入団試験
ニャオニクスの後についていき、リカルドとクジャはギルドの入り口の反対側にある、大きな広場へ案内された。
中央部分には少し硬めの土が整備されていて、どうやらここで対決が始まるようだ。かべと屋根は頑丈なコンクリートになっていて、破壊光線でも当たらなければ壊れないだろう。
部屋に入ったリカルドは最初に、その中心に立つポケモンが目に入った。
「ん、中央に誰か立ってるぞ?」
「ああ、あいつは俺の妹のニャオニクスだ。今回の入団試験の審判だから、しっかり言うこと聞けよ?」
足をトントンさせて腕を組みながら、つり目でリカルド達をじっと睨んでいる。少しビクビクしながら、リカルドは中央へ向かう。
「もうっ!お兄ちゃんがのんびりしてるから、予定時刻が5分遅れちゃったわよ!」
「何だよ別に5分くらい平気だろ。いちいちそんなの気にしてると、ストレスで毛が抜けるぞ?」
「…その減らず口、二度と開けなくしてあげるわよ?」
「お、おいおいやめろって!頼むから耳を開いてサイコパワーを使おうとすんな!」
ニャオニクスの兄弟喧嘩が終わり、気を取り直して入団試験が始まる。
「それではこれより、リカルドVSクジャの対決を開始します。二匹とも悔いの無いように、全力で戦ってください」
ニャオニクス妹が開始の合図をした直後、先に動いたのはリカルドだった。
「女の子相手は気が引けるけど、俺だって負けるわけにはいかない!」
素早い動きでクジャに近寄り、自慢のパンチを繰り出す。コジョンドとの組み手で鍛えられた腕っぷしで、ひたすら攻撃するのがリカルドの戦法だ。
しかし、リカルドのパンチはあっさり避けられ、逆にクジャの強烈な尻尾はたきが、リカルドの腹に直撃した。
「ぶほっ!!」
「フン、そんな大振りのパンチが当たるわけないじゃない」
腹に激痛が走り、膝をついてうずくまるリカルド。その間にクジャは、蔦を伸ばしてリカルドの体に巻きつける。リカルドは力ずくで蔦から抜けようとしたが、ピクリとも体が動かない。いや、しめる力が強過ぎて動かせないのだ。
「アンタと遊んでる暇はないの!悪いけどこれで決めさせてもらうわ」
クジャは拘束したリカルドと一緒に、反動をつけて飛び跳ねる。そして、後ろに体を捻らせて、蔦で巻きつけたリカルドを思いっきり引っ張る。そのままリカルドは、凄い速さで半回転して、遠心力の勢いを乗せたまま地面に叩きつけられる。ドォンと大きな音が鳴り、建物が少しグラグラと揺れる。
「少し勢いをつけ過ぎたかしら?まあでも、女をナメたら痛い目にあうという、良い経験になったんじゃない?」
審判のニャオニクス妹は、倒れたままのリカルドに近づき、目がうずまきのようになっていることを確認した後、クジャの方に手を上げる。
「リカルド戦闘不能!クジャの勝ち!」
気絶したままのリカルドは、ニャオニクス兄に医療室へ運ばれていった。
こうしてリカルドは、一回戦負けという屈辱の結果で入団試験を終えた…。