第十四話 性格革命@
「そろそろ、行動したほうがいいかもな。メインキャストが空気になっては仕方あるまい。」
王は重低音で言う。すると、玉座の前に二匹のポケモンが現れる。
「王様。」
「何だ?」
「今回は俺、エビワラーのリンプと…」
「サワムラーのムラーにお任せを。」
王は目を閉じて少しの沈黙の後に口を開く。
「分かった。いってこい。」
「有難き御言葉…では。」
そういって二匹は去っていった。
「まぁ、暇潰しにはなってくれるか…」
王はそう言うと、欠伸をして玉座に凭れかかった。
*
六回目
「ギャアアアアアアッッ!!」
「シイイイィドオォォォッ!!」
八回目
「ウワアアアアアッ!!」
「ちょっと、シードォー!!」
十三回目
「ヒイイイイイイッ!!」
「シードすわああああん!!?」
「全くなんだこれは!!」
アルトが壁を叩いて、目の前にいるサンライズを叱る。サンライズは壁を叩く音にビクっとしてそのまま困ったように俯き続けていた。しかし、四匹とも何故こうなったかは十分承知なのである。
「ほ、ほら、シードもさ…まだ、新人だしさ、な?」
「口答えするのか?新人ども?」
「すみません、俺たちも新人でした、はい。」
ファインは迂闊にも火に油を注ぐような真似をしてしまった。
そうだよ、まだ俺ら探険隊始めてから一年も経っていない!
ファインは苦笑いを浮かべて頭を下げる。
「おい、何笑ってるんだ!とりあえず、これを見ろ!」
アルトは一枚の紙をファインの胸に押し付ける。ファインはなすがままにその紙を掴み取り、内容をざっと見あ。すると、ファインはある事に気付く。
「これって収支明細書?」
「よく分かったな。チーム毎に収支が書かれている。お前らの所をよく見てみろ!」
ファインが明細書を持って目を動かして、中身をざっと見る。残りの三匹も気になって覗いてきた。
「えと…サンライズの…」
「収支総計…」
「マイナス一万ポケ!?」
サンライズは一際輝く赤い数字を見て、愕然とした。他のメンバーを見ると、黒一色で明らかにサンライズが一番活躍してないことがすぐに分かった。
「どういう訳かお前たちだけ異常な数字なんだ…」
「仕方ないんだ、だって…」
「言い訳は聞きたくないよ!」
アルトが再び壁を強く叩き威嚇する。怒り心頭の今の彼には何を言っても無駄なようだ。
「私らギルドは探険隊、そして今日の治安悪化に注視して救助活動も兼ねている。しかし、ここで注意して欲しいのことは−−−−−」
そう言うと、アルトが足をダンっと強く床を踏みつける。すると突如、ホワイトボードが出現!アルトはマジックを持ち、ホワイトボードにでっかく字を書き始める。
「この世はギブアンドテイクだ!!」
「ギブアンドテイク…」
「ほぉ…(ホワイトボード、どこから出て来たんだ…)」
アルトはキャップを閉めて、ホワイトボードの周りをグルグルと歩いて言う。
「私達は『依頼』そして『報酬』という対立とも共存ともとれる関係においてこのギルドは成り立っているのだ!つ・ま・り・だ!!」
「(ふあぁ…)」
アルトが叱っているのをよそにサンがこっそりと欠伸をする。流石に長ったらしい話に退屈してきたようだ。別にアルトは悪い事は言ってないんだけどな。
「『依頼』をちゃんと熟さなければ、『報酬』が得られない!そして、ギルドが維持出来なくなるのだ!!」
ばばーんっと効果音の入りそうな意気の込んだ発言にドヤ顏を見せるアルト。そうだ、彼の性格を忘れてた…W何故か偉そうW。それが彼だ。そう思うと、不思議と明細書の現実も微妙に思えてくる。ついに、ファインは息を一つ吐いて答える。
「要するに、赤字を黒字にしろってことだろ?」
「そうだそうだ!」
アルトは満足そうに肯く。とりあえず、怒りを収めることはできた。ファインたちは安心した。しかし、
「はぁ、良かった…」
「そうだ、最後に一つな。」
「?」
サンライズは最後にアルトから一つの忠告を受けた、いや、受けてしまった。
「来月中に赤字を黒字に出来なかったら破門な♪」
「オッケー、了解…え?」
「エエエエエエエエエエエェッ!!!?」
全員の声がギルド中に響き渡った。
*
「ということで、俺はシードの性格を変えることに賛成する!」
「えっ!?」
サンライズは、アルトの説教から、どうにか最悪の事態を避けるべく今後の活動の反省をすることになった。その結果…
「シードの性格を変えることに満場一致ね。」
「えっ!?僕の意見無視!?」
「シード、これは仕方ないことなんだ…。」
「えぇ…そんな目で言われたら…。」
−−−知ってる。僕も自覚してる。皆がそう思うのも仕方ないことなんだ。
「で、どうやって変えるのよ?」
「簡単にはできねぇよなぁ…。ファイン、どうすればいいと思う?」
「ん?」
ファインは顎に手をやる。性格を変えるっていうのはある意味人格が入れ替わるのと何ら変わりないないし。後は何か衝撃的な出来事が起きなきゃ無理っぽいし。そして、ファインは一つの考えに辿り着いた。
「道場行こうぜ!」
「おぉ、道場か!いいぜいいぜ、賛成〜!」
「確かに男らしくするには一番かもね。汗臭そうだけど。」
ファインは二匹も納得したのを確認して、シードを見る。
「で、お前自身はどうなの?」
「ぼ、僕?ん〜…」
シードは俯いて悩む。そして、何か決心したかの顔を上げて言った。
「や、やってみるよ!」
「ヘヘッ、よっしゃ、道場行くか!!」
「おおぉー!!」
     こうして、サンライズは道場に行くことになった。
「で、道場ってどこ?」
「「「おいっ!!」」」
*
「ここがトレジャータウン唯一の…」
「道場ね。」
一度ギルドに帰ってロスナスに聞いてみたところ、何とか道場を見つけた。実はトレジャータウン内にあったという可笑しな話だ。しかし…
「こんなのあったんだな…」
「てか、サン。お前、ここ案内してくれなかったよな?」
「だって、知らなかったもん。私とアクアはこれでも一年ちょっとしかここにいないのよ。」
「ふーん…」
結果として、道場を見つけられたから別に構わないが…。とりあえず、サンライズは道場の中へと足を踏み入れる。
「たのもー!!!」
アクタートが道場に入り、大きな声で叫ぶ。しかし、返ってくるのは反響する彼の声だけで別の誰かの返事はなかった。やがて、反響した声も収まり道場内に再び静けさが訪れる。
「それにしても…」
「寂れてんなぁ…」
辺りを見回すと全体的に茶色っぽく、埃が舞っており、壁に掛けてある道着も黒く煤のようなもので汚れてしまっている。天井を見上げるとイトマルが巣を張ってこの建物を巣窟のようにしてしまっていた。
「何か薄暗くて気味悪いね…」
「ちょっと、シード、もうビビってるの!?」
「うっ!だってぇ…」
「(てか、妙な感じがするな…)」
相変わらずシードはビビりまくりである。一方のファインは違和感を感じていた。すると…
「おめえら、誰なんだ?」
誰かがヤケに訛りが酷い口調でサンライズの背後から話しかけてくる。振り返るとそれがガラガラが袋を右手に突っ立っている。ファインはとりあえず情報が欲しかったので質問に答える。
「この道場の主人を探してるんだけど、不在みたいなんだ。」
「ど、どどどどど道場のぬぬぬぬ主いいいい!!!??」
急にガラガラが目を見開いて大声を上げる!彼は持っていた袋を投げ出して、ファインの肩を掴み責めよる。ファインは急な出来事に困惑した。
「い、いきなり何だ!!?」
「くううぅぅっ!!道場主になって早十年!!こんな嬉しいことはなかった!」
道場主。まさか…
サンとアクアは顔を見合わせ、肯きあった後、ガラガラを指差して言った。
「ねぇ、あなたが…」
「この道場の主人?」
「そう!わいがここの道場主ボーンだ、よろしくのう!」
to be continued......