第一章
第三話 【旅立ちは突然に】
チョロネコを女の子に返すことができラピスとラズリの二人は一旦家に帰っていた。
あの薬の影響でチョロネコは狂暴になっていたが薬があまり身体に浸透していなかったらしく普通に戻っていた。
それはよかったのだが問題はまだあった。

「……あの……ラズリさん……教えてください」
「……何をだ?」
「貴方のことです……」

明らかにおかしい人物であるのには間違いなかった。
狂暴なポケモンとはいえ他人のポケモンをあっさりと捕獲しただけでなく手から光を出し大人しくさせたのだ。
それに何か知っているのだろうか変な薬を使った男に対して容赦なく殴る蹴るだの暴力行為を悪びれもせずにした。
もしかすると自分も口封じだといわれて殴られるかもしれない。
怖くて怖くて仕方がないがラピスは聞いておきたかった。

「ラズリ。お前は約束を守れるか? 口は堅いか?」
「え……?」
「今から言うことは信じられない事だ。嘘を言っているように感じられるかもしれないがこのことは絶対に他人には言うな。
家族だろうが親友だろうが誰にでもだ。もし言ったら……どうなるかわかっているだろうな?」

そういうと恐ろしい表情でこちらをギロっと睨みつけてきた。
気性の荒いポケモンに睨まれたような気がしてならない。
ラピスは黙って何度も頷き話を聞くことにした。

「……まず私のことだが……私は未来から来たトレーナーだ。遠い土地から来た訳ではない。
セレビィの力を借りて遠い未来から時渡りで来た。ここにいるピカチュウも同じだ」
「時渡り?」
「伝説のポケモンの力だ。まずポケモンは人々と力を合わせて協力しあう関係だと思っているだろう?
だが私がいる未来では違うんだ……ポケモンは人々に襲い掛かる存在となってしまった」
「え?」
「私が聞いた話によると。とある馬鹿が作り出したポケモンの心を壊して完璧な戦闘マシンみたいなポケモンにする薬が完成してしまった。
ある意味人々の心も狂わす薬でな、狂暴にしてまでもポケモンバトルに勝ちたい奴らの弱い心を付け狙い売り資金を稼いでいた。
それをダークポケモンと私達は呼んでいる」
「……私達が戦ったあのポケモン達は?」
「ああ全員ダークポケモンだ」
「どうしてわかるんですか? 中にはもしかしたらダークポケモンじゃないポケモンも……」
「私にはわかる。ダークポケモンは普通の人には見えない黒いオーラのような物が見える。それが出ていればダークポケモンだ」
「どうして捕獲が……? 人のポケモンは捕獲できないはずじゃ……」
「野生のポケモンと同じようにダークポケモンを捕獲できる能力【スナッチ】、それとダークポケモンを元に戻す能力【リライブ】。
これを私は持っている。これを使いダークポケモンを元に戻していく。私ともう一人未来から来た奴も使える能力だ。
今話せるのはこれくらいだ。他は申し訳ないが……」

そういうとラズリは鞄とピカチュウをモンスターボールに戻したのだ。
そして鞄を持ちどこかへ行こうとした。

「晩御飯ぐらいは食べたかったがそういう訳にいかなくなった。この地方で薬が出回っている可能性が高いからな……諸悪の根源を徹底的に叩き潰す。
未来から来た最大の理由はこれだ。それとださっきは一緒に戦ってくれてありがとうな」

そう言いラズリは部屋から出て行ってしまった。
ラピスは話の内容が信じられなかったのか立ち止まっていた。

(ラズリさんが言っていたのって……本当なのかな……?)

信じられないがなぜか信じてしまう。嘘をついているようには見えない。
昼間の騒動、そして目の前であった出来事。どれも信じられなかった。

ラピスの家から出てラズリはヒオウギシティの出入り口辺りで周囲を見ていた。
家から出る前にラピスの母親に挨拶をして家から出ていった。
当然もう行っちゃうのと言われ一晩泊まっていきなさいと言われたのだがそうは言ってられない。
お礼はしっかりと言って走って家から出ていってしまった。
(……悪いことしたな……)
罪悪感が少しばかり出ている。親切にしてくれた人の思いを踏みにじってしまったのだ。
当然罪悪感が出るのだ。だが立ち止まっていはいられなかった。
もう外は暗い女の子が一人出てはいけないのだがラズリはあまり怖いとは感じなかった。
ダークポケモンが徘徊していた未来と比べれば至って平和なほうだ。このまま野宿と行きたいところだ。

一歩二歩と歩いて隣町のサンギタウンへと行こうとした。
だがふと誰かの足音が聞こえたため立ち止まり後ろを向いた。

「お前は……」
ラズリの足元にラピスのポカブが近づいて来た。
探していた人を見つけたのか嬉しそうにしていた。
その後すぐにラピスが息を切らしながら来たのだ。
鞄などを持っておりどこか旅へいくような姿をしている。
一体どうしたのだろうかと思い聞いてみたがラズリにとって予想もしていなかった答えが返ってきたのだ。

「どうした? もうこんな時間だ。危ないぞ」
「……私も……」
「?」
「私も行きます!」
「は……はぁ!?」
「さっきの話を聞いて……ラズリさんをほおっておけなくなったんです……!」
「馬鹿か! 危険なんだぞ! 付いて行くとしても……」
「危険だってわかっているです……! でも……でも! よくわからないんです……私……私! よくわからないですけれど! 貴方をどうしてもほおっておけないんです!
危険な目に遭うかもしれないのはわかっています!」

ラピス自身よくわからなかった。この先、危険な目に遭うのは多分きっと間違いない。
だがなぜかラピスはラズリのことをほおっていくことができなかった。

「……ううむ……そういうアレは……困る……本当に……本当に! 危険だぞ!」
「わかっています! 危険なのは! でも……貴方をほおっておけないんです!」

ラピスは自分の意見を述べてラズリをじっと見ている。
ラズリは真剣なラピスの顔を見て軽くため息を吐いた。
きっとこのまま追い返したとしても何度も追いかけてくるだろう。
そうなったら変な動きをしていると注目を浴びてしまう。

「どうしても付いて行きたいのか?」
「どうしてもです!」
「恐ろしい目に何度か遭うかもしれない。それでもか!?」
「それでもです!」

必死に声を上げてラピスはラズリに言った。
それを見てもう一度ラズリはため息を吐いた。
熱意などに押されてしまい根負けをしてしまったのだ。

「……わかった……」
「ラズリさん!?」
「そのかわり覚悟しておけ。この旅は決して楽なものじゃないと……それと私のことはさん付けはやめてくれ。普通にラズリと呼び捨てで構わん」
「わかりました。ラズリ……私、頑張ります!」

ビシっとやる気満々でラズリはラピスに言った。

「そういえばすぐに荷物とか持ってきたけれどどうしてだ?」
「え〜と……もともと冒険に出る予定だったんですが中々踏ん切りがつかなくて……」
「そうか」

喋っていると今度はラズリの背後からガサガサと音がなったのだ。
ふと後ろを向くとそこには二匹のポケモンがいた。

「この子達は確か……」
「ああ。間違いない。私がスナッチしリライブした二匹だ」

そこにはモグリューとチュリネの二匹がいたのだ。
周辺を見渡したのだが先ほどいた男の姿は見えなかった。
どうやらその男には完全に愛想を尽かしたのだろう。
二匹はラピスとラズリの二人を見て待っていたぞと言わんばかりに戦う態勢に入ったのだ。

「どうやら戦いたいみたいだな? 行くぞ!」
「は……はい! 頑張ります!」

互いにピカチュウとポカブを出し戦う準備を万端にして二匹に戦いを挑んだ。
タイプ相性を考えるとこちらが不利なのだが互いに足りないところを補い何とか勝利を収めた。
その後、モグリューはラズリがチュリネはラピスがゲットし初めて最初のポケモン以外の手持ちを得ることができたのだ。

二匹を捕獲した後、ラピスはすぐにきずぐすりで回復させて二人は最初の目的地であるサンギシティまで歩いていくことにした。


未来から来たポケモントレーナー、ラズリ。
現代のポケモントレーナー、ラピス。
二人の旅はまだ始まったばかりだった。




亜白夜 ( 2020/11/14(土) 12:32 )