2人の友達。
僕たちが出会って何年か経った。10歳を超えた辺りから僕たちは自由に学舎に通うようになる。
詳しいことはよくわからないけど、人間で言うところの「がっこう」と言う所に似てるらしい。
そこでは僕たち子供のポケモンと、先生と言われる大人のポケモンがいて色々なことを教えてくれる。
もし、将来的に人間や他のポケモンの役に立ちたいと思う場合はこの学舎を出たあとに専門的なところで学ぶらしいけど…。僕はよく知らない。
とりあえず基本的に義務として僕らが通うこの学舎では生きるために必要なことを学ぶ。
僕ら野生のポケモンは基本的に狩りをしたり、果物を採ったり作物を育てたりする。
また物を売るときに使う通貨があるんだけど、それの計算をしたり本当に生きる上で必要なことを約6〜8年ほど学ぶ。わりと…長いよね。でもそれほど学ぶのって大変だし、生きるのは大変だから…。
通う義務はあるけど、10歳から通う子もいればもう少ししてから通う子もいる。本当に自由だ。
僕も通わなきゃと思いながら悩んでたらミルクに叱られて数年前から通いだした。ちなみにミルクとは同じ学年。クラスは違うけど…。
そうそう、この学舎で通うようになってミルク以外にも友達が出来た。嬉しいことだよね。
あとは…やたら他のメスのポケモンから声をかけられる。嬉しいけど…やっぱり緊張する。
ちなみにミルクとはあんまり緊張しない。長く居すぎたからかな?
今でもよく遊ぶ。学舎の帰りは時々一緒に帰るくらいだけど…。森樹からはお互い家が反対だしね。
そんな日々を数年送り、ここを去るのもあと1年ちょっとの頃だった。
「なあ、ココア。最近のミルクなんだけど…やたら可愛さ増してないか?」
休み時間、ボーッとしていたら突然肩を掴まれ耳元で呟かれる。
「え?な、なにが?」
ボーッとしているときは本当にボーッとしているから急に何か言われても頭に入らない。
僕は驚きながらも肩を掴んできた同じ種族のイーブイ、シュガーに問う。
「いや、だから…ミルクだよ!ミルク!去年辺りから異変はあったけど、ここ最近やたら可愛さが増してると言うか、日に日にキラキラしてないか?」
シュガーは学舎に通ってから出来た最初の友達だ。まだ幼いころはここまでじゃなかったのにここ数年やたら他の女の子が気になるらしく、変なランキングを作ったり可愛いと思う子の話ばかりしてくる。
それはそうと、シュガーは僕の顔を両手で掴み直すとミルクがいる方へ向きを変えてくる。
首ちょっと痛い…。でもおかけで今のシュガーの一押しであるミルクを確認できた。
「えー……?」
はっきり言ってよく会ってるからそこまで違和感は気づかないと言うか…。僕は否定するようなトーンで返す。
「いや、よく見ろって!昔を思い出せ!最近毛並みもやたらキレイじゃないか?目もキラキラしてるっていうか!」
「う、うーん…。まあ言われてみれば…。」
僕は出会った頃のミルクを思い出す。そこから徐々に新しい記憶にしていくと…まあ確かにそんな気はする。昔はもっとボサボサとした毛並みだったような…。最近だと、女の子らしくなったというか。
シュガーに言われるまであまり意識はしたこと無かったが言われてみれば確かに変わった気がした。
「でも…ミルクはミルクだし。」
「なんだよー。やっぱ幼なじみの言うことは違うなぁ…。」
なんて会話をしながら2人でミルクを眺めていたら彼女はこっちに気づいた。
尻尾を揺すりながら小さく手を振ってくる。
「おっ!手振ってくれてる!」
シュガーは嬉しそうに手を大袈裟に振る。
そんなに大袈裟に振らなくても良いのに…。
とりあえず僕もミルクに手を振る。
すると、更にパッと顔が明るくなり尻尾と手を激しく振るミルク。
「なんだよー。やっぱココアだけは特別なんだよなぁ。」
残念そうに僕の胸に顔を埋めてくるシュガー。男同士で気持ち悪いからやめてほしいな…。
でも…ミルクはいつも僕に対して人一倍明るく接してくれる。その度に僕もちょっと嬉しいし何か安心する。
お互い手を振っていると、さっきまでミルクと話していたメスのイーブイ、シロップが僕の方をジーっと見つめていた。
シロップはミルクと仲良しでいつも一緒にいる。特徴というと…はっきり言えば、かなりロリっぽい…かな?
同い年なのに凄く年下に見えるし、おまけに常に丁寧語だからなおさら。でも、彼女も端正な顔立ちから人気がある。
僕はシロップの事に気づくと、彼女は慌ててミルクの後ろに隠れて影からこっそり手を振っていた。
そういえばシロップって人見知りだったっけ…?