第二十三話:毒の実を食べたポケモン
毒の実を食べたポケモンに……
アリゲイツ「ポケモンに?」
鉄拳を!!
マグマラシ「は?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ハヤシガメ!あのポケモンは!?」
ポケモンをセンターの奥の処置室の運んだハヤシガメにマグマラシが聞く。
「……相当量食べたようだから危険な状態だって。耐性の無いポケモンだったら何時死んでもおかしくなくて、運んで来る時に死ななかったのが不思議な位の猛毒だって……」
ハヤシガメは
俯うつむいて淡々と事実を伝える。嘘をついて変な希望を持たせるよりも、ちゃんと事実を伝えたほうがいいと考えたらしい。
「じゃぁ、あのポケモンは死ぬのか!?」
レントラーは最悪の考えを言う。その可能性があるという事が分かっているが、それを否定して欲しくて。
ハヤシガメも言いづらそうにしていた。
「それも覚悟したほうがいいとリーフィアが……」
レントラーの望みはハヤシガメの一言で無残にも打ち砕かれる。
「……そんな……話した事すらないけど、出会ったばかりなのに死ぬとか胸糞悪い!!」
「落ち着けアリゲイツ!」
アリゲイツを落ち着かせようとするマグマラシ。
アリゲイツが多少落ち着くと、全員が一言も話さなくなる。
嫌な沈黙。そこにキマワリがやってくる。
「あのポケモンを運んで来たのあなた達でしたよね?」
「はい!あのポケモンはどうなりましたか!?」
「残念ながら……あのポケモンは………」
そこで区切り、
俯きながら溜息を吐く。
「出会ったばかりなのに…」
「死んだのかよ…」
ハヤシガメは物凄い速さでポケモンセンターから飛び出していった。
アリゲイツは眼に涙を浮かべている。レントラーは眼を瞑って黙祷する。
マグマラシは涙が筋になるくらい流す。
「毒の処置が……間に合い、今は病室のベッドで安らかなる眠りについています」
キマワリはさも残念そうに言う。
「……え?もう一度…」
マグマラシは聞き間違えたのかと思い、聞きなおす。
「ですから、毒の処置が間に合い、ベッドに寝ています」
「…生きてるのか?」
「はい。そりゃもうすぐにでも退院できるくらいの元気な状態で」
「よっしゃーぁ!」
アリゲイツは喜んで、ハヤシガメに伝えに行った。
「じゃあ何で残念なことにって言ったんだ?」
「そりゃあうちが検死するナースで、あのポケモンは毒の検死にはうってつけの材料ですから」
キマワリが言うとすぐにリーフィアの鉄拳が飛んでくる。
「何言うんですかぁ!」
キマワリはリーフィアの鉄拳を背を反らす事でその場を動かずに避ける。
「キマちゃん!あなたは患者の命を何だと思ってんですか!草結び!反省しなさい!」
キマワリに何処からともなく生えてきた草が結びつき、動けなくする。
「キャー!やめてー!お嫁に行け…」ドゴォ!
リーフィアの鉄拳がクリーンヒットし、キマワリが気絶する。
「フー!まったく…」
『…………』
ポケモンセンターにいたポケモン全員が一言も発さない。
それに気付いたリーフィアは顔を赤くする。
「あ、あ……。えと、こっちです付いて来て下さい…」
リーフィアは走ってセンターの奥に消える。よっぽど恥ずかしかったのか葉っぱの部分まで赤くなってしまっていた。
「な、何があったんだ!?」
そこにハヤシガメを連れて帰ってきたアリゲイツ。
「アリゲイツ、後でな…」
レントラーはリーフィアが行ったと思われる方へ行く。
「“後で”だ」
マグマラシもレントラーに続いてセンターの奥へ行く。
アリゲイツ達も良く分からないまま付いていく。
アリゲイツ達が奥に消えるとセンターにいたポケモン達は何事もなかったかのように動き出す。
アリゲイツ達が奥に行くとまだ顔が真っ赤のリーフィアが一つの病室の前で待っていた。
「こ、ここです…」
マグマラシ達は病室の戸を開き、中に入る。
「あ、今度は誰〜?」
ベッドの上でのんきに言うポケモン。一切マグマラシ達を見ていない。
「…………(起きてるな…)」
「えっと、ちょっと待ってね〜当てるから!う〜ん…」
ポケモンは病室の中を飛び始める。上に行ったかと思うと左へ、右に行ったかと思うと下へ。
宙返りや背面飛行など、いろいろとアクロバティックな飛行をする。
「分かった!神々しい僕の存在感に
魅かれて僕の事を拝みに来たんでしょ!…………あれ?違うの?う〜ん…じゃあ、僕の力を奪おうとする暗殺者!?嫌だ!まだ死にたくない〜あの木の実だって満足に食べてないのに〜!!」
そのポケモンはベッドの下に潜り込む。未だにマグマラシ達のことを見ていない。
「……えっとあなたが赤い木の実を食べて倒れていたポケモンですよね?」
ハヤシガメはそのポケモンの回復力が信じられないようで、半信半疑で質問する。
「暗殺者〜こないでえ〜!力なら僕からじゃなくて僕の親友から「お前があの赤い木の実を食べて倒れたポケモンで、合ってるよな!!」……うん。そ〜だよ!」
アリゲイツがそのポケモンの言ってたことを
遮って聞く。そしてそのポケモンはベッドの下から出てきながら答える。
『よかった〜!!』
「へ?」
そのポケモンはベッドの下に触覚を引っ掛けてしまい、出れないままマグマラシ達の言葉に疑問を抱く。
「どういうこと?何で暗殺者が僕に対して良かったって言うの?あ、取れた」
何かと誤解しているポケモン。助けてくれたマグマラシ達を暗殺者と間違えている。
ベッドに引っ掛かっていた触覚が取れたらしく、ベッドの下から出てきて、マグマラシ達を見る。
「あ、チームエレメント。久しぶり〜だったかな?マグマラシにアリゲイツ、レントラーにハヤシガメ!暗殺者なんかじゃなかったよ〜勘違いしてごめんね〜!」
ポケモンは再び病室の中を飛び回る。何度注意しても部屋の中を飛び回るのでリーフィアは
厭きれてどこかへ行ってしまった。
そのポケモンはマグマラシ達は名乗っていないのにマグマラシ達のことを
何故か知っている。
『………………は?』
目の前のポケモンが自分達のことを知っているということに硬直するマグマラシ達。
「え、どうしたの固まっちゃって〜!まさかこんなにも早く借りを返してくれるとは思わなかったよ〜」
マグマラシ達はこのポケモンと初対面で、借りなど一切作った覚えはない。
「……誰かこのポケモンの事知ってる?」
『全く知らない』
アリゲイツ達は声をそろえて知らないと言う。
「何で俺等の事知ってんだ?そしてお前は誰だ?」
レントラーがそのポケモンに対して質問する。好奇心と不信感と不安を抱きながら怪しいポケを見る眼で。
「え?僕の事忘れたの!?友達になったでしょ!時渡りポケモンのセレビィだって!」
さも当たり前の如く名乗るセレビィ。
「……セレビィ?時渡り?時の祠と何か関係あるの?」
ハヤシガメが質問する。
「……僕の事忘れちゃったの?〜〜〜〜〜の皆の事は?」
「何それ?」
『「……」』
お互い
暫くの間沈黙する。居心地の悪い空気が流れる。
「………あ!そっか!君達はまだ時渡りをする前の過去の君達なんだね!」
何か独りで納得するセレビィ。
『は?』
「気にしないで!僕が間違えただけだから!初めまして!よろしくね!君達のことは知ってるから!」
「始めまして…よろしく」
『よろしくな!』
「答え忘れてたけど僕は時の祠に関係してるよ。時渡りって言うのは、時間を旅することの出来る能力を使って違う時間に行ったり来たりすることだよ。僕が時渡りすると時の祠の中が緑色っぽく光るんだ!時渡りをし終わった後も
暫くは光るけどね」
「じゃあ、あの光はセレビィが時渡りをした後の光だったのか!」
マグマラシはセレビィの説明を聞いて納得でき、嬉しそうにする。
「えっと、何で俺らの事知ってたんだ?」
「え〜その質問には答えられないよ〜時が壊れて君達が消えちゃうかも知れないし」
セレビィはのんきに言うが、実際にそうなったらとんでもないことである。
「あ、君達が消えるだけじゃなくて今の時代を生きているポケモン達の八割から九割が一緒に消えるんじゃないかな?」
「分かったから絶対に話すなよ?」
レントラーが顔色を悪くして言う。
「わかってるよ〜僕だって消えたくないし!」ポチッ!
「は〜い少しの間お待ちください」
セレビィがナースコールを押しナースを呼ぶ。数秒後、リーフィアの声が聞こえてくる。
「何かありましたか?」
「ううん。ただポケモンセンターにいるのが飽きちゃったから退院許可をもらえないかな〜って」
「…それでしたら数時間前に出したはずですよ?三度も聞かないでください。それとも私達ナースが全員ぼけてしまったのでしょうか?…セレビィさん、どっちだと思います?」
リーフィアは敬語のまま殺気を出し、セレビィに一歩、また一歩と近づく。もちろん笑顔は欠かしていない。
「どっちだったけな〜…(やめて!怖いって!殺される!僕の一生に幕を閉じるとか嫌だぁ!!)」
「はぁ、セレビィさん、忘れないでください。今度聞いてきたら………」
リーフィアは今度聞いてきたときどう対処するのか言わないことで相手の恐怖を強くする。ナースには相手の精神状態を改善したりしなければならないらしく、精神学等は勉強している。
「あ、あはは〜じゃ、じゃぁ僕はこれで……さようなら〜」
セレビィはリーフィアに背を見せないようにそーっと飛び、出て行く。
「全く…毒の木の実って分かっていて食べたと言うんですからどうしようもありません!!」
リーフィアの口から出た真実。マグマラシ達が心配したのが馬鹿らしくなる事実である。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セレビィ「あはは〜……僕より強いリーフィアがポケモンセンターに居た……」
キマワリ「うちの検死の材料……になって〜!」
セレビィ「……バタンキュ〜ってなって、リーフィアが怖かったからもう二度とバタンキュ〜にはならないと思う」
キマワリ「そんなぁ……」
残念がるな!!それにセレビィ、地味に親友売ってる…