけに!」
「アクア、うるさいわ。ちょっと黙ってて。てか、人じゃなくてポケモンよ。」
「そこは言葉の綾だ。『ポケモン影』とか言いづらくてたまらん。」

小芝居をしつつ、ヤケにコソコソしている影を木に隠れて見ているサンライズ。こっちもコソコソしていることに変わりないが。

「あっ!道場に入ったぞ!」
「新入生かしら?」
「さぁな…。」

数分後、その影が道場から出てくる。すると、辺りをキョロキョロと見回して、忍者の様に素早い動きで去ってしまった。

「出て来た…かと思ったら行っちまったな。」
「てか、何で私たちこんなにコソコソしてるのかしら…」
「とりあえず、道場に行こう。」

ファインたちは小走りで道場へと向かった。

「おーい、シード〜!」
「ボーン〜!」
「あれ、いないのかしら?」

サンの言う通りかもしれない。多分、さっきの新入生っぽいポケモンも不在を知ってどっか行ったのかもしれないし。ひとまず、ファイン達は道場内にある控え室へと向かう。

「とりあえず、ここで…」

ガタガタガタ!!

「ひっ!いきなり、何だ!ロッカーが動いてるぜ!」
「誰か中にいるのよ!」
「よし、開けてみるぞ。」

ファインは二匹を後ろに退け、一匹でロッカーへ向かう。そして、慎重にドアを開けた。

バァンッ!!

「っ!!?」

「し、シード!?」

「フグウウゥッ!!フグググ!!」

ロッカーから出て来たのはなんとロープで縛られているシードだった!おまけにに口も布で覆われて喋れなくなっている。

「おい、シード、今助けるからな!W切り裂くW!」

ファインはW切り裂くWを発動してロープを見事に掻き切る!

「おぉ、いつの間にそんな技覚えたんだ?」
「まぁ、俺もレベルアップしてる訳よ。W引っ掻くWだけじゃやってけねぇしな。」

ファインは少し自慢気に答える。

「ぷはー!ゲホッ!ゴホッ、ゴホッ…!」
「大丈夫か、シード!?」
「う…うん、でも…。」

シードは呼吸を整えて、少し涙目になりながら言った。

「師匠が…攫(さら)われちゃった!!」
「師匠…ボーンのことか!?」
「う、うん!」

シードがボーンを師匠と呼んでいるのも気になったが、何てことだ…ボーンが攫われるなんて。
すると、アクタートが真っ先に叫んで言う。

「おい、早く探しに行こうぜ!まだ、遠くに行ってねぇはずだ!」
「そうだな。よし、手分けして近辺を探そう。サン、アクア、お前らは経験浅いって訳じゃねーから森方面探してくれねーか?」
「オッケー!任せといて!」
「全く、新入生ならぬ侵入者か!」

サンとアクタートはさっさと森方面へとボーンを捜索しにいった。

「じゃあ、シード。お前は少し休んどけ、怪我してるしな。俺オンリーで行くからさ!」
「あっ…」

ファインが歩もうとしたその時、彼の手に重みを感じる。振り返ると、シードが手を引っ張っていた。

「何だ?」

ファインは当然聞き返す。シードは顔を紅潮させる。

「ぼ、僕も行かせて!」
「…。」

ファインはシードの中に何かが芽生えたのを感じた。ファインは思わず微笑する。

「へっ!お前も随分と男らしいこと言える様になったじゃねーか!」
「そ、そうかな?」
「よし、一緒に行こうぜ!シード!」
「…うん!!」

心身共に強くなった……かもしれないシードはファインと共に師匠救出のために出発するのであった。

to be continued......


ヒート ( 2012/09/06(木) 21:08 )