第二十四話:セレビィ
リーフィアが言った事が驚きを通り越して呆れそうになるほど衝撃を受けたマグマラシ達。
セレビィは病室から逃げていったので聞いていない。
『……………………は?』
「ですからセレビィさんはあの赤い木の実が猛毒があると分かっていながら食べたんです!マグマラシさんの情報では大量に食べたようですが…」
「セレビィが猛毒の木の実を分かっていながらそれでも食べた?」
「死にたがっていたようには思えないけど…」
「なぜ食べたのかは知りませんが、あの木の実は猛毒を持っているけれどとても美味しいという木の実です。毒タイプの方しか食べてませんけど」
「マジで?」ジュル…。
「アリゲイツよだれ!」
「あ。つい」
「どんな味だったか気になるのであればセレビィさんに聞いてくださいね。どうして食べたのかも」
リーフィアと別れ、時の祠へ向かうマグマラシ達。トロピウスの背に乗るのにも多少慣れ、落下中に騒がなくなった。
「へ〜!あのポケモンはセレビィって言って時の祠の光に関係してたの?しっかし、何で猛毒の木の実なんか食べたのかね?」
「それをこれからセレビィに聞きに行こうと思ってる」
「後で教えてね。さあ、着いたよ」
トロピウスは時の祠近くに着地する。
「サンキュー!トロピウスのおばちゃん!」
アリゲイツが再びおばちゃんと言う。
「やっぱり嬉し〜!!」
「なぜだ〜!!」
結局、トロピウスがおばちゃんと言われて嬉しがるのか分からないまま時の祠に到着した。
「セレビィ〜!!どこだー!」
「おーい!」
「セレビ〜ィ!」
マグマラシ達は時の祠周辺でセレビィを探す。
「だ〜れだ?」
「セレビィ!驚かすなよ!」
アリゲイツの眼を隠すセレビィ。無邪気と言うか幼稚と言うか何と言うか…。
「つまんないの〜!もっと驚いてくれたっていいじゃない」
セレビィは頬を膨らませて文句を言う。
「すげーな!セレビィ!どうやったら頬を膨らませたまま喋れるんだ!?」
「え?普通じゃないの?(アリゲイツに教えてもらったんだけどなぁ)」
「全然。出来るほうがすげえって!!」
「やったぁ!え〜と、これをやるにはここをこうして頬の中に空気を溜めるようにこんな感じで舌を…(教えてもらった君に教えるって何か不思議だなぁ)」
「なんて言うか…アリゲイツってずれてるよな?」
「そうか?ほとんど一緒にいるから分からなかった。…と言うよりも慣れてしまって有耶無耶になったってところだな」
「分かる。分かるぞ…俺もアリゲイツと一緒にいると有耶無耶にされてそれが当たり前のようになってる気がする…」
レントラーはそう言いながらマグマラシの背に
前足を乗せる。
「なあ、みんな見てくれよ!出来たぞ!」
アリゲイツが頬を膨らませてマグマラシ達に話しかけてくる。
プシュ〜。
アリゲイツが頬に溜めていた空気が抜けて、膨らませている頬が片方だけになった。
「プッ、アハハハハハハハハハハハハハ!!アリゲイツ〜それ面白〜い!(それは教えてもらえなかったっけ)」
『アハハハハハ!アリ…ゲ……イツ!』
「クッ、クケケケケ!!」
何処からか変な笑い声が。
「誰?」
ハヤシガメが聞くと木の上から飛び降りてきた一匹のポケモン。
白いひげ?をはやし、下駄のような足をして鼻が高く、両手に花……葉っぱの団扇がある白と茶色と緑のダーテング。
「……(両手に花って!俺は両手に葉だ!)」
「お〜い」
「…………(もっとも、俺は花を持っていてもいいかもな)」
「お〜い」
「………………(ナイスガイな俺にはたとえどんな物でも似合うのさ!)」
パァン!
「はっ!」
アリゲイツがダーテングの目の前まで近づいて手を叩く。
「あなたは誰ですか?」
ハヤシガメがダーテングに質問する。
「美しき乙女のいるところ、たとえ何処でもやってくる!神が授けた奇跡の美貌、悪魔が与えた魅惑のボイス。俺にかかれば♀は堕ち、そこに存在するだけで全ての♀が頭を垂れる!俺の名前を呟けば、大地は感喜し、空は喜悦し、海は歓喜する!宇宙ですらも恐悦するナイスガイ!その名もダーテング様たぁ、あ、俺のことでぇ〜い!!」
『…………………………』
ダーテングに対して何もいえないマグマラシ達。
「フッ。俺のかっこよさにあてられて固まっちまったか。SA・SU・GA俺!」
『…………………………』
「俺のクールさは日々磨きがかかってるようだな!硬直時間新記録だぜ!俺という存在は罪だ!!俺を求めて繰り広げられる乙女達のバトル、俺にはそれを止められない。俺を求める乙女達、俺のために散っていく者。俺は一体どうすればいいのか……」
『…………………………』
ダーテングに対してとても哀れな者を見る目で見るマグマラシ達。
「…俺のかっこよさは男でさえも堕ちるようになってしまったのか。俺は一体何匹のポケモンを堕としたのか……俺ってSUGEEEEE!」
スパコーン……ドサ。ズルズルズルズル。
「あ、すいません。俺のナルシストのくそ兄が迷惑かけました。後でこの馬鹿にはきつく説教しておきますんで。このアホの事は記
憶から消しちゃってください。
憶えてたらろくな事がありませんので。じゃ!」
どこからかコノハナがやってきて手に持ったハリセンでダーテングの頭を叩き気絶させ、引き摺っていった。
「……何だったんだ?」
「ダーテングは
ナイトタウン町一番のナルシストで、どこかの組織に所属してるとか言ってたよ」
「悪の秘密結社とか?世界征服を目論む組織の幹部だったりして」
「まさか〜なれても下っ端でしょ〜」
「ハハハハハ…って最初の目的忘れてたし!」
目的を忘れていたレントラー。
「なに?」
「なぁ、セレビィ。なんで猛毒のある木の実って分かっていたのに食べたんだ?」
「あ〜それは……美味しいって分かってたからね。つい我慢できなくて」
「は?なぜ何回も食べたことがあるような言い方?」
「実際何回も食べてるし」
「はぁ!?」
セレビィが言ったことで驚くハヤシガメ。
「毒食べても大丈夫なのか?」
「え〜と、癒しの鈴を使ったらね。でも今日はマグマラシ達が来ちゃったからばれないように隠れてたから癒しの鈴使えなくて」
「あ〜それで倒れたってことか」
マグマラシは納得したようですぐにセレビィに謝る。
「ごめんな、俺達が来たからこうなってしまったんだろ?」
「いいって!過ぎた事は!死んでないんだし!(死んでたら取り憑いてるけどねぇ〜)」
「うぉ!」
「どした?」
「今ゾクッて!寒気が!」
「大丈夫〜?(アリゲイツって敏感なのかな?)」
「ああ。大丈夫だ」
「あ、もう夕方だ。これからどこに行くのか知らないけど旅、頑張ってね!」
『もちろん!!』
「またねー!」
「おぅ!またなー!」
マグマラシ達はセレビィと別れ、ハヤシガメの家に厄介になる。
アリゲイツが料理を作らされたのは言うまでもない。