2人の出会い。
僕は森で産まれ、森で育った。そして、確か春の終わりと夏の始まり、初夏の辺りだったと思う。ミルクと出会ったのは…。
僕は幼い頃、まだ全然友達もいなくて歳の近い子たちが輪になって遊ぶところに飛び込むのも億劫で人見知りするタイプだった。
基本的に森の子供たちは、森の中央に生えている森一番の大木、森樹(しんじゅ)の下に集まって遊ぶ。僕もほぼ毎日森樹に行くが人見知りするもんでいつも離れたところで1人遊びながら内心、羨ましいとか仲間にいれてほしいとか思いながら横目で見る日々だった。
今日も森樹に行こう…。もしかしたら友達できるかも。
そんな思いを胸に通う日々。でも友達なんて一向にできやしない。今日は早々に帰ろうかな…。なんて思ってた時だった。
「ねえ、私と一緒に遊ばない?」
誰?
僕は声のする方を見ると、とても綺麗…じゃなくてやたら泥だらけの言い方は悪いけど小汚いイーブイがいた。
でもよく見ると尻尾は普通のイーブイと比べて毛量が多いのかふわふわとして大きめで目もパッチリして綺麗で、笑うと八重歯がチラッと見えた。
僕はキョトンとした顔で、ちょっと小汚いイーブイを見ていると
「今ちょっと小汚いとか思ったわよね?」
さっきまでニコニコしていた顔が一変してムッとした表情に変わる。
「じゃあいいわよー。1人で遊ぶわ。ばいばい。」
プイッとそっぽを向き歩きだすイーブイ。僕は慌てて小汚いイーブイを止める。
「そ、そんなこと思ってないよ!ごめん!遊ぼう?」
ごめん、思ってた。もしかしてエスパー?
僕は小走りで先回りして行く手を阻むように止める。
「ふぅん…。まあいいわ。私はミルク!よろしくね。あなたは?」
目を細めて僕の顔をジロジロ見るとまたパッと明るい表情になり、自分の胸に手をドンと当てて自信ありげに自己紹介をする。
えっと…ミルクって女の子?
こんなこというと怒られそう…。黙っとこ…。
「あ…。僕はココア。よろしくね、ミルク…。」
お互いに簡単に自己紹介を済ませるとミルクはまた僕の顔をジーっと見てくる。
「どうかした?」
あまりに見つめられるからちょっと恥ずかしくなってきた。実際、ミルクは少し汚れているものの可愛い部類の子だと思う。しかも初めての友達だし、なおさら恥ずかしかった。
「あーうん。ココアって女の子みたいな顔してるわね。可愛い。」
「からかってる!?」
クスクスと笑いながら僕をからかい始めるミルク。初対面なのにこんなにはっきり言うのって普通なのかな…。
「ふふっ。ごめん、ごめん。ねえ、なにして遊ぶ?木登りでもする?見てて!」
そう言うと僕の返答も待たずに森樹をひょいひょいと登るミルク。一瞬で自分の何倍もある高さの枝によじ登ると小さく手を振っていた。
「え…すご…。」
僕はただポケーっと手を振るミルクを眺めるしかなかった。
それからというもの僕たちはほぼ毎日、森樹に集まっては遊んだ。
それでわかったことだが、ミルクはかなり活発な子で木登りや穴を掘ったり川に飛び込んだりで…。ちょっと小汚かった理由がわかった瞬間だった。