第四話:呪解の準備とブイゼルの心
ミルタンクのタルミ…恐るべし。
アリゲイツ「何なんだ?」
読めば分かる。…台本いる?
アリゲイツ「今渡しても良いのか?」
いいよ。今までのやつしか綴って無いやつだから。
アリゲイツ「今回の載ってねえじゃん」
マグマラシ「ま、抑えて抑えて。タルミ先生の二十歳台に見える美貌に免じて」
そうそう。
マグマラシ「そんな事よりもブイゼルが…」
わー!それ以上言っちゃだめ!…ってなんで知ってるの?
マグマラシ「俺にかかれば作者の考えてる事は簡単に読めるからな!」
…マグマラシ、その手に持ってる台本返しなさい。まったくいつ盗ったんだか。
マグマラシ「盗ってないぞ。作者が床に放り投げてたからそれを拾っただけ」
あ、そうなんだ…マグマラシ、疑ってごめんね。一件落着?したところで…
三匹『どうぞ〜』
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「この呪を解くにはある程度の材料が必要なの。その材料はほとんどそろったわ。あと必要なのは二つ…」
「その材料って何なんだ?俺が取ってきてやるからよ」
ミルタンクは笑顔を見せながらアリゲイツに近づく。
「それじゃ早速。アリゲイツ君…」
アリゲイツは自分の名前を呼ばれ、恐怖で目を瞑っている。
それもそのはず。ミルタンクにイタチコンビが攻撃を受けているのを間近で見てきたし、ミルタンクが『………の血それも……血族の。それとアリゲイツの………』と言っていたのを思い出したのだ。
「牙、五つ頂戴♪」
「…き、牙?」
よほど恐ろしいことをイメージしていたのだろう。そのイメージとはかけ離れた事を言われたために唖然としている。
「そうよ。牙よ」
ミルタンクがどこから手に入れてきたのか[
抜歯鉗子]を持ってアリゲイツに近づいて行く。
「ま、待てよ。自然に抜けるのを待ってくれ!!抜かれると痛いんだって!!」
自分で抜いたことがあるのかその痛みを知っているようで、少しずつ後ずさりしていく。
「「大丈夫だって」」
アリゲイツが振り向くとそこにいたのはグラエナとザングース。ザングースの眼にはもう水は溜まっていなかった。
「ごめん。アリゲイツ…」
前にはマグマラシとミルタンクが迫ってきている。
「マ、マグマラシまで!!」
「「「サンの命がかかってるんだ。それに協力するって言ったろ?」」」
「三匹とも!アリゲイツを押さえ込んで!!」
マグマラシ達がアリゲイツを押さえにかかる。三匹がかりでも押さえるのはやっとのようで、今にも振り解かれそうになっている。
「アリゲイツ君。すぐに済むわ」
「うぁぁ〜!」
『ぎゃぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!』というアリゲイツの悲鳴が学校中に五回響き渡った。このときサボネアが足を滑らせて階段から転落し、反省文を書き終えたブイゼルに勢い良く刺さったのでブイゼルの悲鳴も混じっていたとか。
「これでアリゲイツの牙は手に入ったし、これを粉々に砕かなきゃね」
「俺がやる!!」
「グラエナ君やってくれるの?…食べちゃだめよ?身体に悪いから」
「た、食べませんって!!」
「俺の牙って毒か?それとグラエナ。明らかに食べようとしてたろ」
「俺はこれを食べて…じゃなくて、砕いてくるわ」
アリゲイツの牙を四足歩行用すり鉢に入れて急いで部屋を出て行くグラエナ。
「さて、ザングース君。今まで集めてきたものをすべて混ぜ合わせて、マグマラシ君の炎で焼いてもらって」
「おう!」
ザングースはマグマラシを連れて部屋の奥で材料を混ぜ合わせている。
その場にいるのはミルタンクとアリゲイツ。
「俺は?何をすればいい?」
「何もしなくていいわ」
「何かないのか?何か?」
「あるにはあるけど…ここでサンちゃんの様子を見てて。サンちゃんが少しでも動いたら私に知らせて。これはサンちゃんの命にかかわる事だから」
「おう!タルミ先生はどうするんだ?」
「ブイゼル君の反省文が書き終わってる頃だと思うから、職員室にいるわ」
「…こういう時も仕事の事は忘れないんだな…」
ミルタンクが部屋を出て行く。…途中でグラエナがまた尻尾を踏まれたようで、ザングースに踏まれた時よりも悲痛な叫び声を上げた。
「うわっ!!…グラエナまた尾を踏まれたか…」
勘が冴えたマグマラシ。的中している。
「タルミ先生いますか〜?」
「タ〜ルミ先生は〜いないよ〜」
いつもの口調で対応するニョロトノ。
「どこへ行かれたか分かりますか?」
「さあ〜?分からないよ〜」
「ありがとうございました。それでは失礼しました」
そう言って職員室の戸を閉めるブイゼル。その手には反省文500枚が握られている。
「はぁ〜タルミ先生どこに行ったんだろ?」
下を向いて職員室を離れていくブイゼル。少し歩くと柔らかく、弾力のあるものにぶつかってしまった。
「あ、ブイゼル君いた!」
そこにはちょうど階段を下りてきたミルタンクが。ミルタンクは他のミルタンクよりも大きく、ブイゼルは他のブイゼルより背が低いためブイゼルはミルタンクのあの部分に顔をうずめる形になってしまったのだ。
「…っ!!」
偶然とはいえブイゼルは女性のあの部分に触れてしまったのだ。いくら年が離れていようと相手は女性。しかも二十歳台に見えるタルミ先生である。ブイゼルがもともと年上の女性が好きだったのも手伝い、意識しないように心がけていても意識してしまうブイゼル。
「反省文500枚書けたのね。」
「……そ、それでは失礼し、します…!」
そう言って走っていくブイゼル。その顔は真っ赤になっていた。
―――【ブイゼル視点】―――
「…僕は、タルミ先生のこと……好きなのかな?」
今まで意識したことはないけれどいつもタルミ先生に会うだけで幸せになったりする…。
さっきだって、あの事がなくてもタルミ先生に会うと思うだけでドキドキしていたし、いつもタルミ先生の事考えてる…。
頭を整理しよう。立ち止まって、深呼吸して…
………やっぱり僕はタルミ先生の事が…好き…なんだ。
「…タルミ先生。僕は先生の事が好きだという事に気づきました…」
―――【通常視点】―――
ミルタンクがマグマラシ達の所に戻ると、準備が済んだマグマラシ達が待っていた。
「準備できたぜ!」
「焼き加減これくらいでいいのか?」
「この牙の磨り潰したものどーするんだ?」
「サンは動かなかったぜ」
「えーと、焼き加減は、ちょうどいいわ。グラエナが磨り潰した牙と混ぜてね!」
「それから?」
「一晩、月の光に当てるのよ。今日、ちょうど月が出るはずよ。」
ザングースはグラエナからすり鉢ごと受け取り、二つをよく混ぜ合わせた。
「これはそこら辺に置いていても良いのか?」
「いいわよ。風に飛ばされないようにしてね」
ザングースがすり鉢を風で飛ばないように固定している。
「今日の作業、これで終わりか?」
「ええそうよ」
「なんかあっけねぇ。魔法だからもっと凄い事すると思ってた」
「ふふっ。魔法はそういうイメージがあるみたいだけど、凄いのはほんのごく一部なのよ。サンの呪も明日解く事が出来るけどそれだって地味な作業の積み重ねよ」
「サンの呪も明日解ける…長かった…二年半…」
「……?」
「マグマラシどした?」
「グラエナ。サンの呪って二年半前だよな…そしてタルミ先生がここに教師としてきたのが二年半前」
「そうだけど、それがどうしたって言うんだ?」
マグマラシが思っていたことを口に出す。
「タルミ先生はどうやって教師になったんだ?」
「「「あ!!!」」」
「え?何でザングースまで?」
「俺はサンの事で一杯で、疑問に思った事なかったから」
「…馬鹿?」
アリゲイツがザングースに聞こえないように非難した。
「…え〜と、気付かれちゃったわね。私がここの教員になれたのは魔法を使ったからよ。もう使い方忘れちゃったけど」
「俺も魔法使いてぇ!!」
「グラエナ君、私の話を聞いてから言ってね。魔法は諸刃の剣なのよ」
「魔法を使えば自分に何らかのリスクがあるって事か?」
「そう。魔法の使用者にも、魔法の対象がポケモンの場合はそのポケモンにもね」
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マグマラシ「ブイゼル…教師と生徒の危ない恋愛でも始める気か?」
大丈夫。その点は卒業式が終わったらブイゼルは生徒じゃなくなるから。
アリゲイツ「いいな〜…魔法…」
ブイゼルの恋愛が?…って魔法かよ!
マグマラシ「作者のツッコミって下手なような気がする」
グラエナ「いいや違う。作者は下手ではなくて馬鹿だ!」
グラエナ、消去決定。デリートボタン、ポチッとな。
グラ・・「身体が!名前が消えて………!!」
マグマラシ「許してあげてくれよ」
マグマラシがそう言うなら…キャンセル…
グラエナ「何か不思議な感じがした。二度と味わいたくないけど」
あ、そうそう。アリゲイツ、魔法はそのうち使えるようにしようかな〜って思ってるところだから。もしかしたら使えるようになるかもね。
アリゲイツ「よっしゃあ!!」
あ、でも教えてくれる師匠がいるか…どうしよう。タルミは教えられるほど熟達した使い手じゃないから…ま、今度でいっか。
タルミ「呼んだ?」
いや呼んでない。
タルミ「あ、そうそう。アリゲイツに言いつけたサンちゃんの見張り…実は要らないのよ」
まじですか。そこら辺はアドリブに任せていたから分からんかった。