第二十五話:ナイトタウンに向かって
「我々、チームエレメントがナイトタウンに向けて出発したのは良いが、今は道に迷って高い崖に挟まれた森の中で彷徨っている。別れの森も薄暗かったと思うが、ここはさらに暗い。と言うよりも真っ暗闇に近いと言って方が正しいだろう。数百メートルごとに一センチの木漏れ日があれば良いほどだ。さらにここにはあまり日が当たらないせいか、気温は氷点下に近い。
幸いなことに、我々にはマグマラシと言う名の灯り&暖房もとい焚火もどきがいるので少しは明るく、また、寒さを凌ぐにも役立っている。この場所では彼のいない旅など考えられないほど重宝する道具…げふっ…存在だ。しかし、彼にも限界はある。いくら彼がここで
貴重な精神維持装置…として有能でも彼には出来ないことがある。それは食料の枯渇したときの食料の調達だ。今我々はそんな窮地に立たされ、それを乗り越えんがためにさまざまな方法を模索している。
これは神が与えた試練なのか、それとも悪魔が我々を殺そうとしているのか…我々はその危機を脱するために今日も歩を進めた。だが、一向に出口が見つからない。光が射さないのだからもちろん食料も確保できない。そんな日がもう二日続いている。我々はここで餓死してしまうのか…否!我々は生きてここを出なければならない!
何故なら!我々には親に生きて合わなければならないからである。親より先に死ぬというのは親不孝者である。我々はそんな親不孝者にならないためにも、(マグマラシに女装をさせ、コンテストで優勝させるためにも)(我々の将来の伴侶のためにも)(この世界のために…なぜだ?)生きてこの森を出る必要がある。………こんなもんか〜」
「……後ろで聴かせて貰ってたけど何をしているんだろうな?」
長い事呟いていたアリゲイツの後ろでマグマラシが威圧的殺気を放ちながら聞いてくる。大した殺気ではないのだが、敏感な者でなくともその者が怒っていると分かるほどの殺気は放っている。
「さ、さぁ〜なんだろな?」
「途中に出てきた(マグマラシに女装をさせ、コンテストで優勝させるためにも)っていう部分。小声だけど聞き逃すと思った?」
「そ、そんなこと一言も言ってないぜ…」
アリゲイツが少しずつ後ろへ下がって行く。
「じゃあ聞くけど俺に女装して欲しいのか?女装して上目使いの涙目で御主人様とか言って欲しいというような奴だったのかアリゲイツは」
「いいや!俺は女装したマグマラシをコンテストに出して優勝賞金を懐に、優勝したことをネタにお前を弄ろうとだな…」
「ふーん。そういうことか…………」
マグマラシはアリゲイツににじり寄る。
「あっ……つい嘘が……」
「違うだろ。今の言葉はお前の本心と見た。と言うわけで、覚悟は出来ていて当然だよなぁ?」
「ま、待て、マグマラシ。今度また料理作るから見逃してくれ!」
アリゲイツはマグマラシの怒りから逃れようと見逃す条件を言う。
「よし!それで手を打った!…で、何書いてたんだ?」
アリゲイツの出した条件で釣られたマグマラシ。
「嘘冒険記。かな?どちらかと言うと
物語」
「またなぜそんなものを書く気になったんだ?」
「何となく。暇つぶし?ま、三日も持たないけどな!」
「自信持って言うか?」
実際はこの森で迷ってから数時間。食料はあと一食分ある。
「だけど、こうも暗くて周りが見えないとなるとレントラーの目でも見えないよね」
「ああ、何とか百メートル先が見えるくらいだ。もしかしたらアリゲイツの書いてた
物語?のようになったりしてな」
「やめてよ!僕は太陽の光のある場所じゃなきゃ数日で動けなくなるんだから!マグマラシがいればもう少し伸びると思うけど」
「草タイプだからか」
「そうだよ。草タイプは太陽の光があってこそ栄華を極めることが出来るんだから」
暗闇の中をマグマラシ達のほうへ息を潜めて、忍び足で後ろから近づく立派な角を持ち、骨が体表に出ている真っ黒なポケモン。ヘルガー。
「……あんたら何処へお行きなさる。見たところ旅の者。ナイトタウンはこっちですよ……」
『うわあ!!』
「びっくりした〜」
「おどろかすなよ」
「ヘルガーか…」
レントラーは苦虫を噛み潰したように顔を顰める。
「レントラー…」
「あら?ナイトタウンへお行きなさるのでは?」
「あ、そうそう。案内よろしく」
「いえいえ。それが亡霊である私、ルガーの役目ですから」
そう言いながらルガーは歩いて行く。
「亡霊!?連れて行かれるのはあの世!?」
「?何をお言いなさるので?旅のガイド最新版にナイトタウンの案内役は亡霊と言う役職名と書いてある筈ですが」
レントラーはすぐに旅のガイド最新版を取り出し、ナイトタウンの項目を読む。マグマラシが横でさりげなく炎で明るくしている。
「あ、小さな字で書いてある。気付きにくいぞこれ」
「ふふふふふ。それはこの町の町長のせいですよ…亡霊と名乗るときに驚かせたいと…」
「気味の悪い笑い方だな…町長ってそんなんでも務まるのか?」
「気味悪いとは私も思いますよ…ですが町長はもう数年は続けておられます」
「よく町が持つな…」
「町長はアレでいてそういう方面はいい仕事をするので…家にいないとき大抵は警察署にいると思いますが」
「警察署?何か警察の重要なポストでも兼任しているんですか?」
「…痴漢の現行犯逮捕です。もうかれこれ千四百六十回は超えています」
「ある意味凄い…。でもなぜそんな半端な数字?」
「そこですか。数えるのが面倒になったかららしいです。警察のほうも町長の痴漢行為の書類や記録などを作るのを止めています。犯罪発生率第一位、痴漢。そのほとんどが町長によるものです。町の悪い部分としての名物になっています。町長の被害にあっていない女性は強者です」
『………………町長って……』
「変態、幼女趣味、色男、魔性、女の敵、純潔心の破壊者、女殺し、馬鹿、無差別触女しょくじょ主義者、変態プレイ仙ポケ…等……言い方はいろいろとありますのでどれでもお好きなのをどうぞ」
『…………………………(色男って一つだけ良いのがある…)』
「あ、そろそろナイトタウン入り口です。足元と頭上にご注意ください」
「は?頭上?」
「洞窟の近道を使いますので足元は滑ります。また、上から落ちてくる鍾乳石を避けてくださいね」
「あぶねぇな」
「たま〜にその洞窟内で白骨化したポケモンの骨が見えると思いますが気にしないでください」
「気にするって!!」
「気にしていたらあなたが白骨化した方々の仲間になってしまうかも知れませんよー!と言うわけで私についてこれなかったときは白骨化を覚悟してください!「できるかぁ!!」…冗談です。もしあったとしてもほとんどはガラガラの手に持っている骨ですよ。…ほとんどは。私も全てを知っているわけではないので」
「うわー……」
マグマラシ一行はルガーに続いて森の中を進み、話をしているうちにルガーの言っていた洞窟まで進んできた。その話し声を鍾乳洞の中で一切動かずに聞いているポケモンがいた。
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?????「一切動かずじゃなくて…もごもごもご」
ちょおい!何で此処に勝手に出て来てんの!?あんたはちゃんとあの場所にいなきゃ!
?????「窮屈なんだよ……」
さいですか。代役用意するか……
?????「戻るから!あの場所に戻るから出させてぇ!」
あ、ルガーの口調が変わってきていますが、もともとは敬語です。
町長に言われてあの口調にしていたらしい。と言う情報も。