第一章
第一話 【ラピスとラズリ】
イッシュ地方、ヒオウギシティ。

自然豊かな場所であり人々やポケモンが助け合い仲良く暮らしている場所だ。
そこから少しばかり離れた草むらにて野生のポケモンに戦いを挑もうとしている少女がいた。

(……う……やっぱり怖いな……)


長い紺色の髪。瞳の色は黒い。上は半そでの緑色の服。下は膝まである白いスカート。
少女の名前はラピス。
ヒオウギシティに住んでいる至って普通の少女だ。

野生のミネズミがこちらを見ている。
いつでも戦ってやるぞと戦う気満々だ。

(でも……私だって……)

手にポケモン図鑑を持ち相手の情報を見た。ミネズミここらへんでよく見かけるポケモンだ。
そしてポケットからモンスターボールを取り出しポケモンを繰り出した。
中からはポカブが出てきて相手と戦う気満々で出てきた。

「ポカブ! ひのこ!」

すぐにポカブに命令をしてミネズミにひのこをぶつけた。
少しずつだが体力は減っている。
そしてここでだモンスターボールを構えて捕獲をしようとした。

だが投げたモンスターボールは全く違うところへと行ってしまった。
どうやら彼女はあまり運動神経はいいとは言えないらしく何かを投げた場合どこかへと行ってしまうという欠点があった。
別のところへ言ってしまったモンスターボールを取りに行き再び構えたのだがその間にミネズミは逃げ出してしまい捕獲は失敗してしまった。
その場に座りこみ深くため息を吐いた。


(……また失敗しちゃった……)

数日前のことだ。家の人の知り合いでポケモン図鑑と初めてポケモンをもらった。
最初は嬉しい気持ちでいっぱいだったが今は家から少し離れたところで捕獲やポケモンバトルの練習をしているのだが結果はあまりいいとは言えなかった。
特に捕獲だ。自分自身あまり何か物を投げたりするのが得意とは言い切れずどこか別のところへと行ってしまったりなってしまうのだ。

心配そうにポカブが近寄ってきたのを見てそっとポカブの頭を撫ぜた。
大丈夫だよと言いもう一度チャレンジをしようとしたとの時だ。
自分がいる草むらから少し離れた木々が多くある場所。
そこが急に光りだしたのだ。

「な……何!? って……ポカブ! 待って!」

ポカブは急にその光りだしたところへと走って行ってしまった。
一体どうしたのだろうかと思いラピスも走って後を追った。
もしかすると見たこともないポケモンが現れたのかもしれない。
自分でも捕まえられそうなポケモンだったらいいがもしそうではなかったらどうしようかという気持ちもあった。

(待って……待ってぇええ……!)

自分の手持ちに体力で負けている。こんなのを他の人に見られたくない。
ぜいぜいと息を切らしながらその急に光出したところへとたどり着いた。
狂暴なポケモンがもしいたら殺されるかもしれないと木に隠れながら様子を見ていた。

ポカブは光っているところをじっと見ており目が慣れてきたのかラピスもその光っているところを見ていた。
光が収まるとそこには一人の少女がドサっと地面に落ちてきたのだ。

(人!?)

長いズボンと無地のシャツ、上にはカーディガンを羽織っており何より自分と同じ髪の色をした少女が目の前に現れたのだ。
近くには持ち物もあり一緒に飛ばされてきた。
鞄から荷物が少しだけこぼれていたためそれを見てみるとそこにはラズリと書いてあった。

(ラズリ……この子の名前なのかな?)
ラピスは近くにあった木の棒を拾うと恐る恐るラズリの頬をつついた。
ポケモンが化けているわけではない完全に気を失っている状態だ。

(それより! ど……どうしよう……!)

周辺には誰もいなかった。ここらへんは人通りは少ないほうだ。
慌てふためいたがどうしようか必死に考えた。
そして出た答えはとりあえずほおっておくわけにはいかないと思い家まで連れていくことにした。

(お……重いぃぃぃ!!!)

鞄とラズリと一気に担いだためラピス一人だとかなり苦しかった。
ポカブがもし進化していたら鞄ぐらいなら持てるかもしれなかったがまだひのこをやっと覚えたぐらいだ。
進化への道のりはまだまだ険しそうだ。










「……ぅ……?」

ラズリが目を覚ますと見慣れない部屋のベッドで眠っていた。
周囲を見渡すといかにも女の子の部屋といえるようなところでだ。

(こ……ここは?)
落ち着いて思い出していった。
確かセレビィの力でジオと共に過去に飛ばされたはずだ。
自分の荷物が入った鞄はベッドの近くにあった。
それと自分の身体にある変化があったのだ。

(……なんだこの服は)
見慣れない服を着せられていた。プリンというポケモンがプリントされていた。
ピンク色のパジャマだ。今までこんな服を着たことがなかったためやや恥ずかしさがある。
ということは自分の服は一体どこへ行ったのだろうか? と考えていたその時だった。

「あ……」
「っ!?」

部屋に入ってきたラピスを見て思いっきりビックリしラズリは自分の鞄を持って部屋の窓までジリジリと逃げた。
それを見てラピスは驚いて話しかけてきたのだ。

「もう起きても大丈夫ですか!? 貴方は町の近くで倒れていたんですよ!」
「町の近く……? ここは……?」
「ここはイッシュ地方のヒオウギシティです。数時間前に光の中からあなたが出てきてそれで周りに誰もいなかったから私が家まで運んできたんです」
「……光……?」
「……私の名前はラピスって言います。あなたは?」
(ラ……ラピス……?)

ふとラズリは考えが止まった。どこかで聞いたことがあると思ったのだ。
だがラピスが声をすぐにかけたためその考えはどこかへ飛んで行った。

「大丈夫ですか!? まだどこか具合が悪かったら……」
「だ……大丈夫だ。私の名前はラズリだ。助けてくれてありがとうな」
「ラズリさんはそのどうしてあんなところで気を失っていたんですか?」
「そ……それが……」

多分言ったところで変な奴だとしか思われないだろう。
セレビィというポケモンの力を借りて未来から来たと言っても多分信じてくれない。
どうすればいいか少し間が空いてしまった。

「もしかして……」
「……な……なんだ?」
「記憶が混乱しているとかですか?」
「ま……まあおおむねそんな感じだ……」

ラピスが変な勘違いをしたため何とか誤魔化すことができた。
とりあえずこの場はしのげたためまあヨシとしよう。
そしてふと部屋に飾られているカレンダーを見た。
そこには××××年〇月〇日と書かれていた。

「なあ少しいいか? あれはあっているんだろうな?」
「あれって……カレンダーですか? はいそうですよ」

それを聞いてラズリはほっとした。もしかして失敗してしまったのではないかと思っていたが今は××××年〇月〇日だ。
過去へ飛ぶことが出来た。それを確信できただけでも十分だったがふと気になることがあった。
一緒に過去へ飛んだはずのジオがどこにもいなかったのだ。
どこか別のところで寝ているのだろうかと思っていたが実際は違っていた。

「……もう一人いなかったか? 金髪の男がいたはずなんだが……」
「……あなたしかいなかったですよ?」
「っ……そうか……」

それを聞いてもしかすると過去へ飛ぶことができたのは自分だけでジオは失敗してしまったかもしれなかった。
となると一人だけということになる。
だが落ち込んでいても仕方ないと思っていたがふとラズリのお腹から大きな音が聞こえたのだ。
そういえば何も食べていなかった。セレビィの力で過去へ行く前に食事をしようかと思っていたがダークポケモンの襲来で急いで過去へ飛んできたのだ。
当然何も食べていなかった。

「あの……お母さんがおやつを作っているのでもしよかったら食べませんか?」
「……頼む……」

空腹の前には何も逆らえなかった。何か食べたほうがいいと思いラズリはラピスの後ろを付いて行った。

「それと貴方の服なんですがあまりにも泥だらけだったので洗濯しましたよ。今乾かしているところです」
「そうだったのか?」
「……それと身体は傷だらけでしたね……」
「わ……我の身体を……み……見たのか?」
「ご……ごめんなさい……特に背中の傷が……」

なんとも言えない空気が流れてしまった。
初対面の人に傷だらけの身体を見られるのはあまり好きではなかった。
助けるためだったためこれ以上ラズリはラピスに対して何も言わなかった。






二階のラピスの部屋から出て一階へと行くとラピスの母親らしき人物がパンケーキを作ってくれていた。
ラズリが起きたのを見て目が覚めてよかったと言ってくれた。
いきなり気を失ったラズリを連れてきたためビックリしたとのことだ。

それと未来でもらったピカチュウはすでにモンスターボールから出てラピスのポカブと一緒に遊んでいた。
この辺りでピカチュウがいるのは非常に珍しいことだ。
単身赴任をしているラピスの父親が写真で見せてくれた事があったため実物は見たことがなかったらしい。

「お腹すいたでしょ? これでも食べて元気出して……ね?」
「っ……なんだこれは……」
「パンケーキですよ?」
「……そ……そうか……」

椅子に座り机に置いてあるものをラズリはじっと見ていた。
パンケーキ。未来では見たことがなかったものだ。
甘い物といえばモモンの実を食べるぐらいしかなかったためいきなり目の前に出されて困惑するしかなかった。

(ふんわりしていそうだ。だが本当に大丈夫なのかこれは……)

チラっとラピスを見ていると美味しそうに食べている。
どうやら食べても大丈夫そうだ。
恐る恐るフォークとナイフで器用に切り分け口へと運んだ。

(こ……これは……!)

目を輝せながらラズリはパンケーキを次々に食べていった。
ホットケーキ自体は程よい甘さであり更に上にかかってあるシロップが合わさり更においしさが増している。
隣にあった紅茶も少し飲み再びパンケーキを口に運んだ。
それを見てラピスとラピスの母親は少しばかり驚いていた。
よく食べると思いラピスの母親はもう少し生地があるから焼いてあげると言いラズリはありがとうと目を輝かせながら食べていた。

「美味しかったですか?」
「ああ……こんなおいしい物……初めてだ……」
「は……初めて!?」
「我はこんなの見たことなかったからな。だけれどこれは旨いぞ!」

本当にどこから来たのだろうかとラピスは疑問に思っていた。
全ての生地を焼き終えそれをラズリは食べると満足そうな表情になった。


■筆者メッセージ

書いていたのですが少し長くなりそうだったのでわけました。
ん〜久しぶりに書くとやはり色々と難しいな……。
亜白夜 ( 2020/10/31(土) 23:47 )