結果発表
「あれ、ここどこだ?」
「あら、ちょうど良いタイミングね。アナタが寝てる間に、入団試験の決勝戦が終わったわよ」
ベッドから起きたリカルドは、近くで看病していたゴチミルに気付き、とりあえず入団試験の結果を聞くことにした。
「え〜っ、もう終わったの!?ち、ちなみに誰が優勝したんてすか?」
「優勝者はアナタを倒したクジャみたいよ。最初から優勝候補と当たるなんて運が悪かったわね」
クジャの名前を聞いた瞬間、頭にできたタンコブが痛む。そして自分が、あのツタージャに一方的に叩きのめされたことを思い出した。
「そっか…俺負けたのか」
「ほら、この後すぐに結果発表があるから早く行かなきゃ」
ゴチミルに言われて、リカルドはトボトボと試験会場へ向かった。リカルドが戻ると、すでに他のポケモン達が整列していたので、慌ててその列に加わる。そしてニャオニクス兄が、探検隊バッジとスカーフを持って前に立つ。
「全員揃ったというわけで、今回の入団試験の優勝者はクジャさんです。クジャさんには、探検隊バッジとバケカワギルドのスカーフをプレゼントします。おめでとさん」
クジャがニャオニクス兄の前に進み、探検隊バッジをもらってスカーフを首に巻く。他のポケモン達は拍手して、クジャの健闘を讃える。
「というわけで、クジャはこれから俺と一緒に、ギルドの親方様へ報告しに行くよ。他のポケモン達は、ギルド内を見学してもいいし、このまま帰っても大丈夫だ。それじゃあお疲れさん」
ニャオニクス兄とクジャは、二階にある親方様の部屋へ向かう。残されたポケモン達は、それぞれ自由に行動し始めた。
「…これからどうしようかな。一応他のギルドも回ってみて、どこにも入れなかったら島に帰ろう」
もうこのギルドに用が無いと思って、リカルドはさっさと出口に向かう。そして、ギルドの入り口付近で、大勢のポケモン達に囲まれるインテレオンを見つけた。
「キャー、インテレオン様〜!」
「こ、このスカーフにサインして下さ〜い!」
「インテレオン様、もし良かったらこの後私と食事でも…」
「ちょっとぉ!インテレオン様は私と一緒にショッピングするのよ!」
インテレオンを囲むように、メスポケモン達が彼を取り合っている。
その容姿端麗で色気溢れる雰囲気に加え、探検家としての実績も素晴らしいがそれを自慢することもなく、常に謙虚で紳士の振る舞いを見せる。そのカッコよさに憧れるオスポケモンも多く、性別問わず絶大な人気を誇っている。
「…いつか俺もあんな風になりたいなぁ」
リカルドが羨望の眼差しで見ていると、インテレオンとさり気なく目が合った。そして、まるでポケモン勝負を挑むトレーナーのように、インテレオンがリカルドに近づいていく。
「やあリカルド君、入団試験お疲れさま。その様子だと…試験落ちちゃったようだね」
インテレオンが慰めるようにリカルドの頭を撫でる。子供をあやすようなその仕草に、メスポケモン達の黄色い声が響く。
「え、なんで俺の名前を…?」
「君が医療室で気絶してる間、ニャオニクスから色々と聞かせてもらったよ。
君の生い立ちについて詳しく知りたいんだけど、良かったらこれから僕と一緒に喫茶店へ行かないかい?」
まさかの提案に目を丸くするリカルド。本当は別のギルドに向かうつもりだったが、この機会を逃すわけにはいかないと、リカルドはすぐに頷いた。
「よし、それなら僕のおすすめの店に行こうか。知り合いのエンニュートが経営する喫茶店なんだけど、ノメルティーとモモンケーキがとても絶品なんだ」
楽しそうに話すインテレオンの表情が、少しだけ子供っぽく見える。普段のクールでカッコいい姿からのギャップに、後ろのメスポケモン達は心を打たれてキュン死する。
「う、後ろのポケモン達がどんどん倒れていきますよ!?」
「ああ、気にしないでいいよ。なぜか彼女達は、気づいたら最終的に卒倒しているんだ」
彼女達が次々と病院に運ばれていくのを気に止めず、インテレオンとリカルドはエンニュートの喫茶店へ向かう。