週1の決まりごと。
「ねえココア!今日一緒に帰ろ?」
「うん、いいよ。ちょっと待ってて。」
今日の学舎での授業も終わり帰る時間。週に一度だが僕らは一緒に下校する。基本的に誘ってくれるのはミルクからで僕は誘われた時に帰る…というかんじ。
特別に決められた習慣はなくお互いの都合が良いときってかんじかな?
カバンを背負って教室の窓から顔を出して元気よく誘ってくるミルク。僕は約束をすると嬉しそうに尻尾を振る。
「じゃあ先に外で待ってるわね。またあとで!」
パタパタと手と尻尾を振ると外へと向かうミルク。僕もミルクを待たせないよう荷物をカバンに詰めていく。
忘れ物はないかな…大丈夫かな…。
「いいよなー。ココアはさー。」
シュガーが僕の隣のイスを僕の机にくっつけるとそのまま机に顔を伏せてくる。
「え、なにが?」
僕はカバンに荷物を詰めるのを中断しシュガーに話しかける。
「ミルクと帰れてだよ。いいよなぁ。やっぱり幼なじみの特権なのかなんなのか…。」
ブフーっと息を吐くシュガー。
彼は本当に可愛い女の子が絡むとこんなかんじだ。でも正直守備範囲が広すぎてどこまでが嫉妬対象なのかわからない…。
「でもホントただ帰るだし…。それこそ僕とシュガーが話すような会話だし、ほとんどミルクが喋ってて森樹の前でバイバイだし…。」
僕がそう言うとシュガーは机に顔を伏せたまま指だけ僕の方へ向けるとチッチッチッと左右に指を振ると顔を勢いよくあげ目を輝かせる。
「わかってないなー、ココアくんは。それって簡単に言えばデートだろ?デート!その特権、どんだけの奴等が求めてるか。羨ましい限りってことさ。」
「う、うーん…。デート…。あんまり考えたことないんだけど…。」
頭をポリポリかきながら僕は応える。
デートなのかな…。でもデートって恋人同士がするもののような気もするし…。
「そもそも男女で二人っきりなのがデートみたいなもんだろ?たまには森の外れにある街へ出かけるのもありじゃないか?さりげなくそんな約束取り付けるとかさ?」
グイッと身を乗り出して僕の肩を軽く叩くシュガー。
「ホントにそういうの考えたことないし恥ずかしい…。ミルク待たせてるし僕はもう行くよ?また明日ー。」
僕としてはホントに男女の仲というのは考えたことがない。特にミルクとは…。
荷物を詰め込み終えると逃げるようにシュガーを置いて教室を出ていく。
シュガーのことは大事な友達だけど色恋沙汰になると本当にうるさい。
逃げるように教室から出たのは事実だけど、ミルクを待たせてるのも事実だ。僕はそのままいつもミルクが待ってる門の近くへ向かう。
いたいた。いつものように門の柵にもたれるように立ち尽くしチラチラと僕が来るのを確認している。
「ごめんね、おまたせ。」
「平気平気!帰りましょ?」
僕は駆けながらミルクに声をかける。
ミルクはまた手と尻尾を振りながら笑顔を振りまく。
僕らの帰り道は森樹までは基本的に同じだ。だからそれまではお互い会話を楽しむかんじ。
「ねえココア。今日〜〜〜なことがあってね。そしたら〜〜〜でね。ホントに〜〜〜でもう面白くて〜〜〜。」
でもさっきシュガーに話したように基本はミルクが一方的に喋ることが多いかな…。
今日もミルクは楽しそうに1日あったことをペラペラと喋りつづける。
僕はそれに対して反応したり相づちを打ったりして聞き手に回る。ミルクからは聞き上手と褒められるけどミルクは話上手だと思う。
いつもと変わらない帰り道と会話だった。
でもふと、さっきシュガーが言っていたことが頭をよぎる。ミルクの見た目の変化について。
僕は会話の途中でチラチラとミルクの方を見る。確かに変化があるような…、そうでもないような…。
そうこうしているうちに森樹に到着する。僕らの家は森樹を隔てて逆方向だからいつもはここでバイバイだ。
「じゃあまた明日ね!」
「また明日ー。」
一通り会話をした僕らはお互いに手を振りあい家へと帰る。
☆☆☆☆☆☆☆☆
いつもはあまり気にしないがどうしてもミルクの変化が気になる。
普段ならそこまでだが、僕はミルクとバイバイしたあと少し早歩きで家に戻りミルクと泥だらけになって遊んだ幼いころの写真を見つける。
「……。確かに可愛くなったような……。」
僕は無意識に素直な感想を口にしていた。
ハッと思うものの最近のミルクを見る限り変化は大きい気がした。
またジーっと写真を見つめる僕。しばらく持ち歩こうかな…。
僕は写真をカバンに忍ばせた。