第十八話:初のジム戦・前編
「起きろ〜!!ジム行くぞ〜!!」
右手にオタマ、左手にフライパンを持ったアリゲイツがそれをぶつけて耳障りな不快な音を立てる。
「うわぁぁ〜うるさ〜い〜やめてくれ〜!」
「起きる!起きるから止めて!」
「アリゲイツ!うるさいからやめろ!昔からそれをするなって言ってるだろ!!」
それぞれが違った反応をする三匹。順にレントラー、ハヤシガメ、マグマラシだ。
「さっさとジムに行こうぜ!飯は作ったから早く食べろよ!」
「ア、アリゲイツが料理〜!?」
「そんな事は後!料理が冷めるぞ!」
三匹は起きると、アリゲイツがハヤシガメに許可を取らずに作った料理をみて唖然とする。
「な、なぁ、これって料理だよな?」
「凄い!芸術品みたい!」
「アリゲイツの料理久々に見たな〜」
「さっさと食べろよ!俺が秘密の調味料で味付けしたからな!栄養の面も完璧だぞ!」
『いただきまーす!!』
四匹はアリゲイツの作った料理に舌鼓を打ちながら、何かに取り憑かれたかの如く貪《むさぼ》り食った。
『ご馳走様でした!』
「こんなうまい料理を食ったのは初めてだ。俺好みの味付けだった」
「僕も!あの味大好きだよ!」
「さすがアリゲイツ。料理の天童と呼ばれただけはあるよな」
「マグマラシ、だけって何だよ。だけって」
「そこは気にするな!それよりも今日はジムに挑戦するんだろ?」
「おう!」
「…チーム名何なんだ?」
「「……」」
「まさか決めてなかったの!?」
「…今決めるから何か案ないか?」
「じゃあ、アクアブリード!」
「トライアルズサンダー!」
「チームタティクスはどう?戦略的っていう意味だよ」
「ボルケーノ!」
『………!』『………!』『………!』
何個も案を出す四匹。
「なかなか決まらないね。これは?エレメント!」
「エレメント?」
「エレメントは要素っていう意味で、僕達が世界の要素、平和の要素とかを少しでも守るという意味を込めようと思ってるんだ!」
「いいなそれ!」
「俺も賛成!」
「俺も!これでチーム名はエレメントに決定だ!」
チーム名はエレメントに決まり、ジムまで来た四匹。
「ここがジムか〜!」
上を向いて歩きながら言うアリゲイツ。
「アリゲイツ〜前見ろ。前!」
忠告もむなしく、自動ドアにぶつかるアリゲイツ。
「って〜、何で開いてねぇんだよ!」
「すいませーん!!チャレンジャーの方ですか?自動ドア故障中で動かないんですよ」
「マジで!?」
「なので裏から入ってくださーい!」
裏からジムに入る四匹。
「あっ!ジムリーダー、挑戦者みたいですよ!」
「ジムリーダーって呼ばないで!!」
マグマラシ達に気付いたキノガッサがメガニウムに言う。
「えーと、挑戦者でいいの?」
メガニウムにレントラーが答える。
「はい。挑戦者として来ました。チーム名は“エレメント”です」
「エレメント…了解!登録しとくね」
メガニウムは奥の部屋に走って行った。そしてルンパッパが近づいてきて言う。
「えっと、このジムは耐久力を鍛えるのを中心としたルールで、相手の技は絶対に防《ふせ》いではいけないけど避けるのはいい。そして相手を全員倒したほうの勝ち。ジム員全員と挑戦者チーム全員の団体戦。数の制限は十匹まで。このジムは道具の使用禁止。他は相手を殺すか障害ポケにしなければ特に制限は無し」
「登録できたよ〜!」
そう言って走ってきたメガニウムが転ぶ。ちなみに♂である。
「リーダーやっぱりドンくさいよ〜」
「リーダー言うな!」
「ドンくさいって言われたほうも否定しろよ!!」
メガニウムが否定したが、そこにキノガッサの突っ込みを兼ねたマッハパンチ。
「いたいよ〜そう何度も攻撃しないでよ。あ、そうそう。ルール聞いた?」
メガニウムはマグマラシ達に確認を取る。
「じゃあ、バトルフィールドに案内するね。キノガッサ、皆を呼んでて」
メガニウムに連れられてバトルフィールドへ。
「じゃーん!ここがこのジムのバトルフィールドだよ」
そこにあったのは何本もの燃えにくい木が生えた林のようなフィールド。
「すげ〜!!って、ここ外だろ!!」
「うん?何かだめなことでも?」
「いや、ないけど…」
突っ込みをいれた後、しどろもどろに答えるアリゲイツ。
「お!隊長!挑戦者すか」
「そうだよ〜。紹介するね右からユキノオー、ワタッコ、ルンパッパ、キノガッサ、ジュカインだよそして僕がジムリーダーのメガニウム」
「うわ…俺達よりも多いし!俺はマグマラシ、こっちからアリゲイツ、レントラー、ハヤシガメだ。…ちなみに俺は♂だぞ?」
「マグマラシって♂だったの!?まぁいいかそんな美貌を持った者がいても。それじゃ始めるね。おーい判定者〜!!」
「はい…隊長…」
がっくりしながら出てきたテッカニン。集中すると動体視力や素早さが上がるその特性からジムの審判はテッカニンになることが多い。
「元気がない!なにかあった?」
「隊長がそう呼ぶからでしょうが!いくら俺の名前がハンテイだからって!!あなたの失態、言いふらしますよ!?」
「ハンテイ〜さっさと審判してよ」
「呼び方が変わったのはいいけど、スルーされたし喜ぶべきか悲しむべきか……。それでは、チャレンジャーチームエレメント対ウィードジムなバトルを行います。両チームフィールドへ!!」
両チームがフィールドへ行く。
「始めちゃっていいよ〜!」
「それではジム戦開始!!」
開始の合図で一斉に動くジムポケ達。
「僕から行くね〜エナジーボール!光の壁!リフレクター!」
発射された緑の弾がアリゲイツに向かっていく。
「僕に任せて!」
ハヤシガメがエナジーボールを飲み込む。
『ええ!?技を食べた!?』
驚いて一斉に動きを止めたポケ達。
「え?え?なに?普通じゃないの!?」
周りの反応に動揺するハヤシガメ。
「どう見たって相手の技を食べるとか普通じゃないだろ!チャージビーム!」
一番に落ち着きを取り戻したレントラーの技がルンパッパにあたったところで全員がバトル中だということを思い出す。
「どうやったのかは分からないがこれはどうだ!高速移動からリーフブレードクロス!」
リーフブレードとシザークロスの合わせ技で迫るジュカイン。
「火炎放射!」
迫ってきたジュカインを火炎放射で攻撃するマグマラシ。
「隙だらけだよ。マッハパンチ!宿木の種!」
マグマラシがキノガッサの攻撃で吹き飛ぶ。
「ハヤシガメ!時間稼いでくれ!連続竜の舞!!」
「分かった!種爆弾!はっぱカッター!」
「させん!凍える粉雪の風!」
ハヤシガメの技は凍り付いて地面に落ちる。
「これでも食らいなさい!異常の胞子!」
ワタッコの毒・眠り・痺れ粉をたっぷりまぶした胞子があたりを漂う。
「バブル光線!」
ルンパッパのバブル光線がマグマラシに当たる。メガニウムは光を集めている。
「充電!そして放電!そして最大充電!」
レントラーの放電はジムポケ全員にダメージを与え、あたりを飛んでいた胞子は帯電し、周りの木にくっ付いていった。ルンパッパはもう倒れてしまった。
「審判!今のはいいのか?」
「全体技なので問題ありません!」
「マジカルリーフ!吹雪!」
ユキノオーははっぱを凍らせて操り、アリゲイツを狙う。
「アリゲイツ危ない!」
「よっしゃ!準備完了!アクアテール!」
飛んできた凍った葉を避け、一撃でワタッコを沈める。
「チャージ終了!あたれ!ソーラービーム!」
通常よりも極太のビームがアリゲイツを襲う。
「アリゲイツ!ぎゃぁ!!」
アリゲイツをかばったハヤシガメ。ダメージは少なかったらしい。
「ハヤシガメサンキュー!氷の牙!」
アリゲイツは氷の牙の発動を続けながらジュカインを追い続ける。
「遠吠え!フレイムボール!!」
マグマラシはマグマラシで逃げていくユキノオーを追う。
「充電!雷氷の牙!」
レントラーは雷の牙と氷の牙を同時に発動する。
「こい!種爆弾!」
キノガッサの技ははずれ、レントラーの技が決まる。
「いまだ!カウンター!」
キノガッサのカウンターがレントラーに決まる。
「この!噛み砕く!」
レントラーは大ダメージを受けつつもキノガッサを倒す。
「皆頑張ってるね〜」
そう言って他のポケモン達のバトルを離れた場所でのほほんと見るハヤシガメとメガニウム。ハヤシガメは光合成で体力を回復している。
「そろそろ僕達もバトルしたほうがいいんじゃない?」
「そうだね〜僕達どんどんやられちゃってるし…おーいユキノオー!ジュカインー!全力出していいよ〜!」
「やっとですかい隊長!!」
「アリゲイツ、そろそろ鬼ごっこは終わらせてもらう!!」
そう言うなり三匹の気迫が強くなり、動きも一気に変わる。