第二話:噂を追って
職員室に着いた二匹。メタモンはウィンディに変身し、神速を使ったようでもう罰から開放され、マグマラシ達の横を通り過ぎて行った。
「…あ、ザングースは罰の真っ最中だった…」
「おろせ!」
「マグマラシ。わりぃ、忘れてた」
アリゲイツは抱き抱えていたマグマラシをおろし、職員室にタルミ先生がいるか確かめに行った。
「アリゲイツだけどタルミ先生は?」
「ん〜?タ〜ルミ先生は〜いないよ〜」
のんびりとした口調で返事したニョロトノ。口調とは違い、テキパキと事務をこなしている。
「サンキュー!トノロ先生!」
「アリゲイツ、タルミ先生いたか?」
「いいや、職員室にはいねぇぜ」
アリゲイツの言い方から何かを察したマグマラシ。
「探すのか…」
「ご名答!」
そのとき、グラエナが四足歩行用のカメラをくわえてアリゲイツ達の横を通り過ぎて行った。
「あいつは…噂好きで有名な方のグラエナだよな」
「何かあるよな…カメラ持ってたしな」
「アリゲイツもそう思うか?」
「尾行するぞ!早速、GO!」
アリゲイツはまたマグマラシを抱えようとしたが、マグマラシに避けられてしまったので鼻から壁にぶつかってしまった。
「痛ぇ!避けんな!」
そう言って、赤くなった鼻をさすっている。
「お姫様抱っこなんかされてたまるか!」
マグマラシはそういうや否やアリゲイツを放ってグラエナの後を追いかけていく。
「置いて行くな〜!待ってくれ〜!」
「無理。待ったら見失う!」
マグマラシ達がグラエナの後を追いかけていくとグラエナは屋上に出る扉の前で止まった。
そして針金を取り出すと口で器用にくわえ、鍵穴に挿し込みくわえたまま首を傾け、鍵を開けてしまった。
「グラエナってぜってー泥棒になれるぞ!」
「凄い!鍵を開けるのに30秒かからなかったぞ!」
「マグマラシは出来……ないよなぁ」
「なんだよ!その期待してたのに裏切られたとでも言いたげな言い方は!」
グラエナが貯水タンクのある部屋らしき場所に入っていく。
「それよりも!グラエナが貯水タンクのある部屋に入って行ったぞ!」
「逸らしやがった…」
グラエナが鍵を開けたまま行ったので、マグマラシ達は何の苦労も無く追いかけることが出来た。そのころ、ザングースは罰を終え、休憩をしていた。
カチャ……パタ…ン。
この部屋の扉は建て付けが良いようで大きな音も無く閉まった。まるでここまで来たら引き返せないという暗示のように。
部屋の中は薄暗く、さらに奥にある部屋から光が漏れている。
「!!……アリゲイツにマグマラシか…驚かせんなよ〜」
グラエナは後から入ってきたマグマラシたちに驚いて大声を出しそうになったが、何とか堪える事が出来た。
「二匹ともこっち来て、扉に耳当ててみろ」
「何が聞こえるんだ?」
「来てからのお楽しみだ」
二匹が扉に耳を当てると中から声が聞こえてきた。
「足りないのは………の血それも……血族の。それとアリゲイツの………の二つよね」
「この声は!タ…辰巳先生!」
「たつみじゃなくてタルミだから。グラエナ、こんな時にボケるな」
「な、なぁ、ア…アリゲイツっておっ…俺のことか?」
「まだお前と決まってなんかいな「いいや」
マグマラシの声を遮ったのはグラエナ。
「この学校にはアリゲイツはお前だけだ。それに昨日、タルミ先生がここから出た後お前のことを探していたしな。」
「じゃ、じゃあ…俺は…「静かに!!」
グラエナが静かにするように言うとミルタンクが部屋の中から出ようとドアノブをまわす音がした。
「隠れろ!!」
グラエナが言うのと同時にマグマラシ達は物陰に隠れた。それと同時にミルタンクが部屋から出てきた。
「何か物音がしたような気がしたんだけど…何だったのかしら?まぁいいわ」
ミルタンクは出てきた部屋の鍵を閉め、さらに三種類もの鍵を閉めた。マグマラシ達のいる部屋の鍵を閉め、屋上から出て行った。
ミルタンクの足音が遠ざかるのを確認したグラエナは物陰から出てきた。
「二匹とも出てきても良いぞ。タルミ先生は行ったぞ」
「グラエナ、ミルタンクはあの部屋で何をしてたんだ?」
「さぁな。前はタルミ先生が早く帰ったから詳しいことはわからないが、あの部屋に入らなければどうとも…」
「あの鍵開けられないか?」
「いいぜ!ちょっと待ってな………」
マグマラシの提案で鍵を開けようと針金を探すグラエナ。
「えっと………………う」
「どした?」
「マグマラシ、どーしよう。針金なくした」
「「え〜!!!」」
針金をなくしてしまったグラエナ。二匹よりも慌てふためいている。
「どーしよう!どーすれば???」
「グラエナ。とりあえず落ち着け!」
「マグマラシ、お前の炎で周り照らしてくれよ。針金探そうぜ!」
「あ、ああ」
マグマラシの頭と腰の炎で辺りが明るく照らされる。
「どこだ…あれがないとここから出られない……あ」
大変なことをさらっと呟いたグラエナ。自分で呟いてその事実に気づいたようだ。
「あったか?」
「いや。マグマラシもっとこっち照らしてくれ」
グラエナが呟いたことに気づかず、針金を探している二匹。
そのころザングースは職員室の前でミルタンクが来るのを待っていた。
そこに階段を下りてきたミルタンクが現れた。
[ザングースはどうする?]
[土下座]
[殺される]
[ちびる]
[こびる]
―》[文句を言う]
(ほかの選択肢良いのねぇだろ!!)
「タルミ先生〜遅い!!」
「化け猫が文句言うんじゃない!!…それよりもあそこに行くわよ…」
「………ああ」
「ねぇな…」
「グラエナ、外に落としてきたのか?」
「多分そうだと思う…」
グラエナはしょんぼりして探す気力もないようだ。
その時、マグマラシが何かに気がついたようで扉に耳を当てている。
「ちょっと、グラエナ。誰か近づいてきてない?」
「え?…ほんとだ。誰かが近づいてくる…二匹分の足音だ」
「とりあえず隠れようぜ」
カチャ……パタ…ン。
入ってきたのはミルタンクとザングース。マグマラシたちは物陰にうまく隠れている。
「なぁ、タルミ先生。いつもより暑くねぇか?」
「…確かに暑くなってる…それに物の配置が変わっているわね」
ザングースがグラエナの隠れているところへ近づいていく。
「ぎゃあぁぁぁ〜〜〜!!!!!!」
突如、グラエナが大声で悲鳴を上げた。
「「「うわっ!!」」」「きゃぁぁ〜〜!」
グラエナの大声に驚いてマグマラシとアリゲイツは声を上げてしまった。そしてワンテンポ遅れてミルタンクの叫び声。
「いってぇ!!!ザングース!俺の尾を踏むな!」
グラエナは近づいてきたザングースに尻尾を踏まれたようだ。
「グラエナか!!大声出すな!!心臓が飛び出そうになったじゃねえか」
「マグマラシ君!アリゲイツ君!グラエナ君!何故ここにいるの!!」
ミルタンクの気迫に押されるマグマラシとアリゲイツ。
「「俺達はグラエナの後を追って…」」
「えっと…それは…その…」
ミルタンクの質問に言葉を濁すグラエナ。
「グラエナ!そのカメラは何なんだ?」
しばらくたってから口を開いたグラエナ。
「……俺は…本当かどうか確かめたかったから…」
「何を確かめるのよ」
「…噂を…タルミ先生とザングースが付き合っているという噂の真相を確かめたかったからだ」
「で、ここに潜んでいたわけね。グラエナ、いつから調べてたの?」
「昨日から…」
「……はぁ…いいわ。アリゲイツ君はどうせ来てもらうことになっていたから」
ミルタンクが扉の鍵を次々と開けていく。
「入れ」
ザングースが三匹に部屋の中へ入るように言う。
部屋の中には模様が書かれた円の上に浮かぶ一匹のポケモンがいた。