ポケモン不思議のダンジョン 正義と悪の狭間で





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-第一章 日常という名のスパイラル!-
第十一話 生存者

 一方、サンライズらは既に闇夜の森へと踏み込んでいた。ここはあまり日光の入らない陰鬱とした雰囲気が特徴である。周りに繁茂している叢から、パラス、クサイハナなどのポケモンが顔を出して此方を見ているのが分かった。

「此処が闇夜の森かー…。」

「随分、鬱蒼として薄暗い場所だな。こっちまでジメジメしてくるぜ!」

「この奥にフィシルという村があるらしい。そこから事情を訊くのが先決だ。」

ファインの言葉通り三匹は森の奥へと進んで行った。サンはこの空気が嫌なのか鼻歌を口ずさみながら二人の後ろを歩いていっている。

「〜♪」
「サン、ご機嫌だな。」
「え、そう?別にそんなつもりはないんだけど…。」
「鼻歌が聞こえてくるが…」
「気晴らしよ。」

そう言い終わると、サンは再び鼻歌を口ずさみ始める。自分の隣にいるアクタートはただ前を向いて歩み続けている。

「おい、アクア!」
「ん、なんだ?、ファイン?」
「ヤケに静かじゃねーか、どうかしたのか?」
「どうもしてねーよ。」
「今日のお前ら何か変だぜ…」

ファインは溜め息を吐いて、懐疑の念を出す。すると、アクタートがふと訊ねてきた。

「そういえば、ミュウはどうしたんだ?ここ二週間ぐらい見かけてないぞ。」
「あー、そのことなんだが、俺もよく分からねぇんだよ。前触れも無く現れたり、いなくなったり…」

ミュウと出会って一ヶ月とちょっとだが特に変わった出来事は起きていない。強いて変わったといえば、自分の食欲が普段より増したということだろうか。ミュウの影響もあるとは思うが、多分この暮らしに殆ど馴染みきっているせいかもしれない。

「ふ〜ん、そっか。」
「何だ、心配してんのか?」
「ちげぇよ、お前に憑いてるって聞いたから何かあるのかと思ってさ。」
「そっか、そっか……え?」

なぁ、いまアクアが『憑いた』って言ってなかったか!?何故、アクアがそんなことを知っている!俺は一言も言ってないぞ!

ファインはアクタートの前に出て、肩を掴んで問い詰める!

「ちょ、ちょ!いきなり何だよ!」
「アクア、お前今『憑いた』って言わなかったか!?」
「言ったけど、それがどうかしたのか?」

アクタートはファインの突然の行動と質問に戸惑う。ファインはそんなことをもろともせずに更に詰め寄る。

「誰から聞いたんだ!?」
「え……ミュウだけど?」

「え?」

ファインは唖然とする。ミュウ自らそんなことを口にするなんてとても考えられない。アクタートたちにはミュウの存在は『実体』として捉えられている方が色々と安全じゃないか、常識的に考えて。霊的なモノとか怪しい以外の何ものでもないのに…。でも、ミュウのことだからこれには何かを孕んでいるのだと思う。と、ファインは自分を納得させることにした。そして、そんなことを考えてなかったかのようにファインは笑顔で返事する。

「あ、あ、そうか!ミュウが言ったのか!ハハハッ、それなら問題無いな!アハハハハハハガ、ゲホッ、ゲホッ!」

「おい、落ち着いて喋ろ!大丈夫か?」
「あ、あぁ、大丈夫、ゲホッ…」

「ちょっとどうしたの二人とも急に止まっちゃって!」

サンは二匹の急な行動に疑問するが、ファインは、何でもない、とだけ答えその場は何とかしのいだ。結局、彼に残ったのはミュウへの疑心だけだった。その時、

「シャー…」

「!!…二人とも気をつけてアーボの鳴き声が聞こえるわ!」
「相変わらず、耳良いな。鳴き声の識別も出来るのか。」
「ヘヘッ、なんたってサンだしな!」

すると、茂みからアーボが数匹ニョロニョロと出てきた。艶かしい蛇腹を這わせながら此方へと近付いてくる。ファインたちは臨戦状態になり、アーボたちを睨みつける。

「ふっ!なんでお前が」

ファインは先制する。土を蹴り上げ思い切りダッシュをする。そして、膝を曲げて空へとジャンプしてアーボたちを見下す。そして、

「偉そうなんだよ!」

そう言い、ファインは火の粉を大量に放つ!火の粉は無秩序にアーボたちへと降り注がれる!

「シャアアアァアアッ!!」

アーボへと火の粉は直撃した。結構な数を食らっていたせいか、一発KOを叩き出すことができた。ファインはストンと土の道を着地して清々しい表情をしていた。

「あー、スッキリした!」

「俺たちの出る幕ねぇな〜。いつの間にあんなテクニック身に付けたんだ?」
「やっぱり、私の言った通りね!ファインがいれば、世界一の探検隊も夢じゃないわ!」
「そんなこと、いつ言ったんだ…」

サンは一人で喜びながら先へと勝手に進んでいった。ファインはそんな彼女見て、微笑するしかなかった。
暫く進むと、サンライズはある異変に気付く。それは誰にでもわかる異常だった。

「なーんか、植物がこの辺から減ってきているわね。」
「そうだな。それに……なんか焦げ臭くねぇか?」

サンは鼻をくんくんとさせて匂いを確かめる。サンは少し苦々しい表情になってアクタートに理解の意を示した。

「そろそろ火の元なのかもな。」

ファインの言葉に二匹は頷く。やがて、彼等の間に嫌な緊張が走っていった。
そして、慎重に歩みを進めて行くと、やっと広い場所が見えてきた。

「見て!多分、あそこよ!」
「よし、行くぞ!」

サンライズは一気に小道を走り抜け、開けた場所に出た。安堵したのも束の間、彼等の目の前の光景は余りにも衝撃的だった。

「何だ…これ…。」
「ひどいわね…。」
「あぁ…。」

彼等の目の前にあるのは予定では村だった。しかし今は村どころか草原とも呼べない程草木が焼かれてしまい、ただの赤土が焦げる臭いしかしない。サンライズは思っていたよりも深刻な状況に愕然とする。ファインの横の今にも倒れそうな看板にこの村の名が書かれて煤けていたことが目の前の事実の裏付けだった。サンライズは村内へ足を踏み入れる。

「見たところ、いかがわしいものはなさそうだな…」
「みんな逃げ切ったのかしら?」

ファインは一つの焼け焦げた葉で作られた家屋の中に入る。そして、

「誰かいるか〜!?俺たちはサンライズ、プクリンのギルドの者だ!この火事の被害者を助けに来た、だから、もし居るなら返事をしてくれ!」

シーン。ファインへの応答はゼロ。やはり皆逃げ切れたのだろうか。それとも…

「いや、それはダメだ。考えちゃ…。」

ファインは最善の結果を考えるのと同時に思い浮かんだ最悪の結果を頭を振ってはぐらかす。

「サン、アクア!誰かいたか!?」

別の家屋を調べるサンとアクアは体でポーズをして結果報告をする。どうやらどちらともダメらしい。ファインは仕方なさそうに溜め息を吐く。

「仕方ないな…。サン、アクア!少しこの辺で休憩しよう!」







ファインたちは村の中央にある大きな切り株に凭れて休息を摂る。村の中央はそれ程焼かれてしまってはいないようだ。村の被害状況を見ると東側から火の手が襲い掛かって来たらしい。自分達サンライズが入ってきた所から少し横ら辺。それに、一週間前となると雨が連続する前日だ。幸い、この湿った季節が被害を抑えてくれたようだ。とはいっても、この状況が芳しいとはお世辞でも言えない。

「生存者いるかな?皆逃げ切れたのかな?」

サンが切り株の上に座りながら答える。どうやら思っていることは皆同じらしい。

「きっと大丈夫だぜ。今はそう思いてぇよ…。」
「そうね…」

ファインは二人の会話を聞いてふと空を見上げる。青い空が輝いて日光が心地よく差し込んできていた。そして、焼き焦げた家屋の残骸や転げ落ちているガラクタを照らす。この陰鬱とした森にとってこの光が皮肉なものに映ったのは間違いないだろう。ファインは自然災害の怖さを肌で感じた。

「でも、こんな湿っぽいのによく火事なんて起きたよな。」

アクタートが腕を組んで珍しくまともな意見を言う。ファインは答える。

「そうだな。こういうのは大抵極度の乾燥地帯で起こるからな。珍しいっちゃ珍しい。」
「そうよねー、放火じゃなきゃこんなのあり得ないわよ。」
「うーん…」



















ファインとアクタートは同時にパチンと自分の両手を叩いてサンを見る。

「「それだ!!」」

「え…、何が?」

アクタートは同時に閃いたファインを訝しく睨む。

「おい、ファイン、俺が先だ!」
「だってよ、自然発火がダメなら放火としか考えられん。」
「あぁーーーー!!無視した上に俺の考え言いやがった!チクショーッ!」

アクタートは一人で騒ぐ。サンは気にすることなく、ファインに答える。

「でも、こんな火災よっぽどの火力が無いと燃え広がるのも大変よ。炎タイプのポケモンかしら?」
「それもありえるな。でも、動機は?むしろ、草タイプのポケモン方が炎タイプのポケモンを恨んでそうだが…」

ファインは苦笑混じりで答える。アクタートはサンにまでシカトを決め込まれたため勝手にどこかへ歩き出す。

「おい、アクア!どこ行くんだ!」

「ちょっと散歩してくるだけだ!」

アクタートは怒り気味ででどこかへ行ってしまった。

「ったく、こっちは冗談なのによ。今朝の仕返しだ…」
「まぁ、すぐ機嫌直すだろうから気にしないで。」





「ったく、こっちは真面目に言ってんのによ!」

アクタートは転がり落ちている石ころを蹴り上げ気を紛らわす。
なんで、ファインはいつもあぁなんだ!クールな顔してスカしてる感じ、ああああぁムカつく!!だって、今にも『アクタート君、そんな拙い冗談はよしてくれ。俺は、ちゃんと…おっと彼女から電話だ。すまないな、アディオス♪』とか言いそうだ!そう思うと、またイライラしてきた!

「こんにゃろおおおお!!」

アクタートは思いっきり叫んだ。多分、サンとファインにも聞こえていると思う。アクタートは叫んだ後、顔を萎れさせて深い溜め息をつく。焦げ臭い風が一陣吹き上げて、空に黒く薄い灰塵が舞う。アクタートはこんな居心地の悪い所にいるのも段々と億劫になってきたようだった。

「仕方ないな、戻るか…」




ガコンッ




アクタートが帰ろうと足を踏み出した瞬間、背後から結構大きめの物音が聞こえた。

「なんだ…?」

アクタートはゆっくりと振り返る。アクタートがそして大きな白い岩を見つける。恐らく、この火災で焼けたものだろうが、美しい純白だった。

「あれか…他に見当たるものもねぇしな。」

アクタートの中に『気のせい』という選択肢は無いようだ。彼は恐怖することなく進む。もし、生存者がいたとしたら大事になるかもしれない、そう彼は思っていたからだ。そして、アクタートは岩の前に着き、その向こう側を覗いた。

「そこに誰か…!!いた!お?い、サン!ファイン!」

アクタートが何かを発見する。そして、ファインやサンが声に気付き、アクタートの元へと急いで来た。

「大声出してどうしたんだ?何かいたのか?」
「その通りだ。こっちへ来い。」

ファインとサンは疑いつつもアクタートがいる白い岩の元へと急ぐ。すると…

「…こいつは!」
「フシギダネ!?」
「あぁ、そうみたいだな…、生存者か。」

なんと、そこには寝息を立てて眠っているフシギダネがいた。

to be continued......


ヒート ( 2012/08/31(金) 18:25 )