第一章
第四話 【理由もなく】


カラクサシティ。

至って平和そうな町なのだがその日は何かが違っていた。
何人かの人がある人物を追いかけていたのだ。

「どこにいった!?」
「こっちに行ったはずなんだが……」
「早く見つけなさい! あの火事場泥棒……いや放火魔二人組を!」

人がいなくなってからひょこっと二人の少年らが顔を覗かせた。
一人はセレビィの力を借りて未来から来たトレーナー、ジオ。
そしてもう一人はジオを助けた少年だった。
ぱっと見は少女に見えなくもないがれっきとした少年である。

「クッソ……どうしてこんなことになるんだよ……!」
「君本当に何をしたの!?」
「知らねえよ! 濡れ衣だ! 俺がした悪いことっと言ったら……え〜と……スカートめくりとか……風呂覗きとか……」
「それ本当にマズイよ!」
「お……おい! 戻ってきた!」

しばらくすると何人か大人が戻ってきたため再び草むらに隠れることになった。
やれ放火魔がやれ屋敷に火をつけただの身に覚えのない事をやったと言われ追われる身となってしまったのだ。

(なんで僕までこんな目に……もう博士の手伝いできないよ……)
(……お前も共犯か……なりふり構わないって感じだな……腹立つな……あの恩知らずのクソジジイ。ぶん殴ってりゃよかった……)
(そんなことしたら駄目だよ!)
(永遠に寝たきりにしてやればよかった……)
(駄目だって!)


どうしてこうなってしまったのかそれは数時間前に遡る。






数時間前、一番道路にて一人の少年がミジュマルを連れて野生のポケモンをスケッチしていた。
身長は155cm。薄い青色の髪の毛で少し長め。
チェックのブレザーを羽織っており長袖のシャツ。下は黒いズボン。
そして何より最大の特徴は中性的な体系で女に見えるのだが男だ。
くどいようだが男である。
少年の名前はアレス。ポケモン博士より図鑑を貰いお手伝いという名目で旅に出たばかりの新米のポケモントレーナーである。

「良い天気だな〜」

初めてもらったポケモンのミジュマルと数十分前に初めて捕獲できたマメパトを連れてのんびりと野生のポケモンのスケッチをしている。
ここらへんにいる小さなポケモン達をスラスラと描いていた。
描き終えるといい笑顔で立ち上がり先へと進んでいった。

「伝説のポケモンとかに出会いたいよね。例えばイッシュの英雄とか……」

ふとミジュマルとマメパトを見てみるとお腹がすいたかのような表情をしているのだ。
町に着いたらお昼にしようかと思っていたのだが少しばかりスケッチに時間を取られ過ぎていたかと反省した。
ここらへんでお昼ご飯でも食べようかと座れそうなところを探しそこでお昼ご飯を食べようと思っていたその時だ。
ドスンとどこからか大きな音が聞こえたのだ。

「どうしたの?」

ふとミジュマルとマメパトが何かを見つけたのか急に走り出したのだ。
危ないよと言いアレスも後を追ったのだがそこにいたのは……気を失っていた少年だった。

「え……え……!? えええええええええ!?」

周囲を見たが何か変な所はない。こんなところで倒れているのだ。
行き倒れなのだろうかと思い必死に声をかけた。

「ちょっと! 君、大丈夫!?」
「……っ……」

怪我をしているようには見えない。
だけれど何か病気か何かにかかっているのだろうかと思っていたが次の瞬間。
倒れていた少年に思いっきり腕を掴まれたのだ。

「うわっ!?」
「……ぉ……おぃ……何か……食い物……ねえか?」
「え……?」
「……頼む……」

必死に頼み込む少年をアレスは見逃すわけにはいかなかった。
鞄の中に入っていた弁当と飲み物を渡した。
少年は匂いを嗅いでから渡された弁当を一気に食べ始めたのだ。
何も食べていなかったのか弁当の容器まで食べてしまいそうな勢いで全て平らげてしまった。
飲み物も飲み彼は一息ついたのだ。

「っ……あ〜……ありがとよ……」
(全部食べられちゃった。倒れるほどお腹すいていたのかな?)
「何にも食べてなくてよ。いやはや助かった助かった!」
「え〜と……大丈夫? 名前とか思い出せる?」
「ああ。大丈夫だ。もう大丈夫だ。全くあまり食べてなくてな……名前は大丈夫だ。俺の名前はジオだ」
「ジオ……ね。僕の名前はアレス」

互いに自己紹介をした後にジオは周囲を見渡した。
ここは一体どこなのだろうかそして一体いつ頃なのか聞いてみることにした。

「それとちょいと聞きたいんだけどよ。ここは一体どこなんだ?」
「え〜とここはイッシュ地方の一番道路だよ」
「イッシュ地方か……じゃあ今は一体何年何月なんだ?」
(か……変わったことを聞くなぁ……まだ記憶が混乱しているのかな?)
「どうした?」
「今日は××××年〇月〇日だけど?」

それを聞いてジオは少しばかりぐっとこぶしを握った。
セレビィの時渡りの能力が成功したのだ。

「マジか?」
「嘘はついていないよ。それより本当に大丈夫なの?」
「あ〜大丈夫だ。気にするな」

多分アレスは深く聞いてくるだろうと思いジオは適当に返した。
近くに落ちていた自分の鞄や中に入っている荷物を確認してジオは立ち上がりふと周辺を見渡した。
そういえば気になることが一つあった。
それは同じように未来から飛んだはずのラズリの姿が見えなかったのだ。
アレスに聞いてみても君しかいなかったと言われショックを受けた。
時渡りはもしかすると一人しか成功しなかったのかもしれないと思ってしまった。

(もしかすると俺しか過去に行くことができなかったかもしれねえ……ラズリ。お前の分まで俺がやってやる!)
「どうしたの?」
「いや何でもない。それより……」

ジオはとりあえずタウンマップでも持っていないかと聞こうとしたのだがふと草むらから何か気配を感じ取ったのだ。
ガサガサと音を立て現れたのは一匹のブイゼルだった。
気性が荒くすぐにでも他人に襲い掛かってきそうな感じだ。

「こんなところにブイゼル!? どこからか迷い込んだのかな……?」

まずは図鑑を開こうとしたその時だ。
ブイゼルはアレスの手に噛みつこうと襲い掛かってきたのだ。
近くにいたジオがアレスを引っ張り怪我は避けたのだがアレスにとっては信じられないことだった。


「うわ!?」
「大丈夫か? むやみやたらに野生のポケモンに手を出すんじゃねえ……っ!」

ジオはふと出てきたブイゼルに目を向けた。
黒いオーラのような物が出ておりこちらをギロリと睨んでいる。
間違いなくダークポケモンだ。被害は今のところ出てはいなさそうだ。
ここで捕まえておかないと大変な事になるだろうと思いジオは捕獲に乗り出した。

「よし……こいつを捕まえるぞ!」
「捕まえるってポケモン持っているの!?」
「持っているぞ。え〜と……あ……れ? あ、ここだここ」

そういうとジオは鞄からモンスターボールから先ほど貰ったイーブイを出し戦わせようとした。
しかしここでアレスがまるで別人のようになったのだ。

「イーブイだ! 珍しい! ねえこのイーブイちょっとスケッチしていいかな!?」
「は……はぁ!? ちょっと待て今から……」
「すぐ終わるから! すぐ終わるから!!」

そういい野生のポケモンとバトルをしようとしたのだがアレスのスケッチが始まってしまったのだ。
ジオはともかくイーブイや相手のブイゼルも茫然としてしまい数十分バトルは中断してしまった。

そして数十分後。満面の笑みでアレスはイーブイのスケッチを終わらせていた。
「いいよ! じゃあよろしく!」
「はいはい。それと少しモンスターボールを貸してくれこいつを捕獲するから」

アレスからモンスターボールを受け取りジオは早速イーブイに指示をしていった。
良い動きでイーブイはブイゼルを翻弄している。
あのダークポケモンが大量にいる時代でダークポケモンにならなかったのだ。

「さてと……使える技はっと……」
「それって……ポケモン図鑑!?」
「ん? ああ、そうだけどよ」
「……どういう……こと? ポケモン図鑑は博士に認めてもらった人しかしかも形が何か違うし!」
「まあ気にするなっとイーブイ! にどげりだ!」

図鑑でイーブイの使える技を見て一番威力が高そうな技、にどげりを繰り出した。
相手のブイゼルの急所に当たったのかすぐに体力が尽き片膝をついた。
それを見てジオはすぐにモンスターボールでブイゼルをスナッチし捕獲したのだ。

「よし……!」

すぐにモンスターボールを手に取りリライブしブイゼルを元に戻した。
元に戻ったのかブイゼルは穏やかな表情を見せてジオを見ている。

「ま、このまま連れていくか。手持ちは多いほうがいいって言っていたし」
(さっきジオの手が光っていたような……気のせいかな?)
「さてと。今から……」





そういいジオはどこか町へ行こうとしたその時だ。
二人がいるところから少し離れたところから大きな声が響いたのだ。




亜白夜 ( 2020/11/26(木) 17:51 )