第二十一話:二つの電話
―――【
ポケモンA】―――
「もしもし、フェラル?」
{ああ、[ザー]か。どうした?[ザザッ]}
「アリゲイツが旅に出たわ。ジムにも挑戦するみたいよ。もしかしたらあなた達とも戦うかもしれないからそのときは正体を明かさずに全力で戦ってね」
{もちろんだ。ただ[ザッ]去年のジムランク大会でいつもランク4のウィ[ザー]ジムが一番初めのジムだからな[ジジッ]あいつを乗り越えられるか…}
「大丈夫。あなたは長い間この世界を見てきたんでしょ。アリゲイツなら大丈夫だって分かるでしょう」
{…ああ、そうだな。元四天王のお前と長い間世界を見てきた俺の[ザザッ]の[ジジッ]からな}
「そうそう!…マグマラシも一緒に旅に出たわ。マグマラシが一緒だから死にそうになっても大丈夫よ。致命傷を受けてもあなたの施したものが発動するでしょう」
{…忘れてた。そういやアリゲイツに[ザーーー]かけたんだったな}
「こら!自分のかけたものくらい覚えときなさい!」
{そう怒るなって!}
「ノイズが酷くて聞き取り辛いわね。ちょっとどうにかしてくれない?」
{[ザーッ]を使えと?}
「そうよ。これくらいどうってことないでしょう。まぁ、あなたの言ってることは分かるんだけど」
{ならいいじゃないか。[ザー]……やっぱり掛けておくよ}
「ところで今何しているの?」
{そうだな…昔のメンバーと連絡を取り合ってる。タルミがアリゲイツ達に魔法のことを教えたらしい。使い方などは教えなかったらしいが}
「アリゲイツ達が魔法を知ったの?なぜ?」
{タルミが番をしていた水晶がサンと言うザングースに取り込まれて
呪が発動した。その
呪を取り除くためにあれこれしていたうちにサンの兄のザングースの動きで二人の仲を恋愛だと勘ぐった奴がいて、後をつけている間にアリゲイツ達と合流し、そのままつけて行ったところでサンの事を知った。そこで下手に隠すよりも言って秘密にさせといた方が深く入り込まないだろうと考えたらしい}
「そう…知ってしまったものは仕方ないわ。水晶って百匹のポケモンの一生分のエネルギーを封じ込めたものでしょ?サンは大丈夫?」
{正確には二メートルくらいの体格のポケモン百匹が一生に消費するエネルギーと同じくらいのエネルギー量だ。サンについては水晶のエネルギーを消費しなければ普通のポケモンの百倍以上の寿命になる}
「それはそれで
呪のように思えるけど」
{時間と空間と宇宙の魔法全部を同時に二回使っても普通のポケモンの四倍くらいの寿命だ}
「時間と空間と宇宙魔法の三つを同時に使うと四十八匹分のエネルギー?」
{ああ、それぞれ中威力でな}
「魔法を覚えたら凄いことになるわね。悪に染まらなければ良いけど…」
{もう少し時がたってからサンに魔法を教えようと思う。過去の時代の為に。今を生きるポケモン達の為に。未来のためにも…}
「そうね。あなたの話していたことが本当だったらアリゲイツ達にはサンの魔法が必要になる。サンには悪いけど頑張ってもらうしかないわね」
{……未来の為に。古代の
英雄の為に……}
―――【ポケモンB】―――
「もしもし」
{カメールよ、カメールさんよ〜}
「切るわね{わ〜!!ごめん!切らないで!}」
「マグマラシ達が旅に出たわ」
{………………}
「?」
{………………}
「もしもし」
{只今、留守にしております。ドカーンと言う爆発音の後に「もういいわ…」…ごめん!}
「私を何だと思ってるの!?」
{俺のぐげぁ!!}
「え!?どうしたの!?」
{さっきまでのは俺じゃないぞ。さっきのは俺の声真似がとても上手いぺラップだ。…断じて俺じゃないぞ}
「…そ、そう。私はぺラップに
弄ばれていたのね…後で締めておいて」
{
了解!!}
「マグマラシ達が旅立ったわ」
{達?}
「アリゲイツよ」
{そうか。アリゲイツと一緒ならフェラルの施したものが発動するな!それならどちらも死ぬことはない。一度きりだが…}
「フェラルと連絡取った?」
{ああ。誰かに連絡した直後らしかったがな。時間がないから簡単に伝えておくぞ。マグマラシ達が魔法を教わった。使い方は教わらなかったが}
「誰に?」
{ミルタンクのタルミだ。今はフローゼルの恋人が出来て惚気話を聞かされたがな}
「そう。意外と早い時期に魔法を知ることになってしまったのね」
{それが裏目に出なければいいがな…}
「そうね。マグマラシ達が安全であればいいけど……」
{詳しく聞きたい事があればフェラル達に聞くと良い。連絡を取り合ってるだろうから。アリゲイツのことが中心だと思うがな}
「ええ。わかったわ。気をつけてね」
{もちろん。お前も気をつけろよ。じゃあな}
ツーツーツーツーツーツーツーツー
「…マグマラシ達の旅に神の守りがありますように…」