第二十八話:夢に始まり…再会?
「さて…この町に来てから二日間がたった…マグマラシもといショックを受けた女の子はどこだ?」
「言い換える単語逆だ!しかも女の子じゃないって!」
「そんな細かいこと気にしなくてもいいじゃねえか」
「ちゃんとマグマラシを探そうよ」
「二日間も帰ってこないマグマラシーどーこーにー(でーもー)いーるー」
「ぉ-ぃ」
「?マグマラシの声?」
「ぉ-ぃ」
「マグマラシはあっちだよ!」
ハヤシガメ達は声のする方向へ走っていく。
「マグマラシ何処ー!!」
「此処!誰かが悪戯で掘ったと思われる落とし穴の中!」
「…ダサ」
「アリゲイツ…ちょっとこっち来い」
「おー見事に落とし穴の底だなぁ…馬鹿め」
「アリゲイツ…?本当にお前か?」
「俺以外の誰なんだよ?この雌豚が!」
「なっ!降りて来い!このくそアリゲイツ!」
「誰が降りるかってんだこの」ドンッ!「くそマギュ!マラシめ」
「凄っ。突き落とされ、地面に顎を打ちながらも台詞を言う役者根性。なぁハヤシガメ」
「そーだねークソ同士が仲良く穴の中だね」
「アリゲイツ、ハヤシガメ、覚悟は?」
「誰がするか…」パチン
「は?」
アリゲイツが指を鳴らすとマグマラシの足元に暗い穴が出来、マグマラシはその中を落ちていく。
「マグ……シ!……マラシ!起きろ!今日はジム行くんだろ!」
「…………」
マグマラシは目覚めたばかりの頭で周りを見渡す。
「ああ、夢か…(アリゲイツとハヤシガメ、口が悪かったな…)」
「まだ寝惚けてるのか?雷の牙!」
「ぎゃー!!しびれる!」
マグマラシはレントラーの雷の牙を受け、ぴくぴくと痙攣している。
ズルズルズルズル
「アリゲイツ引き摺るな!」
「なら…こうだ!」
アリゲイツはマグマラシを抱き上げる。
「な!御姫様抱っこも止めろ!!」
「ハヤシガメ、どうする?」
「降ろせよ……」
「どうするって…ジムに行くってマグマラシを起こす時に自分で言ったのに」
「…ソウダッタッケ〜」
「カタコトだ…て言うか降ろせ」
[ピンポンパンポーン]
〈ニュース〉
[昨夜、アイスタウンでポケモンが四十四匹も切り刻まれるという事件が起こりました。被害にあったポケモンは全員、切り口が焼き切られるという共通点があり、ポケモン警察は同一殺ポケ犯として逮捕する方針で捜査しています。犯罪者は炎タイプ、もしくは電気タイプであり、背丈は四十〜五十センチ程と推測される。とのことで、これに心当たりがある方は警察当局まで御連絡ください。また、犯人にはこの事件の他にも犯罪を犯している可能性が高く、そのことを考慮して三十万ポケも懸賞金が懸けられています]
「…なんで
宿泊施設のスピーカーからニュースが……」
「それよりも四十四匹も殺した……殺ポケ犯、捕まってないんだね」
「……アイスタウンか………」
「………………」
時は変わって此処はナイトジムの中。ナイトタウンに来るときに通った森並みに暗い。今はマグマラシの炎で辺りを照らしている。
「何と言うか…ナイトタウンのジムって……暗すぎる」
「外は明るい色だったけど中は黒一色って…」
「とりあえず……挑戦しに来ました!!」
「………ふぁあ〜……挑戦者ね……
御頭!!我等に挑戦したいと言う者が来ました!!」
どこかから声が聞こえてくる。
「御前…寝ておったのか……」
「すみません
御頭!」
御頭と呼ばれたポケモンは天井から飛び降りてきた。布を被っていて何のポケモンなのかは分からない。
「何故天井?」
レントラーの質問にきちんと答える
御頭。
「忍びたる者、天井裏に居る事もあろう。……挑戦者か…此処は一度しか受けれない事を知って来たのか?」
「一度だけ!?」
「
左様。このジムへの挑戦権は一度きり。そのとき勝たなければ二度と挑戦出来ない」
「……勝ったら何度も挑戦してもいいって事?」
「勝ったらな」
「じゃぁ今、挑戦する!!」
『アリゲイツ!』
「ほぅ……一度きりの挑戦権だと分かっていて今挑戦するか…他の者達は引き返して己を鍛えてから挑戦してくるのだが……面白い奴だ」
「ちぇっ」
「舌打ち!?」
「
御頭の心理戦を一発でクリアするなんて…」
「心理戦……」
「そうだ。心理戦だ。ここで引き返すものはいざという時、決心がつかない軟弱な精神の持ち主か、知恵の働く者のどちらかだ。御主達はここに入ってすぐに挑戦しに来ました・・・・・・・・と言っただろう。その時にもう御主等の挑戦は始まっておったのだ」
「うわー危なかった…ナイスアリゲイツ!」
「引き返していた場合、次のジム戦はとてつもなく苛酷かこくなものにしていた。挑戦権が一度きりというのは嘘だが」
「……今回の何倍?」
「四倍から六倍。相手によっては殺傷…もとい弱らせる」
「殺傷!?」
「ハハハ、命は何時か終わる物…もちろんこの心理戦を他の者に広めようとした者にはその時に霊界と冥界の神に口を利いてやるつもりだ」
「絶対口封じだ!!」
「何を言う。そんなことするつもりは…………」
『………(布の中から見える目が本気だった!!)』
「なんで黙るんだ?」
『アリゲイツ……平和でいいな〜……』
「
御頭、用意が出来ました」
「分かった。トラップは何時も通りでするぞ」
「御意!」
「トラップ……なんか物凄いジムだな……」
「そうでもない。……わしの親父のスパルタに比べれば……」
「何かボソッと言った!」
「さて、このジムのルールを説明しよう。このジムは回避、気配察知に重点を置いている。挑戦者チーム一匹一匹に持ち点十点があり、トラップに引っかかる度に一点ずつ引いていき、持ち点が無くなった時点でその者はチームの仲間から持ち点を分けて貰うまで退場。もちろんほっといてもいいぞ。他には我々、ジム員の攻撃を受けても一点ずつ引いていく。ジム員を倒す度にその者には三点が加算される。挑戦者チーム全員の持ち点が無くなった時点で挑戦者の負け。挑戦者チームがわしを倒した時点で挑戦者チームの勝利。此処まではいいか?」
「なんとか。点数制のゲームみたいだな」
「ジム員は攻撃回数が決まっており、一匹十回まで。また、ジム員の数はわしを含め五匹だ。トラップの数は二十個。トラップには捕獲系は無く、全て攻撃系だ。特別ルールとして、挑戦者チーム全員がわし等が持っているこの鈴…と言っても鳴らないが。この鈴を全て集めても挑戦者チームの勝ちだ。わし等ジム員は鈴を盗られたら攻撃せずに鈴の奪還をする。この鈴は隠してはならぬ。これがこのジムのルールだ」
「大体はこんな感じか?……点数制で持ち点は一匹十点、トラップか攻撃を受ける度に一点ずつ減り、全員の点が無くなると負け。あんたを倒すかジム員が持っている鈴を集めたら俺達の勝利」
「そうだ。ただ、ジムの中は真っ暗だ。灯りを点けるのも道具を使うのも有りだ。アブソル、グラエナ、シザリガー、スカタンク、ダーテング、ドラピオン、ドンカラス、ノクタス、ブラッキー、ヘルガー、ミカルゲ、ヤミラミの中から四匹選んでくれ。選んだ奴が対戦相手になる」
「……バンギラスは居ないのか?」
「よく気付いたな。バンギラスはわしだ」
「ふーん」
「軽っ!?」
アリゲイツのそっけない反応でこけるバンギラス。
「グラエナとノクタス、ダーテングとヘルガー」
マグマラシ達が一匹ずつ指名していく。
「また個性的で大変な奴を選んだな…」
「マグマラシとアリゲイツ久しぶりー!っと、そっちの二人は初めてだな。よろしく!あ、おれはグラエナの双子の兄のオルトロスだから」
軽い挨拶をするグラエナの兄オルトロス。(※第五話を除く二話〜八話登場のグラエナの双子の兄。八話にてピアノ担当)
「……久しぶり」
一言だけ話したノクタス。(※一話と八話に登場したサボネアが進化)
「美しき乙女のいるところ、たとえ何処でもやってくる!神が授けた奇跡の美貌、悪魔が与えた魅惑のボイス。俺にかかれば♀は堕ち、そこに存在するだけで全ての♀が頭を垂れる!俺の名前を呟けば、大地は感喜し、空は喜悦し、海は歓喜する!宇宙ですらも恐悦するナイスガイ!その名もダーテング様たぁ、あ、俺のことでぇ〜い!!」スパコーン……ドサ。ズルズルズルズル。
再び同じことを言っているダーテング。再びコノハナに引き摺られている。(※第二十四話登場)
「昨日、案内しましたね。よろしく御願いします」
礼儀正しく挨拶をするルガー。(※第二十五話、第二十六話登場)
『……何で全員知ってる奴なんだ……』
エレメントは全員意気消沈する。
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バンギラス「わしの親父のスパルタは…五歳のころにゴロツキ達に投げつけられ、六歳のころにヤクザ相手に……
七歳のころは地中六百メートルに埋められ、八歳のころは火山の中のマグマで囲まれた場所に……
九歳のころはカイリューに頼んで上空から命綱なしのスカイダイビング……
十歳のころは海の沖にほっとかれて…十一歳のころは親父に殺されそうになり、
十二歳のころはありとあらゆる毒を致死量ギリギリまで……
十三歳のころは伝説のポケモン相手に技を使わない状態で挑戦させられたり……」
……スパルタすぎ。それでよく今まで生きてたね。
バンギラス「……ほんとに……ちなみにジムランクが低い理由は技のパワーとかは強いけれどコントロールが下手だからだ。今は練習中だが」