旅立ち
ここはポケモン達しかいないエポー大陸。その中心には、多くのポケモン達が生活する巨大な街「ホープタウン」があり、別名で希望の街とも呼ばれていた。
ポケモン達は平和な日々を過ごしていたが、数年前にその希望の光を奪おうと「ネクロズマ」が襲来。世界が闇に包まれようとしていたが、それに立ち向かった四匹のポケモンが見事ネクロズマの野望を阻止して、世界に平和が訪れた。その四匹のポケモンは四英雄と呼ばれ、今でも世界の平和を守るために活動しているという。
そして、その英雄の跡継ぎといわれるポケモンが、エポー大陸の南に位置する名も無き島で、今まさに旅立ちの時を迎えていた…。
「父さん、いよいよだよ…。ついにリカルドが探検隊ギルドに…」
木造建築の家の壁にかけてある額縁を見て、一匹のコジョンドが感慨深そうに呟く。その額縁に入ってる写真には、四英雄の一匹として名高いルカリオが、腕を組みニカっと笑っている。腰くらいに立っている小さいポケモンが、娘のコジョフーと息子のリカルドで、このリカルドが今日、有名な探検隊ギルドの入団試験を受ける予定なのだ。
しばらくコジョンドが写真を眺めていると、部屋のドアが開く音がした。どうやらリカルドが起きてきたようだ。
「ふあーぁ、ねーちゃん朝飯は?」
欠伸をしながら部屋から出てきたのは、毛並みがボサボサで目がショボショボとしていて、腰をポリポリ掻いている、何ともだらしねぇ格好のリオル。そう、彼こそ息子のリカルドなのだ。
その姿に唖然としたコジョンドだが、すぐに我に返ってリカルドに近づく。
「リカルド!何よそのだらしない姿は!」
「う、うるせぇな。朝っぱらから大声出すなよ…」
「そんな姿見たら大声出したくなるわよ!まるで緊張感が無いじゃない!」
「し、しょうがねぇだろ。昨日楽しみでなかなか寝付けなかったんだって」
もう16歳だというのに、心がまるで成長していない様子。大きな溜め息をついた後、コジョンドはリカルドの手を掴み、外へ向かう。
「ほら、外に行くわよ!」
「えーっ、起きたばっかだぜ!?」
「文句言わない!」
そして二匹は、家の前で組み手を始める。ある程度の武術を身につけているコジョンドが指南役となり、リカルドに稽古をつけることが、この二匹の日課となっている。ちなみにリカルドは、この組み手でコジョンドに一度も勝てたことがない。そして今日も、コジョンドにみっちりしごかれるリカルドであった…。
組み手を終えて軽く体を洗った後、リカルドは再びコジョンドに呼び出された。また叱られるのかと嫌な予感がしたリカルドだったが、コジョンドは神妙な面持ちで、不思議な石をリカルドに渡してきた。
「リカルド、この石を持って行きなさい」
「…何この綺麗な石ころ?」
「コラッ!石ころなんて言わない!この石はね、父さんが遺したメガストーンよ。
いつかアンタが逞しいルカリオに進化して、立派な探検隊を率いるって、私は信じてる。このメガストーンはいつか役に立つはずだから、大事に持っておくのよ?」
「ねーちゃん…心配すんな!俺は最強の探検隊を作って、そんで父さんなんか、あっという間に超えてやるからな!」
メガストーンを手提げ袋に入れたリカルドは、駆け足で入り口のドアを開ける。そしてコジョンドに向けて、いつもの言葉をかける。
「それじゃ、いってきまーす!」
「…いってらっしゃい、リカルド」
こうして、英雄の跡継ぎであるリカルドは、中心街のホープタウンに向けて、ワクワクドキドキしながら旅立つのであった…。