第1章 星が降ってきた日
02 第一流星 砂浜に降り立ったモノ
夕日…というにはまだ早い、徐々に黄金色に染まってきた光がさす交差点に、1匹のイーブイの少女が現れた。
このイーブイ、名前はミイナという。

「えーと…直進、トレジャータウン……左折、…海!やったわ、海についた!」

暫く標識を見ていた彼女だが、とある表記を発見し顔を輝かせる。

「よーし!いっくわよー!!」

そして、急いで交差点を左に曲がって坂道を下りていった。





海、ねぇ…。本で読んだくらいだから、実物見るの楽しみ!

…なんて考えながら森の中の坂を下って行くと、だんだんと視界が開けてきた。
さっきからごうごうって感じの音が聞こえるんだけど、これも海の音なのかな?

あ、なんか見えてきた…?

真っ青で綺麗…これが、海なのね…?!


「おお………って、わぷっ?!」


さらに数歩進んでみると、急に地面が砂になった。
もっと海の近くに行きたくて走り出そうとしていたあたしは、砂に足を取られて頭から地面に突っ込んでしまう。

「うぅ……痛くは無いんだけど…砂まみれになっちゃったよ〜」

うん、痛くは無いの。それはいい。だけど…
種族柄豊かな体毛がザラザラに。
ああもう!洗うの大変なんだからねっ!!


はぁ…気を取り直してっと。

取り敢えずもうちょっと「海」に近付いてみようかな。


「きゃっ?!あ、水??」

綺麗な青い水に惹かれて海のそばにやってきたあたしは、急に飛び出してきた海の一部に触れそうになる。

なんだか危険そうだから警戒してたけれど、ただの水っぽいし平気かな?

丁度喉が渇いててね…って、何?!変な味…やっぱり危険なのかなぁ、海って。

考え込んでいるところに、また海の一部がそばにやってきた。
水浴びは好きなんだけど、今砂まみれだからちょっと濡れるのは勘弁だよぉ……
うーん、残念ね…
でも、これと追いかけっこくらいなら…スリリングでいいんじゃない?
よーし…!




「ふぃーー…疲れたぁ」

暫くの間時間も忘れて波と追いかけっこをしていたあたしは、さすがに疲れを感じて座り込む。ホントは嫌だけど…今日はもう汚れてるからいいや。

バッグからオレンの実を取り出して齧りながら、改めてこの景色を堪能してみる。

「キレイね……」

さっきまで青っぽかった海だけど、今は夕日がうつっているのかオレンジ色に染まっている。

さっきのも良かったけど、こっちの海も好きだな、あたしは。

キラキラ輝く海。草むらにいつの間にか集まっていたクラブたちがはく泡を、陽光がぼんやり、ふんわりと下って浮き上がらせている。
本当に綺麗。


うーん…ずっと見ていたいんだけど、あいにくそろそろ今夜の宿を探さなくちゃいけないのかぁ。
家を出てから…どれくらい経ったのかな。みんなは元気にしてるのかしら。

もうっ!考えないって決めたんだもん!!
さて、さっきなんとかタウンってあったよね…誰か泊めてくれる人いるかなーっと……


あれ?


あれは、なんだろう…光る、星?いや…鳥?


不意にあたしは、雲間をぬうように飛ぶ不思議な物体を見つけた。
流れ星かとも思ったのだけれど、それなら曲がらないよね…
そして、
こっちに向かってくることもないよね。
心なしかこっちに向かってきてる気が…



「どうしよ……」


なんとなんと!その鳥?は、本当にあたしの方にどんどん近付いてきた。
そして、ついにあたしの前に降り立った。
間近で見ると、鳥というより…竜、みたいな感じがするけれど…

「あの、あなたは…あたしに何か、用事でも…?」

『───っ………』

取り敢えず問いかけるも、返答は無し。だけど頭の中に、少しの息遣いが響いた……気がした。
たったそれだけなのに、なぜだかその竜に敬意を感じたあたしは、思わず砂浜に身を伏せ、頭を下げた。

暫くそのままでいると、竜が少し浮き上がったのを感じた。
恐る恐る頭を上げてみると、竜は私の数歩分上空を、円を描くように飛んでいた。

(なにしてるんだろう?)

そう思った瞬間、竜が祈る様に両手を合わせるのが見えた。
そしてその手を開いた瞬間、

「?!」

あたしは驚いて後ずさった。だって、あたしの上に、奇妙に歪んだ穴があったんだもの…。
…まあ別に、吸い込まれるわけでもないみたいだけど。穴から知らない香りの風が吹いてきている。

急に、吹き出す風が強くなった。
飛ばされそうになったあたしは、慌てて更に身を伏せる。
イーブイにしては大きい方だけど、やっぱり軽いからなぁ…。

ふと竜が、叫び声をあげた。
それに呼応するかの様に、更に吹き出す風が強くなる。
あまりの風に、竜はあたしに悪意があるのではなどと考え始める。

…ちょっと恨みを込めて竜を睨んでみた。

否、“睨もうとした”。
正確には、“睨もうと上を見上げたらなんか異常な事態が起こっていた”!


穴が、白く光っていた。

だんだんと光を増していくそれに、今度は何故か胸の高鳴りを感じた。

なんだろう、こう……運命的な出会いが待っている気がして!!
…ま、ただの渦だけど。光ってるだけの。



「きゃあっ?!」

もう!なんなのーっ!!
本当に飛ばされるわよっ!

また風が強くなって、風圧に一瞬息ができなくなった。
み、耳が千切れるぅ………割と本気で!
なんて、考えた直後!

『───!』

風が、、
止んだ?

ビクビクしながら渦を見上げると、渦は既に消えてしまっていた。

その代わり、竜が何かを持っていた。
た、タマゴ…かしら??

「あの…」

問いかけようとすると、竜は超・至近距離まで近付いてきた。なんだろ?

『っ♪』

近付いてきた竜は、持っていたタマゴを満足そうにあたしの前に置いた。
結構大きい…

でも、なにがしたかったのかな?そう思ったあたしは、竜に話しかけようとしたんだけど…

「ねえ!これはなんなの?教え…あれ?」

竜は既に、あたしの前から消え去っていた。






■筆者メッセージ
1話目投稿です!
うう…うまく書けない……。
主人公は次のお話から出てきますよー…
ごめんね、もうちょっと待っててね…
やめて!ヒトは電撃浴びると死んじゃうから!ヒィッ!!スーパーマサラ人とは違うんですーっ!!ギャアアアアアア!!!!!

「早く出してちょ」

わ、わかりましたぁ……なるべく早く次上げるから…。

9/4、誤字、タイトルを修正
晴香 ( 2016/09/04(日) 15:16 )