希望の街
エポー大陸行きのラプラス便に乗り、ゆったり海の旅を楽しむリカルド。そんな様子を見て、運搬役のラプラスは不思議そうに尋ねる。
「リカルドさんでしたよね?ホープタウンへは何をしに行くんですか?」
「へへっ!これからバケカワギルドってところの入団試験を受けに行くんだ!そして俺は、父さんを超える探検家になるんだぜ!」
「バケカワギルドというと、世界でもトップクラスの有名ギルドじゃないですか。無事に合格できることを祈ってますよ」
「おう、ありがとな!」
そしてしばらくすると、大陸のようなものが見えてきて、多くの住宅があちこちに建っていた。ラプラスはそのまま港の桟橋にゆっくり近づき、リカルドはピョイっと背中から降りる。
「バケカワギルドは、道のりを真っ直ぐ進めば見えてくるはずです。入団試験、頑張って下さいリカルドさん」
「おう、じゃあなラプラス!運んでくれてありがとう!」
ラプラスに別れを告げたリカルドは、言われた通りに街路を真っ直ぐ進む。その途中で、色々な店やポケモン達と遭遇し、活気溢れる街並みにリカルドは少し戸惑う。甘い香りが漂うチョコマカロンや、役立ちそうな探検グッズに目を奪われつつも、リカルドは目的地と思われるギルドの建物に到着した。
「で、でっけー屋敷だな。有名なギルドってのも頷けるぜ」
ゴクッと唾を飲んだ後、リカルドはドアの片側をゆっくりと開ける。
屋敷の中には、探検家の証であるスカーフを巻いたポケモン達が大勢いた。そして奥には、大きな掲示板が二つ並んでいて、ポケモン達はそれを見ながら、何かを相談し合っているようだ。
しばらくリカルドがキョロキョロしていると、首にスカーフを巻いたイワンコが近づいてきた。
「ねぇ君、もしかして入団希望者?」
「え、あぁそうだけど…何で分かったの?」
「首にスカーフを巻いてないからだよ。良かったら試験会場まで案内してあげようか?」
「あ、ありがとう。えっと…俺はリカルド」
「僕はイワンコ。よろしくリカルド」
イワンコの後ろについていき、二つの掲示板の真ん中のドアを抜けて、朝礼の間と書かれた部屋に案内される。そこにはすでに、入団希望者のポケモン達が集まっていた。
「ニャオニクスさん、入団希望者連れてきました!」
「お、わざわざありがとなイワンコ。これで多分全員揃ったから、いつものように依頼をこなしてくれ」
イワンコは大きく頷くと、素早く部屋から退出する。どうやら入団希望者はリカルドで最後だったらしく、ニャオニクスと呼ばれたポケモンは、部屋の中心へ歩いて、入団試験についての説明を始めた。
「さてと…それではこれより、バケカワギルド入団試験を行います。
試験内容はとてもシンプル。こちらが決めた順番で、一対一の勝負をしてもらい、最後まで勝ち抜いた者が入団確定というトーナメント方式です。技が決まることでも得点は入りますが、相手を倒せば無条件で勝ちとします。
…ま、単純な話だけど、この中から一番強いポケモンがウチに入れるってことで、OK?」
ニャオニクスの説明が終わると、さっそく第一試合に出場するポケモンが発表された。
「最初の試合は…リカルドさんとクジャさんだね。バトルフィールドに案内するからついてきて」
いきなり呼ばれたリカルドは、意気揚々と他のポケモンを見回す。クジャと呼ばれたポケモンが誰なのか、はっきり見極めるためだろう。
「クジャって名前だから、きっと強くて厳ついやつなんだろうな〜。壁に寄りかかっているヨーギラスとか、いかにもって感じだし、部屋の隅でじっとしているフカマルもなかなか手強そうだ…」
リカルドがひたすらキョロキョロしていると、突然目の前を横切るポケモンが現れた。
「そこのリオル、あなたが私の対戦相手なんでしょ?さっさと終わらせるわよ」
女の子の口調で、短足でチョコチョコ歩きの、若草色の尻尾を揺らすその姿こそ、これから戦う相手のツタージャだった。
「え、もしかして相手って…女の子!?はあ…手加減って苦手なのよね…」
落胆したリカルドは、俯きながらその後に続いた。