第七話:呪解
※ミルクのみは実際にミルクを飲むのではなく、特殊な中距離回復技としてお考えください。
・・・そういった描写は書きたくないので。
貯水タンクの奥の部屋に集まったマグマラシ達。それぞれのダンスパートナーは役員の用事があったりしたのでブイゼル一匹を除いて来ていない。
「これ、どういうこと?」
「え〜と、実はかくかくしかじかで…」
マグマラシとアリゲイツが説明している間にミルタンクは作業を進める。グラエナは録画の準備をしている。
「皆、今から呪を解くわね。ザングース君、あなたの血がいるわ。サンの血族であるあなたの血がね。それじゃあ、血が出る程度に腕を斬って!」
「…切り裂く!」
ザングースは切り裂くを使い、自分の腕を斬った。切った場所から血が滴り落ちる。
「魔方陣の中のそこと、そこと、あそこと、ここと、そっちをつなぐような五角形を書いて。それから、月光に当てておいたそれの中にも血を混ぜてね」
「わかった。サン…もうすぐだぞ」
ザングースはミルタンクに言われたとおりに動き、その後包帯を巻いて止血をした。グラエナは録画し始めた。
「グラエナ君、そのすり鉢を渡して。皆、私に触れて。そして私が良いと言うまで決して離れないでね!」
「あいよ」
グラエナがミルタンクにすり鉢を渡すとミルタンクは古代魔法言語を言い出した。
「§£$¢∴∋∃∀∂∬∝ņ‰‡¶ΠΞΛΝΘΔΓΣΥΩΨΦΠξλιθψδωζЖЁДЙЛЭЮщчф塔ミ∫…」
サンの下にある魔方陣が輝き、その後にザングースの血が赤く輝く。それに共鳴するかのようにすり鉢の中の血も赤く輝き、中に入っていたものに黒い線が浮かび上がる。部屋の中が、日本晴れを使った時のように明るくなり、すり鉢の中身は徐々に形を変え、紅いサンドのようになる。
「皆、ここからは目を閉じていて。開けてたらあなた達が呪の対象になるわよ」
ミルタンクに言われ、全員が目を閉じる。
「大地を広げし赤き者の分身よ、我等の体力と引き換えに大地の呪とこの者を引き離し、その呪を打ち砕きたまえ」
ミルタンクがそう言うと、部屋が紅い光に包まれ、マグマラシ達の体力が一気に奪われる。
「赤き者の分身よ、汝の本体に伝えよ。《我等が必要になればいつでも呼びたまえ。我等はこの恩を必ず返す。》と。」
紅いサンドは崩れ、部屋の中に満ちていた紅い光や、日本晴れを使った時のような明るさは弱くなり、消えていった。
「…もういいわよ…」
ミルタンクがとても疲れた様子で言った。
「つ、疲れたぜ。20連続バトルした時よりも…疲れた…」
「アリゲイツ、そんなのいつしたんだ?」
「入学のときに上級生といざこざで…な」
ザングースが地に手をついて息を荒げている。
「ザングース?大丈夫か?」
「ああ…なんとか…な…。ちょっと目眩がしただけだ。それよりもサンは?」
「大丈夫のはずよ。呪も解いたし、後はこの時魔法と宙に浮かせている…魔法さえ解けば…」
そう言ってミルタンクは倒れる。
「タルミ先生!大丈夫ですか!?」
「ブイゼル…ちょっと疲れ過ぎたみたい。今から時の魔法と宙浮遊魔法の解き方を言うわね。マグマラシ君達と一緒に解いてね」
「はい」
「まず、サンちゃんの下の魔方陣を消して。そうすれば時の魔法は消えるはずよ。次に、壁に書いてある文字を水で消して。水以外で消すと大変なことになるから…。あと、ブイゼル…私の事呼び捨てでいいわ。敬語も…ね」
「…わかった!タルミ。任せといて!」
そう言ってミルタンクは寝てしまう。ザングースは出血した後急激に体力を奪われたせいかあまり上手く動けていない。
「マグマラシとグラエナはサンちゃんの下の魔方陣を消して!アリゲイツは僕と水鉄砲で壁の文字を消すよ!」
「「「おう!」」」
マグマラシとグラエナは魔方陣を爪で引っ掻いて消している。アリゲイツはブイゼルと水鉄砲を放つ。壁に書かれていた文字は瞬く間に消え、サンの身体がゆっくりと降りていく。
「何でゆっくり落ちてんだ?」
「グラエナ、まだ時魔法が続いてるからじゃない?」
「まだか〜もう四分の一も剥がしたのに…」
「グラエナ、文句よりさっさと剥がす!愛しのマッスグマちゃんが待ってるぞ!」
「!!待っててね〜マッスグマちゃん!!」
マグマラシの“マッスグマちゃんが待ってるぞ”の一言で、急にペースが十倍に跳ね上がったグラエナ。
マグマラシ達はただあんぐりと口を空けている。次の瞬間サンが魔方陣を剥がしていたグラエナの頭上に落ちる。
「ぎゃ!」
グラエナ、尻尾を踏まれたり、頭の上にサンが落ちてきたりと不運である。
サンはまだ意識が無いままで、ピクリとも動かない。
「サン…しっかりしろ…お兄ちゃんだぞ…」
「…なぁ、マグマラシ、ザングースってやっぱシスコンだよな?」
「ザングースはそれを気にしてるかも知れないから言わないほうが…」
「グラエナ。全身の毛を徐々に抜かれるのがいいか?それともお前の恥ずかしい写真でもばら撒こうか?どっちか選べ」
「すまんザングース!どっちもヤダ!!まだ今日という日に別れを告げたくない!!」
「じゃ、明日だな!」
「アリゲイツ!それもやめろ!」
「サンちゃんは、ものすごく体力と精神力を消耗してるからそこに寝かせてあげなさい。あと4時間は起きないと思うから。その間にダンスを楽しむわよ!」
ミルタンクは眠りから覚めたようで、元気一杯である。
「タルミ先生なんでそんなに元気一杯なんだ?」
「マグマラシ君…そんなにも知りたいの?…もう、しょうがないんだから…」
「タルミ先生、ブイゼルが恐ろしい眼で睨んできてるからやめろ!」
「あら、ブイゼルって意外と独占欲強いのね。眠るを使ったのよ」
「眠る…使えたんだ」
「さて、ザングース君の体力回復してあげないとね。2連続ミルク飲み!!」
「サンキュー、タルミ先生!サン、しっかり休めよ…」
「マグマラシ君達もそこに並んで!」
「タルミが言ってるんだからさっさと並ぶ!」
ブイゼルの豹変ぶりに驚くマグマラシ達。そしてすぐに並ぶ。
「ブイゼルって、俺らにも敬語使ってたのに…すげえ豹変ぶり」
「だな…」
「ミルク飲み連発!!…そして眠る…」
ミルタンクは消耗した体力を回復するため、眠るを使った。
「サンキュータルミ先生!」
「…サンの体力をミルク飲みで回復しないのか?」
「…ザングース、お前はダンスの時サンの面倒見ながら踊るのか?」
「あ…」
「それにな、サンにとって今は二年半後の世界にタイムスリップしたようなもんなんだ。ザングース、お前がサンの知ってる時より成長しているからサンにとってはお前はお兄ちゃんじゃないかもしれないんだぞ?」
「マグマラシの言うとおりだ。お前がお兄ちゃんであることを証明するために時間が必要だろ?今起きたらダンスまでに証明できるか?タルミ先生はそれも考えてたんだと思うぜ?」
「…そうだな。明日起きたときには時間がたっぷりあるからその時に少しずつ分かって貰うか…。はぁ…サンは俺の事ちゃんとお兄ちゃんだって分かってくれるのか?」
「今そんなこと考えてもどうしようもないだろ?」
「…だな。そういった事は明日から考えればいいか!」
「う〜ん!!あ〜寝た!!えっと後はブイゼルとサンちゃんね」
「「「え?」」」
ミルタンクの言った事で驚いたマグマラシ達。
「どうしたの?」
「サンの体力は回復しないで!!」
「え?何故?」
「それは…」
マグマラシ達はさっきザングースに言った事をミルタンクに説明する。
「それもそうね。じゃあ、ブイゼルだけね。ミルク飲み!」
「ありがと。タルミ」
ブイゼルの笑顔を見たタルミの顔が赤くなる。
「タルミ先生顔が赤いぜ!!」
「グラエナ君!!…私、ブイゼルの事好きになってきてるみたい…」
「じゃあ、後は結婚と子作りだけだな」
ミルタンクとブイゼルの顔が一瞬にして真っ赤になる。
「こら〜!!待ちなさい!」
ミルタンクがおしおきをしようと追いかけていく。
ピンポンパンポーン〔地面の穴を塞ぎ終えたのでもうすぐダンスパーティーを開催します!〕
「アリゲイツ行こうぜ!」
「ああ!マグマラシ、大人数ダンス頑張れ!」
「おう!頑張るぜ!」
マグマラシ達はダンスパーティー会場に駆け出した。いつのまに時間が経ったのか外はもう暗くなっている。
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アリゲイツ「お!ホットケーキ!!」
あ!それは僕のだ!…ああ、僕の…僕の20枚ホットケーキが…
マグマラシ「アリゲイツ〜さすがに全部食べるのは酷い」
マグマラシ…お前は分かってくれるんだな!!
マグマラシ「俺達にも残してくれなきゃ」
…裏切られた気持ちで一杯だ…そして皆…何で!ホットケーキを食べたアリゲイツじゃなくて僕に怒りの矛先が向いてるの!?
作者、ここに死す…訳ない!僕は不死…うべぁ!
※紅きサンドは分かりますよね!姿が似ていたものでつい…ちなみにグラエナは録画に失敗しました!魔法に電気エネルギーを吸い取られたらしい。