プロローグ 誰よりも強く優しく
ある地方のあるトレーナーの元で、一匹のチコリータが産まれた。チコリータは旅をする人間が最初のパートナーとしてつれ歩くポケモンとしても有名でり、その為人間の元で繁殖、育成し多くの人間の元に旅立てるようにされている。しかしこのチコリータは例外であり、兄弟達が旅立っていく中貰い手がなかなか現れず、数ヵ月経っても親元を離れることがなかったのだ。
「………ええ、分かりました。彼は私のほうで育てていきます」
チコリータのトレーナーの少女はそう言うと電話の受話器を置き、長めの茶髪を結ったポニーテールを揺らしながらチコリータの前にしゃがみこむ。それまで無邪気におもちゃとじゃれあっていたチコリータだったが、少女が近くに来たのを察するとじゃれる相手を少女に移した。
「今日からあなたは私のパートナーね。よろしく」
そう言う少女にはお構い無しにじゃれ続けるチコリータを彼女は優しく撫でる。
「そうね。あなたに名前を付けてあげないと。そうね……メガニウムって恐竜みたいだし、ブラキオなんてどう?」
そう言われてきょとんとした表情のチコリータだったが、少女に名前を付けてもらったのを理解して大きく頷いてみせた。それを見た少女は優しく微笑み、チコリータを抱き抱えて窓際に立ち、言った。
「いいブラキオ。これからあなたは外の世界でいろんな人に出会っていくだろうし、いろんなポケモンともバトルする。困難な壁にぶち当たっちゃうかもしれないけど負けないで。あなたは誰よりも優しく、強くなれるんだから」
それからブラキオの修行の日々は続き、実力もプロのポケモントレーナーからのお墨付き。進化こそまだだったが、少女の願い通りのポケモンになろうとしており、幸せに暮らせていた。………あの日までは。