第十四話:図書館
―――【レントラー視点】―――
俺達は俺の家を出て図書館に来た。
「でっけ〜!!」
アリゲイツ、お前の町にはこれと同じくらいの大きさの図書館があるはずだぞ。
お前は図書館に一度も行った事が無いのか?
「この図書館は調べたい物についてのキーワードさえ分かっていれば全ての本が見つかるんだ」
「なぜに?」
「コンピューターで制御されてるからな」
俺達は入り口にネイティオの銅像がある図書館に入る。
この銅像はカメラがついている。その映像を一度でも捕まったことのある犯罪者の写真と照合する事ができ、そして犯罪者だと認識された場合は図書館が武装モードになる…らしい。噂だが。
「何について調べるんだ?」
「俺は各地のジムとかバトル大会!!」
…やっぱりアリゲイツはバトル好きなのか。それともバトル馬鹿なのか…
「俺は…やっぱり伝説や遺跡とか。あと幻・伝説・神のポケモンについて」
「じゃあ俺も役立ちそうなこと調べとくぜ!」
「ありがとうレントラー!」
マグマラシが満面の笑みで俺に感謝の気持ちを伝えてくる。
やばい。マグマラシが♂だと知らなかったら絶対付き合ってくれと言ってるな…。
♀のように丸みを帯びた輪郭。柔らかで明るい笑顔。その笑顔で言われると♂だと分かってはいるが、ドキドキしてしまうくらい可愛い。
……アリゲイツはこんなに可愛いマグマラシがいつもそばにいるのに平然としているな…アリゲイツが変なのかそれとも…俺がホモになってしまったのか!?
もしホモだったら俺のポケ生終わったかもな…。
「なぁアリゲイツ。レントラーが図書館に入るなり落ち込んだぞ。なにかこの図書館で嫌なことがあったのかな?」
「俺に聞くなよ!レントラーの過去を知ってるわけ者無いんだから!レントラーに聞けよ!」
「そうだよな。…レントラーこの図書館で嫌なことでも思い出したのか?何なら外で待つか?」
「いいや!そんなんじゃない。考え事してただけだ!ほらさっさと調べるぞ!」
マグマラシ。お前が関係してる事で悩んでんだよ!ちょっと声が変になってしまってたな…気付かれなければいいが…
―――【マグマラシ視点】―――
アリゲイツと一瞬落ち込んでたレントラーはそれぞれ分かれて目的の本を探しに行った。
はっきり言ってこの図書館はとてつもなくでかい。城と比べても引けを取らないくらい。
端から端まで走っても三十分かかるそうだ。受付らしきところにいたネイティに聞いたんだが。
俺の探してる本にたどり着くまでに相当な量の本の背表紙を見た。それだけで気分が悪くなるくらい。
匂いは…古い本と新しいインク…それにスカタンクの臭におい!?臭くさい!鼻が!鼻が!
逃げなきゃ鼻がだめになる!………………あ、探してた種類の本みっけ。臭においは無いな。
「神話…伝説…遺跡…幻…神…これでいいか」
俺の前足?の中には何冊もの本が。俺はふらつきつつも四足歩行ポケ用の読書テーブルにつく。
「何々…タルミ先生の話で出てきたのもあるな。…これは神話?」
[始まりにあったのは混沌のうねりだけだった。全てが混ざり合い、中心に卵が現れた]
[こぼれ落ちた卵より最初の者が生まれ出た]
[最初の者は二つの分身を作った。時間が廻り始めた。空間が広がり始めた]
[さらに自分の体から三つの命を生み出した]
[二つの者が祷るとものと言うものが生まれた]
[三つの者が祷ると心というものが生まれた]
[世界が創り出されたので最初の者は眠りについた]
「最初の者って誰だろう?」
この神話を読んでから何か変だ…
《……》
今、何か聞こえたような…
…気のせいか。さて、続き続き。
[3匹のポケモンがいた]
[息を止めたまま湖を深く深く潜り、苦しいのに深く深く潜り]
[湖の底から大事な物を取ってくる。それが大地を作るための力になっているという]
「ふー。これも誰なんだ?」
《………》
なんだ?また何か聞こえたような………まぁいいか。
えっと、次の本は…伝説のポケモンの本か。
あとでアリゲイツ達にも教えなきゃな。
―――【通称視点】―――
アリゲイツが心配で様子を見ようとアリゲイツを探しているレントラー。
アリゲイツは読書スペースとして設けられた場所にある机に向かって読書…ではなく机に突っ伏して寝ている。涎は垂らしていないが。アリゲイツがかじりついたと思われるアンティークの机の頑丈さには恐れ入る。
アリゲイツを見つけ、近寄るレントラー。
「アリゲイツ寝てるし!」
やはりレントラーの心配は当たっていたようである。
「仕方がない…俺が調べるか…」
そう言ってまたどこかへ行くレントラー。
しばらく経って、調べ物を終えたマグマラシはアリゲイツの所に来た。
マグマラシはアリゲイツの読んでいたと思われる本を片付けてから、何も言わずに図書館の外へ引きずっていく。それだけで十分はかかる。
「…火炎放射」
マグマラシは炎が燃え移りやすい物が周りに無いことを確かめてからアリゲイツに向かって炎を吐き出す。
「……熱っ!あちぃ!!」
炎で焼かれて起き、あたりを叫びながら走り回るアリゲイツ。
「マグマラシ!何すんだ!」
「俺が調べ物をしているときにおまえはぐっすりと寝ていたから起こしただけだろ」
「だからって焼くことは無いだろ!」
「図書館に戻るぞ」
図書館の中へ再び入ったマグマラシ達。
「お!二匹ともいたな!何をしてたのかは知らないが、アリゲイツが寝ていた所に行ってもいなかったから探したんだぞ!」
「ごめんな。どこかのワニを懲らしめてたから外に行ってたんだ」
「アリゲイツ。お前の言ってたジムとバトル大会のことについて調べておいたぞ」
「サンキュー!」
「じゃぁ調べたことについて言うか。俺はこんなのを見つけた」
マグマラシが読んだ本の内容をかいつまんで説明する。
「次は俺だな」
レントラーも同じようにかいつまんで説明する。
アリゲイツは…もちろん何も言えない。
その時、外で大きな爆発音がする。
「何だ!?」
「行ってみようぜ!」
アリゲイツを先頭に走って図書館を出るマグマラシ達。
「数年前、紅くて暖かい石を拾った奴!出て来い!!そしてその石を渡せ!」
町の中心付近の少し開けた場所で暴れているマタドガス、カモネギ、パッチールの三匹組。
「やめろ!」
アリゲイツが正義のヒーローの如く三匹組に言う。
「あ〜あ、アリゲイツの奴、面倒なのに巻き込んでくれたな…」
「止めろと言われて」
「止める奴が」
「どこにいる!!」
お決まりの台詞のように三分割して言う三匹。
「それもそうか」
三匹の言葉に納得してしまうアリゲイツ。
「でもやっぱ止めてくれねぇか?」
「「「うるさい!!」」」
「ヘドロ爆弾!」
マタドガスの奇襲のヘドロ爆弾を避けるアリゲイツ。
「エアカッター!!」
「まねっこ!!」
カモネギのエアカッターを真似てエアカッターを出すパッチール。
「先に手を出したのはお前らだからな!」
そう言いながらエアカッターを避ける。
「連続竜の舞!」
「え、ちょ!ちょっと!何そのわてらが確実に負けるような流れ!止めて!止めて!」
「止めろと言われて止める奴がどこにいる?」
三匹の言葉をそっくりそのまま返すアリゲイツ。
「あ!でも!ちょっと!危ないって!吹っ飛ぶって!」
「アクアテール!!」
三匹はアクアテールで吹っ飛んで、空の星になった。
「あ、一匹で片付けてくれた」
「なぁ、アリゲイツ。吹っ飛ばすよりも警察に突き出したほうが良かったんじゃないか?」
「あ!…わりぃレントラー。それは思いつかなくて…」
「まぁ、一件落着したし、今日はレントラーの家に泊まって明日出発しようぜ」
「そうだな。アリゲイツ、置いてくぞ〜!」
三匹は再びレントラーの家に泊まった。紅くて暖かい石という物に興味を抱きながら。
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紅くて暖かい石というのはポケダンをやった人には分かると思いますが名前公表〜!
その名も…日照り石!
マグマラシ「ふ〜ん」ぱちぱち……
何そのどうでもいいと言わんばかりの反応!
マグマラシ「見られるかどうかさえ分からない物なんだから」
まぁ、確かに。