第二十話:悪役達
赤い光を放つライトに照らされた薄暗い金属質な通路を通る六匹のポケモン。
『俺等は紅くて暖かい石の情報一切見つけられなかった……兄貴達は?』
『俺等は見つけたのは良かったんだけど奪い損ねた……』
『結局どっちも失敗って事かぁ……
ポイズン様に何をされるか……』
六匹のポケモンは金属で出来た自動開閉式認証型シャッターの前で立ち止まる。
シャッターの手前に備え付けられたスピーカーから機械的な音声が発せられる。
[音声パスワードを入力してください]
『恩を仇で返し、我等を
虐しいたげた者に残
虐なる復讐を!我等幸福を絶望にせし者。我等が主の妨げを排除するものなり』
六匹がパスワードを口にする。
[ピーーー パスワードを承認しました]
再び機械的な音声が聞こえてシャッターが開く。
六匹はシャッターをくぐり、奥へと歩を進める。
そこには幹部と呼ばれるポケモンが数匹。
「どうだった〜?うまく手にはいった?」
「ボルト。失敗してきたのは分かるでしょう。まぁ、私はこうなると分かっていましたが」
ボルトと呼ばれたピカチュウは六匹を見ながら言う。
「なぁ
ポイズン、俺がこいつらの処分していいか?」
「いいえ。ボスに今回の処分は私に任されたでしょう。あなたにこの者達を処分する権限はありませんよ。私はあなたみたいに猟奇的な殺しをするよりももっと楽しい方法がありますよ」
「
ポイズンが楽しいのは
虐めて
虐めて
虐め抜く事だろ。俺が楽しいと思うのは……殺しだ」
「せっかく私がサディストがどんなに楽しいものか教えてあげようと思ったのですがあなたには無縁のもののようですね」
ポイズンは六匹を手招きしながら言う。
「あなた達はマゾヒストにするよりもそのままいたぶった方が楽しみがいがありそうですね……さぁ、こっちへ」
六匹は心底恐怖心に駆られているようでその様子を見るだけでも
ポイズンベトベトンにとって快感になる。
『ポ、
ポイズン様…お、お許しください』
許しを乞いても許すはずがない。
ポイズンが自分の楽しむための獲物をみすみす逃がすはずがない。
六匹は
ポイズンの後に続き、金属質の大広間と呼べるほどの大きさの部屋から自分の
研究所ごうもんべやに入って行く。
「さ〜てこれから
ポイズンも楽しむことだし、俺も楽しみに行きますか!」
ボルトは遠足が翌日に控えた子供のような足取りで外に出て行く。
『ぎゃ〜!ぐへぁ!ひっ!ぎゃぁ!ぎぇぁ!ひ〜!』
六匹のさまざまな叫びが
研究所ごうもんべやから洩れる。
―――【セルシーフ視点】―――
マグマラシ達に追い返されてから三日たった頃、三匹はこんなことを話していた。
「さてと……ボス、何故盗賊を…泥棒を止めるのですか?」
「えっと、なんかあの三匹に惹かれちゃった?」
「な〜ぜ〜?〜」
「あの三匹見てたらなんか心がざわめいて、泥棒しようとしたのがあほらしくなっちゃって。初めてだし?」
「ボス、なら私達はあなたについていけません。ここで決別しましょう」
「メタモン?何か勘違いしてるようだけど」
「え?何をですか?」
「私は泥棒をやめると言っただけでチームを抜けるとか、盗賊であることをやめたわけじゃないわよ」
「盗賊なのに泥棒をやめるということですか?」
「そうよ。私自身は盗まないけどあなた達は泥棒をやめるといったわけじゃないし、そのための手伝いとかならある程度までは手伝うわ」
「ボ〜ス〜のま〜ま〜?」
「一応はね。さて、あいつらから盗る為の作戦練るわよ!」
「了解ボス!」
チームエレメントがジムに挑戦している頃―――
セルシーフの三匹組はウィードジムのそばにある木がまばらに生えた林の中にいた。
ジムは安全の都合上で木の上ではなく、地面に直接建てられている。
「今はあいつらがジムに挑戦してる頃よ。あのハヤシガメとかいう奴が持っていた紅い石を狙うわよ」
「あまり知られていない宝石の一種でしょうか?変身!サンドパン!」
メタモンは話しながらサンドパンに変身する。
「私はそう思うわ。メタモン!じゃんじゃん穴を掘っちゃって〜!!」
サンドパンはざくざくと穴を掘る。そしてジムの中のフィールドの端につながったトンネルが出来る。
「ボス。トンネル開通しました!」
「いくわよ!目標はジムの
金庫よ!」
『ラジャー!!』
[これでも食らいなさい!異常の胞子!]
セルシーフがトンネルから出てきた時、丁度ハネッコの技が発動したときだった。
「え!?か、身体が痺れます」
「…すー…すー」
「何これ…気持ち悪い」
メタモンはサンドパンのままだったので麻痺に。ナマケロは眠りに。そしてエネコロロは毒になってしまった。
「これは駄目で…すね。動きづ…らいです」
「私も気持ち悪いわ」
「すーすーすーすーすーうーうすーすうーさちうすー」
「…何か不吉なこと言ったわよね。ナマケロが」
「ええ。幸薄さちうすと。寝言でいいましたね」
「嫌な予感がするから逃げるわよ」
[こい!種爆弾!]
レントラーが避けたキノガッサの種爆弾はセルシーフに向かって飛んでいく。
ドドドカーン
「なんでよ〜!」
「嫌な予感が当たりましたね。しかし、空の星になるとはよく言ったものです」
種爆弾は見事に命中し、セルシーフは弧を描くように掘られたトンネルを通って空のかなたに吹っ飛んでいった。
ジム戦が終わったあとメガニウムたちがこのトンネルを見つけて首をかしげたのは言うまでもない。何も盗られずにただそこにトンネルがあるのだから。
―――【ウィードジム視点】―――
「なんでトンネルが?皆みんな知ってる?」
『リーダーでもないんですか?』
「一体誰が?とりあえず埋めといてね〜」
「リーダーサボろうとしない!フィールドの整備もリーダーの仕事の一つでしょう!」
「え〜!」
チームエレメントを見送っている最中にトンネルへむかってキノガッサに引き摺られて行くメガニウム。リーダーとしての責任をよく放りだしているらしい。
引き摺られていくメガニウムはチームエレメントの後姿を見ながら呟く。
「ふふっ。僕としたことが多少本気を出しちゃったよ。マグマラシとアリゲイツの体力や、パワー、スピードも全てにおいて驚かされたよ。同じレベルの他のマグマラシやアリゲイツとは比べ物にならないほど強いね。次に合った時に簡単に倒されないように僕等も頑張らないとね」
「リーダー!何呟いてるんですか!さっさと仕事してください!」
「鬼ガッサ!」
「はいはい。もうリーダーの悪口は慣れましたよ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ポイズン達のいる組織はどういったものなのか?何十話も後になるかもしれないけれど覚えていてください。
メガニウム「やっほー。ジムランク大会に寝坊したメガニウムです!…基本はドジだけどまた出ると思うからよろしく!」
キノガッサ「リーダー!また事務の仕事をサボって!リーダーを引き摺るこっちの身にもなってくださいよ!」
メガニウム「じゃあ引き摺っていかなきゃ良いじゃん」
キノガッサ「リーダーが動く気がないんだから引き摺るしかないでしょうが!!……リーダー、帰りますよ!」
メガニウム「逃げる!!」
……メガニウムが入ってきたかと思うと逃げてった。