第三十話:ブースター
「しっかし、ハヤシガメも不運な奴だな。俺達に狙われるなんて」
真っ暗に物凄く近い森の中(ナイトタウンへ行く道)で一匹呟く
赤色の毛のポケモン、
ブースター。
「そろそろナイトタウンか…“身代わり
変化”、身代わり」
ブースターが技名を言うと
ブースターの体の周りにグラエナの身代わりが出来る。
分かりやすく言うならば、
ブースターが身代わりで作った着ぐるみを着ているようなイメージだ。ちゃんとしたグラエナの形だが。技はもちろんグラエナの技になる。
技“変身”の劣化版みたいなもので一定ダメージ以上で溶ける変身のようなものだ。
「身代わりを意思があるものと無いものとに作り分けるの面倒くさいな……」
身代わりはイメージ次第で何でも作ることが出来る。ただし、普通は一種類だけである。
「いちいち“身代わり
変化へんげ”って言うのもかっこ悪い……何か名前……これ纏ってるときは本当の自分じゃないし、かといって自分だし……虚はファルス……実はトゥルース……」
「
虚実の我!!これに決定!!」
この
ブースター、血反吐を吐いた特訓の成果で身代わりを此処まで使いこなせるようになったらしい。
「……あの〜……旅の方ですか?」
話しかけてきたのはルガー。
「…何時から聞いていた?」
「
虚実の我トゥルーファルス!!これに決定!!って言う所から…」
なにか良く分からないことを言っているので亡霊の役目を忘れ、普段の口調で話すルガー。
「だったらいいや。で、俺達?は旅してるけど?」
「でしたらナイトタウンへご案内します(疑問系?)」
実際、この森はナイトタウンにしか繋がっていない。
「よろしく〜!」
ルガーに案内されてたどり着いたナイトタウン。
「案内ありがとー!」
そう言ってブースターは走ってジムの方へ行く。
「マグマラシ、ナイトタウンに遺跡ってあるのか?」
「絶対にある。旅のガイド最新版に載せることの出来ない遺跡があるって現地のポケからの有力情報」
「今度はどんな遺跡なんだ?」
「説明出来ないって。分かっているのはその遺跡はどれだけ時間をかけても言い表せないほど変と言うこと。たまに
痙攣したポケが運び出されるって」
「なんで
痙攣してるの!?」
「だから言い表せないんだって!!」
「嫌な遺跡だな(マグマラシ、この町から出る時気を付けろ。
町長の餌食になりたくないなら……)」
今日はチームエレメントが二度目のナイトタウンのジム戦で勝ち、ポケモンセンターに泊まって夜を明かしてナイトタウンを旅立つ日。
ジムに隣接されたポケモンセンターから出てきたチームエレメントを見る
ブースター。それと反対側にも何かの影が。
「あれが
標的のマグマラシちゃん!」
「早速行くぞー!」
「あ、マグマラシ右!」
「え?…わっ!」
マグマラシは突然飛び出してきたエンテイに痴漢行為をされる。
「もう出て行くのか〜?俺と結婚でもしねぇか?」
エンテイの体が揺らいで消え、ゾロアークがでてくる。マグマラシは身体をプルプルと震わせている。
「……あのなぁ……」
「へ〜口調から察するに俺キャラ?」
「……俺は…俺は……男だー!!」
マグマラシの大声で叫ぶ。
「……え?」
「雄。♂。男」
「そんな…俺は…男を……男をターゲットに……」
そう言って物凄く沈む
町長。そこへ走ってくるルガー。
「町長!また仕事サボって!!……って町長?……町長ー!美少女が来ましたよ町長町長〜!」
ルガーの呼びかけにも応じない
町長。この世の地獄を見たかのような顔をしている。
「……どうしたんですか町長は!」
「…え〜と、マグマラシが男だと言うことを言っただけだ」
「アリゲイツさん!それは本当ですか!?」
ルガーが凄い迫力でマグマラシに問い詰める。
「あ、ああ」
「え、あ、……う〜……マグマラシさん、さっき言ったことは冗談だと言ってください!!町長の前では女と性別を偽ってください!私をどうしてもいいですからどうか御願いします!!」
マグマラシに四足歩行ポケモン式土下座をするルガー。
「え、あ、う〜……わかった。でもルガーのことはどうもしないって」
「ありがとうございます!!」
「え〜と、
町長、さっきのは冗談です。私は…俺は女ですからそんな反応しないでください」
マグマラシの声にぴくりと反応する
町長。
「何の事だ?あんたは女は元からだろ?何を言ってるんだ?」
『…………(町長、記憶を故意的に消した!!)』
「あ、そだ。あんた等町を出て行くところだろ?旅頑張れよ!じゃーな!」
「……マグマラシさん、ありがとうございます!それでは頑張ってください!!」
町長とルガーは町の奥へと走って行った。
町の裏面では二匹は恋仲だとかそうでないとかいう賭けが続いているらしい。
エレメントはナイトタウンを出て遺跡へと歩を進めている。
ブースターグラエナ版はハヤシガメを見つけたのでそのまま尾行中。
「遺跡までどれくらいだと思う?」
「う〜ん…五百メートル」
「それだったら俺が見てるって!後三千メートル」
「ブー!!残念!後六十歩!」
『え?』
「右六十度の方の地面見てみろ」
アリゲイツ達は言われたとおりの方へ向く。
「……アレ?」
「アレだよな?」
「アレだろ」
『フシギソウの背のつぼみがキノココに替わってる石像』
「プッ!ハハハハハハ!!……ツボに!!!!!!!」(小声:
ブースターグラエナ版)
「…?みんな何か言ったか?」
『何も』
「気のせいか…」
「この変な遺跡の中へレッツゴー!!」
エレメントは石像の足元に作られている遺跡の入り口から入っていく。
ブースターも笑いを堪えつつ後に付いて行く。
階段を下りるとそこにあったのは……ゴローニャの体の石が全てイシツブテの像。
ブースターの顔の部分がブイゼルになっている像、ヒマナッツの葉っぱが花になっている像等、
とてつも無い数の変な石像が並んでいる。
それも気味の悪い組み合わせから面白い組み合わせなど様々だ。
『ブッ!ッハハハハハッハハハハハハハハハハハハ!!!!』「あはははははははっはっっは!!ゲホッ!」
「ハハハ……また…誰かの声が聞こえたような…」
『何が?』
「何でもない。奥行ってみようぜ?」
エレメントはさらに奥に行く。もちろん
ブースター達(?)も。
「お!マグマラシそっくりの像あったぞ!!」
アリゲイツが見つけたのは変ではないマグマラシの像。レントラーとハヤシガメは像とマグマラシを見比べている。
「似てる…」
「瓜二つだ…」
アリゲイツはマグマラシの石像に手を伸ばす。
…ガチッ!
『え?』
ゴゴゴゴゴ……
「な、何の音!?」
「遺跡が揺れてる!?」
「アリゲイツ!何した!?」
「何もしてねえよ!!それに触る寸前だ!」
「遺跡にはどういった仕掛けがあるのか分からないんだから触ろうとするな!!」
ドドドドドドドド……
『ィャー!』
『?』
┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛……
『助けて〜!!』
そういいながら奥から転がってきた大きな岩の前を物凄い勢いで走って来たのはセルシーフ。メタモンはなぜかヤルキモノの背に乗っている。
「何したんだ!!」
「何って面白そうなものがあったから引っこ抜いてみただけよ!!」
エレメントも物凄い勢いで逃げ始める。
「あ…岩!?」
ブースターもすぐに逃げ始める。
『ぎゃぁぁぁぁ〜〜!!助けて〜!!』
全員、物凄い勢いで出口に殺到する。するとすぐに岩は追って来て、入り口の部分にぴっちりとはまる。それはもう水一滴も入り込めなさそうなほどに。
『はぁはぁはぁはぁはぁ……』
ブースターグラエナ版は技“泥棒”を使って日照り石を盗み出す。そしてこっそりと逃げ始める。
「お前達は何でこんな所にいるんだ!」
「良くぞ訊いてくれました!」
「我等宝石盗む為!」
「我等現金盗む為!」
「風が如くに盗って行き」
「嵐の如く去っていく」
「「「盗賊!セルシーフ!」」」(微妙なズレ)
「………」
「ちょっと!アレほど練習したでしょ!?なんでズレるのよ!」
「ですがボス…」
「……いやそんなこと訊いてないんだけど…」
「あ、そうだったわね。あなた達の後をついて来てたら遺跡の話があったからお宝でもいただこうかな?って思って先回りしてたのよ。……ってそんなことより!行け!メタモン、ヤルキモノ!」
『了解ボス!』
二匹はハヤシガメの
荷物ブースターから日照り石を盗る。そしてすぐに逃走する。
『あーーーーーっ!!』