ココアとミルク。 - 2人のイーブイ。
寄り道
翌日、いつも通りの学舎の机に座りながら僕は幼いころのミルクとの写真を眺める。

「お?これミルクとココアの写真?」

「えっ?あ、うん…。」

僕の近くで顔を出すシュガー。
いつも突然驚かすように出てくるからちょっと心臓に悪いかな。

「へぇー。ココアはともかく、やっぱりミルクだいぶ変わったよな。まじで美人って言うかさ。」

ニヤニヤしながらミルクの写真を眺めるシュガー。
別に悪い訳じゃないけどなんか嫌な気持ちになった僕は写真を見られないように伏せる。

「おいおいー。減るもんじゃないんだし冷たいな…。おっ?噂をすればミルクじゃん?こっちみてね?」

教室の外を見ると確かにミルクがいた。
移動中だったのか教室を横切る最中でミルクはこちらを見ながら歩いていた。

シュガーの声に僕はパッと顔をあげるとミルクと目が合う。
それと同時に微笑むと小さく手を振りそのまま教室を横切ってしまう。
さっきまで写真を眺めていたからわかりやすいが確かに可愛くなった。間違いなく。それもより女性に近づいたような感じだった。

「おいおい、またミルクがココアのほうをみて笑ってなかったか?いいなーいいなー。」

ブーイングを飛ばすシュガー。でも正直あまり聞こえてなかった。
それよりもなんかボーッとする。なんだろう…。

それからというもの、ミルクの姿を見るたびに僕は何とも言えない気持ちになるようになった。

☆☆☆☆☆☆☆☆

「ココア、今日一緒に帰りまょ?」

あれからまた1週間ほど経ったころ、ミルクから誘いがある。

「いいよ、またあとで。」

いつもの約束。いつもの集合だったが僕の心はいつもと違った。

「そしたら〜〜〜でね。こんなことが〜〜〜。……ココア?どうかした?」

「えっ!?あ、ううん!なんでもない!」

僕は無意識のうちにミルクをじっと見つめていたみたい。
いつもなら相づちを打つ僕がなにも言わなくてただジッと自分の顔を見られたら誰でも気になる。

「…そう?あ、そうそう。さっきの続きでね?」

またミルクは話を続ける。

近くで見ると改めてミルクのことが可愛いと感じるようになった。毛並みや細かい仕草などなど。

「……。」

「……。あっ、ごめん……。」

また無意識のうちにミルクを見つめてた。
ミルクは会話を止め、仕返しとばかりに僕のほうを見つめ返すまで僕は気づかなかった。

「別に良いけど…。」

さらりと返事をするミルク。

僕…今日ミルクのこと見すぎかな…。

しばらく会話に詰まりながらもミルクは先ほどの会話を始める。

僕はいつもと変わらず会話に対して相づちを打っているといつもの別れ道である森樹の前に着く。

「あ、もう着いちゃったわね。じゃあココア、またね。」

そういうとミルクは手を振りながら僕の家とは逆の方へ歩いていく。

いつもと変わらない別れだったけど何故か僕の心にはいつもにはない感情があった。

できたらもう少し一緒にいられないかな…。そう思ってしまう。いつもならそこまで思わないけど…。

『デート』

ふと、僕の頭にシュガーが言っていた単語を思い出す。

ちょっと響きは恥ずかしい…。だって本当にそんな間柄じゃないし、意識したことなんて…。

でも今はそれが一番都合よく自分のモヤモヤを晴らしてくれた気がした。

「あのさ!」

「ん?どうかしたの?」

手を振り背を向けいつもどおり森樹から離れ始めたミルクの足を止める為とっさに声をかけた。

呼び止められたミルクは足を止めて僕の方を振り向いた。

「えっと…。ちょっと寄り道しない?」

「寄り道?どこへ?」

ミルクは僕の方へ足を進め少しずつ近づいてくる。

「んと…どっかミルクの行きたいところない?森の外れとか…。」

普通に会話ができる距離まで戻ってきたミルク。
腕を組み考え始める。

「森の外れ…?あっ!そしたら新しくできたクレープ屋さん行きたいかしら。」

「そこいかない?僕も何と無く行きたいし…。」

「いいわよ!行きましょ!」

いつもの会話なのにちょっと意識しちゃうとうまく話せない…そんな気がした。

それでもミルクはいつもと変わらない様子でニコニコしながら尻尾を大きく振り僕の誘いに乗ってくれる。

「じゃあ街はあっちのほうね。行きましょ?」

ミルクは学舎の逆を指差すと歩き始める。

良かった、断られたらちょっと自信失くしちゃってたかも…。

「でも珍しいわね。ココアが寄り道しよう、なんて誘ってくれるの。」

少し歩いたところでふいにミルクから質問がくる。

「そうかな…?たまにはさ!ちょっと寄り道したいなって思っただけで。」

「そう?まあ、私も気になってたお店行けるのは嬉しいからいいんだけど。」

いや…本当に珍しいと思う。僕のほうからミルクに誘いをいれるのはあんまりなかったから…。

そんな僕の誘いに快く乗ってくれて今では僕の少し先でスキップを踏んでる。

☆☆☆☆☆☆☆☆

街へはそんなに離れてない。
ほんの数キロ歩くと拓けた街へと出る。僕らは田舎暮らしの為森から街へ出る距離は軽い運動気分で往復する。

一人なら軽い運動だけど今はミルクがいる。
元々、体を動かすのが好きなミルクはこの距離は人間でいうコンビニへ行くくらいの距離だと言っていた。

「あった!あのお店!」

尻尾を振りながら指差したお店へかけていくミルク。僕もそのあとを追ってついていく。

「なに食べようかしら…♪」

ミルクはショーケースに入った食品サンプルに顔を押しつけながら尻尾を振る。

そう言えばミルクって甘いものが大好きだったっけ…。僕も好きだけど…。

「迷うわね…。ココアは決まった?」

「うーん…。僕はこのイチゴのショートケーキ味にしようかな。」

「あっ!いいわね!じゃあ私はチョコケーキ味にするわ!」

ニコーっと笑うとミルクはカバンから財布を取り出す。

「おじちゃん!イチゴのショートケーキとチョコケーキのクレープひとつずつちょうだい!」

僕たちはそれぞれの料金を支払うとおじさんがクレープを用意し始める。

そうそう、僕たちの街では人もポケモンも共生してる。だから割と人間のものでも手に入れることができる。

正直僕はあんまり人間が好きじゃないけど…。ミルクは気にしないみたい。でも気にしないのが最近では普通みたいだけど…。

しばらくするとお互いのクレープが出来上がりぼくらの手に届く。

「いただきまーす♪…おいしー♪」

ミルクは勢いよくクレープにかぶり付くと口一杯にクリームを付けながらぴょんぴょん跳ね味に喜ぶ。

でも確かに美味しい…。木の実とかじゃ味わえない味だった。

僕はゆっくりクレープの味を楽しんでいるとミルクのクレープが僕の顔に近くに来ていた。

「ココア!シェアしよ!私の一口あげるからココアのも一口ちょうだい!」

そうか、だからさっき僕がショートケーキ味にすると言った時にあんなに喜んでいたのか。

でも一口って言っても…。間接キスなんじゃ…。

「はいっ♪」

あんまり気にしてないみたい…。僕だけかな…。恥ずかしい…。

「美味しい…。じゃあミルクも。」

本当においしかった。僕のとはまた違う味。でもちょっと味が強め?ショートケーキだと負けちゃう感じ。

次は僕のショートケーキ味をミルクに近づける。

『ばくっ!』

ミルクは大きく口を開き、とても女の子とは思えない一口で僕のクレープを食べ始めた。

「あっ!ちょっ!」

「…きゃーっ!おいしい♪」

またぴょんぴょん跳ねながら歓喜するミルク。
僕はあまりに驚き叫んじゃうくらいだったのに…。

☆☆☆☆☆☆☆☆

結局あのあと隙を見せてはミルクに一方的に食べられ続けた。

そのぶんミルクも一口くれたが割合的にはほとんどミルクが食べたようなかんじだった。

そのあとは街を少し散策し、今は暗くなる前に森樹の近くまで帰ってきていた。

「ねえココア?まだクレープの件怒ってるの?」

「怒ってないけどさぁ…。」

別に怒ってるわけじゃない…。でもあの一口は反則だったと思う。だって一口じゃないもん。もっとあったと思う。

「またそのうち別の形で返すわよ?だから許して?」

悪かったと思っているのか、そうでもないのかわからないけど…。まあいいや。

「いいけどさ…。またどっか行こう?」

「え?うん…。また行きましょ…。」

僕自身楽しかったのか…。またこんなかんじで出かけたい、そう思う。
ミルクは次の誘いにさっきまでの元気さとは逆にしおらしい反応を見せる。ミルクってたまに女の子らしい反応する…。女の子なんだけどさ。

「……。楽しかったわね。今日。なんか、デートみたいで……。」

「えっ、う、うん…。」

突然ミルクの口からデートという単語が聞こえた。ミルクも意識してたのかな…。
僕の心臓がドキドキしだした。

「なんてね!」

ミルクはクスクス笑うと軽く走り出す。

「食べたぶん、運動しないと!森樹までかけっこ!よーいどん!」

「あ!待って!」

また笑うと僕をどんどん引き雛していく。僕も走り出すもののやっぱりミルクは早かった。

■筆者メッセージ
順調に物語かけてる気がします〜良かった良かった
しゃち ( 2020/02/19(水) 01:05 )