第一章
第六話 【濡れ衣】



周りを見渡しアレス以外に誰もいないことを確認してから改めてジオは喋ることにした。
自分はこの時代の人間ではないことをそして未来では何が起こっているのかを。

「まあ信じるも信じないも勝手だ。俺は……この時代の人間じゃない。未来から来た」
「み……未来……? どこかの町の名前なのかな?」
「違う。文字通り未来だ。未来の世界から過去へ行ける能力を持ったポケモンの力を借りてこの時代に来た」
「……過去へ行ける……」
「そうだ」
「ねぇ……ちょっといいかな?」

若干アレスは信じられないような表情をしていたがふと気になった事があったのだろうか。
ジオは答えられそうなことだけは言おうとした。

「その過去に行ける力を持ったポケモンって……もしかして……セレビィのこと!?」
「あ……ああ……そうだぞ」
「セレビィ……本に書いてあったけどジョウトのある森に生息しているまさに奇跡的な存在! 伝説と呼ぶにふさわしいポケモン!
妖精みたいな姿で滅多というか本にしか書いてないから存在を忘れられつつあったけど遠くにいたトレーナーが偶然見つけることができて
存在が立証されたっていうあのセレビィ!?」
「や……やけに詳しいな」
「伝説のポケモンをいつか見てみたいんだ! だからさ本に描いてある伝説のポケモンをいつでも見れるように全部スケッチしてあるんだよ! ほら!」

アレスはそういうと自分がスケッチしてある伝説のポケモンの絵を見せてきたのだ。
セレビィだけではない、この地方の伝説のポケモンや他の地方の伝説のポケモンも見せてきた。
ここからものすごく離れた地方では未だに未発見のポケモンもいるみたいだ。
ジオも話の続きをしようと思ったがアレスは目を輝せて喋っているため話を中断しようにもできなかった。

「僕は伝説のポケモンをこの目で見て本当にいるということを証明する事が夢なんだ!
そしていずれ……ポケモン博士になってみる!」
「そりゃあいい夢だな。それより……話の続き。いいか?」
「え……あ! ご……ごめん! つい……夢とか語るとうるさいってよく言われているんだ……何とか癖を治そうと思っているんだけどね……」

ジオは嬉しそうに語っているアレスを見て別にいい癖なら治さなくてもいいだろうと思っていた。
落ち着いたアレスを見てジオは話をすることにした。

「さっきあいつの手持ちを奪ったわけなんだが……こいつらは普通のポケモンとは違う。ダークポケモンと言って遠い地方の技術を使ってポケモンを戦闘マシンにされたポケモンだ」
「ダークポケモン?」
「まあ戦闘用に特化してある心を壊されたポケモンっていえばいいか?」
「それが……さっきの?」
「ああ。多分さっき逃げた奴はそれを使って悪さをしている組織の下っ端かまたは何も知らないチンピラか……多分どっちかだな。
そしてダークポケモンを増やすためにさっきの老人のポケモンを奪ったって訳だ」
「じゃあつまりポケモンで悪いことをするための?」
「ああ。そして俺はそのダークポケモンから唯一普通のポケモンに戻せる能力を持っている」

アレスの様子をジオが見てみると半信半疑と言えばいいだろう。
信じているようなところもあれば疑っているところもある。
とはいえ不安にさせるようなことを言ってしまえば駄目だ。

「とりあえず喋れることと言えばこんな感じだな」
「……ねえちょっといいかな?」
「どうした?」
「君が来た……未来ってどうなっているの?」
「……聞きたいのか……?」

深刻そうな表情でジオはアレスに言った。
世界が滅びかけていると言えばきっと驚くどころではすまないだろう。
だがそんなジオの様子を見てアレスは聞いてはいけないことだったのかと思い聞くのはやめておくと言った。


「とりあえず今のところ喋れるのはこのくらいだな。そろそろあの爺さんの所に戻ってこのポケモンを返そうぜ」
「う……うん。そうだね」

気が付けば結構時間が経っていた。さすがにこれ以上はマズいと思い急いで二人は先ほどポケモンを奪われてしまった老人の所へと急いで戻ることにした。





カラクサシティへと戻ると先ほどいた老人がいておりジオとアレスの二人を見つけると近づいてきたのだ。
奪われたポケモンを戻すと嬉しそうな表情を浮かべて何度もお礼を言った。

「いやはや。どうもありがとうございますじゃ……私の大切なポケモンを……」
「気にするなよ。お互い様だよ困ったときは」
「よかったですね。おじいさん」
「なんとお礼を言ったらよいか……」

何度も頭を下げて礼を言ったのだがふと老人がジオの首元をじっと見たのだ。
その視線はじっとジオが首にかけていた首飾りを見ていたのだがいきなり真剣な表情に変わった。

「それをどこで手に入れなさった?」
「それってこの首飾りのことか?」
「……その首飾りこそ……ここカラクサシティにある私が長年仕えていたシェルバーナ家の血縁者である証拠のもの……もしやお主!
屋敷に火をつけた放火魔か!?」
「は……はぁ!? 落ち着けよ爺さんこれは……」
「ならなぜそれを持っておる!? それはシェルバーナ家に仕える人間やはたまたその親族の方にしか知らぬもの!」
「ちょっと待て! 俺はだな……」
「ええい! 言い訳無用! 放火魔めが……突き出してくれるわ!」



そう、それが数時間前にあった出来事であった。
あの老人は完全にジオとアレスの二人を放火魔と勘違いし町にいる面々に言って二人を捕まえようとしたのだ。
当然身に覚えのない罪のため逃げるしかなかった。

「それにしても……なんて日なの今日は……僕は何も悪いことは……」
「こうなったらあのジジイに直接文句でも言うか。俺はともかく全く無実のお前まで巻き込まれたのが気に入らねえ」
「……でももう手遅れかもしれないし……」
「だよなぁ……あの態度からすると聞いてくれないって感じだしな……」


人が少なくなったのを見てジオとアレスの二人は草むらから出て来た。
これから先どうするかアレスの家に戻るかと思ったのだが多分家までの通路はふさがれているかもしれない。
帰ろうにも帰れなくなったのだ。

「一つだけ解決する方法がある」
「な……何?」
「放火魔を捕まえて突き出す作戦だ。俺達で真犯人を見つけてあのジジイの所に突き出す。そして濡れ衣は晴れるし合法的にあのジジイを数発殴れる」
「いい案かもしれないけど暴力はやめようよ……」
「まあとにかく放火魔を突き出す作戦だ。それで行くぞ」

ジオの案に対してアレスは反対しなかった。
暴力的なのはともかくあの人はあの屋敷に長年仕えていた人で仕事に対して誇りを持っていたのだろう。
それを素知らぬ人物に全て壊されたとなるとかなりショックなのは間違いない。
見つからないようにカラクサシティから別の所を通りアレスとジオは先に進むことにした。

大変な旅が始まろうとしていた。



亜白夜 ( 2021/01/01(金) 14:31 )