第十六話:ウィードタウン
何本もの大木の枝や根が複雑に絡み合って出来た空間に家などを建てたり、木の穴の中に住み着いていたりと上下に広がる立体的な造りの町であるウィードタウンに着いたマグマラシ達。
「早速ジム戦だ!」
「待った!まだチームの四匹目が集まってない!」
「さっさとジム戦してぇ!」
「アリゲイツ、がまんしろ。とりあえず今日の宿を決めなきゃな。話とかはそれからだ」
レントラーは町の中腹に位置する場所に建てられたポケモンセンターに情報を聞きに行く。
ドカーン!やや上のほうで爆発音がする。
「行くぞ!」
「またか!昨日と今日と続き過ぎ!!」
文句を言いながら爆発地点に走って行く三匹。上から木片などが降り注いでいる。
「数年前、紅くて暖かい石を拾った奴!出て来い!!そしてその石を渡せ!」
また暴れているマタドガス、カモネギ、パッチールの三匹組。
「止めてよ!皆が迷惑してるじゃないか!」
三匹をとめようとするフシギダネ。
「だからどうした!俺等は石さえ見つかれば良いんだよ!」
「それって…これ?」
亀のような体つきで移動する緑の身体を持つポケモン、ハヤシガメが紅い石を持っている。それに気付いた三匹は攻撃を止める。
「それだ!それを俺達に寄こせ!」
ハヤシガメから乱暴に紅い石を奪い取る三匹。にたにたとした変な笑みが表れている。
「これさえあればボスの野望も……」
「君達が言うボスの野望は何か知らないけれど悪しき野望の為になんか渡さない!それは僕のだ!返せ!」
「返せと言われて誰が返すか!」
ハヤシガメと言い争うカモネギ。レントラーは途中足を滑らせて下に落ちたが大丈夫と言っていたのでほっとかれている。
言い争っていたパッチールが痺れを切らした。
「サイケ光線!サイコカッター!」
パッチールの技をまともに受けるハヤシガメ。
「シャドーボール!ヘドロ攻撃!」
「毒乱れ突き!」
追い討ちをかけるようにマタドガスが攻撃し、カモネギが毒突きと乱れ突きをする。
ハヤシガメはフシギダネを巻き込んで吹っ飛び、気絶した。
「おい!お前ら!また暴れてんのか!」
「また?という事はお前らだな!俺達の弟をぶっ飛ばしてくれたのは!」
「どういたしまして」
「「「感謝してるわけじゃねぇ!!」」」
アリゲイツに対し三匹で突っ込みを入れる。
「あ〜もうお前ら全員お互いに傷つけあってろ!!ふらふらダンス!」
パッチールが踊り始める。
「やばい!火炎……」
技を出そうとしたが、ふらふらダンスにつられて踊ってしまうマグマラシ。
「何やってんだよ!竜の舞!」
竜の舞をするアリゲイツ。しかし竜の舞が途中からふらふらダンスに変わる。
そしてその場にいたポケモンが全員ふらふらダンスを踊ってしまった。ハヤシガメも意識が戻り、ふらふらダンスを踊っている。
ただ一匹、レントラーを除いて。
「…充電…」
その間に周りの者は混乱してしまった。
「火炎放射!」
「アクアテール!」
「種マシンガン!」
「エナジーボール!」
標的の定まっていないさまざまな技が繰り出され、不運なポケモンは木から落ちていく中、レントラーはふらふらダンスに耐えながら充電していた。
「エアカッター!毒突き!」
「駄目押し!」
「毒乱れ突き!」
カモネギ、マタドガス、カモネギの順番で技がレントラーにあたるが、一向に充電を止めない。
「何故、何故お前は俺のふらふらダンスが効かない!」
ふらふらダンスを踊り続けているパッチールがあせって言う。
「俺は…俺は!二度とそういった技をくらわないと…決めたんだ!!放電!」
パッチールは放電をくらってふらふらダンスを止め、その場に倒れる。
放電は周りにいた全てのポケモンにあたり、全員正気に戻る。
「あれ?何してんだ?」
「何か俺、種マシンガン食らってるんだけど……」
「皆正気に戻ったか。疲れたから後…頼む」
「分かった!くらえ!フレイムボール!!」
「竜の舞からアクアテール!!」
「エナジーボール!」
三匹の技が一斉にぶつかり、パッチール達は吹き飛んでいく。大木の表面に大きな傷が残っているが、大木がこのくらいの傷で死なないことを祈る住民。紅い石は三匹の手から放れ、落ちてくる。
「よっしゃあ!!」
レントラーがふらふらと倒れる。
「レントラー!!」
「毒突きされたときに……毒になった…みたいだ」
「待ってろ!ポケモンセンターに連れて行くからな!」
「それなら僕が運ぶよ!」
「いいのか?えっと……」
「僕はハヤシガメ。早くそのポケモンを僕の上に」
「ありがとうハヤシガメ!」
マグマラシ達は急いでポケモンセンターに戻る。
「レントラーさんは無理をしなければ大丈夫ですよ。ハヤシガメさんは今日一日は絶対安静です!!」
ウィードタウンポケモンセンターのナース、キマワリに言われるハヤシガメ。
ダメージが大きかったのにレントラーを背中に乗せて運んだからだ。
「そんなぁ!」
「あまり動かないと約束できるなら、家に帰っても良いですよ」
「わかりました!」
「お大事にー」
ハヤシガメはレントラーの所に行く。
「レントラーさん…でいいですか?」
「ああ。いいぞ」
「レントラーさん。助けて頂き、ありがとうございました」
「いいってそんなの」
「是非ともお礼がしたいのでうちに泊まって行って下さい」
そしてここはハヤシガメの家。大木の下付近にある、広めの空間に家を建てて一匹で暮らしているらしい。
ハヤシガメは質素な暮らしが好きなのか、あまり家具が置かれていない。
「レントラー!さっきはありがとう」
「どうって事無いって!」
早くも仲良くなったハヤシガメ。
「なぁ、レントラーって何で催眠術とか混乱とかが効かないんだ?」
「あ〜それか……」
マグマラシの疑問に話しにくそうにするレントラー。
「話しにくいな……」
「あっ!話し辛いんだったらいいよ!!」
「いや、この際話しておこうと思う……」
催眠術などを耐えられる理由をレントラーが話し始める。
「まず、俺は効かないんじゃなくて耐えてるんだ。だから眠くもなるし、混乱してしまいそうになる。でも俺は二度とそういった状態にならないと誓っているんだ……スイに―――