第八話:ダンス
ダンスパーティー会場についたマグマラシ達。
「お!マグマラシ!待ってたぜ!」
『マグマラシ様〜!』
「皆、よろしくな!」
「アリゲイツさん!」
「カメール!さんは要らないぜ!!」
「やっときたかグラエナ!」
「マッスグマちゃ〜ん!!遅くなってごめんね〜!」
「ザングース、逃げずに来たか」
「もちろんだ!」
「ザ、ザングース!?その腕は!?」
ザングースの腕の包帯を見て慌てるハブネーク。
「さっきそこで切れたんだ。タルミ先生に処置してもらったけど大げさなんだぜ」
「そうなのか。私に言えば私が処置してやるのに…」
とても残念そうに言うハブネーク。どうやって包帯巻くのかが疑問だが。
どこからかドゴームの声がする。
〔え〜これから、我が校の名物、ダンスを開催します!〕
その声が聞こえた瞬間音楽が流れ出す。
「マグマラシ踊ろうぜ!まずは俺からだ!」
「行くぞカメール!」
「はい!!」
「マッスグマちゃ〜ん!踊ろ〜!!」
「その喋り方うっとうしいから止めろワン公!」
「ハブネーク!俺のダンスについてこれるか?」
「もちろんだ!!」
ブイゼルはミルタンクと背の高さが違いすぎるため、踊れない事を嘆いている。
「…ブイゼル、昨日はすまなかった。これやる」
そう言ってブイゼルに何かを渡して去っていくサボネア。
「…これは不思議な飴!…サボネア、ありがと〜!」
ブイゼルはサボネアに礼を言い、早速使う。
するとブイゼルの身体が光り輝き始め、形が変わっていく。
光が収まった時そこにいたのはフローゼル。
「ブイゼル!いいえ、フローゼル。踊るわよ!」
「はい!」
それぞれがそれぞれの想いをダンスに乗せて踊る。
マグマラシは大きさが違いすぎてダンスと言うより、抱きかかえられている。
アリゲイツとカメールは得意の水技を使ったダンスもといパフォーマンスをしている。
近くに炎タイプ等水を苦手とするポケモンはほとんど見当たらない。
グラエナはマッスグマと上手く踊って…いる?一瞬だけ見たらとても上手いように見えるが、良く見たら全然上手くない。
ハブネークは、その長い身体をしならせ、ザングースと共に流れるように踊っている。
ミルタンクとフローゼルはどこか違うところにいるようなそんなダンスをしている。
それぞれが、それぞれのダンスを踊る。
マグマラシは次々と踊る相手を変えている。
最初の曲が終わり、次の曲がかかってきた。
ポケモンならついつい踊ってしまう、“ポルカ・オドルカ”。
〔ノルカ ソルカ ポルカ オドルカ…♪〕
マグマラシを含めほぼ全員が踊る。サンも手だけ踊っている。
この曲だけは皆の動きが同じなので、とても統一感のある動きになる。
また曲が変わ…らない。
スピーカーから不快な金属音のような音が流れてきて、皆耳をふさぐ。
「うるさい!どうしたんだ」
ドゴームの声が聞こえてくる。
〔えー、流す筈だったCDが不慮の事故により使えなくなってしまったので、グラエナさんピアノの演奏をお願いできますか?もう一度繰り返します。………〕
「グラエナ?あいつピアノ弾けたのか?」
「アリゲイツ!もう一匹の方のグラエナだからな!!このワン公と一緒にするなよ!!」
「ああ、そっちのグラエナか。その犬にピアノが弾けるわけ無いよな!」
―――ポーン♪…ポーン♪
そしてグラエナがピアノを引き出した。この学校一の腕前で、全国大会で入賞した経験の持ち主だ。
「こ、この曲は…!なんだろな?」
「言っときながら分からないのか!!ワン公!」
「じゃあ、マッスグマちゃんは分かるのか?」
「ちゃん付けするな!分からないが…」
「マッスグマちゃんは踊らないんですか?たのしいですよ」
「カメール、踊るって!ほら踊るよワン公!お手!」
「ワン!」
グラエナがお手をする。
「本物の犬に成り下がったか冗談も通じないとは!すまないな。私は犬とは付き合う気は無い」
「ごめ〜ん。マッスグマちゃ〜ん許して〜!」
マッスグマはグラエナに振り回されているようだ。
「……」
「ザングース?」
ザングースはさっきから黙ったままだ。ハブネークの呼びかけにも答えない。
腕の包帯からは血で染まっており、顔色が悪い。
「…ザングース…とりあえず保健室に行くぞ」
ハブネークがザングースを保健室に連れて行こうとして体を押すとザングースは倒れた。
「ザングース!?ザングース!?ザングー………」
そして意識を失った。ザングースが倒れてもお構いなく続くダンス。
―――【マグマラシ視点】―――
「マグマラシ様…」
ルクシオが俺に触れた瞬間一切動かなくなった。なぜだ?
「大丈夫か?ルクシオ」
「…ごめんなさい。もう自分を抑えられません…」
自分を抑えられない?も、もしかして…
ルクシオが俺を押し倒し、襲ってくる!
『マグマラシ様!抜け駆けなんて卑怯よ!』
ルクシオはマグマラシを信愛するポケモン達によって取り押さえられた。
『マグマラシ様大丈夫ですか?押し倒されただけですよね?』
「あ、ああ」
ルクシオには押し倒されただけで済んだが、あいつらが言った[抜け駆けなんて卑怯よ]という言葉が気になる。
あいつらもその気があるって事だよな……注意しないとな。
気を許しているとルクシオみたいに襲ってくる奴がいるだろうからな…。
―――【通常視点】―――
ダンスも終わりに近づき、ゆったりとした曲に変わる。
「タルミ…」
「フローゼル…」
二匹は踊りながら互いを見つめあい、口付け交わそうとする。
そこに吹っ飛んでくるズバット。ダンス中に相手を怒らせたようだ。
「ヤミカラスさん…」
そう言って気絶する。ズバットがしていたのは求愛のダンスだとか。
いいところを邪魔された二匹。腹いせにズバットを踏みつけていく。
…このダンスパーティー、毎年気絶するものが後を絶たないとか。
ダンスパーティーも終わり、ミルタンクの号令で解散することになった。
「皆!あなた達はあなた達の幸せを、私は私の幸せを、それぞれ掴み取るわよ!」
〈生徒全員〉『おおー!』
「それじゃ皆元気でね!!さようなら!」
〈生徒全員〉『さようなら!!』
生徒の中には涙を流している者も。もちろんザングースとハブネークはいない。
生徒のほとんどが学校を去り、残っている者は僅かだ。
「ザングースどこ行った?」
「ハブネークさんもどこでしょうか?」
「さがすのか?」
「ああ、探したほうがいいだろ」
マグマラシ達はいろいろなところを探し、保健室で二匹を見つけた。
「ザングース大丈夫!?」
「…頭がくらくらする」
「出血したうえ、踊ったせいで貧血になったのよ…暫くは誰かが面倒見ないとね」
「私が見る!」
「ハブネークが?」
「私は家族がいないし、ザングースもサンという行方不明の妹がいるだけだ。特に問題は無い」
「どこでその情報を聞いた?サンは行方不明なんかじゃないぞ…」
「え?どういうことだ?」
「それはな、…」
ザングースはハブネークに今までの事を包み隠さず話し、これからの予定も話した。
「…そういうことだったのか。タルミは不思議な奴だったからな…あの噂も嘘か…」
「そういうことだ」
「なら、私がサンの事もザングースのことも世話してやる!!この気持ちを変える気は無い」
「そうか…じゃあ、よろしく頼むぜ!!皆、じゃあな!」
「俺らも解散しようぜ。ザングース、皆じゃあな!」
ザングースはサンを持ち、ハブネークと一緒に去って行った。
マグマラシ達も別れ、それぞれの道へ歩んでいった。