独特の喫茶店
ギルドから約一分ほど街路を歩くと、インテレオンが通う喫茶店に辿り着いた。真っ黒な色をした建物に、紫色の炎の装飾が特徴の、アダルティックな印象を放つ雰囲気で、初めてここに入るには相当な勇気が必要になりそうだ。
「見た目は奇抜な感じですけど、常連さんも多くいる人気の喫茶店なんですよ」
そう言ってインテレオンは店のドアを開ける。入店を知らせる鐘がカランカランと鳴り、カウンターでエネココアを淹れてる最中の、店長のエンニュートが笑顔で挨拶する。
「いらっしゃい…って、レオンじゃないの!?最近顔見せないから心配してたのよ?」
「すまないなエレン。エージェントランクになってから、ここに来れる時間も潰れてしまったんだ。でも、今日はここで優雅な一時を過ごせそうだよ」
「それは良かったわ。アンタが窓側の席に座りながら、いつものノメルティーを啜る姿を見ないと、私の目の保養ができないのよ」
「フフッ、僕の姿なんかで目を養わなくても、君の瞳はいつも綺麗だよ。
注文はノメルティーとモモンケーキ。この子にはミックスオレを頼むよ」
インテレオンが注文を終えると、エンニュートがカウンターから体を乗り出して、リカルドをチラッと見る。
「あら、随分と可愛いボウヤを連れてるのね…。レオン、アンタもやることちゃんとやってるのね、フフフ」
「…何でそうなるんですか、勘違いしないで下さい。彼は私の子供じゃありません。私の新しい部下であり、期待の新人君ですよ」
「へえーこの子がアンタの部下ねぇ…。今まで仕事一筋だったのに、部下の育成とかちゃんとできるの?」
「フフッ、何事も挑戦することが大事ですよ。かつて悪名高いお尋ね者だったアナタが、この喫茶店を開くと決意した時と同じようにね」
突然の紹介に驚くリカルドは、詳しい事情を聞こうか迷っていたが、インテレオンは何も言わずに窓側の席へ座る。リカルドも慌ててその対面側の席へ座った。
「驚かせてしまってすまない。本当はギルドの入り口前で話すつもりだったんだけど、先程のポケモン達に囲まれてしまって、場所を移して話したかったんだ」
「まあ、それは分かるんですけど…新しい部下ってどういうことですか?」
「それはね…君を私の直属の部下として招き入れて、同時にバケカワギルドの隊員として入団させようということだよ。
本来なら入団試験に合格した者しか入れない掟だが、僕の称号であるエージェントランクに与えられた権限を使えば、特別に一匹だけ入団を認められるんだ。もちろんギルドの親方には了承を得ているし、他の隊員には僕から事情を説明する。
この誘いを受けるのも断るのも君の自由だけど、僕から一つ言えることは…君は将来ギルドを代表する探検家になれる可能性を秘めていて、僕はその才能に希望を抱いている。
…さあリカルド、君の答えを聞かせてくれないかい?」